このページではソニーの交換レンズ「FE 40mm F2.5 G」のレビューを掲載しています。
このレンズのポイント
- 小型軽量ながら高機能・高性能
- 高速AFだがブリージングが目立つ
- 絞り開放から高解像・高コントラスト
- ボケは完璧では無いが、パンチのある描写
- スペックだけを見ると少し高価
小型軽量な新世代のソニーGシリーズレンズ。小型軽量ながら豊富なコントロールポイントを備え、AFは高速かつ正確に動作する。光学性能は絞り開放から高いシャープネスとコントラストを備え、ボケは完璧と言えないもののパンチのある描写を実現しています。ボケ質を重視したシグマ45mm F2.8 DG DNとは毛色が異なるものの、これはこれでアリなレンズ。このクラスとしては最も高価な価格設定を許容できるかが重要。
Index
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2021-04-15 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:9群9枚
- 開放絞り:F2.5
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.28m(AF)・0.25m(MF
- 最大撮影倍率:0.2(AF)・0.23(MF)
- フィルター径:φ49mm
- レンズサイズ:φ68×45mm
- 重量:173g
- 絞りリング
- AF/MFスイッチ
- AFLボタン
- リニアモーター駆動
- 防塵防滴
- 金属外装・金属フード
2021年3月23日に発表されたコンパクトなソニーEマウントのGレンズ。
全長45mm、重量約173gと非常に小さく軽く、同時に発表された24mm F2.8・50mm F2.5でサイズ・デザインが統一され、3本セットで扱いやすいレンズ群に仕上がっています。特にジンバルやリグなど動画撮影時に役立つ統一感と言えるでしょう。
この40mm F2.5 Gは今回発表された3本の小型Gレンズで、24mmと50mmの間に位置するレンズです。「35mm」が一般的な焦点距離ですが、今回はソニーEマウントで珍しい「40mm」を採用。特にAFレンズとしてはこれが初めてかもしれません。(訂正:Batis 2/40 CFがありました)
さらに開放F値「F2.5」は単焦点レンズとして比較的暗いものの、ズームレンズよりも僅かに明るい絶妙なF値。
そして、標準レンズ(40?55mm)としては非常に小さく、ソニー以外のレンズメーカーを含めても、このサイズの標準レンズは珍しい存在です。コンパクトなα7Cと相性が良く、APS-Cカメラボディに装着しても違和感の無いバランス。
小型軽量ながら、レンズ外装とフードの素材はアルミニウムで高級感のある仕上がり。さらに防塵防滴仕様で、環境に左右されない撮影を実現しています。
フォーカス駆動には2基のリニアモーターを使用し、ギアを使わらず静かで滑らかなAF・MF操作を期待できそうです。
小型ながら充実したコントロールを搭載しているのも注目ポイント。シグマも「Iシリーズ」で同じようなデザインを採用していますが、ソニーはさらにAFLボタンにまで対応しています。
価格のチェック
「40mm F2.5」のスペックを考慮すると、売り出し価格「71,280円」は少し高く感じます。金属外装・絞りリング・防塵防滴・リニアモーター駆動という点は評価できるものの、それでも少し高い印象。外装に妥協するとサムヤン「AF 45mm F1.8 FE」が4万円ちょいで入手可能であり、5万円台でシグマ「45mm F2.8 DG DN」を購入することができます。このレンズの携帯性や操作性、24mm・50mmとの統一感などに価値を見いだせないと気難しい価格設定。
FE 40mm F2.5 G | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
ソニーαのブランドカラーであるインターナショナルオレンジの小さな箱にレンズが入っています。ソニーGレンズとしては意外なほど小さい。
レンズ本体以外に、レンズフード、レンズキャップ、説明書、保証書が付属します。GMシリーズのようにレンズケースは付属しません。
外観
アルミニウム製の頑丈な外装。塗装はマットなブラックを使用し、指紋などが付きにくくなっています。 シグマ「Iシリーズ」と同じく、塊感のあるレンズですが、少し軽く感じます。
