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タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 徹底レビュー 解像性能編

タムロン「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」のレビュー第三弾を公開。今回は6100万画素のα7R IVと組み合わせて恒例の解像力チャートと測定ソフトを使った解像性能のチェックを実施しています。

まえがき

2021年9月30日に正式発表されたソニーEマウント用の大口径ズームレンズ。2018年に驚異的な価格設定で登場した「28-75mm F/2.8 Di III RXD」の後継モデルであり、焦点距離やレンズサイズを維持しながら最新の光学設計、AF駆動、ビルドクオリティにフルモデルチェンジ。価格は少し高くなってしまったものの、それでも10万円未満を維持しているのは凄い。

概要
レンズの仕様
マウント E 最短撮影距離 0.18-0.38m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 1:2.7-1:4.1
焦点距離 28-75mm フィルター径 φ67mm
レンズ構成 15群17枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2.8 テレコン -
最小絞り F22 コーティング BBAR-G2・F
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ75.8×117.6mm 防塵防滴 対応
重量 540g AF VXD
その他
付属品
レンズフード・キャップ

レンズサイズは前モデルとほぼ同じ。最新設計の光学系はレンズ構成枚数が増えているにも関わらず、レンズ重量が軽くなっている不思議。その結果、24-70mm系の大口径ズームより明らかに小さく軽く、シグマ「28-70mm F2.8 DG DN」と比べて驚くほどの差は無い。

前モデルと比べて最短撮影距離や最大撮影倍率は同程度。ただし、オートフォーカスの駆動はステッピングモーター(RXD)からリニアモーター(VXD)に切り替わっており、従来と比べて高速AFを期待できる。

レンズ構成は従来よりも2枚多い15群17枚構成。ただし特殊レンズの使用数は前モデルよりも少なくなっている。それにも関わらずMTF曲線は前モデルよりも良好となっており、広角端・望遠端どちらも周辺部の解像性能が大幅に改善している。
さらにコーティングにはBBAR-G2を使用し、前面はフッ素コーティングでメンテナンス性を高めている。レンズ構成が増えているので(反射面が増える)逆光耐性は低下しているかもしれないが、新コーティングに期待。

価格のチェック

売り出し価格は9万円半。前モデルが8万円半でスタートしたことを考えると少し高くなったが、それでも10万円未満であり、VXD駆動や最新の光学設計を考慮すると手ごろな価格と言える。差額分以上の価値を持つかどうか、これからじっくりと確認していきたい。

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解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM4
  • 交換レンズ:28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

28mm

中央

絞り開放から非常に高い解像性能を発揮。少なくとも、この解像力チャートでは絞りによる改善効果は見られず、開放からピークの状態。実際、6100万画素の遠景解像テストでも絞りによる改善効果は見られなかった。
パフォーマンスはF8まで維持し、F11で回折の影響により少し低下。F16~F22は急速に性能が低下するので、必要なければ避けて通りたい絞り値。

周辺

中央と比べると雲泥の差で、絞り開放はかなり甘い。これを改善するには2段絞る必要あり。もちろん、広角レンズで定型解像力チャートは相性が悪い(かなり接写する必要がある)点には注意する必要がある。
同じテスト環境で、シグマの2本はさらに悪い結果。ただし、28-70mm F2.8 DG DNはF8付近まで絞るとタムロンよりも良好となる。

四隅

周辺よりもさらに悪化し、F2.8では測定不能。さらに絞っても大きく改善しない。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4592 2908
F4.0 4610 3115 2566
F5.6 4530 3786 2930
F8.0 4642 3924 3186
F11 4387 3937 3229
F16 3828 3339 2982
F22 3167 2722 2586

35mm

中央

中央は28mmと同じく、絞り開放から非常にシャープな結果を期待できる。F11くらいまでハイパフォーマンスを維持し、それ以降で大きく低下する傾向も同じ。

周辺

28mmと同じく、絞り開放が甘い。ただし改善速度が速く、F4まで絞ると3500を超え、F8まで絞ると4000に到達する。

四隅

周辺部と同じく、隅も絞った際の改善速度は28mmよりも良好。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4801 2709
F4.0 4801 3604 3013
F5.6 4781 3838 3450
F8.0 4744 4093 3594
F11 4611 3958 3662
F16 4017 3604 3265
F22 3374 2904 2644

