このページではVILTROXの交換レンズ「VILTROX AF 33mm F1.4 STM」のレビューを掲載しています。
まえがき
VILTROX AF 33mm F1.4 STMのおさらい
レンズ概要
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- 対応フォーマット:APS-C
- 焦点距離:33mm
- 開放F値:F1.4
- 9群10枚(EDレンズ1枚)
- 電磁絞り・インナーフォーカス
- 金属構造
- STM駆動
- 270g
- ソニーE・富士フイルムX・キヤノンEF-M
VILTROX製のAPS-Cミラーレス用交換レンズです。VILTROX初となるAPS-C用AFレンズ3本のうちの一つであり、このレンズはフルサイズで言うところの50mmに相当します。
参考:VILTROX製AFレンズ
特にネイティブレンズが少ない富士フイルムXマウントでは貴重な大口径単焦点レンズの選択肢と言えるでしょう。F1.4のAFレンズは他に「XF35mmF1.4 R」のみ。
F2までのAFレンズを含めても「XF35mmF2 R WR・XC35mmF2」「Touit 1.8/32」しか存在しません。
レンズ構成は9群10枚で、EDレンズとHRレンズをそれぞれ1枚ずつ採用しています。「XF35mmF1.4 R」と比べてモダンで複雑な設計となっていますが、非球面レンズを使っていないのが特徴的。どのような描写となるのか気になる所ですね・
このレンズは口径が「F1.4」と大きく、明るさやボケ量でF1.8-F2のレンズより優れています。それにも関わらず、Amazonなどで3万円を切るリーズナブルな価格設定で入手できるのが魅力的。低価格なAFレンズながら、外装は総金属製のしっかりとした作り。フォーカスリングに加え、絞りリングも搭載しており、オートフォーカスはステッピングモーター駆動で静かに動作します。
このレンズがどのようなパフォーマンスとなるのか、これからじっくり確認してみましょう。
VILTROX AF 33mm F1.4 STMレビュー
Index
外観・操作性
箱・付属品
VILTROXらしい白を基調としたデザインで、中国レンズメーカーの中では比較的しっかりとした印象を受けます。VILTROXのロゴをはじめ、モデルネームや対応マウントを確認可能。
中には緩衝材に包まれたレンズ本体をはじめ、レンズフードやポーチ、説明書が付属しています。
外観
鏡筒はコントロールポイントを含めて総金属製の頑丈な作り。全体的にマットブラックの塗装が施された落ち着きのあるデザインです。EOS M用は何故かシルバーモデルのみ。個人的にシルバーは富士フイルムXマウントでこそ欲しかったところ。同価格帯の純正レンズの作りを考えると、「持つ喜び」は断然コチラが有利。
「C」のロゴが何を表しているのか不明、APS-「C」でしょうか?
ネームプレートはプリントでは無く凹凸のある立体的なデザイン。絞り値の表示は刻印です。プリントは「VILTROX」のロゴくらい。細部の意匠にもこだわりを感じます。
ハンズオン
金属外装のためかサイズを考えると密度の高い重量感があります。とは言え、重量は270gであり、大部分の富士フイルムカメラボディと組み合わせてバランスは良好。
前玉・後玉
フィルター径は52mmを採用。「XF35mmF1.4 R」「XF18mmF2 R」などと同じサイズのため使い回しが可能。前玉にフッ素コーティングを採用していると言った話は聞かないので、水滴や汚れが付着しそうな状況ではプロテクトフィルターの装着がおススメです。
このクラスのレンズとしては前玉が比較的フラットでメンテナンスはし易い。インナーフォーカス方式のため、前面が伸びたり回転することはありません。この点で「XF35mmF1.4 R」よりも使いやすい仕様。
金属製レンズマウントは4本のビスで固定されています。マウント部にはファームウェアアップデート時に利用するUSBポートあり。USBケーブルが付属していないので、別途用意する必要があります。
防塵防滴仕様のレンズでは無いため、レンズマウントにゴムシーリングはありません。とは言え、後玉はマウント部に固定されているため、レンズ内部やマウント面で空気が出入りする可能性は低い。
フォーカスリング
