ニコン「Z 8」のレビュー第一弾を公開。今回はカメラの外観と操作性、起動時間やシャッター音を確認しています。
Z 8のレビュー一覧
- ニコンZ 8 Ver 2.00 の新機能を確認する
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.7 解像性能編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.6 メニュー・カスタマイズ編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.5 ドライブ・連写編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.4 ピクチャーコントロール編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.3 ダイナミックレンジ編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.2 ISO感度・RAW編
- ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.1 外観・操作性編
- ニコン Z 8 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
Index
Z 8 外観・操作性
箱・付属品
箱
ニコン Zシリーズらしい黒と黄色を基調としたデザインです。装飾はごくわずかでシンプルなデザイン。
箱を開けるとカメラボディとアクセサリーが段ボールで間仕切りされています。50万円のカメラと考えるとシンプル過ぎる気もしますが、これも環境に配慮した取り組みの一環と言ったところでしょうか。
付属品
カメラ本体の他にはバッテリー、外部充電器、USBケーブル、ケーブルホルダ、ストラップが付属します。
外観
デザイン
ニコンZらしい角ばったボディデザインは健在で、Z 7やZ 6シリーズと比べると大きめのボディサイズとなっています。Z 9の縦位置グリップを切り落としたデザインと言えばその通りだし、D850のようなカメラと言ってもあながち間違いでは無さそう。少なくとも縦位置グリップを内蔵していないミラーレスとしては最大級のカメラ
質感
ボディの素材は前面にマグネシウム合金を採用し、上面と背面には帝人製の新素材「Sereebo® Pシリーズ」を使用しているとのこと。Sereebo®は炭素繊維複合材料(CFRTP)の商品名で、遡れば一眼レフカメラ「D5300」のようなカメラにも採用している素材。そしてZ 8に採用した「Pシリーズ」は複雑な形状も製造することが可能になった模様)
プラスチッキーで安っぽい印象は全くありませんが、他のZシリーズのような金属外装の質感でもなし。とは言え、しっかりとした作りで不安を感じる要素は全くありません。表面の塗装はきめ細かい粒状のマットブラックで、傷や指紋が付きにくくなっています。
製造国
製造国はタイで、コードネームは2022年には既に登録されていた「N2120」です。
センサーシールドなど保護機能
Z 9と同様にメカシャッターレスですが、その代わりにセンサーを保護するためのシールドを内蔵しています。これによりレンズ交換時にセンサーへのダメージを防ぐことができ、小ゴミの付着も低減できる可能性があります。
また、Z 9と同様にセンサー保護ガラス表面にはフッ素コーティング処理が施されている模様。これによりゴミや汚れが付着したとしても、メンテナンスしやすい設計。
ハンズオン
144×118×83mmで910gのボディ、正直に言えば非常に重い。外装にSereebo Pを使用して軽量化を実現しているにも関わらず、一眼レフのような重量感があります。小型単焦点レンズを装着してもボディの重量感は否めず、長時間の撮影で積極的に選びたいボディとは言えません。ボディサイズが大きいため、スリングバッグのように携帯性の高いカメラバッグへの収納も困難となる可能性あり。
Z 7やZ 6、Z 5などの携帯性に慣れてしまうと、拒否感のあるカメラサイズ・重量と言えるでしょう。
カメラグリップ
