このページではニコン「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のレビューを掲載しています。
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 適正価格 | |
サイズ | とても小さい | |
重量 | とても軽い | |
操作性 | 必要十分 | |
AF性能 | 高速で静か | |
解像性能 | 同クラスでは非常に良好 | |
ボケ | 玉ボケに注意 | |
色収差 | 良好な補正状態 | |
歪曲収差 | レンズ補正必須 | |
コマ収差・非点収差 | 良好な補正状態 | |
周辺減光 | 広角以外問題ナシ | |
逆光耐性 | 状況によるが良好 | |
満足度 | このクラスではおススメ |
高い光学性能の小型軽量キットズーム
- 小型軽量
- 沈胴機構で収納性抜群
- 価格とサイズを考慮すると良好な光学性能
- 一部の収差はソフトウェア補正が必須
- 玉ボケが騒がしい
APS-C Zカメラ用の優れた標準ズームレンズ。小型軽量な沈胴式ズームレンズとしては良好な光学性能を備え、特にこれと言った弱点は玉ボケの描写のみ。カメラについてくるキットレンズとして入手すると、非常にコストパフォーマンスの高いレンズとなるはず。
Index
まえがき
2019年に「Z 50」と共に登場した最初のNIKKOR Z DXレンズの一つ。沈胴機構を採用したコンパクトな標準ズームレンズながら高い光学性能と手ぶれ補正を実現していると言われています。レンズ構成は7群9枚で、そのうち1枚のEDレンズと4枚の非球面レンズを採用した力の入った光学設計。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | Nikon Z | 最短撮影距離 | 0.25-0.3m |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 0.2倍 |
焦点距離 | 16-50mm | フィルター径 | 46mm |
レンズ構成 | 7群9枚 | 手ぶれ補正 | 4.5段 |
開放絞り | F3.5-6.3 | テレコン | - |
最小絞り | F22-40 | コーティング | 不明 |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ70×32mm | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 135g | AF | STM |
その他 | 沈胴機構 | ||
付属品 | |||
レンズキャップ |
最短撮影距離はズーム全域で0.25~0.3mであり、広角側では少し寄りづらい。ただし、望遠側では35mm判換算で0.3倍の実用的なクローズアップ性能を実現。小型軽量ながら4.5段の光学手ぶれ補正に対応しているほか、防塵防滴にも配慮した設計の実用的なスペックに仕上がっています。
2021年8月現在でZマウント用レンズとしては最も小型軽量。特に沈胴機構を採用したレンズのため、内筒格納時の携帯性・収納性は抜群。これで高い光学性能と静かで高速なAF、防塵防滴仕様なのだから凄い。
価格のチェック
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR ブラック | |||
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NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR シルバー | |||
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レンズフード HN-40 | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
今回はキットレンズのばらし品と思われる新品を購入したので簡易箱のみ。
付属品はレンズ前後のキャップのみと至ってシンプル。
外観
外装は全体的にプラスチックパーツを使用しており、安っぽさは否めない。「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」のようにズームリングにゴム製グリップを使っているわけでも無く、本当の意味で総プラスチック製。しかしながら、過度にプラスチッキーという印象も無く、ビルドクオリティは許容範囲内。
外装の表示は全てプリントかと思いきや、CEマークなどは何故か刻印。
製造国の表示はレンズマウント面にあり、このレンズは「タイ製」らしい。
ズーム操作により伸びる内筒は多段式で、素材はもちろんプラスチック。手で触ると僅かにガタツキを感じるものの、触らなければ特に問題ナシ。
ハンズオン
