ニコン NIKKOR Z 28mm f/2.8 SEのレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質や玉ボケの描写、撮影距離によるボケ質の変化についてチェックしています。
NIKKOR Z 28mm f/2.8のレビュー一覧
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Index
まえがき
2019年にロードマップに追加され、2021年3月に「Z 40mm F2」と共に開発発表、そしていよいよ登場するかと思いきや、Z fc用にデザインが変更された「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」が先に正式発表された(6月29日)。その後は世界情勢が影響したためか発売時期が遅れ、ようやく10月1日にZ fc用のキットレンズとしてリリースされた。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | Z | 最短撮影距離 | 0.19m |
フォーマット | 35mm | 最大撮影倍率 | 0.2倍 |
焦点距離 | 28mm | フィルター径 | 52mm |
レンズ構成 | 8群9枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F16 | コーティング | 不明 |
絞り羽根 | 7 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ71.5×43mm | 防塵防滴 | 配慮 |
重量 | 160g | AF | STM×2 |
その他 | プラスチックマウント | ||
付属品 | |||
レンズキャップ |
、まず注目すべきはレンズサイズ。フルサイズに対応した広角28mmながら、全長はわずか43mm、そして重量は160gと小型軽量なレンズに仕上がっている。このため、フルサイズカメラのみならず、APS-Cセンサーサイズのカメラと組み合わせてもバランスが取りやすい。実際、このレンズはZ fcのキットレンズとして世に送り出された。もちろんフルサイズミラーレスに装着して使いことも出来る。
小型軽量で低価格ながら、レンズは防塵防滴に配慮した設計となっている。対応するボディと組み合わせることで天候を選ばずに撮影できるのは有難い。さらに、この価格帯としては珍しく、フォーカシングにマルチフォーカス構造を採用。これにより近距離でも収差変動の少ない光学性能を実現。
レンズ構成は8群9枚でうち非球面レンズを2枚採用している。MTFを見る限り、小型軽量な広角レンズとしては非点収差が良く抑えられており、周辺部の落ち込みが少ないように見える。実写でチェックしないと断言はできないものの、良レンズの予感。
価格のチェック
売り出し価格は34,650円(税込)。Z 40mm F2.8よりは高いものの、それでもNIKKOR Zレンズの中では非常に安いフルサイズ用レンズに違いない。防塵防滴に配慮した設計、マルチフォーカスなどの特性を考慮するとコストパフォーマンスは高い。
NIKKOR Z 28mm f/2.8 | |||
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前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
「NIKKOR Z 40mm f/2」と同じく前後のボケ質に大きな違いが見られ、後ボケが柔らかく、前ボケが硬調な描写。広角28mmで前ボケをフレームに入れにくいことを考えると、後ボケ重視のチューニングは良い采配と言える。ただし、残存する軸上色収差が硬い前ボケに写りやすいので、コントラストが高いシーンでは気を付けたほうが良いかもしれない。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
実写で確認
口径食の影響が少なかった「NIKKOR Z 40mm f/2」と比べると周辺部から隅にかけて玉ボケの変形が強く見える。それでも、大口径レンズと比べると穏やか。内側の描写は滑らかで、非球面レンズによる影響は見られない。ガラスモールド非球面レンズの研磨精度が高いのか、それともプラスチックモールド非球面レンズなのか、レンズ仕様に記載な無い。
F4まで絞ると口径食はほぼ解消する。絞り羽根の影響も少ないので、隅が荒れる場合は少し絞ったほうが良いかもしれない。F5.6まで絞ると口径食は解消する。
軸上色収差の影響なのか、コントラストが高い領域のボケには縁取りに色づきが発生する。大問題となるほどではないが、場合によって騒がしくなる可能性あり。
ボケ実写
接写
広角28mmのF2.8レンズとしては評価できる滑らかなボケ質。被写体に近寄った際は周辺や隅まで安定した描写が得られ、これと言って騒がしさは感じない。ピント直後は球面収差の影響か滲むように柔らかくボケているのが特徴的。ピント面のコントラストを優先する場合はF4~F5.6まで絞ったほうが良い。とは言え、絞り値による描写の変化はZ 40mm F2ほど顕著ではなく、比較的安定した描写傾向に見える。
近距離1
少し距離が長くなっても周辺の描写は安定している。Z 40mm F2はこの時点で周辺のボケがより騒がしかった28mmも騒がしくなる兆候が見られるものの、まだ落ち着いているほう。
近距離2
さらに撮影距離を長くすると、周辺部から隅にかけて騒がしい描写となる。とは言え、ボケが小さくなっているので、あまり目立たないかもしれない。低価格な28mm F2.8レンズとしては許容範囲内に見える。
撮影距離による変化
全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影。全身をフレームに入れるような距離感で十分なボケを得るのは難しい。膝上、上半身くらいまで近寄ると、多少のボケを得ることが可能。ただし、それでも十分というには少し足りない。バストアップまで近寄ると、なんとか背景との分離が可能に見える。さらに顔のクローズアップでは適度なボケ量が得られる。
今回のおさらい
極上のボケとは言えないものの、手ごろな価格の28mm F2.8広角レンズとしては良好な仕上がりに見える。特にボケが大きくなる接写時は残存する球面収差も手伝って滑らかな後ボケを得ることができ、少し離れても周辺部まで極端な荒れ方はしない。フルサイズでもAPS-Cでも使い勝手の良い描写と感じるはず。
ボケの色付きは実写で目立たず、高コントラストな状況でも特に大きな問題は発生していない。非球面レンズの影響は非常に少なく、玉ボケに何ら悪影響がないのは強みとなるはず。積極的にボケを入れたくなる描写であり、使っていて楽しい。
「28mm F2.8」というスペック上、大口径ズームレンズで補うことが出来るボケではある。しかし、球面収差が残った柔らかいボケをズームレンズで得るのは難しく、さらに小型軽量な単焦点レンズであることから、このレンズの存在意義は間違いなくあると思う。
購入早見表
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