Dustin Abbottがタムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」のレビューを公開。解像性能は大部分でソニーGに近い性能を発揮し、ボケは綺麗で、AFも僅差と高く評価。ただし、連写やテレコンなどで制限があると言及しています。
Dustin Abbott:Tamron 150-500mm F5-6.7 VC VXD (A057) Review
レンズの紹介:
- 充実したソニーEマウントレンズラインアップの中で、「超望遠」のカテゴリはまだ選択肢が充実していない。このため、ソニーが2019年にリリースした「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」は非常に歓迎された。
- 次にシグマが「100-400mm F5-6.3 DG DN OS」を投入した。テレコンバージョンレンズ非対応で400mmまでをカバーしている手ごろな価格のレンズだ。そして、このタムロンA057が登場した。
- タムロンはソニーと全く異なるアプローチを採用し、できるだけコンパクトにデザインすることを選択肢した。伸びるズームと望遠端の開放F値をF6.7に抑えることで、これを実現している。
- 伸びるズームレンズのため、多くの人が信頼しているインナーフォーカス対応と比べると信頼性で見劣る。
ビルドクオリティ:
- これまでタムロンのDi IIIシリーズと言えば「簡易防滴」「スイッチなし」「67mmフィルター」「手ぶれ補正なし」が一般的だった。しかし、このレンズを単純に当てはめることは出来ない。
- 三脚リング・4つのスイッチ・ズームロック・クラッチ機構・手ぶれ補正・82mmフィルターを搭載している。これまで見てきたタムロンレンズの中ではかなり大きなレンズである。
- ソニーと異なり、三脚座がアルカスイス互換のクランプに対応している。リングは360度回転することが可能だ。ノブを緩めることで取り外すことも出来る。
- ソニー純正レンズとは異なり、テレコンバージョンレンズには対応していない。
- タムロンはレンズに11点の防塵防滴仕様を施している。効果を確かめるには時間が必要だが、他のタムロンレンズに関して、防塵防滴の苦情を聞いたことはない。
- レンズフードはこのクラスのものとしてはかなり浅い。しかし、十分に機能しており不満は無い。
携帯性:
- 一眼レフ用150-600mmと比べて110g軽量だ。
- シグマ100-400mmと比較して大きく重い。逆にソニーと比べると小さく軽いレンズに仕上がっている。
- ソニーと比べて縮長は41%短い。このため、遥かに多くのカメラバッグに適合する。このサイズは100-400mmと比べて僅かに大きい程度に収まっている。
- ソニーと比べて215g軽い。
- ズームすることでレンズは8cmほど伸びる。
操作性:
- 伸びるズームレンズのため、現場ではソニーほどの使い勝手ではない。
- ソニーと異なりフォーカスホールドボタンには対応していない。
- ズームリングは滑らかで、約75度のストロークでズーム全域を操作できる。優れたパフォーマンスだが、ソニーのインナーズームと比較することは出来ない。
- シグマは最近のレンズにソニーのような機能性を持たせているが、タムロンは一眼レフ用レンズのデザインに近い。
- スイッチはソニー純正よりもしっかりとした感触だ。
- AFは十分に速く、AFリミッターに頼ることは滅多にないが、近側を3m・15mに制限することができる。
- ズームリングを前方にスライドして固定することが出来る。実写でほぼ瞬間的にリングを固定することが可能だ。通常通り150mmで固定する機構も搭載している。
オートフォーカス:
- このレンズは高トルクのリニアモーターを採用している。とても良好に機能し、非常に高速かつ正確で静かに動作する。
- α1やα9と組み合わせてFE 200-600mmと比較したところ、2つのレンズの違いに気が付くことは無かった。どちらも非常に高速・静か・正確だ。
- 厳しい追従テストシーンでは、シグマよりもかなり良好だが、ソニーと比べると数%成功率が下回っている。大部分の状況では十分過ぎる性能だ。(タムロン87%・ソニー92%)
- α9と組み合わせた場合、最速20コマ秒に対して15コマ秒の連写が可能だ。5コマ秒の違いは気にならないが、α1と組み合わせた際の30コマ秒との違いは大きい。
- ソニーと比べて撮影倍率が高く、多目的に利用できる。これはソニーに対する明確な強みの一つだ。ソニーは全域で最短撮影距離が2.4mだが、タムロンは0.6?1.8mまで寄ることが可能だ。これにより、撮影倍率も高い(0.32?0.27倍)。
マニュアルフォーカス:
- 記載なし。
手ぶれ補正:
- 手ぶれ補正は通常・パンニング・フレーミング優先の3モードに対応している。
- 手ぶれ補正は滑らかに動作しているように見えるが、ボディ内手ぶれ補正と連携して動作するのかどうかを確認することは出来ない。
- 低速シャッターでかなり良好な結果を得ることが出来た。(150mm 1/8秒)
解像性能:
- MTFチャートを見る限りではソニーGにとても近いことを示唆している。実写でも様々な設定で美しく、ディテール・色が豊かな結果が得られることに疑いは無い。
- 150mm F5の中央は驚くほど優れたシャープネスだ。四隅も非常に良好な性能である。ソニーの200mmと比べると、中央はタムロンの方が良好で、隅はソニーのほうがシャープでコントラストが優れている。
