ソニーの交換レンズ「FE 40mm F2.5 G」のレビュー第五弾を公開。今回は6100万画素のα7R IVと組み合わせて、ボケ・周辺減光・逆光のテスト・評価を実施しています。
Index
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2021-04-15 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:9群9枚
- 開放絞り:F2.5
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.28m(AF)・0.25m(MF
- 最大撮影倍率:0.2(AF)・0.23(MF)
- フィルター径:φ49mm
- レンズサイズ:φ68×45mm
- 重量:173g
- 絞りリング
- AF/MFスイッチ
- AFLボタン
- リニアモーター駆動
- 防塵防滴
- 金属外装・金属フード
2021年3月23日に発表されたコンパクトなソニーEマウントのGレンズ。
全長45mm、重量約173gと非常に小さく軽く、同時に発表された24mm F2.8・50mm F2.5でサイズ・デザインが統一され、3本セットで扱いやすいレンズ群に仕上がっています。特にジンバルやリグなど動画撮影時に役立つ統一感と言えるでしょう。
この40mm F2.5 Gは今回発表された3本の小型Gレンズで、24mmと50mmの間に位置するレンズです。「35mm」が一般的な焦点距離ですが、今回はソニーEマウントで珍しい「40mm」を採用。特にAFレンズとしてはこれが初めてかもしれません。(訂正:Batis 2/40 CFがありました)
さらに開放F値「F2.5」は単焦点レンズとして比較的暗いものの、ズームレンズよりも僅かに明るい絶妙なF値。
そして、標準レンズ(40?55mm)としては非常に小さく、ソニー以外のレンズメーカーを含めても、このサイズの標準レンズは珍しい存在です。コンパクトなα7Cと相性が良く、APS-Cカメラボディに装着しても違和感の無いバランス。
小型軽量ながら、レンズ外装とフードの素材はアルミニウムで高級感のある仕上がり。さらに防塵防滴仕様で、環境に左右されない撮影を実現しています。
フォーカス駆動には2基のリニアモーターを使用し、ギアを使わらず静かで滑らかなAF・MF操作を期待できそうです。
小型ながら充実したコントロールを搭載しているのも注目ポイント。シグマも「Iシリーズ」で同じようなデザインを採用していますが、ソニーはさらにAFLボタンにまで対応しています。
価格のチェック
「40mm F2.5」のスペックを考慮すると、売り出し価格「71,280円」は少し高く感じます。金属外装・絞りリング・防塵防滴・リニアモーター駆動という点は評価できるものの、それでも少し高い印象。外装に妥協するとサムヤン「AF 45mm F1.8 FE」が4万円ちょいで入手可能であり、5万円台でシグマ「45mm F2.8 DG DN」を購入することができます。このレンズの携帯性や操作性、24mm・50mmとの統一感などに価値を見いだせないと気難しい価格設定。
FE 40mm F2.5 G | |||
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前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
前後のボケ質に大きな差がないニュートラルな描写です。わずかに色収差の影響が見られるものの、ボケ質への影響は少なく、特に心配する必要はないでしょう。全体的に見ると滑らかな描写で、この撮影距離(撮影距離50cmほど)ではむしろ良好なボケ描写に見えます。
このレンズは絞り開放からコントラストが高く、状況によってはコントラストの影響で背景ボケが騒がしく見えるかもしれません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
実写で確認
玉ボケには軸上色収差に寄る色付きが見られます。 また口径食の影響で四隅のボケが変形し、さらに非球面レンズの影響で内側の描写にムラがあります。完璧なボケ描写からは程遠いですが、目立つ玉ねぎボケはなく、騒がしく感じるシーンは限られてくるはず。
F4まで絞ると口径食の影響は抑えられますが完璧ではありません。絞り羽根が7枚のため口径食を抑える頃には玉ボケが角ばってしまうのは悩ましいところ。?
