このページではの交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」のレビューを掲載しています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROのレビュー一覧
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビュー完全版
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.5 ボケ・周辺減光・逆光編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.4 諸収差編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.3 解像チャート編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.2 遠景解像編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.1 外観・操作・AF編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | やや高め | |
サイズ | 最大クラス | |
重量 | 最も重い | |
操作性 | MFクラッチが使い辛い | |
AF性能 | ブリージングが目立つ | |
解像性能 | 絞れば全体的に良好 | |
ボケ | 玉ねぎボケが目立つ | |
色収差 | 14mmの軸上色収差以外は良好 | |
歪曲収差 | 補正必須 | |
コマ収差・非点収差 | まずまず良好 | |
周辺減光 | このクラスでは良く抑えられている | |
逆光耐性 | ゴーストが発生しやすい | |
満足度 | 良好な解像性能だが使い勝手が悪い |
評価:
良好な解像性能だが使い勝手が悪い
マイクロフォーサーズでは唯一の大口径広角ズームレンズ。また、「7mm F2.8」をカバーしている広角ズームはこれ一本のみのため、ここが必須であれば悩む必要なし。ただし、F2.8から全体的に優れた解像性能と言うわけではなく、周辺部や隅の結果を求めるにはF4~F5.6まで絞りたいところ。
また、ドーム状の前玉のメンテナンス性が悪く、水滴や汚れが付着しやすい環境で使い辛いのが悩ましいところ。社外製のアダプターで円形フィルターに対応できるものの、追加投資やセットアップの手間、収納スペースは要検討。
個人的には、7mm F2.8を諦めることで「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」や「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」など使いやすい広角ズームレンズをおススメします。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | ボケが綺麗ではない | |
子供・動物 | 高速AFだが前玉ダメージに注意 | |
風景 | 良好な性能だがフィルターワークがしづらい | |
星景・夜景 | 7mm F2.8の解像性能がイマイチ | |
旅行 | 前玉のメンテナンス性が心配 | |
マクロ | 寄りやすいレンズではない&同上 | |
建築物 | 未補正の歪曲収差に注意 |
まえがき
2015年に登場したマイクロフォーサーズ初の大口径広角ズームレンズ。当時は広角7mmをF2.8でカバーする広角レンズが貴重で、広角レンズの明るさが必要だった人は重宝したのではないでしょうか。オリンパスPROシリーズらしく、金属鏡筒と防塵防滴の堅牢な外装でアウトドアの撮影に適しています。
ただし、M.ZUIKOレンズでは珍しいドーム状の前玉を備え、円形フィルターに対応していない点には注意が必要です。フィルターワークがしたい場合、7mm F2.8を諦めてパナソニック「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」を検討するか、高価でセットアップに手間がかかる角形フィルターを選ぶしかありません。
- 発売日:2015年 6月26日
- 初値:¥132,189
- マウント:マイクロフォーサーズ
- フォーマット:4/3
- 焦点距離:7-14mm
- レンズ構成:11群14枚
- 開放絞り:F2.8
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:7枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.2m
- 最大撮影倍率:0.12倍
- フィルター径:非対応
- 手ぶれ補正:-
- テレコン:-
- コーティング:ZEROコーティング
- サイズ:φ78.9x105.8mm
- 重量:534g
- 防塵防滴:IP53相当
- AF:ステッピングモーター
- その他:MFクラッチ
- 付属品:レンズキャップ(LC-79), レンズリアキャップ(LR-2), レンズケース(LSC-0914), 取扱説明書, 保証書
防塵防滴仕様ですが、前玉にフッ素コーティング処理されていないのは残念。特にフィルターで前玉を保護できない本レンズにとって、水滴や砂塵が付きやすい環境ではメンテナンスが必須となります。
価格のチェック
売り出し価格は13万円程度でしたが、現在は世界情勢や物価の上昇で16万円まで値上がりしています。この価格に見合うだけの光学性能やAF性能を備えているのか、今後のレビューで確認したいと思います。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
