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RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビュー 完全版

このページではキヤノン「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」のレビューを掲載しています。

RF24-50mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろなフルサイズ対応レンズ
サイズ 非常に小型
重量 非常に軽量
操作性 シンプルだが機能的
AF性能 必要十分
解像性能 近距離以外は良好
ボケ 接写時は滲むようなボケ
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 ほぼ補正必須
逆光耐性 キヤノンズームの中では良好
満足度 手ごろな価格の高性能キットレンズ

評価:

手ごろな価格の高性能キットレンズ

EOS R8のキットレンズとして入手できる小型軽量で手ごろな価格の標準ズーム。光学性能には妥協が必要かと思いきや、全体的にバランスが良く、高水準にまとまっています。ズームレンジの狭さや開放F値が問題なければ、長く使えるコンパクトなレンズとなるはず。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 背景はぼかせない
子供・動物 24-50mmで問題なければ
風景 均質性の高い解像性能
星景・夜景 良好だが明るいレンズではない
旅行 携帯性の高さが魅力だが防塵防滴ではない
マクロ 接写性能が高いわけではない
建築物 歪曲収差は補正必須

まえがき

2023年にEOS R8のキットレンズとして登場。標準域をカバーするズームレンズとしては6本目となり、24mmから50mmまでのショートズームながら、沈胴構造を採用したコンパクトなレンズサイズが特徴。さらにフルサイズ用の標準ズームとしては最も手ごろな価格を実現しており、気軽に携帯する標準ズームに最適と言えるでしょう。

レンズの仕様
発売日 2023年4月下旬 初値 45,342円
マウント RF 最短撮影距離 0.3m(24mm)
0.35m(50mm)
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 0.11倍(24mm)
0.19倍(50mm)
焦点距離 24-50mm フィルター径 58mm
レンズ構成 8群8枚 手ぶれ補正 4.5段分
開放絞り F4.5-6.3 テレコン -
最小絞り F22-32 コーティング 不明
絞り羽根 7枚
サイズ・重量など
サイズ φ69.6mm×58mm 防塵防滴 -
重量 210g AF STM
その他 沈胴構造
付属品
キャップ

光学倍率は約2倍と低く、広角24mmから標準50mmまでをカバー。70mmや105mmの中望遠~望遠域を使えないため、遠くの被写体やクローズアップには不向きなレンズです。撮影倍率もズーム全域で高いとは言えず、(スペックだけで言えば)あくまでも携帯性と価格を重視した際に選ぶレンズとなっています。小型軽量ながら光学手振れ補正を搭載しているため、ボディ内手振れ補正を搭載していないコンパクトサイズのEOS R8やEOS RPと特に相性が良好。

価格のチェック

単体での売り出し価格は45,342円。ニコンやソニーの競合製品と同程度の価格設定となっています。さらにEOS R8のレンズキットとして入手する場合は約3万円程度と非常に安価。フードは付属していないので、追加で購入する必要あり。小型軽量で安価な標準ズームがどのような光学性能を備えているのか、今後のテストで明らかにしていきたいと思います。

RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

EOS R8のレンズキットとして入手したため、レンズ専用の外箱や説明書はありません。レンズの付属品は前後のキャップのみ。レンズフードは付属していないので、必要であれば別途購入しておく必要があります。

外観

RFレンズらしいデザイン・質感。全体的にプラスチックパーツを使用していますが、剛性に問題は感じず、極端な安っぽさはありません。ただし、高級感もありませんが。そして「非Lレンズ」の中でも少し高めのレンズ群と比べると僅かにプラスチッキーです。これが素材の問題なのか、塗装の問題なのか不明。

コントロールリングとズームリングはどちらもプラスチック製。キヤノンのロゴ以外の表示はプリントで、加工が施されているのはCEマークなど消えてはいけないもののみ。

ハンズオン

フルサイズ用の標準ズームレンズとしては非常に小さく、軽量です。他社を見渡せば似たような製品が存在するものの、キヤノンユーザーとして、このようなサイズの標準ズームを利用するのは初めて。

