ニコン「NIKKOR Z 26mm f/2.8」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
NIKKOR Z 26mm f/2.8のレビュー一覧
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビュー 完全版 2023年4月2日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編 2023年3月27日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.5 諸収差編 2023年3月12日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ編 2023年3月10日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート編 2023年3月6日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.2 外観・操作・AF編 2023年3月4日
- ニコン NIKKOR Z 26mm f/2.8 レンズレビューVol.1 遠景解像編 2023年3月3日
像面湾曲
像面湾曲とは?
像面湾曲があるレンズは、中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なります。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後にピントの山が移動している場合、像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合あり。ただし、近距離でフレーム一杯にフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても過度に心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あります。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
ピント位置が中央でも隅でも、フラットな被写体に対して大きな変化はないように見えます。あえて言えば、隅の絞り開放はコマ収差の影響でコントラストが低く、ピント位置の精度が低下する傾向があります。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
小型軽量な広角レンズですが、倍率色収差は綺麗に補正されているように見えます。この良好な結果は確かに描写に反映されており、コントラストが高い状況でも色づきはほとんど目立ちません。補正が難しいボケへの色づきもありません。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
よく見ると軸上色収差が極わずかに発生していますが、実写で問題となることはまずないでしょう。小型軽量なレンズとしては良好に補正されています。軸上色収差ではありませんが、絞った際の被写界深度は遠側に向かって広がっているように見えます。フォーカスシフトの軽微な影響が見られますが、実写で過度に心配するほどの量でもありません。
球面収差
ピント前後のボケ質に大きな変化はなく、球面収差は良好に補正されているように見えます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
無補正の状態だと、やや目立つ樽型歪曲が発生します。僅かに陣笠状の歪みとなっているので、リニアな手動補正では綺麗に修正できない可能性あり。幸いにも、歪曲収差はボディ側で自動的に修正されるほか、格納されているプロファイルで現像ソフトを使った際にも自動的に補正されます。ただし、自動補正が適用できない現像ソフトでは注意が必要。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
このレンズの諸収差で欠点となるポイント。フレーム隅に向かってやや目立つコマ収差が残っています。フレーム隅におけるコントラスト低下の原因となっている可能性あり。これを改善するには2段ほど絞る必要があります。近距離・遠景における解像テストの結果と一致する傾向です。
まとめ
小型軽量ながら、補正が必要な収差は綺麗に補正されています。2種類の色収差はどちらも光学的にきちんと補正されています。極端なコントラスト状況下でも、目立つ色づきに遭遇する機会は少ない。日中でも絞り開放を快適に使うことができるレンズです。
気を付ける点があるとすればコマ収差。
像面湾曲が少ないので遠景のパンフォーカスにてF2.8を利用しやすいですが、コマ収差による周辺部の点光源の変形やコントラスト低下もあるのでケースバイケース。夜景や星空などとは相性が悪いと感じるかもしれません。
RAWの歪曲収差は確かに目立ちますが、ライブビューではリアルタイムに補正され、目立つ歪曲収差が気になるポイントは無いと思います。JPEGや主要なRAW現像ソフトであれば自動的に補正されるので、歪曲収差の存在に気が付かない人も多いはず。
補正する部分は補正し、(光学的な補正を)諦める部分は諦めているレンズです。全体的に見てバランスが良く、実写で厄介と感じるのはF2.8におけるコマ収差のみ。Z 28mm F2.8と似たような傾向ですが、軸上色収差の補正状態がやや良好。絞り開放のコントラストなどでZ 26mm F2.8が僅かに優れていると感じるかもしれません。
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