キヤノン「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
RF24-50mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビュー 完全版
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.5 諸収差編
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.4 ボケ編
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.3 解像チャート編
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.2 遠景解像編
- RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
24mm
未補正のRAWでわずかに残存していますが、キットレンズとしては良好に補正されています。画質への影響も少なく、簡単に修正することが可能。
28mm
24mmと同じく良好な補正状態です。
35mm
広角側と比べて、さらに良好な結果。
50mm
35mmと比べると少し目立ちますが、それでも良好なパフォーマンスを発揮。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
24mm
ピント面に若干の色づきが見られるものの、特に大きな問題はありません。
35mm
広角側と同じく若干の色づきあり。
50mm
24mmや35mmと同程度の収差。
球面収差
少なくとも50mmの近距離では球面収差が残存しており、前後のボケ質で目に見える形で影響あり。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
24mm
未補正のRAWでは強い樽型歪曲に加え、四隅が真っ黒。これはレンズのイメージサークルがフルサイズセンサーをカバーしていないことを示しています。強めの歪曲収差を補正する流れで、四隅をクロップして引き延ばす前提の光学設計となっているように見えます。
28mm
24mmと比べると隅の減光が緩和していますが、それでも部分に改善しない黒部分が残っています。
35mm
35mmまでズームするとイメージサークルがセンサー端まで広がります。歪曲主査は相変わらず強め。
50mm
望遠端まで樽型歪曲が継続。ただし影響はズームレンジの中でもっとも少なく、未補正のままで使えなくもない。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
24mm
絞り開放からコマ収差の影響はほとんどありません。キットレンズながら良好な補正状態。コマ収差に限って言えば絞る必要が無いように見えます。
28mm
非点収差のような放射状の流れはあるものの、引き続き点光源の目立つ変形はありません。絞った際に筋状のフレアは原因不明ですが目立たない程度。
35mm
広角側と比べると点光源が僅かに非点収差の影響を受けているように見えます。悪くありませんが、絞ることにより改善の余地あり。
50mm
35mmよりも非点収差の影響は少ないですが、コマフレアのような変形が発生しています。2段ほど絞ると改善。点光源にこだわらなければF6.3でも十分な補正状態に見えます。
まとめ
広角側の極端な歪曲収差が目立つものの、それ以外は全体的に良好な補正状態です。色収差は24-105mm(USM / STM)と比べて良好で、コマ収差もズーム全域でよく抑えられています。ズーム全域で良好な解像性能を実現しているのも納得の光学性能。
注意点は接写時に球面収差が増大すること。ただし、これは後ボケに良い影響として作用するため、必ずしも「好ましくない残存収差」とは言えません。むしろ個性的で面白い「レンズの味」だと思います。全体的に良好な光学性能ですが、50mmの接写時のみ滲むような柔らかい描写が得られるのは面白い。
全体的に見て、低価格のキットレンズとしては驚くほど良好なパフォーマンスを発揮しています。ニコンとソニーの似たようなレンズも同様に良好な性能ですが、それらと比べて遜色のない優れたレンズと言えるでしょう。
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