重量135gと非常に軽量なズームレンズ。同じくAPS-C用の沈胴式標準ズームである富士フイルム「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」と同じ重量であり、ソニー「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」は比較して少し軽い。
フルサイズの中でも特にマウント径が大きいZマウント用なので、APS-C用レンズとしては直径が無駄に大きく感じてしまうのが悩ましいところ。
前玉・後玉
フィルター径は46mmに対応。(NIKKOR 1を除く)ニコン製レンズとしては最小のフィルター径となるので他のレンズとフィルターを共用し辛いのはマイナス。他に46mm径のフィルターを使用するニコン製レンズは今のところ「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」のみ。前玉にはフッ素コーティングが施されていないので、水やゴミの付着が予想できるシーンではプロテクトフィルターを装着したい。
レンズマウントはプラスチック製。金属マウントと比べて耐久性にどれほどの差が出るのか不明。「防塵防滴に配慮した設計」ながらレンズマウントにゴム製シールと思われるパーツは見当たらない。その代わりにマウント部の隙間を極力抑える形状。
沈胴構造の展開、ズーム操作でも最後尾のレンズは固定され動かない。このため、センサーボックス内における空気の出入りは少ないと思われる。特にイメージセンサーに除塵ユニットが無いZ 50やZ fcでは重要となるはず。
フォーカスリング
10mm幅のプラスチック製フォーカスリングは滑らかに回転する。低価格のレンズに多い、ざらついた感触が無く、とても良好。ピント全域のストロークは回転速度や焦点距離によって変化するものの、16mmでは90度前後、50mmでは180度前後となる。
ズームリング
沈胴構造のズームレンズは格納時にレンズが最も短くなる。16mm・50mm時に内筒は最も長く伸び(約26mm)、ズーム中間域で少し短くなる(約22mm)
富士フイルムやソニーの競合レンズと比べて大きく異なる点は「パワーズームでは無い」こと。メカニカルなズームリングで直感的で素早く操作できる反面、動画撮影などで滑らかなズーム操作が必要な場面では不利となる可能性あり。
幅13mmのプラスチック製ズームリングは滑らか、そして適度な剛性で回転する。沈胴状態から16mmの間には強めの抵抗があり、力を入れて回転することでロックを解除することが可能。16mmから50mmまでは一貫した剛性で回転可能。ストロークは90度未満であり、広角端から望遠端まで素早く操作できる。
フォーカスリングとの間に境目となる空間は無く、ズームリングを操作する際にフォーカスリングも操作してしまう可能性あり。特に厚手の手袋を装着している時は使い分けるのが難しい。
レンズフード
レンズフードは別売り。平時ならば2000円ちょっとだが、2021年夏現在は供給が安定しておらず、少し高い値付けが目立つ。純正にこだわらなければAmazonあたりで46mmねじ込み式フードを探すといくらでも見つけることが出来る。特にシルバーモデルに合わせたシルバーカラーのメタルフードを探しているのであれば社外製を探すしかない。(例えばF-Foto製メタルフード)
レンズフード HN-40 | |||
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レンズフードは内側が46mm径フィルターに対応。レンズ側にフィルターを装着しても良し、フード側にフィルターを装着しても良し。
装着例
本来ならばZ fcに装着してレビューしたかったのですが、残念ながら「28mmSEキット」の販売が遅れているのでFXモデル「Z 7」に装着。非常にコンパクトで、重心はほぼボディ側にあり扱いやすい。おそらくZ 50やZ fcと組み合わせても大きな問題は無いはず。
AF・MF
(Z 7がHDMI C端子であることを忘れてD端子を撮影現場に持って行ったしまっため、ライブビュー映像を撮り損ねました。フルレビューまでには撮影予定)
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動のオートフォーカスはまずまず良好。爆速と言うにはワンテンポ遅いものの、極端に動作の速い被写体を追従しない限り大きな問題とはならないはず。
望遠端がF6.3と暗いので、低照度時にパフォーマンスが低下しやすい点に気を付けたい。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
16mm
シンプルな光学系のズームレンズとしては(ゼロではないものの)良く抑えらている。特に一般的な撮影距離でフォーカスブリージングが目立つことは無いはず。
24mm
16mmと比べると少し目立つものの、やはり一般的な撮影距離であれば大きな問題は見られない。
35mm
24mmと同じ。
50mm
35mmと同じ。
精度
