このページではPERGEARの交換レンズ「PERGEAR 60mm F2.8 Macro 2X」のレビューを掲載しています。
このレンズのレビューについて
今回はPERGEARより正式発表前に無償提供されたレンズを元にテストしています。この際に金品の授受は発生しておらず、レビュー内容に関する干渉は一切なかったことを最初に言及しておきます。
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | MFマクロとしては一般的 | |
サイズ | 60mmマクロとしては大きい | |
重量 | 60mmマクロとしては重い | |
操作性 | マクロ域のストロークは良好 | |
AF性能 | MF限定 | |
解像性能 | 絞れば良好 | |
ボケ | 滑らかな後ボケは必見 | |
色収差 | 良好な補正状態 | |
歪曲収差 | 穏やかな糸巻き型 | |
コマ収差・非点収差 | マクロレンズとしては目立つ | |
周辺減光 | ほぼ問題なし | |
逆光耐性 | 何らかの対策が必要 | |
満足度 | マストでは無いが面白い選択肢 |
2倍マクロと柔らかい後ボケが光るマクロレンズ
- 2倍マクロ対応としては低価格
- APS-C用レンズとしては大きく重い
- フルマニュアルレンズ
- マクロレンズらしからぬ特性
長所と短所が明確に分かれている異色のマクロレンズ。等倍以上の高い撮影倍率を備え、絞れば均質性の高い解像性能を得ることが可能。絞り開放の光学性能は完璧から程遠いものの、厄介と感じる問題はそう多くない(逆光耐性くらい)。F2.8の描写はソフトだが、球面収差が残った柔らかい後ボケは検討する価値がある。
Index
まえがき
2021年に登場したPERGEAR製の中望遠マクロレンズ。APS-Cフォーマットに対応したミラーレス専用設計であり、富士フイルムX・ソニーE・マイクロフォーサーズマウントに対応。この価格帯としては珍しい2倍マクロに対応しており、フルサイズ換算で約3倍のクローズアップ撮影が可能(のはず)。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | X/E/MFT | 最短撮影距離 | 19.1cm |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 2倍 |
焦点距離 | 60mm | フィルター径 | 62mm |
レンズ構成 | 8群11枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F16 | コーティング | マルチ |
絞り羽根 | 10枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ68×118mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 約600g | AF | - |
その他 | 絞りリング | ||
付属品 | |||
キャップ |
レンズは電子接点非対応のフルマニュアルレンズ。フォーカスリングと絞りリングを搭載しており、直接フォーカスレンズと絞り羽根を操作します。当然ながらカメラの自動アシストには対応していないため、カメラ側での拡大やピーキングのオン・オフが必要となる。
レンズ構成は8群11枚で、うち3枚は高屈折率レンズを使用。全群繰り出し式のフォーカス構造ながら、最前面には保護ガラスを配置しているので外観的にはインナーフォーカスを実現。そのぶんレンズ全長は長くなってしまいましたが、堅牢性を維持しながらピントを位置をマクロに固定して持ち運ぶ際には便利です。
価格のチェック
Amazonにて価格は2.4万円。国産AFレンズと比べると遥かに低価格ですが、フルマニュアルレンズに2万円超を出せるかどうかは要検討。そして7Artisans 60mm F2.8 IIよりも少し高い。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
発売前サンプルであり、箱はありません。
外観
レンズは総金属製の頑丈な作り。レンズマウントからフィルターソケットまで金属パーツを使用しています。表面は光沢を抑えた黒色の塗装で統一。外装のロゴや表示は全てプリントで刻印ではありません。
コントロールはフォーカスリングと絞りリングのみ。鏡筒にはF値・ピント位置・撮影倍率の表示があるものの、被写界深度の指標はありません。
ハンズオン
全長117mm、重量600gとAPS-C用マクロレンズとしては少し大きめ。驚くほど大きなレンズでは無いものの、ちょっとした望遠ズームレンズのようなサイズ感です。