7-14mmはOM SYSTEMブランドに切り替わる以前のレンズです。PROシリーズ始動時と同じ黒を基調としたシンプルなデザインの箱。正面には大きく焦点距離が表示され、小さく35mm判換算時の焦点距離を表示しています。レンズ本体のほか、かぶせ式のキャップとソフトケース、説明書・保証書が付属します。
外観
固定式レンズフードはプラスチック製ですが、ほか全体的に金属パーツで構成されています。しっかりとした作りで、PROシリーズらしい作り。ただし、冬場は鏡筒が冷えやすく、屋内など温かい場所へ移動すると、表面に結露が付きやすい。
フォーカスリングとズームリングはどちらも金属製。表面は滑り止めの加工が施されています。シリアルナンバーを含め、印字は全てプリント。エッチングなどの加工はありません。
レンズキャップ
固定式レンズフードに被せるタイプのレンズキャップが付属。両側にロックがあるため、簡単には脱落しません。ただし、装着する方向がある点に注意。
ハンズオン
全長108mm、重量534g。マイクロフォーサーズ用の広角ズームの中では最も大きく重いレンズです。重厚感があるいっぽう、長時間の撮影では重量を感じるかもしれません。OM-DやOM-1と組み合わせるぶんにはバランス良好ですが、PENやGFと言った小型軽量ボディとは相性が悪い。「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」は全長が少し短く、重量は200gほど軽い。
前玉・後玉
固定式レンズフードの内側にはドーム状の大きな前玉が見えます。焦点距離を14mmに設定すると前玉が奥へ引っ込み、7mmに設定すると前方へ繰りだします。(それでもフードに隠れる程度)レンズやフードの形状から、通常の円形フィルターは装着できません。リアフィルターホルダーにも対応していないので、社外製角形フィルターのみ利用可能。ホルダー・角形フィルターは高価でセットアップが手間なので、OM-1 Mark IIのようにGND効果をシミュレーションできるカメラを選択するのも一つの手と言えそうです。
金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定されています。後玉はマウント付近で固定されており、ズーム操作で移動することはありません。付近には製造国が印字されており、少なくとも今回の個体はベトナム工場で生産されているようです。
フォーカスリング
PROシリーズでは一般的なサイズの金属製フォーカスリングを搭載。MFクラッチ構造を採用しており、後方へスライドすることで素早くMFに切り替えることが可能。MFクラッチは便利ですが、ふとした拍子に切り替えてしまうこともあるので注意が必要。
MFクラッチ時はフォーカスリング上のピント距離表示に合わせて動作します。リニアレスポンスですが、この際のストロークは90度未満と短い。微調整には不向きと感じる場合があります。MF操作時の動作が粗いと感じた場合、MFクラッチを使わずにカメラ側のMFを利用するのがおススメです。
ズームリング
フォーカスリングの手前に幅が広いズームリングを搭載。前玉周辺の防塵防滴仕様(ゴム製シーリング)が引っかかるのか、滑らかに回転しますが少し重め(特に7mm周辺)。
前述したように、ズーム操作で前玉が前後するもののフードに隠れた状態は違いなし。全長に変化はありません。
ボタン
側面にはL-Fnボタンを搭載。マウント付近にあるので、カメラ装着時はやや押しづらい。
装着例
OM-1に装着。このクラスのカメラはグリップが大きく、握りやすい。大きなレンズを装着しても全く問題が無いように感じます。バランスも良く、過度なフロントヘビーとは感じません。PENやLUMIX GFなど小型ボディにも装着可能ですが、片手で保持する際は追加のグリップが欲しくなります。
AF・MF
フォーカススピード
フォーカスレンズはステッピングモーターで動作。静かで滑らかに動作します。OM-1との組み合わせで、近距離から無限遠まで非常に高速。C-AF動作時は急接近する場合に問題なく追従しているように見えます。注意する点があるとしたら、後述するフォーカスブリージング。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
ご覧のように、特に広角側で非常に目立ちます。動画撮影時に目立つほか、周辺部や隅のAF動作が不安定となるのが悩ましいところ。望遠側では少し良くなりますが、それでも目に付く程度の変化があります。
精度
フォーカスブリージングが影響しているのかどうか不明ですが、S-AF使用時にピントの山を掴み損ねる場合があります。特にLUMIXと組み合わせた場合に多い印象あり。個人的には1点フォーカスエリアかつC-AFで対応。
MF
前述したように、MFクラッチはストロークが短いので細部のピント合わせが苦手なシーンがあります。状況におうじてノンリニアのMFと使い分けたほうが良いでしょう。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:LUMIX G9 PRO II
- 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」 - オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
7mm
中央はF2.8からとても良好な結果を得ることができますが、周辺や隅はピントを合わせたとしてもややソフトな結果。実写サンプルをご覧になると分かるように、顕著な画質低下ではありませんが、細部のディテールは低め。F8のピークに向かって改善しますが、回折の影響で中央は性能が低下します。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3861 | 1937 | 2655 |
F4.0 | 3803 | 2249 | 2617 |
