ソニー「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」をα7R IVと組み合わせたレビュー第三弾を公開。今回はレンズの色収差や歪曲収差など、諸収差に関するテストとレビューを公開しています。
Index
レンズのおさらい
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | ソニーE | 最短撮影距離 | 0.5m |
フォーマット | フルサイズ | 最大撮影倍率 | 0.14倍 |
焦点距離 | 55mm | フィルター径 | 49mm |
レンズ構成 | 5群7枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F1.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | T* |
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ64.4×70.5mm | 防塵防滴 | 配慮 |
重量 | 281g | AF | リニア |
付属品 | |||
レンズポーチ/説明書/保証書 |
フルサイズEマウントカメラシステム最初の単焦点レンズの一つ(もう一つは「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」)。当時はまだ一眼レフが主流だった時代であり、50mm単焦点と言えばダブルガウスが一般的。そんな中で、バックフォーカスが短く、「Sonnar」を冠したこのレンズはまさに異次元のレンズ。
レンズ構成は5群7枚と比較的シンプルながら、非球面レンズを3枚も使用。当時としては珍しい第一面を凹面とした香華く設計を採用。全体的な構成はダブルガウスとは大きく異なり、従来のSonnarタイプとも異なります。敢えて言えば第1・2レンズと第3・4レンズが張り合わせとなっており、枚数の割に群数が少ないという点で「Sonnar」を称しているのでしょうか?(と言っても、それほど張り合わせレンズが多い訳でも無さそうですが…)
フォーカスレンズは第5レンズ1枚を動かすインナーフォーカス方式で、アクチュエータにはリニアモーターを採用しています。繰り出し式フォーカスと比べてユニットが小さく、高速かつ静音性の良好なフォーカスを期待できそうです。ただし、リニアモーター駆動のレンズは通電していない時にフォーカスレンズを固定することが出来ません。レンズを振ると異音がなる点に留意が必要です。
レンズはZAシリーズらしく金属鏡筒を採用し、堅牢性と高級感を実現。今でこそFE 28mm F2やFE 35mm F1.8も似たような作りと感じますが、競合他社のプラスチック製外装と比べるとしっかりとした作り。「防塵防滴に配慮した設計」ですが、明確にシーリングが施されている記述は無く、過信は禁物。
今では一般的となりつつある「絞りリング」や「AFLボタン」に全く対応していないうえ、「AF/MF」スイッチも存在しないので使い勝手は悪い。
価格のチェック
新品価格は7?8万円を推移。キャッシュバックキャンペーンの対象製品となることが多く、その場合は6万円程度で購入することも可能。正直に言うと少し高めの価格設定。
Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA | ||||
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ソフトキャリングケース LCS-FEA1 | ||||
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レンズフロントキャップ?ALC-F49S | ||||
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像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認
特に大きな問題はありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
完璧な補正状態ではありませんが、多くの撮影環境で問題とはならないでしょう。隅でも僅かに残存する程度で、カメラや現像ソフトの自動補正で簡単に修正可能。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
絞り開放でピント面前後に緑と紫の色付きが発生しています。高コントラストな領域で目立つ可能性あり。実写の全体像で色収差が目立つシーンは稀だと思いますが、拡大する場合は比較的簡単に色収差の影響を見つけることが出来ます。
色付きはF2.8までやや目立ち、F4?F5.6で徐々に改善します。極端に悪い補正状態では無いものの、価格を考慮するともう少し健闘して欲しいところ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
極僅かな樽型歪曲で良好に補正されています。カメラ側の自動補正を適用せずに問題となるシチュエーションは少ない。もともと50mmは歪曲収差が少ない単焦点レンズが多いものの、ミラーレス化である程度の樽型歪曲を残すレンズもあります。その中では積極的に光学補正で歪曲収差を補正しているように見えます。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
最短撮影距離
絞り開放でかなり目立ち、F2.8?F4まで絞ってもいくらか残存しています。光学的に光量落ちを抑えるためにはF5.6まで絞る必要あり。
無限遠
最短撮影距離よりも少し光量落ちが強くなっています。F5.6まで絞っても僅かに光量落ちが残っているので、完璧に抑えたい場合はF8まで絞る必要があります。
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
古いガウスタイプの50mm単焦点レンズとくらべると良好ですが、ミラーレス用の少し高価な標準単焦点レンズと考えるともう少し健闘してほしかったところ。ソフトウェアによる補正が難しく、光学的に収差を抑えるためにはF2.8?F4まで絞りたい。
今回のまとめ
全体的に見て、問題と感じるのは絞り開放付近における軸上色収差とコマ収差のみ。軸上色収差は撮影環境にもよりますが、主にハイライト付近におけるパープルフリンジとして発生。コマ収差はイルミネーションや夜景・星空などの点光源に悪影響が見られるはず。どちらも絞ることで改善しますが、「F1.8」を活かしたいのであれば注意が必要です。
とは言え、実写で問題が顕著となるシチュエーションは少ないはず。ピンポイントで色収差補正やコマ収差補正を極めたレンズが欲しいのであれば他の選択肢を要検討ですが、特にこだわりが無いのであれば、問題視する必要はありません。
レンズの価格を考慮するともう少し高度な補正状態を期待していたのですが、だからと言って「ディールブレーカー」となるほどの欠点ではない。これら欠点よりは安定した解像性能や滑らかなボケの長所が際立っている。(ボケのレビューは後日公開予定)
購入早見表
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作例
関連レンズ
- Planar T* FE 50mm F1.4 ZA
- FE 50mm F1.8
- FE 50mm F2.5 G
- FE 50mm F2.8 マクロ
- 45mm F2.8 DG DN
- 50mm F1.4 DG HSM・マウントアダプタ MC-11
- Loxia 2/50
- Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
- SPEEDMASTER 50mm F0.95
- AF 45mm F1.8 FE
- AF50mm F1.4 FE
- VILTROX AF 50mm F1.8
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