前玉・後玉
前面にはフラットな保護ガラスを搭載。これによりレンズは全群繰り出し式ながら実質的にインナーフォーカスを実現。マクロ状態でも内筒が伸びず、堅牢性に不安がないのはGood。
前面は62mmのフィルターソケットに対応。もともと保護ガラスを搭載しているものの、手前で交換できる代物ではなく、ダメージが想定されるシーンではプロテクトフィルターの装着がおススメ。
フォーカスリングを最短撮影距離まで回転すると、内部のレンズが繰り出して保護ガラス付近まで繰り出される。レンズ構成からも分かるように、外装の直径を考慮すると搭載しているレンズは比較的小さめ。
レンズフードは同梱していないので、62mm径のねじ込み式円筒フードを用意しておきたいところ。
レンズマウントは金属製で鏡筒に対して3本のビスで固定されています。レンズの重量を考慮すると固定しているビスが3本であるのは少ない印象を受ける。と言っても使用に際して問題は感じません。
電子接点がない他、防塵防滴用のゴムシーリングも無し。
レンズは全群繰り出し式のため、ピント位置によって後玉の位置も変動する。最短撮影距離では前方へ移動するので、よく見ると内部の構造を確認可能。
よく見ると内部のヘリコイドを確認することができ、潤滑用グリスが塗布されているのが分かる。これによりフォーカスリングは滑らかに回転するものの、グリスが何かの拍子に飛散してセンサー面に付着しないか不安。できれば背面にも保護ガラスを用意して欲しかった(画質に影響するので出来ないと思われますが…)。
フォーカスリング
52mm幅の幅広い金属製フォーカスリングを搭載。前述したようにヘリコイドはグリスが十分に塗布されており、適度な抵抗量で非常に滑らかな操作性を実現。ストロークは無限遠から最短撮影距離まで約180度。そのストロークの大部分が0.5倍までのマクロ域に使われており、1mから無限遠までのストロークが驚くほど小さい。このため、マクロ距離で快適なMF操作が可能となっているものの、一般的な撮影距離で繊細なMF操作が難しい。マクロ撮影のためのフォーカスリングであり、それ以上のものではない。
絞りリング
F2.8からF16まで無段階で操作可能な絞りリングを搭載。フォーカスリングと同様に、とても滑らかに回転しますが、抵抗量はフォーカスリングよりも少し重い。最小絞りが「F16」とマクロレンズにしてはF値を大きくすることが出来ません。とは言え、回折の影響が早いAPS-CでF16以降まで絞ることは珍しいはず。
装着例
X-S10に装着。Xマウント機としてはグリップが大きいので、大ぶりなマクロレンズを装着してもハンドリングに問題は無し。X-E4などコンパクトなカメラとは相性が悪いかもしれません。
AF・MF
フォーカス速度
MF専用レンズのため未評価。敢えて言えばマクロ側のストロークが長いのでマクロ撮影でのピント合わせは時間がかかる。反面、一般的な撮影距離のストロークは非常に短く、精度を求めないのであれば素早い操作が可能。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離から無限遠まで撮影した結果が以下の通り。
マクロレンズらしくブリージングは大きめに発生。マクロ域に入るまでにも大きな画角の変化がある。
精度
マクロ領域におけるフォーカスリングのストロークは長く、高精度での調整が可能。しかし、富士フイルムの拡大機能には限界があり、細部をチェックにベストをつく場合はパソコンによるテザー撮影がおススメ。
また、無限遠側はストロークが非常に短く、精度の高いピント操作は非常に難しい。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:FUJIFILM X-S10
- 交換レンズ:PERGEAR 60mm F2.8
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ベースISO 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央
絞り開放は球面収差が残存しており、ピント面に滲みが生じるほどの軟調な描写。当然ながら低コントラストで締まりがない。ただし、意外とシャープなので、ピントの山は掴みやすく、測定値はF2.8から「3000」を超える良好なパフォーマンスを発揮。
絞っても数値上の改善は見られないが、球面収差が抑えられて明らかにコントラストは上昇。F5.6?F8でコントラストがピークを迎え、F8以降で回折の影響を受ける。概ねF11まで実用的な画質で、F16は被写界深度と画質のトレードオフとなる。
周辺