幅36mmの金属製フォーカスリングは滑らかに回転します。抵抗量は程よく、グリップも良好。
ピント移動量は回転速度に依存しないリニアな動作。全体の回転角は約270度ほどで、無限遠から1.0mまでが180度、残りの90で1.0mから最短撮影距離をカバーしています。5mから無限遠付近は回転角が非常に小さいため、遠景撮影時のMFは少し苦労するかもしれません。接写時は十分以上の回転角ですが、素早い操作には不向きと感じます。
絞りリング
0.6mm幅の金属製絞りリングはクリックレスで滑らかに回転します。抵抗量はフォーカスリングと同程度のため、誤操作の可能性が高い。個人的にはクリックタイプの絞りリングが良かったところ。「F16」と「A」の間のみ僅かなクリックが発生。
絞り値の目盛りは1/3段ごとに表示され、正確にカメラへ反映されます。
レンズフード
金属製のしっかりとしたレンズフードが付属します。中国レンズメーカーにありがちなねじ込み式フードでは無く、バヨネットタイプでしっかりと固定可能。ロックボタンはありませんが、誤って脱落する心配がない程にしっかりと固定できます。
金属製フードですが、内側には反射を予防する切り込みが入っています。日本のレンズメーカーではフェルト生地を張り付けるところですが、しっかりと加工されているように見えます。
標準単焦点用のレンズフードとしてはやや小さめで、遮光性は思ったほど良くありません。特にプロテクトフィルター装着時はフレアが発生しやすくなるので注意が必要。
装着例
X-T20と組み合わせた際のバランスは良好。大きすぎず、小さすぎずと言った印象です。インナーフォーカスレンズのためか、XF35mm F1.4 Rと比べて全長が少し長い。
AF
レンズ側のファームウェアは「Ver1.07」、X-T20は最新ファームの状態でテストしています。ステッピングモーター駆動のAFは静かに、そして高速に動作します。爆速というにはやや遅めですが、動作音がうるさいXF35mm F1.4 Rと比べると遥かに静かで滑らかな動作と言えるでしょう。フジ純正XF F2 WRレンズと比べるとAF速度はやや遅め。ピント面前後でウォブリングも目立ちます。リバースエンジニアリングのため、AF速度は妥協すべきポイント。ファームウェアアップデートでの改善が期待でき、「Ver1.08」ではAF-Cでの動作が改善しています。
ブリージングはそこそこ目立つので動画撮影で近接から無限遠へピントを移動する際は画角変化に気を付ける必要があります。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:X-T20
- 交換レンズ:VILTROX AF 33mm F1.4 STM
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- X-T20のRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
実写で確認するとF1.4で若干の甘さを感じるものの、数値上では絞り開放(F1.4)から全体的に「2500」を超える立派な結果となっています。「良像」というにはいくらかコントラストが弱いと感じるものの、解像性能に関して言えば良像と言っても過言では無さそう。
絞ってもあまり大きな変化はありませんが、F2.8付近で残存する収差が落ち着きワンランク上の画質へ改善します。このパフォーマンスがピークとなり、回折の影響を受けるF8~F11付近まで状態を維持。
特筆すべきは中央と周辺部の画質差が少ないこと。もちろん完璧にフラットと言うわけではありませんが、2万円台の大口径AFレンズとしては立派なパフォーマンスと感じます。
実写では像面湾曲の影響がわずかに残っているため、フラットな被写体をパンフォーカスに撮影するのが難しくなっています。少し絞って使うのがおススメ。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F1.4 | 2535 | 2581 | 2681 |
F2.0 | 2805 | 2659 | 2797 |
F2.8 | 3067 | 3189 | 2972 |
F4.0 | 3103 | 3189 | 2947 |
F5.6 | 3562 | 3084 | 2947 |
F8.0 | 3130 | 3031 | 2955 |