Z 7に装着した状態で特に大きな問題は無し。ピンポイントAFや拡大AFも一貫性のあるAF結果を期待できる。
MF
前述した通り、適度なストロークを持つ良好な操作性のフォーカスリングでMFを利用可能。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Nikon Z 7
- 交換レンズ:NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 200 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
16mm
テスト結果
中央
絞り開放から3000を超える非常に良好な性能。同じ2000万画素センサーを使用しているマイクロフォーサーズカメラの数値も良くて3000?3500となるので、このテスト環境では上限に近いパフォーマンスと言える。
F4で急激に改善しているものの、F5.6で急速に低下しているので、おそらく異常な数値が出てしまったものと思われる。その後に何度かテストした平均値では3000前後となった。
回折の影響を受け始めるF11までは一貫したパフォーマンスを発揮し、F16も使えなくはない画質。ただしF22まで絞ると2500を下回るため、出来れば避けて通りたい。
周辺
絞り開放から中央に近いとても良好な性能を発揮。やはり絞っても性能に大きな変化は無く、回折が始まるまで一貫したパフォーマンス。将来的により高画素センサーになったとしても耐えられる可能性が高い。
四隅
中央や周辺と比べると少し見劣りするものの、開放から2500を超える良好な性能。絞ることで徐々に改善し、F5.6で中央や周辺と画質差の少ない均質性の高い画質を実現する。その後は回折開始から最小絞りまで似たような性能を示している。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F3.5 | 3090 | 2904 | 2520 |
F4.0 | 3694 | 2904 | 2667 |
F5.6 | 2938 | 2904 | 2761 |
F8.0 | 3004 | 2867 | 2731 |
F11 | 2909 | 2756 | 2610 |
F16 | 2456 | 2312 | 2159 |
F22 | 2342 | 2104 | 1949 |
実写確認
24mm
テスト結果
中央
16mmと同じく絞り開放からとても良好な性能を発揮。絞っても改善は見られず、寧ろ徐々に低下してゆくのが特徴的。出来れば絞り開放で撮りたいものの、被写界深度や周辺・隅の画質とバランスを取るつもりなら絞る必要がある。画質は絞るごとに低下するが、F11までは下がり幅が小さく、実用上に問題は無いはず。
周辺
絞り開放から中央とほぼ同じ良好な性能。F5.6まで絞ると中央とほとんど差の無い均質的な画質となり、それ以降もほぼ同じ水準を維持している。
四隅
絞り開放こそ中央や周辺よりワンランク低い画質だが、絞ると少しずつ改善し、F8で中央と同等の均質性の高い画質を獲得するに至る。そこから絞ると回折により画質が低下し始めるので、風景撮影ならばF8を基準の絞り値として使いたい。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.2 | 3071 | 2726 | 2400 |
F5.6 | 2896 | 2838 | 2696 |
F8.0 | 2838 | 2815 | 2884 |
F11 | 2750 | 2604 | 2312 |
F16 | 2341 | 2312 | 2196 |
F22 | 2108 | 1962 | 1933 |
F29 | 1816 | 1816 | 1670 |
実写確認
35mm
テスト結果
中央
絞り開放の数値が3000を下回るものの、それでも非常に良好な画質に違い無し。24mmと同じく絞っても改善せず、寧ろ画質は低下してしまう。回折の影響はF16まで緩やかなので、必要な被写界深度に応じて自由に絞り値を選べば良い。F16を超えると急激に画質が低下し始めるので注意が必要。
周辺
絞り開放から中央とほぼ同じ画質。コンパクトな標準ズームの中間域でパフォーマンスを維持しているのは凄い。F5.3以降のパフォーマンスも全体的に中央とにている。
四隅
16mmや24mmと異なり、絞り開放から中央や周辺と同等の良好な画質。絞りによる傾向も似ており、特に画質面で絞り値を意識する必要が無いのはGood。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.3 | 2957 | 2867 | 2779 |
F5.6 | 2946 | 2802 | 2809 |
F8.0 | 2733 | 3071 | 2607 |
F11 | 2594 | 2721 | 2637 |
F16 | 2454 | 2312 | 2283 |
F22 | 1951 | 1853 | 1816 |