中央と同じく、F2.8は球面収差が残存する軟調な画質。それでもピントの芯はハッキリとして、シャープネスは良好に見える。ただし、数値を確認すると中央と比べると大きく低下。絞ると急速に改善し、F5.6?F8で数値上の解像力も、コントラストもピークとなる。絞った際は中央と遜色のない画質。
四隅
中央や周辺と比べるとソフトなうえにシャープネスも目に見えて低下。絞ると全体的に改善するものの、非点収差が残存しているような像の乱れが確認できる。実写を見る限り中央や周辺と比べてワンランク低い画質だが、数値上の結果はまずまず良好。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3387 | 2287 | 1588 |
F4.0 | 3225 | 2883 | 2611 |
F5.6 | 3348 | 3313 | 3169 |
F8.0 | 3279 | 3236 | 3164 |
F11 | 2942 | 2954 | 2940 |
F16 | 2335 | 2182 | 2240 |
実写確認
細かいこと言わなければ均質性の高い画質であり、マクロレンズとしては理想的。絞り開放付近が少し軟調ではあるものの、被写界深度の深さが必要なマクロ撮影でF2.8のシャープさを追求する人は少ないかも。逆にこの柔らかさを活用してポートレート撮影は大いにあり。
絞れば解像性能に問題は無く、マクロレンズらしい使い方が可能。回折が強くなるF16を最小絞りに設定しているのは賢明な判断と言える。
遠景解像力
テスト環境
- カメラ:FUJIFILM X-S10
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO160
- 非圧縮RAW出力
- Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス 0
テスト結果
中央
絞り開放は球面収差の残存する低コントラストな画質。正直に言うと、風景撮影で使いたい画質とは言えないので、しっかりと絞って収差を抑えたい。F4まで絞るとシャープネスとコントラストが大幅に改善し、実用に耐えうる画質まで向上。F5.6?F8で大幅な改善は期待できないものの、細部のコントラストが僅かに改善し、ピークの画質を得ることが可能。F11で回折の影響をわずかに受け、F16まで絞ると細部は軟調。
周辺
中央と同じくF2.8は球面収差の影響が強く、あまり実用的とは言えないソフトな画質。F4まで絞ると画質は改善するものの、シャープネス・コントラストは満足のいく結果とは言えない。F5.6まで絞ると画質が大きく改善し、実用に耐えうるシャープネスとコントラスト。F8まで絞っても大きくは改善しないので、被写界深度やシャッタースピードなどとの兼ね合いで調整するのが良し。回折の影響は中央と同じ。
四隅
中央や周辺と同じくF2.8は球面収差の影響が強く、あまり実用的とは言えないソフトな画質。F4まで絞ると画質は改善するものの、シャープネス・コントラストは満足のいく結果とは言えない。F5.6でさらに画質が改善し、許容範囲内となる。ただし、F8まで絞ると目に見えるコントラストの改善があるため、出来ることならばF8まで絞りたい。その後の回折の影響は中央と同じ。
実写で確認
絞り開放付近は全体的に軟調で、解像性能やコントラストを重視する撮影ではおススメできない画質。ただし、概ね2?3段絞ると全体的に画質が改善し、フレーム隅まで実用に耐えうるパフォーマンスを発揮する。この際の均質性は十分良好であり、シャープネス・コントラストは風景撮影でも問題なく使える水準。ただし、AWBが少しマゼンダ寄りとなる傾向あり。
撮影倍率
テスト機である「FUJIFILM X-S10」が搭載しているセンサーの横幅は「23.5mm」。
このレンズの撮影倍率は最大で2倍であり、このピント位置で撮影した写真が以下の通り。
横幅12mmまでの撮影に対応しており、つまり「センサーの横幅に対して(ざっくり)約2倍」の撮影倍率を実現していることとなる。つまりレンズの仕様は正確であり、フルサイズ判換算では「約3倍」に相当するクローズアップが可能。
ちなみにレンズ上の「等倍(1:1)」の撮影倍率にピントを合わせて撮影した写真が以下の通り。
横幅が約23.5mmとなっており、イメージセンサーの横幅と一致する。このレンズのピント距離表示が正確であることを示している。
ワーキングディスタンス