F5.6 | 3773 | 2787 | 2728 |
F8.0 | 3429 | 3225 | 3393 |
F11 | 2833 | 3225 | 2922 |
F16 | 2432 | 2389 | 2316 |
F22 | 1806 |
実写確認
8mm
基本的に7mmと同じ傾向ですが、周辺や隅の改善速度は速め。その一方、中央の画質低下も速い。均質性を重視する場合は中央のピークを犠牲にする必要があります。8-25mm F4 PROと似たような性能ですが、絞った時の伸び方は本レンズのほうが良好。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 4008 | 2040 | 2347 |
F4.0 | 3960 | 2526 | 2669 |
F5.6 | 3613 | 3367 | 3147 |
F8.0 | 3353 | 3311 | 3217 |
F11 | 3100 | 2819 | 2927 |
F16 | 2370 | 2206 | 2355 |
F22 | 1774 | 1800 | 1746 |
実写確認
9mm
概ね8mmと同じ傾向が続きます。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3820 | 2478 | 2309 |
F4.0 | 3790 | 2785 | 2647 |
F5.6 | 3912 | 3454 | 3031 |
F8.0 | 3293 | 3136 | 3237 |
F11 | 3112 | 3036 | 2821 |
F16 | 2245 | 2378 | 2138 |
F22 | 1788 | 1782 |
実写確認
10mm
広角側と比べると、周辺部や隅のF2.8が良好。それでもややソフトですが、F4まで絞れば概ね改善します。8-25mm F4 PROと比べると、やはり絞った際の伸び方に違いあり。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3973 | 3225 | 2436 |
F4.0 | 4034 | 3383 | 2624 |
F5.6 | 3774 | 3576 | 2918 |
F8.0 | 3714 | 3729 | 3219 |
F11 | 3022 | 2844 | 2787 |
F16 | 2540 | 2478 | 2309 |
F22 | 1770 | 1681 | 1819 |
実写確認
12mm
中央と周辺・隅の画質差が縮まります(中央が広角側と比べて低下したとも言えますが)。遠景解像のテスト結果と同じく、中央から隅まで一貫性のある結果を得ることができます。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3744 | 2865 | 2510 |
F4.0 | 3473 | 3392 | 2841 |
F5.6 | 3804 | 3551 | 3393 |
F8.0 | 3293 | 3522 | 3022 |
F11 | 2987 | 2898 | 2811 |
F16 | 2540 | 2279 | 2239 |
F22 | 1752 | 1590 | 1621 |
実写確認
14mm
中央の解像性能は最も低下しますが、隅まで一貫性の高い画質としては14mmがピーク。
中央
周辺
四隅
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3465 | 2987 | 2661 |
F4.0 | 3496 | 3323 | 3323 |
F5.6 | 3381 | 3534 | 3383 |
F8.0 | 3271 | 3522 | 3202 |
F11 | 2996 | 2996 | 2902 |
F16 | 2444 | 2334 | 2300 |
F22 | 1776 | 1829 | 1590 |
実写確認
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2024.3.12 曇り時々晴れ 微風
- カメラ:OM SYSTEM OM-1
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
- 露出:絞り優先AE ISO 200固定
- RAW:Adobe LightroomClassic 現像
・シャープネス オフ
・レンズ補正 オフ
7mm
中央から広い範囲はF2.8からシャープ。ただし、フレーム周辺や隅はややソフトな画質。F4~F5.6まで絞るとことで隅までシャープな結果を得ることができます。最小絞りは「F22」ですが、F11以降は回折の影響が強く、画質低下が目立ちます。F8くらいまでは実用的で、ベストを尽くすのであればF5.6前後がおススメ。
中央
F2.8の絞り開放から絞りによる変化はほとんどありません。F8まで絞ると回折の影響が目立ち始めるので、ピークの画質を維持する場合はF5.6までに抑えておいたほうが良いでしょう。
周辺
中央と比べるとF2.8がややソフトで、細部がはっきりとしません。F4~F5.6まで絞ると改善します。
四隅
周辺と同じ傾向。F4~F5.6がピークの画質。
10m
中央は引き続きF2.8から非常に良好。周辺部も良好ですが、隅は少しソフトな画質。F4で大きく改善し、F5.6でピークの結果を得ることができます。
中央
7mmと同じく、F2.8からほぼピークの性能。F4まで絞ると僅かに細部のコントラストが改善します。F8まで絞ると、回折の影響でF2.8と同程度まで低下。
周辺
7mmよりも良好に見え、絞りによる変化はほとんどありません。
四隅
7mmよりも良好ですが、F4~F5.6まで絞ると細部がわずかに改善します。
14mm
