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RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.4 ボケ編

キヤノン「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMのレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

前後のボケ質に大きな違いが無い比較的ニュートラルな描写だ。敢えて言えば後ボケが少し滑らかに見えるが、実写では目立たないと思われる。軸上色収差の影響が僅かに残っているものの、大部分のシチュエーションで問題と感じない程度である。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

18mm

APS-Cの18mm F3.5と言えども、レンズの接写性能が高いのでボケを大きくすることが可能だ。これを活かせるシチュエーションは限られてくるものの、ボケ質は良好で口径食の影響も少ない。高倍率ズームの広角端としては良好な描写である。

50mm

18mmと同じく口径食の影響が目立たず、ズームレンズとしては滑らかな描写の玉ボケだ。1~2段絞っても実用的な描写を維持している。

150mm

少なくとも玉ボケを大きくしたい場合は口径食の影響が少なく、描写も非常に良好だ。ニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」と比べて縁取りが目立たず、内側の描写は遥かに綺麗である。

ボケ実写

18mm

玉ボケのテストと異なり、実写シーンではフレーム隅のボケが口径食の影響を強く受けていることが分かる。それでも過度に騒がしい描写ではなく、色収差の影響も少ない。高倍率ズームの「18mm F3.5」としては上々の結果だ。

撮影距離が長くなるとフレーム隅の描写がさらに騒がしくなる。お世辞にも褒められた描写では無いが、ニコン18-140mmと見比べると比較的滑らかな描写だ。

50mm

開放F値が5.6と大きいが、接写時は滑らかな後ボケを得ることができる。フレーム隅まで口径食の影響が少なく、色収差などで悪目立ちすることもない。

撮影距離が長くなり、相対的にボケが小さくなると、コントラストが高い背景で少し騒がしく見えるかもしれない。ただし18mmほど隅の描写が荒れず、扱いやすい描写が続く。

150mm

150mm F6.3と言えど、接写時はボケが非常に大きく、そして滑らかになる。数段絞っても全く問題が無い。F22あたりから少し騒がしく見えるようになるが、F22まで絞ってボケを得たい機会はそう多く無いはずだ。

撮影距離が長くなっても後ボケは良好な描写だ。F16付近まで絞っても大きな問題は感じない。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立ててポートレートの撮影距離でレンズの絞りを開放して撮影した。結果は以下の通りである。

18mm

残念ながら18mm F3.5の人物撮影でボケを得るのは難しい。かなり接写する必要があり、その際のボケもあまり大きくない。

50mm

上半身くらいから徐々にボケが強くなり、顔のアップでは十分なボケ量を得ることができる。

150mm

全身をフレームに入れても何とか被写体を分離することが出来る。上半身やバストアップまで近寄ると十分なボケ量となり、顔のクローズアップで背景を溶かすまでに至る。

まとめ

ズームレンジや価格設定を考えるとバランスが良く扱いやすいボケ質だ。前後のボケ質に大きな偏りはなく、非球面レンズの粗や口径食の影響は目立たない。色収差もよく抑えられているのでボケの色づきが少なく、コントラストが高い状況でも悪目立ちしない。単焦点レベルの滑らかさやボケ量は期待できないが、キットレンズとしてはかなり良い。

広角側で大きなボケを得るのは難しいが、被写体に近寄って撮影することでボケを大きくすることは可能だ。大きな被写体で後ボケを得ることは出来ないが、広角をあきらめれば焦点距離を伸ばして100mmや150mmを活用することで背景から分離することが出来る。

繰り返しになるが、ズームレンズとしては良好なボケだ。中途半端にぼかすと広角側のフレーム隅で騒がしくなる可能性が残っているものの、それでもニコンの最新キットレンズ(Z 18-140mm)と比べて良質な描写に違いない。強くおすすめできるズームレンズである。

購入早見表

RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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