このページではオリンパスのミラーレス用交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4 PRO」の発売から1か月ほど使って来た感想を書き連ねています。
このページで伝えたいこと
- ”初見は”没個性的でパッとしないPROレンズ
- 使い込むほどに携帯性とスペック・画質のバランスの良さに気が付く
- 価格設定は買い方次第で適正
見た限りでは没個性的なF4ズームレンズですが、使い込んでみるとこれまで存在しなかったPROレンズのラインアップと感じるはず。
マイクロフォーサーズらしい携帯性の良さとオリンパスらしい「高画質・高耐久」の特性を併せ持ったナイスなズームレンズ。
これまでのレビュー
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO | |||
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操作性・外観
サイズ「63.4×70.0mm」重量「254g」のPROレンズとしてはコンパクトな標準ズームレンズ。スペック(F4ズーム・防塵防滴・金属外装)を考慮すると思っていたより小型軽量です。
マイクロフォーサーズ用の12mm始まりとなる主要なズームレンズと比較すると以下の通り。
サイズ | 重量 | |
1245PRO | 63.4×70.0mm | 254g |
1240PRO | 69.9×84mm | 382g |
12100PRO | 77.5 x 116.5mm | 561g |
LEICA1260 | 68.4mm×86mm | 320g |
GX1235II | 67.6mm×73.8mm | 305g |
G1260 | 66mm×71mm | 210g |
これらの中でレンズサイズが最も小さく、2番目に軽量なレンズです。他のレンズとの差は極端なものでは無いので、ズームレンジや画質・手ぶれ補正の有無で選択するのもアリ。
ただ、12-45mm F4 PROは「金属外装・防塵防滴・F4ズーム・全域で高解像・全域で0.25倍の高い接写性能」と言った強みを持つ割には非常にコンパクトなレンズと感じます。これは実際にレンズを手に取ってもらわないと分かり辛いかも。
小ぶりながら「まさにPROレンズ」と言った質感であり、E-M5 Mark IIIやE-M1 Mark IIIに装着した時の信頼性・安心感は高い。
ズームリングは思った以上に軽く回ります。個人的には少し軽すぎると感じますが、滑らかに動作するので人によっては小気味良く感じると思われます。
12-100mm F4 IS PROと比べると遥かにコンパクトなレンズ。ただしいくらか妥協点があり…。
他のPROレンズと異なり「L-Fnボタン」や「マニュアルフォーカスクラッチ」が省略されているのは残念なポイント。コストを抑え、さらに小型軽量レンズでは省略が省略が必須だったのかもしれませ。とは言え、せめてL-Fnは載せて欲しかったと思います。
さらに12-100mm F4 IS PROのように光学手ぶれ補正を搭載していません。12-45mmの焦点距離で光学手ぶれ補正の有無による影響は少ないと思いますが、45mmにおける安定感には多少影響が出ると思います。
ズームレンジは広角12mmから中望遠45mmまでをカバー。正直に言うと、遠方の被写体をクローズアップするには少し望遠側のレンジが狭く感じます。欲を言えばレンズサイズを少し大きくしてでも50~60mmまで欲しかった。(もしくは広角側を10mm程度までカバーして欲しかった)
とは言え、不足する長焦点は足を使って被写体に寄ってみたり、手持ちハイレゾで後処理時にクロップするという手もあります。
ボディ内手ぶれ補正の高い機種と組み合わせることで、カメラバックからさっと取り出し、スローシャッターの安定した手持ち撮影が可能です。
12-100mm F4 IS PROと違い、光学手ぶれ補正を搭載していないので望遠側の補正効果は少し弱め。できればE-M5 Mark IIIやE-M1 Mark IIIなどボディ内手ぶれ補正の効果が高い機種に装着するのがおススメ。
マイクロフォーサーズ用レンズは接写性能が高いモデルが多いものの、特にこのレンズはズーム全域で0.25倍(フルサイズ判換算で0.5倍のハーフマクロ仕様)というのが凄い。
最大撮影倍率での描写性能もそこそこ安定しています。
全域で同じ撮影倍率を維持できるので、被写体の写るサイズを維持しつつ、画角を変えて背景を処理したり含めたりすることが可能です。ただし、広角側の0.25倍は撮影距離がほとんど無いので注意が必要です。
高感度性能がラージフォーマットと比べて見劣りするマイクロフォーサーズにおいて「F4」は暗いと感じる開放F値です。
屋内で高速シャッターを利用する場合はおすすめ出来ません。とは言え、手ぶれ補正を有効に活用できるシチュエーションであれば全く問題ナシ。
