Xitekがニコン「Z 9」のレビューを公開。先行レビューとしては珍しくRAWの高感度画質やダイナミックレンジ、AFの実写テストなど様々なカテゴリで参考となる作例を掲載しています。
カメラの紹介:
- 2021年は日本カメラメーカーにとって「フラッグシップイヤー」となった。1月26日にソニーが「α1」をリリースし、ニコンが3月10日に「Z 9」開発発表、キヤノンも4月14日に「EOS R3」開発発表している。
- その後、キヤノンは9月14日に「EOS R3」を正式発表し、ニコンは10月28日に「Z 9」を正式発表した。
- 「Z 9」はニコン史におけるハイライトだ。D3やD850と同じく、「史上初」だったり「世界最高」と言われているものがたくさんある。最多の9種類に対応する被写体認識、デュアル防塵機能を備えたローパスフィルター、最も明るいファインダー、最も長い8K 30p録画時間、4軸チルトモニタ、連写速度など。
- スペックの点から似ているのはソニー「α1」だ。どちらも高解像で動画にも対応した万能フラッグシップモデルだ。「EOS R3」は従来のフラッグシップモデルで、低解像だが高速連写と高感度画質に焦点を当てているように見える。
- Z 9が搭載している高速スキャンに対応した積層型CMOSセンサーの総画素は5,237万画素だ。有効画素数はZ 7IIと似ているが、総画素数は大きく異なる。
- 搭載している新プロセッサEXPEED 7は従来の約10倍の処理速度と言われている。
ビルド・外観:
- 縦位置グリップ一体型のデザインだ。これによりボタンを配置するスペースが拡大し、縦位置撮影時のエルゴノミクスを向上している。
- ペンタ部はZ 7IIよりも明らかに大きく、大口径Zマウントと調和している。
- D6よりも小さなカメラだが、堅牢性は同等だ。外装にはマグネシウム合金を使用しており、一体型成型により放熱効率が向上している。
- D6と同じく前面左上にシンクロソケットと10ピンターミナルを搭載している。
- 電源オフ時にセンサーの手ぶれ補正を固定して故障を防いだり、フッ素コーティング・導電性コーティングが二重に施されたセンサー面は、さらに内蔵センサーシールドで保護されている。
- 上部にはGNSSアンテナを内蔵している。(GPS)
- D6などと同じく、ボタンイルミネーション機能を搭載している。
- ケンジントンロックに対応している。
バッテリー:
- EN-EL18dは従来モデルよりも容量が多い。
- CIPA規格でEVF700枚、連写で5,310枚、170分の動画撮影が可能だ。
携帯性:
- 149×149×90.5mmだ。横幅はZ 7IIよりもかなり広い。
- 大きなカメラだが、D6よりも約20%小さい。
- Z 7IIに追加グリップを装着しても同等にはならない。
グリップ:
- 横位置のグリップはZ 7IIよりも感触が良く、縦位置グリップは横位置とほぼ同じだ。D6と比べると遥かに優れている。
操作性:
- 前部にはD6と同じく3つのFnボタンを搭載している。
- ニコン一眼レフと同じく、ボディ左側面にフォーカスモードボタンを搭載している。
- 左肩にはBKT・フラッシュ・MODE・ドライブボタン、いわゆる四つ葉ボタンデザインを採用している。
- 右肩にはステー経つLCDのほかにZ 9のロゴがある。ボタン類はない。ここはもっと活用すべきだと思う。
- シャッターボタン周囲には露出補正やISOボタンがある。露出補正ボタンがISOボタンに近寄ったことを除けばZ 7IIと同じだ。
- 背面のボタンレイアウトはZシリーズとD6が融合している。
- 背面左上部は再生ボタンが移動し、プロテクトボタンとゴミ箱ボタンに変わっている。従来機のユーザーは慣れが必要である。Z 9は再生ボタンが右下へ移動しており、右てで素早く操作できるようになった。
- モニター構造上、背面左にボタンは無く、下部と右側に集中している。
- 背面右側のデザインはほとんどZ 7IIと同じだ。
手ぶれ補正:
- 記載なし。
ファインダー:
- 仕様はZ 7IIと同じだ。369万ドットの0.5型OLEDパネルを使用し、0.8倍のファインダー倍率を実現している。
- ただし、Z 9は新しいQuad-VGAパネルを使用しており、3000cd/m2まで輝度を上げることが出来る。過酷な状況でも視認性が向上している。