中央のピーク性能は低下しているようにも見えますが、周辺や隅まで一貫性の高い結果を得ることが可能。F4まで絞ると、全体的に少し改善。F5.6でピークの性能に達する。
中央
F4と比べると、F2.8は細部のコントラストが少し低め。ピークはF4で、F5.6~F8で僅かに低下しているように見えます。
周辺
中央と同じ傾向・結果。F4~F5.6でピークの性能が得られます。
四隅
中央や周辺とほぼ変わりません。一貫性のある結果が得られます。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
7mm
完璧ではないものの、ほとんど目立ちません。絞り全域で収差の量はほぼ一定。
10mm
7mmよりも良好な補正状態。絞ると僅かに改善します。
14mm
他の焦点距離と同じく良好な補正状態です。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
7mm
ピント面の前後にわずかな色収差の痕跡が見られるものの、コントラストが強い環境でもほぼ問題なし。この残存収差が目立つシーンはほとんどありません。
10mm
F2.8の絞り開放から全く問題ありません。極端なコントラストでも色収差が目立つ兆候無し。
14mm
極端なコントラストでは軸上色収差の影響が見られます。軽微な問題ですが、イルミネーションなどのシーンでは目に付くかもしれません。2段絞るとほぼ改善します。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
7mm
強めの樽型歪曲が残存しています。ここ最近のミラーレス用レンズとしては一般的な手法ですが、発売当初はまだこのようなレンズが少なく、驚いた人が多いかもしれません。歪曲収差はカメラや現像ソフトにより修正可能。綺麗に補正できますが、未補正RAWの画角よりも少し狭くなります。
8mm
7mmよりも穏やかな樽型歪曲。とは言え、まだ目立つ樽型歪曲のため、カメラや現像ソフトでの補正は必須。
9mm
8mmとほぼ同じ。
10mm
8mmや9mmよりも改善していますが、直線的な被写体をフレーム端に配置すると歪みが目立つ可能性あり。
12mm
未補正でもほぼ問題ありませんが、わずかな樽型歪曲が残っています。
14mm
未補正の状態でもほぼ直線。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
広角端では良好な補正状態ですが、10mmや14mmは点光源のわずかな変形が見られます。収差を完全に抑え込むためには少し絞る必要があります。
球面収差
前後のボケ質に大きな変化はありません。軸上色収差のテストから、絞りによるフォーカスシフトの兆候もありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
7mm
玉ボケには非球面レンズのムラが目立つうえ、隅に向かって口径食の影響があり、さらに倍率色収差による色づきも目立ちます。お世辞にも褒められた描写ではありません。
14mm
7mm F2.8よりも大きなボケが得られるものの、非球面レンズの粗や色収差の影響が目立ちます。
ボケ実写
7mm
接写時は滑らかな後ボケが得られているように見えますが、コントラストの高い玉ボケは荒れやすい印象。全体的にボケが小さいので悪目立ちしませんが、積極的に使いたいと感じる描写ではありません。悪目立ちする場合、F4まで絞ると落ち着きます。少し距離を長くしても、接写時と同じ傾向が続きます。背景が悪目立ちする場合はF4まで絞ってみると良いかもしれません。
14mm
接写時はボケが大きいぶん、悪目立ちする要素が和らいでいるように見えます。綺麗なボケとは言えませんが、使用をためらうほどの描写でもなし。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
7mm
全身やひざ上くらいの撮影距離では、満足な後ボケを得ることができません。上半身やバストアップで背景がボケ始める程度。顔のクローズアップで十分なボケを得ることができます。
14mm
7mmよりもぼかしやすいですが、基本的には7mm F2.8と同じような使い勝手。顔のクローズアップ以外で十分なボケ量は得られません。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
7mm 最短撮影距離
「周辺減光」はほとんどありませんが、歪曲補正を修正しない場合は四隅がわずかにケラレています。これは絞ってもほぼ改善せず、F8まで絞っても僅かに残存しています。
7mm 無限遠
最短撮影距離よりも「周辺減光」の影響が少し強いものの、ケラレの影響は穏やかになっています。小型軽量な単焦点レンズ(例えばLAOWA)よりも周辺減光の影響が良く抑えられています。
14mm 最短撮影距離
F2.8で穏やかな周辺減光の影響があり、F4まで絞ると解消します。F4以降は問題なし。
14mm 無限遠
最短撮影距離よりもF2.8での影響が目立つものの、F4で解消します。
逆光耐性・光条
7mm
複雑な光学設計のレンズであり、強い光を正面から受けるとレンズ内の反射でゴーストが多数発生するようです。一般的な撮影でここまで悪化する例は珍しいと思いますが、イルミネーションなどのシーンでは同様の結果となる可能性あり。また、ドーム状の前玉により、側面から受ける強い光でもゴーストが発生しやすい模様。ただし、フレアは良く抑えられており、コントラストを維持しています。
14mm
7mmと比べてフレアの影響が強くなっています。フレームの広い派に
光条
F16前後でシャープな光条を得ることができます。ただし、マイクロフォーサーズシステムでF16まで絞ると回折の影響が強く、解像度は大幅に低下するので注意が必要。バランスを取るのであればF8~F11を使ったほうが良いでしょう。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 金属外装・防塵防滴の頑丈な作り