前玉・後玉

レンズ全面には反射を抑えるためのグレーでレンズ名やフィルター径が印字されています。反射した光がフィルター装着時に影響受けないとも限らないので、このようなグレー塗装は好ましい。比較してニコンは明るめに印字されています。

フィルター径は58mm。キヤノンレンズは数あれど、58mmフィルター径を採用したモデルはそう多くありません。対応製品も古いEFレンズが多く、RFレンズで58mmフィルターを共有するのは現状で難しい。高価なC-PLやNDフィルターはステップアップリングなどで対応したほうが良いかもしれません。

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レンズマウントはプラスチック製で4本のビスを使って本体に固定されています。プラスチックマウントは賛否両論あると思いますが、個人的にプラスチック製で不便と感じたことはありません。もちろん、金属製レンズマウントであることに越したことはないと思いますが…。

光学系最後尾のレンズは沈胴構造でマウントギリギリまで格納されます。フランジバックの短いミラーレスだからこそ実現した設計と言えるでしょう。また、格納状態から24mmの使用時までレンズを展開しても、最後尾のレンズはマウント付近に配置されています。フレアカッターは見当たらず、逆光時にどのような影響が発生するのか気になるところ。

フォーカス / コントロールリング

フォーカス操作とコントロール操作を兼用するリングをレンズ先端に搭載。材質はプラスチックで、Lレンズではコントロールリングに施されるタイプのローレット加工が施されています。ただし、回転時にクリック感はなく、無段階で滑らかな操作が可能。回転動作は緩すぎず、硬すぎず、電子制御のリングとしては適度な抵抗感だと思います。フォーカス操作時のストロークはカメラ側で調整可能。リニアレスポンス時は180度で接写から無限遠まで操作できます。ノンリニアレスポンス時にゆっくり回転すると360度ほど(応答性は初期設定)。

ズームリング

プラスチック製のズームリングを搭載。コントロールリングとは加工が異なり、ファインダー越しでも触感で識別可能。リングは沈胴時のポジションから、24mm・28mm・35mm・50mmまで回転します。沈胴時と24mmの間に物理的な固定手段はなく、クリック感と強めの戻り止めで誤操作を防止。24mmから50mmまでは適度な抵抗感で滑らかに回転します。途中で抵抗感が変化することもなく、動画撮影でも滑らかなズーム操作が可能。

沈胴時から24mmまでリングを操作すると、内筒が前方へ3cmほど伸びます。24mmで最も長く伸び、40mm付近で最も短く、50mmで再び少し伸びます。内筒はプラスチック製で、伸ばした際のぐらつきは無し。

F値の変動

このレンズは焦点距離によって絞り開放F値と最小絞りのF値が変動します。変動するタイミングは以下の通り。

  • 24mm:F4.5-F22
  • 25mm:F5.0-F22
  • 27mm:F5.0-F25
  • 32mm:F5.6-F25
  • 34mm:F5.6-F29
  • 40mm:F6.3-F29
  • 43mm:F6.3-F32

開放F値と最小絞りが変動するタイミングが異なるようです。

スイッチ類

新デザインの「AF/MF/コントロール」スイッチを搭載。従来の非LレンズはAF/MFスイッチが省略され、リングの機能を変更する「フォーカス / コントロール」切替スイッチのみでした。このレンズはAF/MFスイッチと統合したデザインとなり、省スペースながら効果的な操作が可能。中間の「コントロール」に合わせるには力加減の慣れが必要ですが、そこまで難しくありません。個人的に、このデザインはとても良いと感じています。既存レンズのRF50mm F1.8やRF16mm F2.8でも採用してほしかったデザイン。

レンズフード

別売りレンズフード「EW-63C」を購入。このレンズの登場に合わせてリリースされたフードではなく、APS-C一眼レフ用交換レンズ「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM」のために作られたフードです。登場から既に時間が経過しており、社外製の互換品も多く出回っています。純正にこだわらなければ安く手に入れることが可能。