50mm

中央

広角側と同じく、非常に良好な性能を維持。パフォーマンスの低下が全く見られないのは正直に言って凄い。回折による影響を受けるが、F11までは4500を超える非常に良好な結果を期待できるので、積極的に絞ってもOK。ただし、以降は急速にパフォーマンスが低下する。

周辺

広角側と比べると絞り開放の描写に安定感がある。ただし、解像性能で言えば1~2グレード低下するうえ、絞りによる改善効果がほとんど無い。

四隅

絞り開放からなんとか測定可能で、広角側と比べると安定感がある。倍率色収差がかなり残っており、これを自動補正するAdobe LightroomのJPEG出力と測定ソフトの相性が悪いのかもしれない。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4779 3321 2850
F4.0 4810 3641 3069
F5.6 4866 3589 3424
F8.0 4599 3503 3614
F11 4563 3589 3227
F16 3886 3346 2788
F22 3274 2826 2572

75mm

中央

望遠端でも4500を超えるとても良好な結果。シグマ28-70mmは絞り開放のパフォーマンスが低下するポイントであり、タムロンに圧倒的な優位性がある。

周辺

絞り開放付近の性能はシグマ28-70mmよりも良好だが、絞っても非点収差の影響が改善しないように見える。シグマのようにF5.6~F8まで絞った際、性能が大きく向上することは無い。

四隅

やはり絞り開放の画質は安定しているが、倍率色収差の影響が強く、細部のコントラストがつぶれてしまっている可能性あり。絞った際の画質向上が見られない。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4781 2895
F4.0 4908 3167 2129
F5.6 4869 3416 3106
F8.0 4746 3242 3052
F11 4473 3098 2274
F16 4020 2754 2328
F22 3095 2667 2131

SIGMA 28-70mm F2.8 DG DNとの比較

28mm

絞り開放のパフォーマンスはよく似ているが、絞った際の周辺部・隅の性能向上はシグマのほうが良好。これは絞っても残存している倍率色収差が影響しているのかもしれない。

35mm

中央はタムロンのほうが良好で、周辺部も絞り開放付近はタムロン有利。シグマはF8?F11まで、しっかり絞ることでタムロンよりも優れた結果を期待できる。

50mm

シグマは絞り開放付近で全体的にパフォーマンスが低下する。おそらく、これは軸上色収差の影響でコントラストが低下しているためだと思われる。このため、絞ると全体的に改善する。
その一方でタムロンは軸上色収差が良く抑えられ、絞り開放から極めて良好な中央解像性能を発揮。周辺部や隅の結果も安定している。ただし、絞っても画質の改善は見られず、F8付近でシグマが追い越す。

70・75mm

50mmの傾向がさらに強くなる。シグマの絞り開放は芯は出ているが少しソフトな描写で、絞ると大きく改善する。その一方でタムロンは絞り開放から良好で安定感のある結果を期待できるが、絞ってもこれと言った改善は見られない。

今回のまとめ

大口径標準ズームの近距離解像テストとしては安定感のある結果だと思う。少なくともシグマの2本は接写時にパフォーマンスが低下しやすく、絞り開放の安定感はタムロンのほうが良好。ただし、絞った際の画質改善があまり見られず、パンフォーカスの解像性能を重視する場合はシグマのほうが相性が良いと感じる可能性あり。

タムロンでネックとなる倍率色収差は補正によって改善する可能性あり。また、2400万画素や4200万画素のカメラであれば目立たないかもしれない。比較的補正しやすい収差なので、心配し過ぎる必要は無いと思う。(もちろん補正時に細部のコントラストが低下する可能性あり)

倍率色収差以上に気を付けたいのは像面湾曲。
今回のテストショットはピント位置ごとにフォーカスを調整したが、実写の場合は像面湾曲がかなり目立つ。これは広角・中間・望遠、どの焦点距離でも同じ傾向が見られる。例えば、中央にピントを合わせた場合、同じ撮影距離の周辺・隅にピントの山が来ない可能性あり。その逆も然り。
これは近距離に限った話ではなく、遠景でも影響を確認している。像面湾曲を改善するには絞るしかないので、パンフォーカスを狙いたい場合は意識的に絞るようにしたい。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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