60mmの等倍以上マクロレンズで気を付けたいのがワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)。これが短くなることで被写体にカメラやレンズの影が写りこんでしまったり、レンズ前面が被写体にぶつかってしまう可能性があるので注意が必要。レンズの全長のみを考慮(カメラ装着時のバックフォーカスやフランジバックが除外しているので10?20mmの誤差があるはず)したワーキングディスタンスは以下の通り。
撮影倍率 | MFD (最短撮影距離) |
WD (ワーキングD) |
1:2(×0.5) | 0.24m | 122mm |
1:1(×1.0) | 0.19m | 72mm |
1.5:1(×1.5) | 0.185m | 67mm |
2:1(×2.0) | 0.185m | 67mm未満 |
実効F値
レンズの多くは無限遠と最短撮影距離で実効F値(この場合は光量の意味合いが強い)が変化し、特にマクロレンズはその傾向が強い。そこで、露出を固定してピント位置を変化させた作例が以下の通り。どの作例もISO 160・F2.8・1/400秒の固定して撮影している。
ご覧のように、無限遠で適正露出だったとしても、撮影倍率が高くなるほどに露出不足となっているのが分かる。このため、マクロ撮影で適正露出を得るにはいずれかの設定値を妥協せざるを得ない。特にマクロ撮影は被写界深度を得たい場合が多く、絞りで妥協するわけにはいかないので、ISO感度とシャッタースピードでバランスを取る必要がある。場合によって三脚でカメラを固定が必須となることもある。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認
低価格の大口径レンズには像面湾曲が残っているモデルが多いものの、このマクロレンズに関して得にこれと言った問題は無し。少なくともマクロ域以外で像面湾曲が目立つことは無いはず。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
絞り開放付近でわずかに色ずれの兆候が見られるものの、絞ることで他の収差と共に収束する。後処理無しでも実用的な補正状態であり、特に心配するこは無い。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
絞り開放から目立つ色収差が無く、良好な補正状態。特にボケが硬調となる前景にマゼンダの色付きが無い点は評価できるポイント。これにより絞り開放が使いやすく、RAW現像などでの手間を減らすことが可能。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
このレンズはかなりの量の球面収差が残存しており、収差はボケ質に大きな影響を与えている。ぱっと見で分かるように、後ボケが非常に柔らかく滑らかな描写であるのに対し、前ボケは縁取りが硬くて2線ボケの傾向あり。この描写傾向は撮影距離に関わらず一定。前ボケに注意して使えばポートレートのような撮影距離でも素敵な後ボケを堪能できるはず。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
玉ボケは基本的に滑らかできれい。口径食の影響も少なく、非常に使い勝手が良い。ただし、どうもレンズ内に小ゴミがあるらしく、「点」として玉ボケに写りこんでいるのが残念。おそらくこれは個体の問題であり、他の個体では問題とならない可能性が高い。
F5.6まで絞ると口径食が解消するものの、玉ボケが少し角ばるので注意が必要。ただし、絞り羽根が10枚と多いためか、絞っても多角形は目立たない。
別の作例でも玉ボケは滑らかできれい。口径食の影響も少なく、様々な状況で使いやすい。
ボケ実写
前述してきたように、後ボケ重視のボケ質は非常に滑らかで柔らかい描写。ピント面が少し滲んでいるものの、これはこれでアリ。1段絞ると(F4)球面収差が収束して一般的な写りへと変化する。滲むのが嫌いであれば最低でもF4まで絞るのがおススメ。F5.6まで絞っても後ボケは荒れにくい。
接写時は柔らかいボケがさらに大きくなり、ドリーミーな描写を得ることが出来る。1?2段絞っても良好なボケ質を維持しているのはGood。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
僅かに糸巻き型の歪曲収差が残っていることを確認。これは直線的な被写体を意図的にフレーム周辺に入れると少し目に付く。しかし、一般的な実写で目立つ機会は少ないはず。
補正しやすい収差であり、Lightroom CCにて「ゆがみ補正」を手動で「-4」に設定するとほぼ解消する。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認(最短撮影距離)
絞り開放から全く問題なし。これは多くのマクロレンズで同傾向であり、このレンズの長所ではありません。