F11 | 3130 | 2945 | 2879 |
F16 | 2720 | 2847 | 2626 |
23mmと比べて解像性能のピークは高くないものの、絞り値全域で四隅まで安定したパフォーマンスは魅力的。とは言え、数値ほど描写性能に差は感じないはず。
実写確認
基本的に絞り開放付近は軸上色収差の影響でコントラストがいくらか低下しています。ポートレートなどでは柔らかい描写にプラスとなるかもしれませんが、解像性能とコントラストのピークを利用したいのであればF2.8まで絞るのがおススメ。それ以降はあまり改善しませんが、F16まで一貫したパフォーマンスを発揮しています。
遠景解像力
テスト環境
メモ
- 撮影日:2020-10-16 13:00・快晴
- Leofoto LS-365C
- Leofoto G4
- X-T20
- RAWをAdobe Lightroom Classic CCで現像
ーシャープネス0
ーその他初期設定
テスト結果
中央
絞り開放からまずまず良好ですが、球面収差や色収差の補正が完璧ではなく、僅かにハロっぽく低コントラストです。ピントの芯はしっかりと確認できるのでMF操作で大きな問題は感じません。どちらかと言えば、ライブビューの拡大倍率が小さい富士フイルムカメラボディに問題があると感じました。もう少し大きく拡大できれば…。
F2まで絞るとコントラストがいくらか改善し、F2.8までに解像性能は大きく向上します。ピークはF5.6前後。F11で回折の影響がいくらか見られるものの、まだ良好。F16まで絞るとソフトな描写となります。
周辺部
絞り開放付近は中央や四隅と比べて若干甘い描写。絞ると徐々に改善するので、できればF4までは絞りたいところ。ピークはF5.6?F8となり、F11もF4ほどの画質を維持。
四隅
解像性能に限って言えば周辺部よりも良好に見えます。ただし、倍率色収差の影響が残存していたり、若干ハロっぽい印象を受けるので、出来ればF2.8まで絞りたい。ピークはF4からF11付近まで。ここまで絞れば立派な解像性能とコントラストを得ることが出来ます。
作例
倍率色収差
遠景解像テストと同じく、近距離の解像力チャートテストを使っても倍率色収差は目立ちません。無補正でも特に気にならない水準。
軸上色収差
絞り開放でやや目立つ色ずれが発生します。大口径レンズ、特にVILTROXのような価格帯で軸上色収差の完璧な補正を求めるのは難しい。ここは妥協点と言えるでしょう。
軸上色収差は絞ると改善しますが、2段絞ったF2.8でもいくらか残存するのはマイナス評価。F4~F5.6まで絞ると解消します。
前後ボケ
一般的に重要となる後ボケは少し騒がしく、比較して前ボケはとても滑らかな描写です。これが逆であれば完璧だったのですが…。
ただし、このレンズは絞り開放のコントラストが弱めで、弱点と言うほど騒がしいボケにはなりません。
玉ボケ
非球面レンズを使っていないこともあり、玉ボケは非常に滑らかで綺麗。モダン設計のレンズは必ずと言っていいほど非球面レンズが入っており、ここまで滑らかな玉ボケにはならないのです。
口径食の影響はまずまず抑えられているので許容範囲内。1段絞るとほぼ解消しますが、2段絞ると絞り羽根の形状が見えてしまうので、F1.4~F2までを使うのがおススメ。
歪曲収差
標準大口径としては珍しい糸巻き型歪曲です。このクラスのレンズとしては歪曲収差が目立ち、ボディ内で補正できないため、直線的な被写体では問題となる可能性あり。
周辺減光
大口径レンズとしては比較的穏やかな光量落ち。絞り開放でもそこまで目立たず、F2まで絞るとほぼ解消します。
コマ収差・光条
絞り開放付近ではフレーム四隅に少し目立つコマ収差が発生します。F2まで絞ると大きく改善し、F2.8まで絞ればフレーム四隅の端まで解消。この収差が遠景解像に悪影響を与えているものと思われます。
光条はF5.6付近から発生し始めますが、F8を超えるとソフトな描写となります。
逆光耐性・光条
このレンズで最も気を付けたいポイント。モダン設計でしっかりとした光学系のレンズですが、コーティングの技術不足なのかフレアが発生しやすいです。逆光以外で大問題となることはありませんが、晴天の強い日差しや、フラッシュ・人工光源がフレームに入る場合は気を付けたほうが良いでしょう。