メモリや数値は基本的にプリントですが、「G」のロゴや絞り値の目盛りが部分的に隆起していたり、刻印されています。ロットナンバーを含め、「製造国:中国」もマウント付近にプリントされています。
小型レンズながらコントロールポイントが5点と多く、シグマ「Iシリーズ」と比べてAFLボタンやクリックレス機能を搭載する点で優れています。
防塵防滴仕様で、当然ながらレンズマウントにもゴムシーリングあり。 その他にも、コントロール各所に防塵防滴仕様が施され、撮影環境を選ばない耐候性を備えています。
ハンズオン
全長45mm、重量173gと、コンパクトなレンズとしては比較的重たい。そうは言っても絶対的に重いわけではなく、コンパクトながら高級感を出すのに一役買っています。α7R IVと組み合わせた際のバランスは非常に良好。α7CやAPS-Cに装着しても問題ないはず。
前玉・後玉
フィルターは49mm径を採用。今回同時に登場した3本のGレンズ以外にも、49mm径を使用するEマウントレンズはいくつか存在します。(社外製レンズが多いですが)
将来的に24mm F2.8 Gや50mm F2.5 Gの購入を検討しているのであれば、49mmフィルターで揃えるのもアリ。
防塵防滴仕様のGレンズですが、ナノARコーティングやフッ素コーティングは施されていない模様。(FE 20mm F1.8 Gはどちらも対応)前玉の保護や逆光対策を考えると、付属のレンズフードは装着しておきたい。
後玉はレンズマウントから少し引っ込んだ位置で固定されています(リアフォーカスではない)。カメラに装着していない場合、リニアモーターが固定されず、レンズを傾けるとフォーカスレンズが自重で動いているのが分かります。フォーカシングは内部で完結しており、レンズ前後で空気の出入りは発生しないはず。
内部はしっかりと反射防止用の塗装が施され、反射する電子パーツなどは目視で確認できません。
フォーカスリング
幅8mmの狭いフォーカスリングは適度なトルクで滑らかに回転します。個人的な好みで言えば、もう少し抵抗が強くても良かった。
フォーカスレンズは電子制御式で、フォーカスリングの回転量に応じてリニアな応答性で動作します。無限遠から最短撮影距離まで、約135度で操作可能。フルマニュアルで操作しても、精度と高速性を両立できる回転量です。
絞りリング
突起部が幅3mmの非常に狭いリングです。フォーカスリングと隣り合わせとなっているので、間違えてフォーカスリングも掴んでしまう可能性あり。ただし、絞りリングのほうが直径が少し大きく、エルゴノミクスに配慮しているようにも見えます。
リングはF2.5からF22まで、1/3段ごとにクリックストップが発生。トルクはやや重めで、力を入れないと回転しません。個人的に好みの操作性。
レンズ右側面のクリックスイッチをOFFにすると、クリック感の無い無段階操作が可能。この際、数値上は1/3段ごとに変化しますが、絞り羽根は無段階で滑らかに動作しています。
フォーカスリングと同じく電子制御のため、素早く絞りリングを操作すると、僅かに遅れて絞りが動きます。(カメラ側のレスポンスで改善するのかどうかは謎)
レンズフード
金属製のフジツボ型フードが付属しています。非常に軽量で、一見するとプラスチック製と間違えてしまうかもしれません。内部は反射を防止するための複雑な隆起が見られます。
レンズへの取付はバヨネット式ですが、ZAシリーズのように外観を損なわないデザイン。フード前面は49mmねじ込み式フィルターに対応しており、レンズ用のキャップやフィルターを装着することが可能。
一般的なプロテクトフィルターであれば、レンズに装着したままレンズフードを取りつけることも可能。厚みのある可変NDなどはつかないと思われます(そもそもフードを装着すると操作できなくなる)。
装着例
α7シリーズとの組み合わせでバランスは非常に良好。α7Cと組み合わせてコンパクトシステムを構築したり、APS-Cボディで利用するのも大いにあり。グリップとレンズの間の空間には余裕があり、大きなレンズのように干渉することはありません。
全体的に小さくまとまっているので、左手で自然とレンズ・カメラを支えることができ、AFLボタンや絞りリングを操作しやすい。GMレンズではあまりAFLボタンを使わなかったものの、このレンズならばAFLボタンを多用できると思います。
AF・MF
フォーカススピード
α7R IVに装着時、リニアモーター駆動のオートフォーカスは静かで、高速かつ正確に動作します。最短撮影距離から無限遠までストレスフリー。