F32 | 1598 | 1651 | 1583 |
実写確認
50mm
テスト結果
中央
標準ズームの望遠端と言えばパフォーマンスが低下しやすい焦点距離。しかしながら、他のズームレンジと同等の解像性能を維持している。パフォーマンスはF8まで維持しているものの、以降は回折の影響で急速に低下する。最小絞りはF40だが、1500を下回る非常にソフトな画質であり、正直なところ使いたいとは思わない。
周辺
なぜか中央よりも良好な数値だが誤差の範囲内。ズームレンズの望遠端とは全く感じない性能であり、躊躇することなく50mm F6.3を使うことが出来る。ただし、ピークを維持できるF値の幅は狭く。F8を超えると急速に画質が低下する点には注意が必要。
四隅
中央や周辺と比べるとワンランク画質が低下するものの、それでも絞り開放の性能は広角側や中間域と比べて大きく見劣りしない。絞ると徐々に画質が改善するものの、F11まで絞ると中央や周辺の画質が低下し始める。全体の画質を重視するならF10?F11を、隅のわずかな甘さを妥協できるのであればF6.3?F8がおススメ。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 2994 | 3170 | 2548 |
F8.0 | 3136 | 3159 | 2637 |
F11 | 2543 | 2779 | 2761 |
F16 | 2342 | 2519 | 2331 |
F22 | 1945 | 1991 | 1956 |
F32 | 1467 | 1495 | 1480 |
F40 | 1275 | 1275 | 1264 |
実写確認
遠景解像力
テスト環境
- カメラ:Z 7(DXクロップ)
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO 200固定
- RAW出力
- Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
16mm テスト結果
中央
絞り開放から良好なシャープネス・コントラスト。絞ることで僅かにコントラストが改善しているように見えるものの、基本的には回折が始まるまでの絞り値全域で同程度の画質。F11付近から回折の影響が始まり、F16・F22で徐々に画質が低下する。
周辺
基本的に中央と同じ傾向・同じ画質であり、非常に良好。絞り開放から全く問題の無い画質であり、絞りは被写界深度の調整で使えばOK。
四隅
中央や周辺と比べると画質が僅かに低下しているように見える。とは言え、非点収差などが特に目立つわけでも無く、安定した描写に違いない。特に沈胴式のコンパクトなズームレンズの広角端における隅の画質としては評価できる水準。絞っても画質に大きな影響は見られないが、僅かにコントラストが改善する。
実写で確認
全体的に見て優れた画質。コンパクトで低価格なキットレンズとしては賞賛に値する性能であり、絞り開放から全く心配なく使うことができる。
24mm テスト結果
中央
16mmと同じく絞り開放から良好なシャープネス・コントラスト。絞ると僅かにコントラストが改善しているように見えなくもないが、基本的には同じ画質。F11までピークの画質を維持し、F16以降で回折の影響が強くなる。
周辺
中央とほぼ同じ画質で、絞りの傾向も同じ。とても良好で、特に言及すべき点が無い。
四隅
中央や周辺と比べると少し甘いものの、F8をピークとして絞ると少し改善する。絞り開放でも極端な像の乱れは無く、細かいことを抜きにすれば実用的な画質。
実写で確認
16mmと同じく絞り開放から快適に利用できる光学性能。ベストを尽くすのであればF8まで絞りたい。
35mm テスト結果
中央
相変わらず絞り開放から良好なシャープネスとコントラスト。開放のコントラストが少し低下したような印象を受けるものの、影響は極僅か。F5.6まで少し絞ると改善し、F8までピークの性能を維持し続ける。以降は回折の影響を受け、特にF22?F32はかなりソフトな画質となる。
周辺
中央と同じく絞り開放から良好な画質。絞ると僅かにコントラストが改善する点を除けば画質に大きな変化は見られない。やはり小絞りは回折の影響が強いので、出来れば使いたくない。
四隅
絞り開放から特に乱れのない安定した描写。シャープネスは良好で、絞りによる変化は少ない。ただし、中央や周辺と比べるとコントラストが少し低下しているようにも見える。
実写で確認
(画像にF値の誤記あり:F4.2→F5.3・F29→F32)
50mm テスト結果
中央
絞り開放から良好なシャープネスとコントラスト。他の焦点距離と比べると画質が僅かに低下したようにもみえるが、ほんの僅かであり、特に大きな問題ではない。F11を超えると回折の影響が強くなるので絞りの自由度は低い。
周辺
中央と同じく絞り開放から良好。他の焦点距離と比べてパフォーマンスが低下しているようには見えない。中央でそう感じたのはブラシーボだったか…?