- リアルビューファインダーによってブラックアウトフリーのライブビューを利用可能だ。
モニター:
- 210万ドットの背面モニタは上に90度、下に43度、右に90度、左に23度チルトすることができる。バリアングルモニタよりも頑丈で側方に展開しないが、自撮りには対応していない。
- 縦位置時はモニター表示が縦位置に切り替わる。
メニューシステム:
- 多くの改善点が見られる。
- 一部の項目は深い階層に潜る必要が無くなり、オンオフのスイッチとなっている。
- ニーズやシーンに合わせてピッチの異なる2つのアナログシャッター音を鳴らすことが出来る。
- ライブビューの表示をカスタマイズ可能だ。
スターライトビュー機能により、ファインダーとモニターを明るくして、暗い場所でも被写体がハッキリ見えるようになった。低照度でのAFにも対応しているが、ファインダー内のノイズは多くなる。- 非圧縮RAWの1/2、1/3のファイルサイズとなる高効率RAWに対応している。
- ボタンカスタマイズで画像転送と評価を1度に操作可能だ。
オートフォーカス:
- 高度なアルゴリズムによって9つの種類の被写体を認識することが可能だ。さらにオートモードではユーザーが種類を指定する必要無く被写体を認識する。
- 被写体認識はワイドエリア、オートエリア、3D-トラッキングで有効だ。
- ダイナミックAFは「S」でD6と同等、「M」でZ 7IIと同じ、「L」はより大きなフォーカスエリアに対応している。
- 瞳検出はフレーム上の小さな瞳でも検出する。向きを変えると頭部検出に切り替わって追従を継続している。接近しても顔や瞳を素早く検出している。
- オートエリアAFは3D トラッキングと比べて追従速度が遅い。被写体認識+3Dトラッキングがおススメだ。
- 車両も簡単に検出するが、複数の車両が認識された場合は近い車にピントを合わせる傾向がある。この場合は手動介入が必要だ。
- 動物の瞳をとても良好に追従する。短時間の間に障害物が入ってもターゲットを見失うことはない。
- 2輪車でも良好な追従性能を示している。ミスショットはほとんどない。
- スターライトAFでは-8.5EVまでのAFに対応している。
連写性能:
- 20コマ秒連写で出力形式の制限はない。
- 30コマ秒・120コマ秒の連写時はJPEG出力限定だ。C30時は4500万画素、C120時は1100万画素となる。
- 20コマ秒の連写でRAWを使うと3秒しか維持できない。この点についてニコンも認識しており、ファームウェアアップデートで改善すると述べている。
高感度ISOノイズ:
- 常用ISO感度 64-25600と拡張感度32-102400を利用可能だ。
- 同じ露出でZ 7IIと撮り比べたところ、露出精度・ノイズリダクションのアルゴリズはとてもよく似ている。
- ISO 400まで最高の画質で、ISO 800~3200でノイズが入り始める。
- ISO 6400~12800ではさらにノイジーとなるが、ディテールは良好だ。
- ISO 25600でディテールの低下が目立つ。
- Z 7II比で高感度JPEG画質の差は見られない。
- RAWでもISO400までとても良好な画質、ISO 800-1600でノイズが増え始め、ISO 3200-6400でノイズが徐々に増加する。ISO 12800-25600は密度のあるノイズが発生するものの、ディテールに影響はない。ISO 51200はノイズの影響が甚大だ。
- RAWでもZ 7IIと高感度画質に違いは見られない。
ダイナミックレンジ:
- 露出オーバーの場合、+1?+2EVを完全に復元することが出来た。+2で極端なハイライトは復元することが出来なかったが、全体像に影響はない。+3EVの復元で白飛びが増加する。Z 7IIと比べてハイライトの復元が少し劣っている。
- 露出アンダーの場合、-1?-2EVで完全に復元できる。-3EVの復元ではノイズが増加し、-4EVの復元ではカラーノイズが目立ち始める。
- Z 7II比で極端なハイライトの復元に関して少し劣っている。全体的にとても良好なダイナミックレンジだ。
仕上がり機能:
- ホワイトバランスは少し暖色寄りで、白優先にするとより正確となる。
動画:
- 最大で8K 30p、4K 120pの内部記録に対応している。
- 放熱効率が向上しており、最大で125分の連続撮影が可能だ。