ただし、AF-S時はブリージング(もしくは歪曲収差の補正が一時的に切れる?)ためか合焦時に目障りなちらつきがあります。結果に問題はありませんが、四隅のAFエリアを使う時は少し気になるかもしれません。
フォーカスブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。AFテストと同じポジションで、F22まで絞り、無限遠と最短撮影距離で撮影した結果が以下の通り。
ご覧のように、最短撮影距離は無限遠と比べて画角がかなり狭くなっています。絞り開放付近では特に気にならないかもしれませんが、絞った状態で動画撮影する場合は画角変化に注意したいところ。
精度
α7R IVと組み合わせた限りでは特に大きな問題はありません。
MF
前述した通り、フルマニュアルでも精度と高速性のバランスが良いフォーカシングを利用できます。自動アシストも利用できるので、特に苦労することは無いはず。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7R IV
- 交換レンズ:FE 40mm F2.5 G
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7RIVのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
解像するレンズとは思っていたものの、まさかここまでとは…。
4800付近まで測定できる解像力チャートにおいて、四隅までF2.5から上限値。α7R IVで回折の影響が出始めるF8以降もパフォーマンスを維持していることから、ピークの山はさらに高いものと思われます。
F11以降は回折の影響が強くなり、α7RIVでは急速にパフォーマンスが低下します。しかし、4200万画素や2400万画素のカメラであれば、画質の落ち込みは緩やかとなるはず。絞り値全域で満足のいく結果を得ることが出来るでしょう。
中央
F2.5では僅かに軸上色収差の影響を確認できますが、F2.8以降は全く問題ありません。解像性能の差は回折が始まるF8まで見分けがつかず、被写界深度の調整のみ意識して絞りを操作可能。
さらに高解像に対応した解像力チャートで差が出るかもしれませんが、少なくとも2400万画素や4200万画素のカメラでは見分けがつかないはず。
周辺
中央と同じくF2.5から非常に良好な結果。回折以外で弱点と呼べる絞り値は存在せず、快適に使用できます。正直に言うとクロップした画像は中央と見分けがつきません。
シャープネスの設定はオフですが、細部のコントラストがこれほど高いことには驚きを隠せません。
四隅
周辺減光とわずかな倍率色収差の影響があるものの、基本的に中央や周辺と同程度の性能を維持。数多くのレンズをテストしてきましたが、近距離の解像力チャートでここまでパフォーマンスを維持しているレンズは珍しい。
四隅の端はもう少し性能が低下するかもしれませんが(測定部位は少し中央より)、基本的に実写で使いそうな四隅の画質は間違いなく良好です。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.5 | 4689 | 4761 | 4744 |
F2.8 | 4537 | 4744 | 4696 |
F4.0 | 4739 | 4725 | 4761 |
F5.6 | 4756 | 4742 | 4761 |
F8.0 | 4686 | 4798 | 4744 |
F11 | 4674 | 4645 | 4541 |
F16 | 3877 | 3987 | 3492 |
F22 | 3085 | 2946 | 2809 |
実写確認
回折の影響が強いF16?F22以外は全く問題なく好きな絞り値を使用可能。コンパクトなレンズでこれほどの性能を実現しているとは…。
レンズ比較
ここ最近、同じカメラでテストした別のレンズと見比べた結果がコチラ。小型軽量で比較的シンプルな構成のレンズとしては見事な結果と言えるでしょう。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2021-04-23:晴れ:微風
- カメラ:α7R IV
- レンズ:FE 40mm F2.5 G
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 現像ソフト:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス「0」
