オリンパスの交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」のレビュー第一弾を公開。金属鏡筒・防塵防滴の頑丈な外装ですが、MFクラッチやL-Fnが使い辛く、フォーカスブリージングが目立ちやすいようです。
M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROのレビュー一覧
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビュー完全版
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.5 ボケ・周辺減光・逆光編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.4 諸収差編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.3 解像チャート編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.2 遠景解像編
- M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO レビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
まえがき
2015年に登場したマイクロフォーサーズ初の大口径広角ズームレンズ。当時は広角7mmをF2.8でカバーする広角レンズが貴重で、広角レンズの明るさが必要だった人は重宝したのではないでしょうか。オリンパスPROシリーズらしく、金属鏡筒と防塵防滴の堅牢な外装でアウトドアの撮影に適しています。
ただし、M.ZUIKOレンズでは珍しいドーム状の前玉を備え、円形フィルターに対応していない点には注意が必要です。フィルターワークがしたい場合、7mm F2.8を諦めてパナソニック「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」を検討するか、高価でセットアップに手間がかかる角形フィルターを選ぶしかありません。
- 発売日:2015年 6月26日
- 初値:¥132,189
- マウント:マイクロフォーサーズ
- フォーマット:4/3
- 焦点距離:7-14mm
- レンズ構成:11群14枚
- 開放絞り:F2.8
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:7枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.2m
- 最大撮影倍率:0.12倍
- フィルター径:非対応
- 手ぶれ補正:-
- テレコン:-
- コーティング:ZEROコーティング
- サイズ:φ78.9x105.8mm
- 重量:534g
- 防塵防滴:IP53相当
- AF:ステッピングモーター
- その他:MFクラッチ
- 付属品:レンズキャップ(LC-79), レンズリアキャップ(LR-2), レンズケース(LSC-0914), 取扱説明書, 保証書
防塵防滴仕様ですが、前玉にフッ素コーティング処理されていないのは残念。特にフィルターで前玉を保護できない本レンズにとって、水滴や砂塵が付きやすい環境ではメンテナンスが必須となります。
価格のチェック
売り出し価格は13万円程度でしたが、現在は世界情勢や物価の上昇で16万円まで値上がりしています。この価格に見合うだけの光学性能やAF性能を備えているのか、今後のレビューで確認したいと思います。
外観・操作性
箱・付属品
7-14mmはOM SYSTEMブランドに切り替わる以前のレンズです。PROシリーズ始動時と同じ黒を基調としたシンプルなデザインの箱。正面には大きく焦点距離が表示され、小さく35mm判換算時の焦点距離を表示しています。レンズ本体のほか、かぶせ式のキャップとソフトケース、説明書・保証書が付属します。
外観
固定式レンズフードはプラスチック製ですが、ほか全体的に金属パーツで構成されています。しっかりとした作りで、PROシリーズらしい作り。ただし、冬場は鏡筒が冷えやすく、屋内など温かい場所へ移動すると、表面に結露が付きやすい。
フォーカスリングとズームリングはどちらも金属製。表面は滑り止めの加工が施されています。シリアルナンバーを含め、印字は全てプリント。エッチングなどの加工はありません。
レンズキャップ
固定式レンズフードに被せるタイプのレンズキャップが付属。両側にロックがあるため、簡単には脱落しません。ただし、装着する方向がある点に注意。
ハンズオン
全長108mm、重量534g。マイクロフォーサーズ用の広角ズームの中では最も大きく重いレンズです。重厚感があるいっぽう、長時間の撮影では重量を感じるかもしれません。OM-DやOM-1と組み合わせるぶんにはバランス良好ですが、PENやGFと言った小型軽量ボディとは相性が悪い。「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」は全長が少し短く、重量は200gほど軽い。
前玉・後玉
固定式レンズフードの内側にはドーム状の大きな前玉が見えます。焦点距離を14mmに設定すると前玉が奥へ引っ込み、7mmに設定すると前方へ繰りだします。(それでもフードに隠れる程度)レンズやフードの形状から、通常の円形フィルターは装着できません。リアフィルターホルダーにも対応していないので、社外製角形フィルターのみ利用可能。ホルダー・角形フィルターは高価でセットアップが手間なので、OM-1 Mark IIのようにGND効果をシミュレーションできるカメラを選択するのも一つの手と言えそうです。
STCでは105mmのねじ込み式フィルターに対応するアダプターを販売していると教えていただきました。(ありがとうございます!)