コストパフォーマンスの高い社外製レンズ
肯定的見解
ココがポイント
- 富士フイルムでは貴重なサードパーティ製レンズ
- F1.4のAFレンズながら非常に安価
- 金属外装の優れたビルドクオリティ
- 金属製の優れたレンズフード
- Micro USBポートでのファームウェアアップデート
- 絞りリング搭載
- インナーフォーカス
- 静かで滑らかな動作のAF
- 絞るとフレーム全体で高いシャープネス
- 穏やかな倍率色収差
- 前ボケがとても滑らか
- 玉ボケがとても滑らか
- 周辺減光が少ない
安いときは2万円台前半で買える大口径AFレンズとしては上々の結果だと思います。金属の外装やレンズフードをはじめ、絞った際の解像性能やボケの品質は価格以上の価値があると感じています。
オートフォーカスは完璧とは言えないものの、このカテゴリのレンズとしては快適に利用でき、さらに追加投資なしでファームウェアアップデートによるAF改善・互換性対応などのアフターサービスを受けることが可能。
批判的見解
ココに注意
- 絞りリングが無段階操作
- 防塵防滴非対応
- フォーカスリングの回転角が小さい
- 絞り開放がいくらかソフト・低コントラスト
- 軸上色収差が目立つ
- 後ボケが少し騒がしい
- 糸巻き型歪曲が目に付く
- コマ収差が目立つ
- 逆光耐性が悪い
価格帯を考慮すると妥協すべきポイントが多いですが、歪曲収差や周辺減光はボディ内補正を利用できないので、手動補正が必要となってくる点には気を付けておくと良いでしょう。特に直線的な被写体、フラットな被写体を撮影する時に注意。
逆光耐性がいくらか悪く、コントラストが低下する場合があるものの、まぁそれはそれで味のある低コントラストなのかなと。富士フイルムのフイルムシミュレーションとの相性は良いです。
総合評価
価格を考えると文句なし。開ければやや低コントラストで柔らかい描写を楽しめ、絞ればフレーム隅までしっかりと解像する大口径レンズを楽しめます。AFは普通に利用できるうえ、ファームウェアアップデートで互換性の更新も可能。
あわせて検討したいレンズ
XF35mmF1.4 R
純正大口径レンズ。VILTROXと比較すると絞り開放のヌケが良く、パンチのある描写を楽しめます。接写時は残存する球面収差でピント面が滲む柔らかい描写を楽しむことが可能。距離が離れるとシャープな描写となり、絞ればもちろんカリカリ。
面白いレンズですが、比較的設計の古いXFレンズなので、防塵防滴に対応しておらず、フォーカシングは繰り出し式で野暮ったい。特にレンズフードは逆さ付けに対応しておらず、使い辛い。
悪くはないけど、VILTROXとの価格差を埋めるほどの魅力があるか、と言うと微妙なところ。
XF35mmF2 R WR
F値は1段暗くなるものの、VILTROXよりもAFは高速。そして防塵防滴仕様。
思いのほかボケは滑らかで綺麗。解像性能はぼちぼち良好で、絞るとしっかりとしたシャープネスを得られます。
個人的には33mm F1.4推しですが、防塵防滴や高速AFが必要であればXF35mm F2も悪くない選択肢。
XC35mmF2
XF35mm F2の廉価モデル。安いときのVILTROXと同価格で購入可能ですが、外装はプラスチッキーで、絞りリングは非搭載。かなり割り切った外装のため、長期ユーザー向けとは言えないかも。
Touit 1.8/32
使ったことが無いので無評価。
海外の評価などを確認すると、良いレンズではありそうですが価格設定が悩ましい。
購入早見表
VILTROX AF 33mm F1.4 STM | |||
Amazon Fuji X | |||
Amazon EF-M | |||
楽天市場 | Amazon | キタムラ | Yahoo |
作例
関連レンズ
- EF-M32mm F1.4 STM
- E 35mm F1.8 OSS
- XF35mmF1.4 R
- XF35mmF2 R WR
- XC35mmF2
- 30mm F1.4 DC DN
- 35mm F1.2 ED AS UMC CS
- Touit 1.8/32
- SPEEDMASTER 35mm F0.95 II
- 7Artisans 35mm F1.2
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