Xitekにニコン「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」に関するインタビュー記事が掲載されています。PFレンズの逆光耐性やステッピングモーター採用の背景など、的確なインタビューで面白い内容ですね。
Xitek:兼具性能与便携 尼康Z 800/6.3 VR S??者??
ニコンは4月6日、望遠単焦点レンズ「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」を発表し、高い携帯性と高い描写性能で、業界に話題を呼んでいる。 このたび、このレンズの開発者に、設計思想や技術的な特徴について詳しく話を伺った。
Q:このレンズはPF(Fresnel Phase)レンズを採用しているが、この技術によるゴースト対策はどのように改善されているのか?
A:ナノクリスタルコートを採用しているだけでなく、PFレンズの形状や位置を最適化することで、ゴーストを抑制している。
Q:2倍テレコンバーターを装着すると焦点距離が1600mmになり、特殊な場所での撮影に有効だが、絞りもF13になり、ピント合わせに影響はあるか?
A:このレンズはレンジエクステンダーを装着しても使用できるが、被写体や明るさ、フォーカスポイントによっては、エクステンダー非装着時に比べ、ピントが合うのが遅くなったり、フォーカスアシストがちらついたりすることが時々ある。ピントが合いにくい場合、日中や屋外などの明るい場面で使用するのがおススメだ。 また、高速連写(拡張)機能を搭載したボディで、高速連写で撮影することをお勧めする。
Q:PFレンズ以外に、どのような軽量化設計がなされているのか?
A:メカ設計上、重量に影響する部品について、強度や耐久性が十分であれば、まずエンジニアリングプラスチックの部品を使うかどうかを検討する。光学的にはPFレンズの高い色収差補正効果を生かし、鏡筒前面に配置されるレンズ群について、レンズ枚数の削減や低分散レンズへの置き換えにより、軽量化を実現している。 EDレンズやSRレンズを効果的に使用することで、小型軽量化で発生しがちな収差も完全に抑制している。
Q:以前、「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」が3Kg弱と非常に軽く、手持ち撮影に適しているというニュースがあったが、ニコンはこのレンズサイズと重量をどのように検討したのか。
A:鳥や野生動物、飛行機などを撮影する写真家が、より長い距離を撮影するために軽いレンズを必要とする場合によく使われるレンズだ。 一眼レフ時代には手で持ちにくかった800mmレンズの開発は、この点を十分に考慮し、FマウントニッコールレンズAF-S200-500mm F5.6(重量約2.3kg)に近い、手で持てる重量の実現に努めた。小型化と高い携帯性を実現する一方で、S-Lineの規格に準拠しつつ、可能な限り使い勝手の良いレンズとするために、光学性能も重要な前提条件となった。さまざまな環境に対応するため、開発プロセスを繰り返し、プロユーザーのニーズに応える製品に磨き上げた。
Q:2018年にデジタル一眼レフレンズ「NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」を発売している。このレンズが設計思想がベースになっているのか。
A:両レンズの共通点は、小型・軽量化のために設計上Fナンバーを若干調整したことだ。 しかし、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sは、Zマウントの超望遠レンズの基準で設計されている。
Q:NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sは、より魅力的なF5.6ではなく、F6.3の絞りで開発されたが、これは重量を考慮した結果か。
A:そうだ。F5.6では「より軽く、より遠くへ、より高画質に」というレンズの開発理念と相反することになる。 VR手ぶれ補正もFマウントの同焦点レンズと比較して改善されているので、実際に使ってみるとそれほど大きな差はない。
Q:Z時代でゴールドリングを持つ2本目のレンズだが、今後は超望遠レンズだけがゴールドリングになるのか?
A:ゴールドリングは、超望遠レンズの上位機種にのみ採用される。
Q:非常に強力な解像力を持ち、それに応じて価格も高くなってる。ニコンは800mm F11のフォーマットで、より手頃な価格のレンズ開発を検討したか?
A:今後の製品計画については、ユーザーの要望を踏まえて検討している。ここではお答えできない。
Q:NIKKOR Z 800mm F6.3 VR Sは、一眼レフ用レンズ500mm F4と口径が似ているが、前者は後者の後継機なのか?
A:このレンズは新設計で、後継機というわけではない。
Q:ニコンのレンズロードマップを見ると、Zマウントの軽量望遠レンズは400mmに加え、800mm F6.3 PFもあり、一眼レフ時代の300mmや500mm PFレンズとは全く異なる。 ニコンはPFレンズをどのように企画し、なぜこの2モデルにしたのか。
A:Fマウントの300mmPFレンズユーザーの約3/4がエクステンダーを併用し、500mmPFレンズの登場以降、需要は減少傾向にある。そしてカメラセンサーの感度などの性能向上が進み、望遠レンズに対するユーザーのニーズは高まっている。このような背景から、手に持って撮影できるZマウントの超望遠レンズの企画を優先し、まずはホールディングが困難な800mmレンズのPFレンズの企画を進めた。
Q:500mmレンズに比べて軽量設計で口径も小さくなっているが、使用感ではどのような点が特徴的か?
A:レンズがFマウントからZマウントになり、AFやVR手ぶれ補正など、ボディと連動する技術が進化している。開放F値6.3でもAFに問題はなく、ユーザーは安心して使用できる。
Q:このレンズにSTMを採用したのはなぜか?
A:このレンズは、アマチュアも撮影に使えることを想定して設計されている。安価で高性能なSTMを使用した。また、STMの性能を十分に発揮できるように、設計段階からフォーカスグループを最適化している。
Q:100-400mmレンズはSTMのマルチフォーカスを採用しているが、このレンズも同様か?
A:このレンズはマルチフォーカスではない。
Q:100-400mmや400mmと比較して、野鳥撮影時のフォーカス性能、ピント合わせ、ピントの引きの速さはどうか?
A:撮影時の速度は、Zマウントの100-400mmや400mmと比べても遜色ない。
Q:このレンズにメソアモルファスコートがないのは、軽量化のためか? このレンズのターゲットユーザーはどのようなユーザーグループなのか?
A:このレンズは、野鳥や野生動物、航空機などの撮影を愛するハイレベルな写真家、愛好家に向けたものだ。 メソアモルファスコートを使用しない理由は、使用しなくてもゴーストを抑制できるためだ。既存のコーティングを採用したのは、開発の過程で反射防止効果を考慮してのことだが、もちろん理由の一部には価格を抑えるためのコストコントロールもある。
Q:レンズの重量2,385gは、三脚リングを含んでいるか?
A:レンズの重量は三脚リングを含めて約2,385gだ。
とのこと。
回折光学系を使用したレンズは逆光時の特徴的なフレアが問題と言われていますが、最適化している800mm F6.3でどの程度まで抑えることが出来ているのか気になるところですね。さらに小型軽量化に加えて、低価格で購入しやすい価格帯を目指していたのも興味深いポイントと言えそうです。決して安いレンズではありませんが、800mm F6.3と考えると驚くほど低価格を実現。その背景にはステッピングモーターやコーティングなど、「コストを抑えた設計」が実を結んでいる模様。
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