金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定されています。後玉はマウント付近で固定されており、ズーム操作で移動することはありません。付近には製造国が印字されており、少なくとも今回の個体はベトナム工場で生産されているようです。
フォーカスリング
PROシリーズでは一般的なサイズの金属製フォーカスリングを搭載。MFクラッチ構造を採用しており、後方へスライドすることで素早くMFに切り替えることが可能。MFクラッチは便利ですが、ふとした拍子に切り替えてしまうこともあるので注意が必要。
MFクラッチ時はフォーカスリング上のピント距離表示に合わせて動作します。リニアレスポンスですが、この際のストロークは90度未満と短い。微調整には不向きと感じる場合があります。MF操作時の動作が粗いと感じた場合、MFクラッチを使わずにカメラ側のMFを利用するのがおススメです。
ズームリング
フォーカスリングの手前に幅が広いズームリングを搭載。前玉周辺の防塵防滴仕様(ゴム製シーリング)が引っかかるのか、滑らかに回転しますが少し重め(特に7mm周辺)。
前述したように、ズーム操作で前玉が前後するもののフードに隠れた状態は違いなし。全長に変化はありません。
ボタン
側面にはL-Fnボタンを搭載。マウント付近にあるので、カメラ装着時はやや押しづらい。
装着例
OM-1に装着。このクラスのカメラはグリップが大きく、握りやすい。大きなレンズを装着しても全く問題が無いように感じます。バランスも良く、過度なフロントヘビーとは感じません。PENやLUMIX GFなど小型ボディにも装着可能ですが、片手で保持する際は追加のグリップが欲しくなります。
AF・MF
フォーカススピード
フォーカスレンズはステッピングモーターで動作。静かで滑らかに動作します。OM-1との組み合わせで、近距離から無限遠まで非常に高速。C-AF動作時は急接近する場合に問題なく追従しているように見えます。注意する点があるとしたら、後述するフォーカスブリージング。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
ご覧のように、特に広角側で非常に目立ちます。動画撮影時に目立つほか、周辺部や隅のAF動作が不安定となるのが悩ましいところ。望遠側では少し良くなりますが、それでも目に付く程度の変化があります。
精度
フォーカスブリージングが影響しているのかどうか不明ですが、S-AF使用時にピントの山を掴み損ねる場合があります。特にLUMIXと組み合わせた場合に多い印象あり。個人的には1点フォーカスエリアかつC-AFで対応。
MF
前述したように、MFクラッチはストロークが短いので細部のピント合わせが苦手なシーンがあります。状況におうじてノンリニアのMFと使い分けたほうが良いでしょう。
まとめ
PROシリーズらしい金属鏡筒・防塵防滴仕様の広角ズームレンズ。しっかりとした作りで、価格に見合う堅牢なレンズのようです。しかしアウトドアでの使用を想定しているとして、メンテナンスが難しいドーム状の前玉がコンセプトと矛盾しているのが悩ましいところ。そうは言っても、7mm始まりの超広角ズームでフラットな前玉は難しかったのかもしれません。
MFクラッチ使用時のフォーカスリングはストロークが短く使い勝手が悪いと感じるものの、クラッチを使わなければ特に問題なしAFは十分高速で快適と呼べる分類ですが、フォーカスブリージングが目立ちます。カメラを固定している状態で、ピント位置が前後するとフォーカスブリージングの影響が気になる場合あり。S-AF時はピント精度の低下を招いているようにも見えるので、OM-1などの最新機種ではC-AFがおススメ。実写テストは現在進行中。ざっと使ってみた限りでは良好な光学性能を発揮しています。フィルターワークが難しい or 手間がかかる点が短所となるものの、最新の「OM-1 Mark II」では疑似的なGNDフィルターを利用することが出来ます。そのあたりのカメラと組み合わせるなら検討する価値あり。F2.8の絞り開放で周辺部や隅が少しソフトと感じる場合があるものの、F4~F5.6まで絞ると概ね改善。全体的に優れた解像性能を発揮します。
購入早見表
作例
関連レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
- LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.
- LEICA DG Vario-Summilux 10-25mm F1.7 ASPH
- M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
- LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH.
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