2022年5月30日付けでキヤノンの気になる特許出願が公開。チルト撮影時に構図がずれてしまう問題を解決するため、チルト時に構図を補正するレンズを内蔵した光学系に関する特許となっています。
概要
- 【背景技術】
撮像光学系の光軸方向に傾いた物体面に対して全面的に良好なピントを得られることのできる撮像光学系が求められている。- このような撮像用途をチルト撮影と呼び、この要望を満足する光学系としてチルト機構(アオリ機構)を設けた撮像光学系が知られている。チルト撮影の原理にはシャインプルーフの法則が用いられており、この撮像光学系はシャインプルーフ光学系とも呼ばれている。
- 一方で、チルト機構を有する撮像光学系はチルト時に構図がシフト(以後、「構図シフト」とも記載する)してしまい、利便性を損ねる場合があった。
- これに対して、光軸方向に対して垂直方向の成分に移動するレンズ部を複数設けた撮像光学系が知られている(特許文献1)。特許文献1は、光軸方向に対して垂直方向の成分に移動することでチルト効果を発生させるレンズ部Aと光軸方向に対して垂直方向の成分に移動することでシフト効果(構図シフト)を発生させるレンズ部Bを備えている。
- 特許文献1ではチルト撮影時、前記レンズ部Aは光軸方向に対して垂直方向に移動し、前記レンズ部Bは、前記レンズ部Aで発生したシフト効果を補正するように光軸方向に対して垂直方向に移動することで、構図シフトの小さいチルト撮影を可能としている。
- 【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のような光軸方向に対して垂直方向に移動するレンズ部を複数設けた撮像光学系は、チルト撮影時にレンズ部を光軸方向に対して垂直方向に移動させるため、光学偏心による収差が発生する。この偏心による収差は、チルト撮影を行う物体面の傾き量が増加するにつれて、垂直方向の移動量が増加するため、発生量が大きくなる。そのため特許文献1の撮像光学系は、チルト撮影により良好なピントが得られる物体面の傾き量が小さい。- 本発明は構図シフトを低減しつつ大きなチルト撮影効果を得ることのできる光学系及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
実施例1
- 焦点距離:84.99
- F値:2.88
- 半画角:14.28
- 像高:21.64
- 全長:120.04
- バックフォーカス:16.49
実施例3
- 焦点距離:229.54
- F値:4.12
- 半画角:5.38
- 像高:21.64
- 全長:240.00
- バックフォーカス:44.00
実施例4
- 焦点距離:131.99
- F値:4.12
- 半画角:9.31
- 像高:21.64
- 全長:139.49
- バックフォーカス:16.50
実施例6
- 焦点距離:34.87
- F値:2.68
- 半画角:31.82
- 像高:21.64
- 全長:91.74
- バックフォーカス:16.48
一般的に、レンズは向かって平面にピントが合いますが、チルト機能を備えたレンズでアオリ撮影することでピント面を斜めにすることが出来ます。これにより、普通の撮影では絞っても被写界深度に入れることが出来ないような撮影が可能となります。(言葉で説明しても難しいので、玄光社のこの記事が参考になると思います。)
チルト機能は異なる撮影距離の被写体にピントを合わせることが可能となるため、商品の物撮りや映像撮影に有効です。ただし、チルト機能を使用する際に構図が少し変化する(特許内では構図シフト)ため、チルトの調整と構図の調整を交互に実施する必要があります。これを解消するのが今回の特許となっています。
図面の「A」がチルト機能を有するレンズで、「B」が構図シフトを補正するレンズとなっています。従来のチルトレンズは光学系を傾けてアオリ撮影を実現していましたが、この光学系ではレンズ1枚を動かすことでアオリ撮影が可能となるようですね。それだけでも驚くべきことだと思いますが、さらに「B」のレンズを動かすことで構図シフトを抑えることが可能となる模様。従来と比べるとチルト撮影の手間が大きく低減される可能性がありそうです。これが全て電子制御になると凄いですねえ。実際、カメラで制御できるチルト撮影に関連した特許出願が公開されています。ひょっとしたらEOS Rシステム用の便利なティルトレンズを用意しているのかもしれませんね。
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