- 150mm F5.6ではコントラストが僅かに向上し、F8まで絞ると大きく改善する。
- 200mmのパフォーマンスはさらに良好だ。中央と隅の差が少なくなり、ソニー200mmに匹敵するものだ。F5.6まで絞ると僅差でタムロン有利である。
- 300mm F5.6でも優れた光学性能は健在だ。中央と隅でシャープである。開放が優れているので、F8まで絞ってもあまり改善しない。
- 400mm F6.3も良好な性能だ。
- 古い望遠ズームは望遠端で急速に悪化するものだが、このレンズはそうならない。500mm F6.7でもソニーの並外れた性能にほぼ匹敵する強力な中央シャープネスだ。ただし、隅のパフォーマンスはソニーに及ばない。
- 1500ドル未満の超望遠ズームでこれほど強力な光学性能が得られるとは夢にも思わなかった。
像面湾曲:
- 記載なし。
ボケ:
- 望遠域を活かした滑らかなボケを得ることが出来る。
- 本当に素晴らしい色と描写のボケである。背景を分離しにくい状況でも非常に良好な描写となる。
- 玉ボケが口径食で騒がしくなることもあるが、これが思いつく限り唯一の欠点だ。
色収差:
- 色収差について問題は見られない。
球面収差:
- 記載なし。
歪曲収差:
- 150mmでは最小限の糸巻き型歪曲が発生する。
- 500mmで歪曲が大きくなるかと思いきや、実際には少し良くなっている。これは驚くべきことだ。
周辺減光:
- 150mmでは最小限の周辺減光が発生する。
- 500mmで減光が大きくなるかと思いきや、実際には少し良くなっている。これは驚くべきことだ。
コマ収差:
- 記載なし。
逆光耐性:
- 非常に良好な逆光耐性だ。絞り開放でも絞っても影響はほとんど無い。
作例集
総評
タムロン150-500mm F5-6.7 VC VXDは、ソニーEマウントレンズのラインアップに加わった、とても歓迎すべきレンズだ。このレンズは、サイズ・価格・性能の点で、「シグマ100-400mm F5-6.3 OS DN」と「ソニーFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」の間に非常にきれいに収まっている。 シグマはお買い得なレンズだが、他のレンズのような超望遠ではなく、オートフォーカスも他の2本のに比べて少し遅れている。 ソニーは非常に優れたレンズだが、大きく、重く、そして高価だ。 タムロンA057は、サイズと価格がちょうど良く、オートフォーカス性能も良く、画質も非常に良いので、両者の良い代替品となる。
基本的にすべてのテスト項目で良好な結果が得られたが、ソニーが課したいくつかの残念な制限がある。 テレコンバーターとの併用ができないことや、a9やα1などハイエンドスポーツカメラでは最大連写速度が制限されていることなどだ。 少なくとも現時点では、これらのカメラで15コマ秒を超えることは出来ない。しかし、多くの人にとってはそれで十分なのかもしれない。
同社の150-600mm G2よりも50mm、ソニーの200-600よりも110mm近く短いコンパクトさは、多くの購入希望者にとって最大のメリットとなるだろう。レンズをどのように収納して持ち運ぶかについて、より多くの選択肢が生まれる。すると、このレンズが家の棚でほこりを被ることなく、使われることになるかもしれない。また、1,400ドルという価格は、より多くのフォトグラファーが購入できる価格帯だ。
これらのことから、タムロンはA057という新たなヒット商品を手にしたと言える。
- 長所:
・ソニーよりも遥かに小さい
・堅牢で防塵防滴仕様
・豊富なコントロール
・新しいズームロック機構
・VXDの効果的なAF
・効果的な手ぶれ補正
・低歪曲
・低周辺減光
・低色収差
・良好なシャープネス
・優れたクローズアップ性能
・素敵なボケ
・手ごろな価格- 短所:
・テレコン非対応
・開放F値が大きい
・追従連写時の成功率がソニー純正ほどではない
・AFLボタンが無い
とのこと。
非常に良好な光学性能と機能性を備えて、ソニーGレンズよりも小型軽量で低価格なレンズに仕上がっているみたいですね。最大の注意点は20fpsや30fpsの高速連写に対応していないことくらいでしょうか?Sony Alpha BlogではC-AF連写中の精度について指摘していましたが、Dustin Abbott氏のテストでは特に大きな問題はない模様。これは実際に使ってみないと分からないかもしれませんね。
テレコン非対応も問題と言えますが、タムロンはそれを見越して望遠端を500mmまで拡張したのかもしれませんね。(シグマ100-400mmはLマウントでテレコンを使うことが出来ます)
実写作例を見る限り、500mmの隅以外は良好な解像性能を発揮しているように見えます。また、騒がしくなりがちなピント面前後の小ボケも綺麗で滑らかに描写しているようです。諸収差の補正状態も思ったより良さそうで、特に歪曲収差を綺麗に補正しているのが意外。(タムロンDi IIIは歪曲収差を電子補正に依存しているレンズが多いため)
タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」交換レンズデータベース
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