実写で確認(無限遠)
最短撮影距離と比べて僅かに周辺減光の影響あり。とは言え、予想していたよりも光量落ちが少なく絞り開放から扱いやすい程度に抑えられている。光量落ちはF4まで絞っても改善しないものの、F5.6まで絞ることでほぼ解消。それ以降は絞りによる変化が少ない。
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
実写で確認
完璧な補正状態とは言えず、少なくとも2段絞るまでは影響が残る。細部を確認せずに目立つほどの収差量ではない。しかし、このテスト結果は遠景解像テストと通じるものがあり、おそらく周辺部の解像性能が低下している要因の一つとなっているはず。
逆光耐性・光条
中央
このレンズにおけるウィークポイントが逆光耐性。絞り開放は光源付近がフレアの影響で破綻しており、部分的にゴーストも発生している。F4まで絞ると光源付近のフレアは減少するものの、今後は全体的にフレアが発生して低コントラストな状況に陥る。また、ゴーストも増えてしまい処理に困る。
さらに絞っても状況は改善せず、絞り値全域でフレアとゴーストに悩まされることとなる。これをクリエイティブに活用できるのであれば良し、被写体をハッキリと写したいのであれば強い光源を回避するしかない。
隅
中央と同じくフレアとゴーストの問題が発生。問題を回避するためには光源をフレーム外に逃がすしか。遮蔽物を利用して光源を隠すしか方法が無い。いずれにしても厄介な問題。
光条
このレンズは10枚の偶数羽根を採用しているので、絞った際の光条は10本となる。F5.6まで絞るとシャープな光条が発生し、最小絞りまで徐々に光条が大きくなる。形状は先細りする一般的に評価されるタイプの光条だが、全体的にサイズが小さくインパクトに欠ける。惜しい。
総評・作例
肯定的見解
ココがポイント
- 金属製のしっかりとした作り
- 事実上インナーフォーカス
- マクロ域で十分なストロークのフォーカスリング
- 絞った際に均質性の高い解像性能
- 柔らかい滑らかな後ボケ
- 最大2倍の高い撮影倍率
- 大きな問題のない色収差補正
- 穏やかな歪曲収差
- ほぼ皆無の周辺減光
個人的にもっともオススメできるのは非常に柔らかく滑らかな後ボケ。ピント面すら滲むほどの球面収差が残存しており、強めの後ボケ偏重効果が見られる。マクロレンズにシャープで高コントラストな結果を期待すると肩透かしとなるものの、ポートレートにも十分使えるような美しいボケは必見。また、十分に絞ると球面収差の問題はなくなり、フレーム全域でシャープな結果を期待できる。イメージサークルが広いと思われ、周辺減光や玉ボケへの影響が少ないのもgood。
マクロ域のフォーカスリング回転幅は十分な量が確保され、強めに減衰されているので、精度の高いフォーカス操作が可能。無段階の絞りリングは好みが分かれるものの動画撮影には適しているかもしれない。
批判的見解
ココに注意
- 60mmマクロレンズとしてはサイズが大きい
- メカダストがセンサーに付着する可能性
- フォーカスリングは無限遠側のストロークが短い
- 絞り開放の球面収差がかなり残っている
- 前ボケが硬調
- 逆光時にフレアの影響が甚大
- 絞った際にAWBが盛大に色被りする
もっとも気を付けたいのは絞り開放の球面収差。シャープネスやコントラストに影響を与えるほど残存しており、F2.8から高い解像性能を期待していると肩透かしとなる可能性あり。さらに逆光時はフレアが強く発生し、ここでもコントラストが低下する場合がある。特にこのレンズはフードが付属していないので、場合によって対策の必要がある。
フォーカスリングはマクロ域が充実しているものの、1mから無限遠のストロークが非常に狭い。微調整が難しく、富士フイルム機のライブビュー拡大倍率が驚くほど低いこともあって精度の高いピント合わせが困難。
さらにF8以上に絞った際はAWBがマゼンダに傾く傾向があるので、必要に応じてプリセットWBや色温度を設定して撮影する必要があるのは残念。
総合評価
決して優先度の高いマクロレンズでは無いものの、同価格帯のMFマクロレンズを選ぶ際に「2倍マクロ」「柔らかい後ボケ」が強みとなる。ただし、APS-C用60mmマクロレンズとしてはサイズが大きく、逆光耐性はお世辞にも良いとは言えない性能のため撮影環境には注意が必要。
購入早見表
作例
関連レンズ
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- XF60mmF2.4 R Macro
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