- 鏡筒の伸び縮みが無い
- 大きめのレンズサイズ
- AFは非常に高速で静かに動作
- 非常に優れた中央解像
- F4まで絞ると全体的に良好
- 良好な倍率色収差の補正
- 周辺の光量低下が抑えられている
- シャープな光条
F2.8から中央は非常に優れた解像性能を発揮し、周辺や隅もF4まで絞ると良好な結果を得ることができます。8-25mm F4 PROとよく似た性能ですが、絞った際のピークはこちらのほうが良好。前玉の保護が必要ではあるものの、金属鏡筒や防塵防滴仕様は流石のPROレンズと言ったところ。
悪かったところ
ココに注意
- ドーム状の前玉でフィルター装着不可
(社外製の高価なフィルターアダプター必須) - MFクラッチ時のストロークが短い
- フォーカスブリージングが目立つ
- 広角側の周辺部や隅がF2.8でソフト
- 14mmで軸上色収差が少し目立つ
- 未補正で大きな樽型歪曲
- 玉ねぎボケが目立つ
- 逆光時にゴーストが目立つ
大きく重く、高価なレンズとしては7mm F2.8の周辺部が少し残念。もしも広い画角と明るいF値、そして解像性能を重視するのなら、LAOWAのような単焦点レンズも検討したほうが良いでしょう。(ただし周辺減光は強めですが…)
最大の欠点はドーム状の前玉で、水滴や汚れが付着しやすく、メンテナンスが難しいこと。社外製のアダプターで円形フィルターに対応させ、無理やり前玉を保護することは可能ですが、追加投資(アダプター+フィルター)とセットアップの手間、収納スペースの確保などが必要となります。7mm F2.8が必須ではないのなら「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」を要検討。
総合評価
満足度は80点。
絞れば全体的に良好な解像性能を得ることができ、金属外装と防塵防滴のPROシリーズレンズ。ただ、F2.8から抜群の解像性能を期待すると周辺部や隅の結果を見てがっかりするかもしれません。逆光耐性も完璧とは言えず、ボケは見栄えがあまり良くありません。とは言ったものの、現状で「7mm F2.8」をカバーする広角ズームはこれ一本。そこが必須条件であれば悩む必要なし。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROについて
クリアランスセールなどで安く手に入れる機会があれば別ですが、7-14mm F2.8を15万円前後の通常価格で買うかと言うと否。個人的には、汎用性を考慮して「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」がおススメ。ただし、沈胴構造のため使用時は内筒を伸ばす必要がある点には注意が必要です。
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LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.について
もう一つの選択肢はパナソニックの「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」。開放F値が変動するタイプのズームレンズですが、「8mm F2.8」を利用することが出来ます。円形フィルターに対応しているので、前玉の保護が簡単なのも考慮したいポイント。ズーム操作による前玉の移動は鏡筒内で完結しており、前面にフィルターを装着すると実質的にはインナーズームのような状態となります。保護性が高い点も要検討で、個人的には最もバランスの取れた広角ズームレンズだと感じています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
数年前に大幅な値下げで3万円台で買えるようになった広角ズームレンズ。既に生産完了品となり、後継モデルが登場しているものの光学系は継承しています。デザインに問題がなければ市場に残る初期型を購入するのも一つの手。開放F値が暗いものの、小型軽量で携帯性の高いレンズ。少なくとも広角側の解像性能は優れており、F5.6やF8まで絞って問題ないシーンであれば思いのほか良好な結果を得ることが出来ます。(望遠側は絞っても周辺がソフトな画質)
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II | |||
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LAOWA 10mm F2 MFTについて
MF限定ですが、電子接点を搭載してEXIFや自動絞りに対応。F2の絞り開放から全体的に良好で安定感のある解像性能を得ることができます。周辺減光が強いので修正は必要となるものの、7.5mm F2 MFTよりも軽度。7mmと比べると画角は狭いものの、優れた解像性能の大口径レンズが必要であれば検討する価値のあるレンズ。ただし、逆光時のフレア耐性が低い点には注意。
購入早見表
作例
関連レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
- LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.
- LEICA DG Vario-Summilux 10-25mm F1.7 ASPH
- M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
- LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH.
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