- H.264に加えてH.265やProRes HQ 10bitに対応している。
- N-Logを内部記録できる初めてのZカメラだ。
- 4K UHD 30pが60pよりもシャープだ。オーバーサンプリングの効果は明らかである。4K 60pと120pの画質は基本的に同じだ。
- 動画撮影中でも被写体認識AFが可能だ。
通信・ストレージ:
- インターフェースは上部にイーサネットとマイク、ヘッドホンを搭載。下にはフルサイズHDMIとUSB-Cポートを搭載している。
- ニコンによると、EXPEED 7により、Wi-Fiを使った無線ネットワークでも優先LANでもD6より画像転送が高速だ。
- USB-CはPDに対応した充電が可能だ。
- デュアルCFexpress Bスロットを搭載。XQDも利用可能だ。
総評
ニコンZ9は、いくつもの「初めて」を持つフラッグシップモデルだ。風景や商業写真には約4571万画素+ISO 64、スポーツや野生動物の撮影には20fps+優れたフォーカス、そしてプロの映像ニーズには8K 30p/4K 120を利用できる。
愛好家にとっても、幅広い被写体に対応できるカメラであり、購入の際に立ちはだかる障壁は、「大きさ・重さ」と「価格」の2点だけだ。Z 9はフラッグシップのオールラウンダーであり、信頼性、頑丈さ、縦位置の撮影感、ボタンの配置、さらには他の撮影領域での放熱性にまで配慮していると語っている。 フラッグシップが「四角い」デザインであることは、キヤノンEOS R3、富士フイルムGFX100、オリンパスOM-D E-M1Xなど他のメーカーにも理解されており、日本の伝統的なカメラメーカーは四角いフラッグシップにコンプレックスを持っていると言える。
Z 9の価格については、35,999元はほとんどの消費者にとってまだ高いと思うが、同じクラスの商品を比較した場合、Z 9の値付けが”サブ”フラグシップの価格だと分かる。α1やEOS R3よりも安く、最もコストパフォーマンスの高いフラッグシップモデルだ。
- 長所:
・4500万画素の高解像とISO 64
・9種類の被写体認識と3Dトラッキング
・XQDとCFexpress Bに対応
・EN-EL18d
・USB-PD対応の充電と給電
・20fpsの高速連写
・8K 30pや4K 120pに対応
・N-logやHLGの内部記録に対応
・将来的に8K 60p RAWに対応
・ブラックアウトフリーのファインダー像
・4軸チルトモニタ
・センサーシールドと保護コーティング
・縦位置グリップ内蔵による優れたデザインと堅牢性
・5軸ボディ内手ぶれ補正と協調手ぶれ補正- 短所:
・大きく重い
・鳥認識を追加する余地あり
・高速連写のバッファ
・ファインダーやモニターの解像度
・30コマ秒はJPEG限定
とのこと。
DPReviewなど海外レビューサイトでは取り扱っていないZ 9のRAWを使った高感度画質やダイナミックレンジの比較テストを実施していますね。結果はZ 7の4500万画素センサーとほぼ同等のようですが、ダイナミックレンジはハイライト側が少し狭くなっている模様。以前にDPReviewが「ダイナミックレンジは少し狭い」と指摘していた評価と一致しています。これが実写でどれほど差が出るのか気になるところですね。とは言え、20コマ秒の高速連写やローリングシャッターを抑えたスピードカメラとして良好な画質であることは間違い無さそうです。
オートフォーカスは3Dトラッキングと被写体認識のセットが使いやすい模様。ソニーのリアルタイムトラッキングと似たような使い勝手で、さらに被写体認識で初動の掴みを改善した感じとなるかもしれませんね。従来のニコンZカメラと比べると飛躍的に使い勝手が向上している模様。
さらにメニューシステムにも改善が見られ、一部の項目がオンオフスイッチとなっているのは朗報。個人的にZカメラで気になっていた部分なので、下位機種にも改善したメニューシステムを実装して欲しいところ。
11月2日からZ 9の予約販売が始まっており、既に各所で「発売日以降のお渡し」となっています。海外の状況も考慮すると、半年以上の待ち時間が発生する可能性あり。もしも、Z 9を早く使いたいのであれば、早めに予約しておいた方が良いかもしれません。
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