とにかく、F6.3から快適に使えるのは間違いないが、やはりピークを維持できる絞り値は狭い。
四隅
おそらく、このレンズで最もパフォーマンスが低下するポイント。絞り開放から像の乱れこそないものの、ディテールが溶けて解像感が低い。F11?F16でコントラストが改善するものの、中央や周辺の画質とトレードオフになるのが悩ましい。
実写で確認
隅の画質に拘らなければ望遠の50mmでも良好な画質であるのは確か。低価格で小型軽量レンズの望遠端としては健闘している。
撮影倍率
16mm・24mm・35mm・50mmで、それぞれ最短撮影距離で撮影したところ水平の長さは「19cm」「12.5cm」「9cm」「10cm」となった(被写界深度が深いので、正確にピントの山を捉えているかどうかは不明)。ニコンDXクロップ時のセンサー横幅は約23.5mmなので、それぞれ撮影倍率は「0.12倍」「0.18倍」「0.26倍」「0.23倍」。公式仕様表の最大撮影倍率は「0.2倍」なので、思ったよりも寄れる印象あり。
撮影倍率が高いのは望遠側で、広角側は必要十分。まぁ、広角側で寄れても使い辛いので(ワーキングディスタンスが短すぎる)、望遠側で寄れる仕様は使い勝手が良い。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認
16mm
周辺部が僅かに近側へ寄っているように見えるものの大きな問題は無し。遠景解像のテスト結果からも分かるようにピント全域で像面湾曲の影響は小さい。
24mm
16mmと同じく特にこれと言った問題は無し。
35mm
広角側と比べて周辺部のピント位置が遠側へ移動しているように見えるものの、実写で問題となることは無いはず。
50mm
35mmと比べてさらに影響は強くなるものの、実際のところは軽微。ただし、遠景解像でもF6.3はこのレンズで最も甘くなるポイントなので、ひょっとしたら影響はあるのかもしれない。とは言え、絞れば改善するレベル。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
16mm
絞り値全域で良好に補正されている…ように見えるものの、Adobe Lightroom Classic CCはニコンZカメラのRAWに格納されているレンズプロファイルを自動的に適用しているので注意が必要。特に歪曲収差と倍率色収差は積極的にソフトウェア補正されている。まずはLightroomで現像した作例を掲載し、最後にプロファイルが適用されないRAW Therapyにて絞り開放のRAWファイルを現像する。
RAW Therapyの結果を見ると、Lightroomの結果よりも僅かに色づいているのが分かる。コントラストが強いシーンではさらに目立つ可能性あり。とは言え、結果は良好と言える肯定的なものであり、自動補正も適用されるので問題視する必要は全くない。
24mm
16mmと同様、Lightroomで現像した作例は絞り値全域で全く問題が無い。
実際は僅かに色づきが発生しているものの、それでも沈胴機構のコンパクトな標準ズームとしては非常に良好なパフォーマンス。残存する倍率色収差は最小限で、補正による画質への影響はほぼないはず。
35mm
Lightroomで現像した結果は広角側と同様。問題が全くない。
35mmの結果は24mmよりも少し良好で、光学的な補正だけでも十分に機能するレベル。非常に良好な補正状態。
50mm
手ごろな価格のキットズームレンズではウィークポイントとなる望遠端。しかし、このレンズは他のズームレンズと同じく良好な状態を維持している。
RAW Therapyの結果は非常に良好で色収差はほぼ皆無。廉価ズームの望遠端としては非常に良好な結果でケチのつけようがない。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
16mm
極僅かに色づきがあるものの、ほとんど問題とならないレベル。さらに1?2段絞るとことでほぼ完璧に解消する。
24mm
やはり薄っすらと色づいているように見えるものの、影響は非常に穏やかで無視できるレベル。F5.6?F8まで絞ると完璧に抑えることが可能。
35mm
他のズームレンジと同じく僅かな色付きのみ。
50mm
他のズームレンジと異なり、僅かな色付きも見られない。絞り開放から完璧であり、ケチのつけようがない。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
今回はこのズームレンズで最もボケが大きくなる「50mm F6.3」を使用しています。
後ボケが少し滑らかな描写であるのに対し、前ボケは少し硬めで騒がしく見える。この傾向はボケが大きくなっても同様。「16-50mm F3.5-5.6」のレンズで前ボケを入れる機会は少ないと思われるので、このバランスは適切と思われる。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
16mm