装着例

EOS R8に装着。フルサイズとは思えないほど小型軽量で、携帯性・機動力の高い組み合わせ。フルサイズを気軽に携帯したい時に面白い選択肢となりそう。カメラ側のコントロールが少ないEOS R8のようなカメラでも素早くAF/MFを切り替えられるのがGood。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカスレンズはステッピングモーター駆動で動作します。NanoUSMや他社のリニアモーター駆動ほど高速ではなく、大きなピント移動を伴う際は少し遅め。とは言え、実写でフォーカス速度を不満と感じることが無い程度には高速です。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

広角側はとても良好に抑えられていますが、ズーム中間域(35mm)でやや目立つようになり、望遠端の50mmで最も目立ちます。とは言え、目に付くのは50mm付近のみで、広角や準広角域では問題と感じない程度によく抑えられています。

精度

EOS R8やEOS R5と組み合わせた限りでは特に問題なし。フォーカスブリージングが抑えられているので、周辺部を使ったAFでも動作が不安定とならず、接写時も良好な精度を維持しています。

MF

前述のとおり、使い勝手のよいフォーカスリングで操作でき、ボディ側のピーキングやフォーカスガイドを利用可能。拡大機能を使わなくても簡単に精度の高いピント合わせが可能です。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5
  • 交換レンズ:RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズプロファイル オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

24mm

解像性能のピーク値は単焦点レンズや高級なズームレンズと比べると低めで、高解像センサーを十分に活かせるものではなありません。遠景の解像テストと比べるとパフォーマンスが低下している印象を受けますが、それでもまずまず良好な結果。特に広角レンズの近距離チャートテストとしては一貫性のある解像性能は注目。

中央

絞り開放から良好ですが、絞るとコントラストがわずかに改善します。ただし、細部の解像性能が向上することはありません。

周辺

中央と比べると少しソフトな結果となり、倍率色収差の影響も少しあり。絞っても色収差の影響は改善しませんが、コントラストが向上して見かけ上の切れ味が増している印象。

四隅

周辺部と比べて顕著な落ち込みはありませんが、倍率色収差の影響がさらに強くなります。チャートテストでの数値は低下しているものの、簡単に修正できる色収差の問題であり、過度に心配する必要はありません。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.5 3527 3368
F5.6 3809 3530 2951
F8.0 3891 3735 3218
F11 3871 4038 3104
F16 3847 3735 3664
F22 3068 3210
実写確認

28mm

24mmと比べると周辺部や隅の画質が向上。絞り開放からフレーム全域で一貫性の高い画質が得られます。EOS R5でのテストとしてはピーク値が低めとなるものの、絞り全域で安定感のある光学性能。

中央

中央は24mmと似たような傾向が続きます。絞り開放のみ球面収差の影響かコントラストが低下するので、少し絞ったほうが良好な結果を期待できます。

周辺

中央と同じく開放付近は少しソフトな画質。ピークの結果を得るにはF11まで絞りたいところですが、F8でもそこそこ良好な結果が得られます。

四隅

周辺部と比べて画質の顕著な低下はなし。周辺部と同じくピークはF11ですが、F8でも良好な結果。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.0 3596 3414 3202
F5.6 3635 3374 3365
F8.0 4098 3860 3438
F11 3852 3852 3673
F16 3940 3850 3490
F22 3164 3116 3019
F26 2886 2955 2967
実写確認

35mm

広角側と比べるとフレーム全体の均質性が崩れるものの、それでも中央から広い範囲で良好な結果を得ることができます。理想的にはF8~F11あたりの絞り値を使うのが良し。

中央

引き続き中央は良好な結果が得られます。絞り開放のコントラストのみやや低め。

周辺

24mmや28mmと比べると画質は低下傾向。低価格な小型軽量レンズとしては健闘していると思いますが、抜群の性能ではありません。ただし、絞ることで画質の向上が期待でき、F8-F11まで絞れば良好な結果を得ることができます。