ボディサイズが大きいため、小指までしっかりと握ることができるグリップを備えています。私は比較的指が短いほう(妻の手のサイズと同じくらい)でZ8のグリップは少し大きすぎなくらい。カメラの保持は問題ないものの、グリップした状態で各種コントロールを操作しようとすると指がギリギリ届くくらいで余裕がありません。逆に手が大きな人や厚手のグローブを装着した状態での操作には適している可能性あり。
コントロールレイアウト
正面
正面にはZカメラの多くが実装しているFn1・Fn2ボタンを搭載。カスタマイズ可能で登録できる機能が豊富、そして使い勝手の良い配置のボタンです。頻繁に使用する機能を登録しておくのがおススメ。個人的にはFn1に「再生」、Fn2に「拡大」を割り当てています。
左側面前方にはZ 9と同じフォーカスモードボタンを搭載。ニコンのデジタル一眼レフではお馴染みの配置・機能のボタンであり馴染みのある操作性と感じる人も多いのではないでしょうか。残念ながらスイッチは無し。また、ボタンカスタマイズに対応していないので、他の機能を割り当てることができません。個人的にはZ 7と操作性を統一したいので、この配置のフォーカスモード機能はあまり使わず、別の機能に変更したかった。
背面
ボタンのレイアウトはZシリーズらしいものとなっていますが、全く同じデザインはZ 9のみ。Z 7・Z 6と比べると再生ボタンやドライブモードの位置が異なります。
左肩にはFn3ボタンとゴミ箱ボタンを搭載。Fn3ボタンは初期設定でピクチャーコントロール呼び出し機能が割り当てられています。
右肩の配置はZカメラの多くと共通しています。相変わらず一等地に静止画/動画の切替レバーとDISPボタンを配置。ニコン一眼レフのデザインを考慮すると分からないでもないデザインですが、FnスイッチやFnボタンがあると尚良かったかなと。幸いにも、Z 8では「DISP」ボタンをFnボタンのようにカスタマイズすることが可能。ただし、「押しながらダイヤル操作」系の機能は割り当てることが出来ないようです。DISP機能は他のボタンに割り当てることも可能。
お馴染みのサブセレクターを搭載。他のカメラと同じく初期設定の「中央押し込み」はフレーム中央に戻る機能が割り当てられていないので注意が必要です。RESET機能の他にも、AF-ONなど他のボタンの機能を割り当てることが可能。
背面右下のレイアウトはZカメラらしく4つのボタンが密集しています。Z 9と同じく再生ボタンがMENUボタン下部の配置となっており、この点でZ 7やZ 6シリーズと異なります。再生ボタンが右手で素早く操作できる配置となっているのは個人的に歓迎したいポイント。
拡大縮小ボタンはZカメラらしい配置となっており、ボタンカスタマイズには非対応。操作しやすいボタンのため好みの機能を割り当てたいところですが…。(ロックオンAFの解除などで使うため、カスタマイズ不可となっているのだと予想)
マルチセレクター(方向ボタン)はAFエリアの移動やメニュー画面の操作に使います。他社のように方向ごとにFnボタンとしてカスタマイズすることはできず、機能は固定されています。サブセレクターがあるので、マルチセレクターで諸機能(ホワイトバランスやピクチャーコントロールなど)を呼び出せると良かったなと。
上面
レリーズボタン周辺にはZカメラ上位機種でお馴染みの3連ボタンを搭載。それぞれボタンカスタマイズに対応しています。それぞれ形状が異なり、押し方にも差異が発生するようになっている上手いデザイン。
レリーズボタン同軸の電源スイッチは、ONからさらに回転することで、ボタンイルミネーションや肩の表示パネルのバックライトをオンオフすることが可能。再度回すと点灯が解除されます。
表示パネルはバックライト付きのため、低照度でも視認しやすい仕様となっています。キヤノンEOS Rシリーズのように柔軟性のある表示方法(セルフタイマーのカウントダウン表示・充電中のマーク表示など)ではありませんが、撮影に必要な情報の大部分は確認することが出来ます。
左肩にはニコンの上位機種らしい4つのボタンを搭載。Z 9を除く従来機との大きな違いは「MODEダイヤル」ではなく「MODEボタン」を搭載していること。MODEボタンを押しながらダイヤル操作することで「P/A/S/M」の露出モードを行き来することが可能。他のボタンにMODE機能を割り当てることもできるため、右手のみのMODE操作に対応。