ボケ実写
撮影距離その1
最短撮影距離付近から2mまでの撮影距離を移動しながら撮影したのが以下の作例。
単焦点レンズとしては小さな口径ですが、最短撮影距離が短く、被写体へ近寄ることによってボケを大きくすることはできます。40mm F2.5ながらボケは十分に大きく、そして騒がしさのない心地よい描写に見えます。
撮影距離が長くなると、ボケが小さくなるとともにフレーム四隅の口径食が強くなり、ボケ描写は騒がしくなる。完璧なボケ描写からは程遠いものの、予想していたよりも滑らかで特に騒がしい印象はありません。
撮影距離その2
三脚の全高を170cmに調整し、3つの距離からF2.5で撮影したのが以下の作例。
全身ポートレートのような撮影距離では、背景ボケが十分に大きくならず被写体分離が難しい。ボケは少し騒がしいものの、全体的にボケが小さいので騒がしさが目立つことはありません。
上半身程度まで撮影距離を詰めると、背景から車体を分離できる程度のボケ量を得ることはできます。この際のボケは柔らかい描写と言えませんが色収差が少なく球面収差の悪影響も見られず使いやすい描写。
さらにバストアップまでの距離を短くすると程よい被写界深度に加え、十分綺麗で大きなボケを得ることができます。この際のボケは目障りだと感じる色収差や口径食の影響が目立ちにくく、比較的良好な描写に見えます。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認 最短撮影距離
絞り開放付近で顕著な周辺減光が発生します。大口径レンズほど強い光量落ちでは無いものの、小口径のレンズとしては目立つように見えます。F4まで絞ってもいくらか残存しており、F5.6でも少し残っています。完全に解消するためにはF8まで絞るのがおススメ。もちろん、ボディ側のレンズ補正を適用することで周辺減光は簡単に解消可能です。
実写で確認 無限遠
基本的に最短撮影距離と同じ傾向が見られます。比較して僅かに減光が強いものの、実写で差を感じるほどでは無いかも。3段絞ったF8でも僅かに残っていますが、これが問題と感じることは無いはず。
参考(最短撮影距離:無限遠)
逆光耐性・光条
その1
フレア・ゴーストは良好に抑えられていますが、強い光源が正面にあるとゴーストは完璧には抑えることが出来ません。薄いゴーストなので目立つ機会は少ないと思いますが、屋内・夜間の人工照明などでは気を付けたいところ。
そしてF11以降の小絞りではレンズフレアが極端に増えています。
その2
強い光源が四隅にある場合、絞り開放付近では問題ありません。とても良好な逆光耐性に見えます。絞ると徐々に隠れていたゴーストが顕在化しますが、問題が大きくなるのはF11前後から。
光条
少し面白い傾向があります。
絞り開放では当然ながら光条が発生しないものの、1/3段絞ったF2.8では綺麗な光条が発生。この傾向はF4まで続きますが、F5.6では光条が消えてしまい、F16以降で再びシャープな光条となります。なぜこのような現象が見られるのか不明。
今回のまとめ
「40mm F2.5」はボケ表現の自由度が高いレンズとは言えませんが、近距離(上半身ポートレート程度)や小さい被写体の撮影であれば十分に大きなボケを得ることが出来ます。ボケは前後に癖が少ないニュートラルな描写で、様々なシーンで使いやすいと感じるはず。
玉ボケには非球面レンズの粗が見える場合もありますが、大部分の状況では無視できる程度に抑えられているはず。
シグマ45mm F2.8 DG DNのように、球面収差を敢えて残した滲みのあるボケほど柔らかくありませんが、硬調で騒がしいボケ描写ではありません。ただし、開放からコントラストが非常に高いレンズであり、背景によっては少し主張し過ぎる背景となることも。とは言え、それ以上にピント面のコントラストが強く、被写体分離は十分にできていると感じます。滲むようなボケのレンズとはアプローチが異なる印象。兎にも角にも、コンパクトながらパンチの強いレンズです。
個人的にこのレンズのボケを含めた描写は気に入っています。色・コントラストが良好でパンチのある描写がGood。G Masterや無印とは少し違う、ヌケの良さがいい味を出しているように感じます。
逆光耐性は良好で、実写でゴーストが問題となるシーンは少ないです。コンパクトで効果的なフジツボタイプのレンズフードも役に立っているはず。
F2.8やF4で綺麗な光条が発生するのは意外でしたが、サイズが小さいので実写で役に立つ光条とはならない可能性あり。
周辺減光は悪目立ちする時もあればいいアクセントとなる場合もあり、状況に応じてレンズ補正を切り替えています。F2.5のレンズとしてはやはり少し減光が大きいので、基本的にはレンズ補正を適用しておくのがおススメ。
購入早見表
FE 40mm F2.5 G | |||
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作例
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- AF 45mm F1.8 FE
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- NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
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