四隅

フレーム隅で顕著な低下はありません。周辺部と比べると少しソフトな描写ですが、F11-F16でしっかりとした結果を得ることができます。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 3718 3341
F8.0 4073 3468 3329
F11 3955 3952 3496
F16 3502 3524 3496
F22 3029 3066 2993
F29 2711 2788 2634
実写確認

50mm

望遠端でも中央や周辺部では良好な結果を得ることが可能。隅も絞ることで改善しますが、F11~F16くらいまでは絞りたいところ。

中央

望遠端まで中央は良好な結果が続きます。やはり絞り開放はコントラストが低下するものの、F8以降では改善します。

周辺

24mmから35mmまでと比べると顕著な画質低下が見られます。ただしピントの芯はシャープで、絞るとコントラストが徐々に改善します。理想的にはF16付近でピークとなりますが、F11も良好な結果。

四隅

このズームレンズで最も画質が低下するポイント。と言っても周辺部より少しソフトなくらいで、致命的な弱点とは言えません。絞ると良像と呼べるくらいまでは改善します。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 3364 3232 2476
F8.0 3862 3603 2965
F11 3686 3656 2996
F16 3706 3534 3375
F22 3906 2966 2820
F32 2204 2276 2199
実写確認

競合レンズとの比較

ニコン「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」と比較。手振れ補正搭載のキヤノンRFも健闘していますが、ピークの数値や周辺部の解像性能差でニコンが有利。特にニコンの24mmや28mmの高い均質性は注目に値します。遠景の解像テストではここまでの差はないと思いますが、近距離では少し差が出るようです。

遠景解像力

テスト環境

  • カメラ:EOS R5
  • レンズ:RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUMWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAW
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

24mm

歪曲収差こそ巨大で、イメージサークルがフルサイズセンサーに足りていないものの(諸収差編で紹介予定)、解像性能はとても良好。中央から隅まで均質性の高い、良好な解像性能を発揮。抜群のコントラストではないかもしれませんが、繊細でシャープな結果が隅まで続いています。絞りによる変化はほとんどなく、回折の影響を受けるまでほぼ一定。

中央

絞り開放からシャープで良好な結果。球面収差や軸上色収差の影響によるコントラストの低下は見られず、開放からピークの性能と言えるでしょう。絞っても顕著な変化は見られません。

周辺

中央と似たような結果が得られます。小型軽量で低価格な標準ズームの24mmとしては優れた結果。色収差の影響も目立たず、非点収差やコマ収差による画質の粗も少ないように見えます。

四隅

絞り開放付近こそ周辺減光の影響が見られるものの、解像性能はF4.5から良好。色収差の影響も少なく、非点収差やコマ収差によるコントラストの低下も目立ちません。

28mm

基本的に24mmと同じく非常に良好。中央から隅まで一貫性のある解像性能を発揮し、絞り開放から回折の影響があるまで安定した結果が得られます。コントラストの高い、パンチのある解像感ではありませんが、細部まで描き分けられる繊細な描写に違いなし。

中央

24mmと同じくF5.0の絞り開放から、回折の影響が発生するF11まで変化のない結果が得られます。絞りによる変化はなし。あるのかもしれませんが、少なくとも4500万画素のEOS R5で知覚するのは難しいレベル。

周辺

中央と同じくらい良好な結果が得られます。F8まで絞ると僅かに改善したようにも見えますが、じっくり見比べてみないと分からないような差です。

四隅

周辺減光の影響こそあるものの、F5.0から非常に良好。非点収差やコマ収差が良好に補正されているのでしょうか。中央や周辺部と同程度の解像性能が得られるように見えます。若干の倍率色収差があるものの、このクラスのキヤノンレンズとしてはよく抑えられているように見えます。