注意点はZ 7やZ 6のようなカスタムモード枠が存在しないこと。ダイヤル操作でプリセットされた設定値を素早く読み出すことができません。その代わりに「撮影メニューの管理」という機能があり、A~Dの4枠に「P/A/S/M」を自由に割り当てることが出来ます。このあたりはメニューシステムのレビュー時に詳しく解説予定。Z 9やD850、D6ユーザーには馴染みのある操作体系ですが、APS-CやZ 7・Z 6からのアップグレード時には要注意。
ファインダーの横にはファインダーと液晶モニタの表示を切り替えるための専用ボタンを搭載しています。パナソニックのようにファインダーの表示倍率を変更する機能はなし。カスタマイズにも対応していません。
ファインダー
0.5型 369万ドットのOLEDパネルを使用。そして0.8倍のファインダー倍率となる優れた光学系を採用しています。50万円超のミラーレスカメラとしては低解像(他社は944万ドット・576万ドットなど)で、実際にα7R VやEOS R5と見比べてみると精細さでは見劣りします。その一方、AF動作などによる画質低下が見られず、安定感のあるファインダー像を得ることが可能。
連写時もライブビュー用・出力用の画像をそれぞれ撮影しているらしく(ニコンはデュアルストリーム技術と呼んでいます)、高速連写時もライブビュー映像を確認しながら撮影することが可能となっているよ模様。確かに連写時も滑らかなライブビュー映像を確認可能ですが、シャッタースピードが遅い場合(流し撮りなど)はブラックアウトが発生するようです。
また、低照度で露出を上げる場合はライブビュー映像が少しカクツキます。このような場合は敢えて露出補正をアンダーにするかマニュアル露出で撮影し、後処理で増感処理するのも一つの手と言えるでしょう。
丸形アイピースDK-33は左下のボタンを押すことで外すことが可能。一眼レフ用「DK-17F」のようなフッ素コーティング付きカバーガラスではなく、ゴム製のシンプルなアイピースです。
JJC製 DK-33互換大型アイカップを購入。通常の小さな丸形アイピースでは遮光性が不十分と感じた場合は検討してみると良いでしょう。ミラーレスでこのようなアイカップを装着するとチルトモニタと干渉することが多いものの、Z 8はボディサイズが大きく、突出したファインダー部によって干渉を免れています。
モニター
Zシリーズではお馴染みの3.0型 210万ドット液晶パネルを搭載。高解像で屋外においても見栄えの良いモニターです。特にこれと言って不満無し。可動方式はZ 9と同じく4軸チルトを採用。バリアングル構造のような自撮りには対応していませんが、光軸上で水平・垂直を素早く傾けることが出来るのがGood。
インターフェース
カメラ右側面にCFexpress Type BとSD UHS-IIに対応するスロットを搭載。ソニーのようにCFexpress Type AとSD UHS-IIをどちらも利用できるデュアルスロットではなく、CFexpress Type B ×1・SD UHS-II ×1の2スロット構造です。CFexpress側の容量を使い切ってしまうと、書き込み速度がはるかに劣るSD UHS-IIの使用が必須となる点に注意が必要です。これを避けるためには高価な大容量CFexpress Tyoe Bが必要となります。
カードスロットは防塵防滴仕様のシーリングあり。カバーは後方へスライドすることで開けることができ、ロック構造はありません、
左側面には3.5mmマイク・ヘッドホンをはじめ、フルサイズHDMIと2つのUSB-Cポートを搭載。USB-Cポートは上がテザー撮影など通信用で、下が充電・給電専用のポート。従来機のようにケーブル一本で給電しつつテザー撮影をすることは出来ません。将来的に外部SSDへの記録が可能になると、メリットが増してくるのかなと。
正面左上にはニコン上位機種らしい10ピンターミナルを搭載。ワイヤレスリモートやGPSユニットなどを装着することが出来ます。
起動速度
電源投入後、1秒とちょっとで起動し、AF動作からレリーズまで可能。爆速と言うには少し遅いものの、十分な起動速度と言えるでしょう。センサーシールドによる起動速度の低下は知覚できない程度に抑えられています。