フレームの大部分で口径食の影響は少なく、絞り開放からほぼ円形を維持しているのはGood。ただし、非球面レンズの影響が強いのか玉ボケの内側は決して滑らかな描写とは言えず、かなり騒がしい印象。これは絞って改善するような性質のものではなく、基本的にボケが小さく粗が見えなくなるまでは騒がしさが続く。
24mm
16mmと比べると口径食が強く現れるようになる。これはF5.6まで絞ると大部分が改善するため、気になる場合は少し絞るのがおススメ。玉ボケ内側の描写は16mmと同じく「滑らか」と評価するにはほど遠い結果であり、あまり使いたくない。
幸いにも球面収差はまずまず良好に補正されており、極端な2線ボケの兆候は見られない。
35mm
24mmと同じく口径食は強めだが、F5.6?F8にかけて絞りによる改善が可能。
やはり玉ボケは決して滑らかとは言えない描写で、(このカテゴリで)おすすめできるような代物ではない。
50mm
口径食の強度は24mm・35mmと同じで、特に強くも弱くもない印象。
内側の描写は他の焦点距離と同じで、かなり騒がしい。
ボケ実写
50mm F6.3 2m
ボケは十分に大きいものの、決して滑らかな描写とは言えず、2線ボケの兆候も見られる。色収差による色づきが無いのは不幸中の幸いだが、積極的に使いたい描写でないのは確か。
絞ると2線ボケの兆候が緩和するものの、ボケ量が少なくなるのは悩ましいところ。
50mm 1m
撮影距離が短くなるとボケ質が少し変化し、2線ボケの傾向が弱くなる。中央の広い範囲は滑らかな描写で、実用にも耐えれそう。絞ると中央付近が少し騒がしくなるので、出来れば絞り開放を使いたい。
50mm 30cm
被写体に接近すると、さらにボケが大きくなり、フレームの大部分は滑らかなボケに見える。ただし、やはり玉ボケの描写が粗いので、コントラストが強い場合は騒がしく見える可能性あり。背景の点光源や木漏れ日などは出来る限り回避したいところ。
16mm
撮影距離ごとのボケ
このズームレンズで最もボケが大きくなる「50mm F6.3」で撮影。それでも十分なボケを得るには被写体にグッと近寄る必要があり、ポートレートでボケを得たいのであればバストアップ程度までは寄りたいところ。とは言え、玉ボケがお世辞にも良質とは言えないので、撮影シーンによってはボケが小さいほうが良い場合もありそう。ケースバイケース。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
16mm
諸収差の補正で最も妥協しているのが歪曲収差。この16mmは光学的に見ると目立つ樽型歪曲であり、格納されているレンズプロファイルによって自動的に補正される。これは撮影時もリアルタイムで補正されるので、実際にこの歪曲を目の当たりにすることは無い。(RAW Therapyなどプロファイルが適用されないRAW現像ソフトの場合は注意が必要)
24mm
16mmとは打って変わって中程度の糸巻き型歪曲となる。やはり通常は事前に補正されるので、この歪曲収差を目の当たりにすることはまずない。無補正でも直線を含まない撮影であれば問題ないレベル。
35mm
24mmよりも強めの糸巻き型歪曲が発生。ここまで強いと一般的な撮影でも補正を適用したいと感じる場面が多い。幸いにも、基本的には自動で補正されるので心配する必要は無い。
50mm
さらに強めの収差となるかと思いきや。35mmよりも収差は小さく、24mmと同程度。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
16mm(最短撮影距離・無限遠)
撮影距離による変化は目立たず、基本的に一定。絞り開放付近は隅に少し目立つ光量落ちが発生しているものの、F5.6まで絞るとワンランク改善する。ただし、それ以降は絞ってもあまり変化しないので、光量落ちが気になる場合はヴィネッティング補正を適用しておくべき。
24mm(最短撮影距離・無限遠)
16mmと比べて周辺部の光量落ちは緩和しているものの、隅の暗さは残っている。F5.6まで絞ると無限遠側で解消するが、最短撮影距離側ではしつこく残る。通常は無限遠側で周辺減光が強くなる傾向があるので意外な結果。
35mm(最短撮影距離・無限遠)
光量落ちの影響は極僅かで、絞り開放からほぼ問題なし。24mmと違い、無限遠側でわずかに光量落ちが強い。
50mm(最短撮影距離・無限遠)
35mmと同じく周辺減光の問題はほとんど見られない。
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
実写で確認
16mm
極端に目立つわけではないものの、いくらか収差が残存している。絞っても急速には改善しない。
24mm
16mmとは打って変わって絞り開放から良好なパフォーマンスを発揮。点光源を入れた撮影でも気軽に絞り開放を使っていける。
35mm
24mmと同じく絞り開放から問題ナシ。
50mm
24mmや35mmと同じく問題は見当たらない。
逆光耐性・光条
16mm 中央