35mm

広角側と同じく安定したパフォーマンスで、隅まで均質性の高い結果が得られます。解像度のピークが若干落ちたかな?という気がしないでもありませんが、誤差の範囲内。

中央

これまで通り、絞り開放から良好な結果が得られます。絞ることでほんの少しコントラストが改善したようにも見えますが、誤差の範囲内。F11くらいまで似たような結果を得ることができますが、F16以降は回折の影響あり。

周辺

引き続き良好な周辺解像。細部までよく解像しており、非点収差などによる描写の甘さは特にありません。小型軽量な標準ズームとしては驚きの性能。

四隅

35mmまでズームしても隅のパフォーマンスに顕著な低下は見られません。絞り開放から良好な解像性能であり、色収差やコマ収差などによる影響も目立たない。キヤノンらしからぬ廉価ズームレンズ。

50mm

望遠端ではさすがに性能も低下するだろう…、と思いきや良好なパフォーマンスが続きます。絞り開放のF6.3から隅まで良好な結果を得ることが可能。使える絞り範囲は狭いものの、性能に大きな欠点は無いように見えます。

中央

他のズーム域と同じく絞り開放から良好。F11から回折による僅かな低下が見られるので、ベストを尽くすのであればF6.3-8まで。

周辺

F8まで絞るとコントラストが僅かに改善するようにも見えますが、やはり誤差の範囲内。絞り開放から良好な結果を得ることができ、絞っても大きく改善することはありません。

四隅

望遠端の隅でも絞り開放から何の問題もなく使用可能。安い50mm F1.8をF6.3まで絞るより良好かもしれません。

撮影倍率

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

24mm

未補正のRAWでわずかに残存していますが、キットレンズとしては良好に補正されています。画質への影響も少なく簡単に修正することができるでしょう。

28mm

24mmと同じく良好な補正状態です。

35mm

広角側と比べて、さらに良好な結果。

50mm

35mmと比べると少し目立ちますが、それでも良好なパフォーマンスを発揮。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

24mm

ピント面に若干の色づきが見られるものの、特に大きな問題はありません。

35mm

広角側と同じく若干の色づきあり。

50mm

24mmや35mmと同程度の収差。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

50mm F6.3を使用したところ、後ボケが滲むように柔らかくボケる一方、後ボケは輪郭が強調される硬い描写。50mm F6.3で前ボケがフレームに入る可能性が低いことを考慮するとバランス良好と言えるでしょう。あくまでもこれは接写時の傾向であり、撮影距離が長くなると前後に質感の差がないニュートラルな描写へと変化します。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

24mm

24mmは最短撮影距離が長いためボケを大きくすることが出来ません。非球面レンズを使用している割には滑らかな描写ですが、球面収差の影響か縁取りが硬い玉ボケとなっています。24mm F3.5のレンズとしては口径食の影響が強め。

28mm

基本的に24mmと同じ傾向が続きます。プラスチックモールド非球面レンズ(PMo)のためか、玉ねぎボケの兆候は無し。

35mm

相変わらず縁取りは強いものの、ボケが小さいため目立ちません。

50mm

このレンズで最もボケが大きくなるポイント。他の焦点距離と同じく玉ボケの内側は滑らかですが、強めの縁取りが残念。口径食の影響により隅に向かってボケが変形します。絞りにより口径食は改善。

ボケ実写

24mm

24mm F3.5でも接写することで被写界深度を使った分離が可能。この際のボケはキットレンズながら滑らかな描写で、フレーム端もまずまず良好。縁取りは硬いものの、色収差の影響が少なく、悪目立ちはしていないように見えます。

撮影距離が少し長くなっても同じ傾向が続きます。小型軽量なキットレンズとしては評価できる描写。

撮影距離がさらに長くなると、球面収差の影響が変化。後ボケの縁取りがさらに硬くなり、特にフレーム周辺部の描写が騒がしくなります。絞ると改善しますが、ボケがかなり小さくなってしまうのが残念。