センサーシールド オフ
センサーシールド オン
シャッター音の確認
Z 8はメカシャッターレスのため、シャッター音は疑似的な電子音です。カメラ内蔵マイクの制限もあるのか、電子シャッター音は控えめで目立たない程度。音量を上げることもできますが、レンズシャッターのような高音となり、メカニカルシャッターのような低音の電子音は発生しません。
撮影するだけならメカニカルシャッターレスでも問題ありませんが、一眼レフやメカシャッターでの撮影経験に慣れてしまっていると少し物足りなさを感じるかもしれません。また、高音の電子シャッター音はシチュエーションによっては聞こえにくく、撮影できたのかどうか不安になる場合あり。電子音を大きくすることで聞こえるようになりますが、メカシャッター音と比べて耳障りな印象。
シングルショット
高速連続撮影
まとめ
Z 9と同じく、一眼レフカメラからの移行を狙ったかのようなカメラに仕上がっています。頑丈で大きく重く、馴染みのあるコントロールレイアウトが特徴的。D850やD6からの乗り換えであれば、自然とZシステムへ移行できそうです。
一方、初期のZシリーズ「Z 6」「Z 7」とは明らかに異なる操作体系で、「MODE」や「管理メニュー」のシステムには習熟と自身に適したカスタマイズが必要と感じました。上位モデルへのステップアップで操作体系が大きく異なるのは厄介。Zシリーズは「6/7」ナンバーの操作に統一しても良かったのでは?というのが個人的な感想です。
巨大な一眼レフユーザー層を取り込むには、一眼レフの操作体系を継承する必要があったのかもしれません。また、一度覚えてしまえば「MODE」と「管理メニュー」の組み合わせを素早く切り替えることが出来るのは強みと言えるでしょう(繰り返しますが慣れるまで時間はかかると思います)。
一眼レフらしさはコントロールのみならず、ボディサイズにも表れています。競合するキヤノンやソニーよりも明らかに大きく、重く、一眼レフに近いカメラです。長時間の手持ち撮影は疲れやすくなるし、スリングバッグなど小さなカメラバッグへの収納性も良くありません。不便と言えば、間違いなく不便です。Z 9よりも小さいとは言え、携帯性の面では競合他社と比べて明らかに不利。
そのような場合はZ 7IIやZ 6IIを選べば良いと思われるかもしれませんが、AF性能などはEXPEED 7プロセッサ世代と比べると明らかに見劣りします。最新ニコンZシステムの恩恵を享受するためには最低でもZ 8のボディサイズを選ぶ必要あり。
ただ、このサイズ感と重量感は「カメラを使って写真撮影をしている」という体験としては悪くありません。大きなグリップでしっかりと握ることが出来るため、大きなレンズとの相性が良く、グリップを握った状態での操作性も良好。ボディサイズが大きいぶん、コントロールも豊富で、従来機と比べてカスタマイズ性も向上しています。部分的に融通の利かないところはニコンらしいですが、段階的に良くなっていると感じます。重量感を含めて、写真撮影を楽しめるのであれば良いカメラ。
要改善と感じる欠点はメカシャッターレスであること。積層型CMOSセンサーの性能を考慮するとメカニカルシャッターを使用する必要性が低い。しかし、現在の電子シャッター音は撮影体験として、撮像を知覚する手段として不十分。メカニカルシャッターの音や振動は重要だったと思い知らされました(個人的には主に知覚する手段として)。
いっそのことサイレント状態(電子音なし)でも撮影できますが、リアルでブラックアウトの少ないライブビュー映像を表示し続けるためにシャッターが切れているのかどうか分かりづらいのが悩ましいところ。撮影を知覚する手段は電子音の他にライブビュー上の枠表示のみ(これがもう少し目立つと良いのかもしれませんが…)。
メカニカルシャッターの搭載にこだわるつもりは無いものの、視覚・聴覚以外で撮影を感じ取ることが出来る仕組みづくりが必要と感じました。キヤノンの特許にもあるように、動作完了を振動で伝達することができる装置はいい例と言えるかもしれません。
参考情報
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