NIKKOR Zレンズと言えば逆光に強いモデルが多いものの、このレンズは正面の強い光源には少し弱い。画質が破綻するほではないものの、広い範囲でフレアの影響を受け、目に付くゴーストも複数発生している。絞るとフレアが改善…するわけでもなく、ゴーストが顕在化し、センサー面の反射(正確にはカラーフィルター)と思われるRGBも目立つようになる。
16mm 隅
光源を隅に配置した場合は打って変わって非常に良好。フレアは良く抑えられ、ゴーストは全く発生していない。補足しておくと、露出設定は光源を中央に配置した時と全く同じ。
もし仮にフレアやゴーストが問題になったとしても、光源の位置をずらすことで簡単に回避可能。
50mm 中央
16mmと同じく光源周辺に強いフレアが発生し、複数のゴーストも目立つ。絞ることでゴーストは低減するものの、フレアと光条が酷いことになるので、お世辞にも画質が改善したとは言えない。
50mm 隅
16mmと比べるとフレアが少し強くなるものの、影響する範囲は狭く、心配するほどの問題ではない。小絞りを使うとゴーストが僅かに発生するが、回折の影響(F8以降)を避けるようなシーンでは心配無用。
光条
このレンズの絞り羽根は7枚構成で、絞った際に発生する光条は14本となる。
光の筋はF11付近から徐々に発生し始めるが、すぐに回折の影響が強くなりシャープな描写とはならない。解像性能との両立が難しく、このレンズに光条を求めるのは難しい。
結論
肯定的見解
ココがポイント
- 小型軽量で携帯性・収納性が良好
- 耐候性に配慮した設計(外装・光学設計)
- 低価格ながら滑らかなコントロールリング
- 高速で静かなオートフォーカス
- 実用的な撮影倍率
- まずまず良好なフォーカスブリージング
- ズーム全域で安定した近接解像性能
- ズーム全域で安定した遠景解像性能
- 色収差の問題が僅か
- 比較的滑らかな後ボケ
- 口径食の影響が少ない
- 広角以外は穏やかなコマ収差
- 広角以外は穏やかな周辺減光
- フレーム周辺部やフレーム外の逆光に強い
小型軽量で低価格なキットズームレンズとしては非常に良好な光学性能を備えている。解像性能についてこれと言った弱点は存在せず、諸収差における欠点はカメラやソフトウェアでの補正が可能。AFは静かで高速に動作し、ブリージングも良く抑えられている。全体的に見て卒なくこなす便利なズームレンズに仕上がっており、Zカメラのエントリーレンズとしては打ってつけの一本。
批判的見解
ココに注意
- 全体的にプラスチッキー
- 大口径Zマウントのため直径が大きい
- 46mmフィルターの使い回しが難しい
- レンズフード別売り
- パワーズームではない
- 玉ボケが非常に粗い
- 16mmで顕著な樽型歪曲(普段は自動補正で目に見えない)
- ズーム中間で目立つ糸巻き型歪曲(普段は自動補正で目に見えない)
- 広角側で周辺減光が少し目に付く
- フレーム中央付近の逆光に弱い
- 絞っても綺麗な光条とはならない
いくつか欠点として挙げたものの、大部分は「安価なキットズームレンズ」としては予想の範囲内であり、許容すべきポイント。本当に気を付けたい部分は「粗が目立ちやすい玉ボケ」のみであり、他の光学的な要素は許容範囲内か修正可能なものばかり。
敢えて言えばソニーや富士フイルムの競合レンズとは異なり、電動ズームに対応していないので、動画撮影時の滑らかなズーム操作が難しいのは留意したい。
総合評価
キットズームレンズとしては非常に良好な仕上がりであり、ベテランユーザーでも満足のいく光学性能に仕上がっている。玉ボケの粗っぽい描写には目を瞑る必要があるものの、このレンズで玉ボケが目立つシーンはそう多くないはず。
併せて検討したいレンズ
2021年8月現在、このレンズに取って代わる競合モデルは存在しない。一眼レフ用「AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR」をアダプター経緯で使うことは可能。ただし、価格やサイズ、そして光学性能を考えると、このレンズを差し置いて一眼レフ用レンズを使う理由が見つからない。
ニコンが開発発表している「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」が登場した暁には要検討。比較して大きく重く、携帯性や収納性は見劣りするものの、幅広いズームレンジは魅力的。
購入早見表
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR ブラック | |||
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NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR シルバー | |||
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作例
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