35mm

24mmよりもボケが大きく、接写時は全体的に滑らかな描写。これと言って指摘する部分はありません。

撮影距離が長くなるとフレーム端のハイライトが騒がしくなるものの、キットズームレンズの描写としては及第点以上。

撮影距離が長い場合も同じ傾向が続きます。

50mm

キットズームレンズとは思えないほど滑らかな後ボケが得られます。F11くらいまで絞っても良好な描写を維持。その後も絞り値全域で心地よい描写が続きます。

撮影距離が長い場合も特に欠点と呼べるようなポイントはありません。

引き続きキットズームレンズとしては良好な描写。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、絞り開放で撮影した写真が以下の通り。

24mm

24mm F3.5で人物を被写界深度で分離するのは難しい。少なくとも上半身からバストアップまで近寄る必要があります。この際のボケ質は悪くありません。背景と分離する場合の理想的は顔のクローズアップ。

35mm

24mmと同じく全身やひざ上で被写界深度の分離は難しい。上半身くらいまでは近寄って撮影することになります。ボケ質は全体的に良好。

50mm

望遠端でもF6.3の絞り開放ではボケが大きくありません。膝上くらいから少しずつボケ始め、バストアップで十分に浅い被写界深度となります。ボケ質はとても良好。

球面収差

少なくとも50mmの近距離では球面収差が残存しており、前後のボケ質で目に見える形で影響あり。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

24mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

未補正のRAWでは強い樽型歪曲に加え、四隅が真っ黒。これはレンズのイメージサークルがフルサイズセンサーをカバーしていないことを示しています。強めの歪曲収差を補正する流れで、四隅をクロップして引き延ばす前提の光学設計となっているように見えます。

28mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

24mmと比べると隅の減光が緩和していますが、それでも部分に改善しない黒部分が残っています。

35mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

35mmまでズームするとイメージサークルがセンサー端まで広がります。歪曲主査は相変わらず強め。

50mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

望遠端まで樽型歪曲が継続。ただし影響はズームレンジの中でもっとも少なく、未補正のままで使えなくもない。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

24mm 最短撮影距離

話がややこしくなるので今回はカメラ側で歪曲収差の補正のみを適したJPEGを使用。
(歪曲収差の補正までオフにすると顕著なケラレと混同してしまうため)

周辺減光のみに注目してみると、F4.5で非常に目立つ光量低下が確認できます。光学的に解消するには、少なく撮もF8まで、完璧に抑えたいのであればF11くらいまで絞る必要あり。

24mm 無限遠

無限遠側でも同程度の光量低下が発生します。高ISO感度と組み合わせると、光量補正でノイズが目立つ可能性あり。やはり光学的に抑える場合はF8くらいまで絞る必要があります。

35mm 最短撮影距離

24mmと比べるとやや良好な結果ですが、F値を揃えてみるとあまり変わりません。やはりF8くらいまで絞らないと影響が目立ちます。

35mm 無限遠

最短撮影距離と同じく強い光量低下が発生します。

50mm 最短撮影距離

24mmや35mmと比べると良好ですが、やはりF値を揃えると大きな変化はなし。

50mm 無限遠

最短撮影距離と同じ傾向。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

24mm

絞り開放からコマ収差の影響はほとんどありません。キットレンズながら良好な補正状態。コマ収差に限って言えば絞る必要が無いように見えます。

28mm

非点収差のような放射状の流れはあるものの、引き続き点光源の目立つ変形はありません。絞った際に筋状のフレアは原因不明ですが目立たない程度。

35mm

広角側と比べると点光源が僅かに非点収差の影響を受けているように見えます。悪くありませんが、絞ることにより改善の余地あり。

50mm

35mmよりも非点収差の影響は少ないですが、コマフレアのような変形が発生しています。2段ほど絞ると改善。点光源にこだわらなければF6.3でも十分な補正状態に見えます。

逆光耐性・光条

24mm 中央

全体的に見ると良好なパフォーマンスですが、光源の近くにフレアが発生しています。絞ることにより収束しますが、絞り全域で解消することはありません。キヤノンの標準ズームレンズの中ではかなり良好な部類だと思います。

