銘匠光学「TTArtisan AF 35mm F1.8」のレビュー第三弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
おことわり
今回はPERGEARより無償提供の「TTArtisan AF 35mm F1.8」を使用してレビューしています。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。
TTArtisan AF 35mm F1.8のレビュー一覧
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.6 周辺減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.5 諸収差編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.4 近距離解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.3 ボケ編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.2 遠景解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 35mm F1.8 レンズレビュVol.1 外観・操作・AF編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
前後のボケ質には明らかな違いが見られ、後ボケは滲みを伴う柔らかい描写。その一方で、前ボケは縁取りが硬く2線ボケの兆候があります。また、軸上色収差の補正が完璧ではなく、ボケの色づきが発生している点にも注意。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
非球面レンズを使用していないため、玉ボケの内側は滑らかで綺麗。玉ねぎボケの兆候はありません。残存する色収差により玉ボケの外側に僅かな色付があるものの、顕著な影響ではないように見えます。そのいっぽう、隅に向かって口径食による玉ボケの変形があり、状況によっては少し騒がしく感じる場合あり。解消するには3段ほど絞る必要があります。
ボケ実写
近距離
中央とその周辺は滑らかで綺麗な描写ですが、周辺部やフレームの端・隅で騒がしくなる兆候が見られます。価格を考慮すると健闘していると言えます。逆光レビューで指摘予定ですが、日陰でもフレアの影響を受けやすい。
中距離
撮影距離が長くなると、中央周辺でも玉ボケの縁取りが発生。悪く無い描写ですが、状況によっては色づきが少し目立つ可能性あり。ボケそのものは綺麗で滑らか。隅に向かって口径食の影響は強くなり、中央の玉ボケと比べるとかなり小さめ。絞っても解消する傾向はないので諦める必要あり。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるとボケは小さく、被写体を背景から分離するには力不足。膝上か上半身まで近寄ると、背景から分離し始めます。この際のボケは綺麗に見えますが、隅の口径食は強め。バストアップや顔のクローズアップでは満足のいく結果が得られます。
まとめ
手ごろな価格を考慮すると使い勝手がよく、程よい味付けのある描写。癖が強すぎない程度に球面収差が残存しており、後ボケで滲むような柔らかいボケを得ることが出来ます。反動で前ボケは少し硬めですが、過度ではないので心配する必要はありません。色収差によるボケの色づきはゼロと言えないものの、実写で目立つ機会は限られていると感じました。特に滑らかで柔らかい後ボケでは目立ちにくく、硬い前ボケの色づきのみ気を付けておけばいいのかなと。最も注意すべきは少し離れて撮影する場合の口径食。周辺部や隅のボケが変形し、状況によっては少し騒がしく見える可能性あり。とは言え、この価格帯の標準大口径レンズとしてはきちんとした描写であり、少なくともVILTROXよりも良好。絞り開放から安定感のある、滑らかで柔らかいボケが得られるレンズです。
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作例
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