回折による解像低下が早いので使いやすいF値の幅が狭いのも一つのマイナスポイント。
ボケ量はどうか?と言うと、十分に接写して撮影するぶんには特に不満を感じません。被写界深度を深くしたい場合は広角側でガッツリ絞るか少し引く、浅くしたい場合は望遠側でしっかり近寄る。
解像性能
感覚的には12-100mm F4 IS PROと同等。キットレンズや非PROのズームレンズと比べて描写の甘さを感じないハイクオリティな写りです。
12-100mm F4 IS PROと同じく、ズームレンジ全域で目立つ画質低下のポイントが無いPRO仕様の光学性能と言えるでしょう。
ただし、じっくりチャートテストやピクセル等倍の比較をしてみると、四隅が少し見劣りします(色収差の影響もやや強い)。
見劣りすると言っても微妙な差であり、実写で特に心配することでは無いと思います。
接写時は広角側で四隅が少し甘くなるものの、基本的には良好なパフォーマンスを維持しています。
「コンパクト・0.25倍・F4ズーム」を考慮するとバランスの取れた画質。
ボケ
単焦点のように柔らかく滑らかなボケではありませんが、特にこれと言って悪目立ちしない良好な描写。球面収差は良好に補正されており、2線ボケの兆候は見られません。
顕著な差では無いものの、後ボケが少し滑らかで、前ボケは少し硬い。
高い接写性能を活かすことで大きな後ボケを得ることも可能。植物や昆虫と相性の良いレンズだと思います。
口径食の影響が小さいので、ピント位置に関わらず四隅まで安定感のある描写は強みと言えるでしょう。
非球面レンズの研磨状態は良好で特に悪目立ちする影響はありません。
逆光耐性
「オリンパスのPROレンズとしては」逆光耐性が良好です。決して完璧ではありませんが、少なくとも12-40mm F2.8 PROや12-100mm F4 IS PROよりも良好と感じます。
12-100mm F4 IS PROはサンセットシーンで無力と感じるほどゴーストが発生しやすいものの、このレンズは比較的安心して撮影することが出来ます。ただし、シャドウを持ち上げたりするとフレアやゴーストが発生していたりするので注意が必要。
厳しい逆光環境では赤色のゴーストとフレアが現れます。発生頻度は稀で影響も小さいですが、魅力的なレンズフレアとはなりません。
色・コントラスト
他のPROレンズと同じく、LEICA DGシリーズと比べてアッサリした描写です。「味付けしていない素うどん」のような状態なので、好みに合わせてボディ側で調整すると良い感じ。ハイライト諧調が粘り強く、思いのほか強めの設定でもハマる時が多い印象。
E-M1 Mark IIIやPEN-Fと組み合わせて使う限りでは、ニュートラルな発色。使いやすいと思います。
AF
多くのPROレンズと同じくリードスクリュータイプのステッピングモーターを使用。とても静かで高速なオートフォーカスを利用できます。
フォーカス速度は12-100mm F4 IS PROよりワンテンポ速い印象。どちらかと言えばデュアルVCM駆動の40-150mm F2.8 PROに近いパフォーマンスです。E-M1 Mark IIIなど像面位相差AFのボディと組み合わせることで動き回る被写体も快適に追いかけることが出来るはず。
ピント精度は良好で特にこれと言って問題は感じません。低照度でも快適なフォーカス速度で合焦します。
総評:MFT標準ズームのいぶし銀
満足度は90点。
開放F値さえ妥協できれば携帯性の高いPROクオリティの標準ズーム。これぞマイクロフォーサーズ、欲を言えば沈胴式でも良かった。
最初は「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」と棲み分け難しいだろ…、と心配していたのですが杞憂だった模様。PRO仕様の光学性能と堅牢性、そして利便性を確保しつつ、このコンパクトさは強みとなる。いぶし銀のようなレンズ。
正直に言えば人を選ぶレンズだと思います。
ズームレンジは平凡、でF4と暗いのは確か。多少サイズを妥協すると明るいレンズやズームレンジの広い選択肢が数多く存在します。
しかし、E-M1 Mark IIIやE-M5 Mark IIIと組み合わせることで天候を選ばず携帯しやすいシステムとなります。旅行や山登り、家族旅行や行楽などで使いやすいと感じることでしょう。
スペックを考慮すると価格はもう少し安いと良かったのですが、買い方次第で5万円台で購入することが出来るはず。(私はYahoo!ショッピングで実質55,000円程度で購入しました)
長所:小型軽量・防塵防滴・高速静音AF・全域で高解像・全域で0.25倍の接写性能・きちんとしたボケ・まずまず良好な逆光耐性
短所:四隅が他のPROズームより僅かに甘い・倍率色収差が僅かに目立つ・フッ素コーティングなし
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