24mm 隅

光源がフレーム隅にある場合は絞り全域で問題なし。やはりキヤノンの標準ズームレンズの中では非常に良好なパフォーマンスを発揮。

50mm 中央

望遠端ではフレアの影響が強くなるものの、全体が破綻するほどの大きな影響ではありません。RGBのフレアを除けばよく抑えられています。(光源周辺のRGBはセンサー面の反射となるため避けられない)

50mm 隅

光源を隅に配置すると、筋状のフレアがいくらか発生。絞ると収束して悪目立ちします。

光条

絞り全域でシャープな光条は発生しません。F8以降から光条のようにはなるものの、回折やシャッタースピードを犠牲にしてまで得たいと思う描写ではありません。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 低価格
  • 小型軽量
  • AF/CONTRO/MFスイッチ
  • 光学手振れ補正
  • 抑え気味のフォーカスブリージング
  • 均質性の高い解像性能
  • 良好な色収差補正
  • 接写時に柔らかい後ボケ
  • 良好なコマ収差補正
  • 逆光耐性

小型軽量で低価格なEOS R8のキットレンズですが、均質性が高く良好な解像性能をはじめ、電子補正込みで諸収差の補正状態が良好。キヤノン標準ズームの中では逆光の影響も受けにくく、バランスの良いレンズに仕上がっています。50mmを使った接写時のボケは柔らかく、動画撮影時は滑らかで静かなAFや光学手振れ補正が役に立ちます。

24-105mm F4 Lだとサンセットでゴーストが厄介だったものの、このレンズでは特に悩まされることなく撮影に集中できました。望遠側が50mmと短いものの、広角側が必要な場合は面白い選択肢になるのかなと思います。

悪かったところ

ココに注意

  • プラスチックマウント
  • 沈胴構造
  • 接写時に周辺部の画質が低下
  • 最短撮影距離と撮影倍率が平凡
  • 広角側の極端な歪曲収差
  • 広角側の目立つ周辺減光
  • 光条がいまいち
  • ズームレンジが狭い
  • 開放F値が大きめ
  • レンズフードが別売り

光学的に最も気を付けるべきは極端な歪曲収差と周辺減光ですが、どちらも自動的に補正されます。プラスチックマウントや非防塵防滴、沈胴式など構造上のデメリットがいくつかあるものの、このような価格帯のレンズとしては予想できる範囲内に収まっています。

大前提として「24-50mmのズームレンジで満足できるか?」はよく考えたほうが良いでしょう。開放F値が大きく、接写性能もボチボチであるため、フルサイズらしい大きなボケは得にくいです。高解像センサーにも耐えうる良好な解像性能を備えているので多少のクロップでカバーするのも一つの手。

総合評価

満足度は90点。
小型軽量で低価格ながらバランスが良く高性能なズームレンズ。ややプラスチッキーで狭いズームレンジや大きな開放F値には注意が必要ですが、そのあたりが気にならないのであればおススメしやすいレンズに仕上がっています。特に見た目とは裏腹に均質性の高い解像性能は必見。

24-105mm F4 L IS USMと比べてどうか?
AF性能やズームレンジ、望遠側の開放F値などはF4 Lに軍配が上がります。105mm F4を使ったボケは50mm F6.3よりも遥かに大きく、使い勝手が良い。一方で逆光耐性はイマイチ、倍率色収差も部分的に目立つなど気になる側面もあります。24-50mmと比べると携帯性も悪く、価格は倍以上。

RF24-105mm F4L IS USM
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F4 Lと比べると小型軽量で低価格な24-105mm STM。ズームレンジは24-50mmよりも広く、接写性能が良好。解像性能は24-50mmほどではありませんが、少なくとも望遠側はF4 Lよりも良いと感じるポイントもあります。また、沈胴構造ではないので広角端でレンズを伸ばす必要が無いのも地味に便利。

RF24-105mm F4-7.1 IS STM
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購入早見表

RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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