・その他初期設定
テスト結果
中央
F2.5から良好なシャープネスとコントラスト。6100万画素のα7R IVでも満足のいく解像性能を発揮しています。F2.8まで絞ると僅かにコントラストが改善し、F5.6までピークの性能を維持。
F8まで絞ると僅かにコントラストが低下。F11まで絞るとさらにディテールが甘くなり、F16?F22でかなりソフトな描写となる。
周辺
中央と同じくF2.5から良好なシャープネスとコントラスト。このままでも全く問題ありませんが、F2.8まで絞るとコントラストがさらに改善します。F4?F5.6がピークとなりますが、F2.8との差は僅か。
やはりF8でコントラストの低下が目に付きます。F11まで絞ると若干ソフトとなり、F16?F22は被写界深度が必要な時以外は避けたいところ。
四隅
周辺減光(レンズは程度の差こそあれ、絞り開放付近で四隅の光量が低下する)の影響があるものの、シャープネスはまずまず良好。コマ収差や非点収差などの影響が抑えられているのか、像に顕著な甘さは見られません。
F2.8まで絞ってもあまり改善しませんが、F4で少し改善が見られ、ピークのF8に向かって徐々に向上。やはりF11以降は回折の影響があるので、必要な場合を除いて避けたい絞り値。
実写で確認
フレーム全体の均質性を考慮すると最適な絞り値はF8。ただし、フレームの大部分はピークがF4前後であり、解像性能にベストを尽くすのであればF5.6までに抑えたいところ。6100万画素センサーはF8付近で回折の影響が出始めるため、四隅の改善速度が遅いのは地味に痛い。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認(F2.5)
以下の作例を確認をするとわかるように、 ピント距離によらず像面歪曲の影響は見られません。近距離でも遠距離でも、絞り開放でパンフォーカスを狙うことが出来ます。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
倍率色収差はわずかに残っているものの絞り値全域で特に大きな問題がない程度まで抑えられています。追加のソフトウェア補正も可能ですが、多くの場面でこれ以上の修正は必要ないでしょう。?
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
絞り開放ではピント面の前にマゼンダの色付き、ピント面の後ろにシアンの色付きを確認。この色収差の影響は限られているように見えますが、ハイコントラストな領域では目立つ可能性があります。 この問題はF4まで絞るとほぼ改善し、細部のコントラストや前後のボケへの影響は最小限となるはず。F5.6まで絞ると完全に見えなくなります。
また、絞り値によるピント面の移動(フォーカスシフト)は確認できず、 球面収差を良好に補正している模様。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
前後のボケ質に大きな差がないニュートラルな描写です。わずかに色収差の影響が見られるものの、ボケ質への影響は少なく、特に心配する必要はないでしょう。全体的に見ると滑らかな描写で、この撮影距離(撮影距離50cmほど)ではむしろ良好なボケ描写に見えます。
このレンズは絞り開放からコントラストが高く、状況によってはコントラストの影響で背景ボケが騒がしく見えるかもしれません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
実写で確認
玉ボケには軸上色収差に寄る色付きが見られます。 また口径食の影響で四隅のボケが変形し、さらに非球面レンズの影響で内側の描写にムラがあります。完璧なボケ描写からは程遠いですが、目立つ玉ねぎボケはなく、騒がしく感じるシーンは限られてくるはず。
F4まで絞ると口径食の影響は抑えられますが完璧ではありません。絞り羽根が7枚のため口径食を抑える頃には玉ボケが角ばってしまうのは悩ましいところ。?
ボケ実写
撮影距離その1
最短撮影距離付近から2mまでの撮影距離を移動しながら撮影したのが以下の作例。
単焦点レンズとしては小さな口径ですが、最短撮影距離が短く、被写体へ近寄ることによってボケを大きくすることはできます。40mm F2.5ながらボケは十分に大きく、そして騒がしさのない心地よい描写に見えます。
撮影距離が長くなると、ボケが小さくなるとともにフレーム四隅の口径食が強くなり、ボケ描写は騒がしくなる。完璧なボケ描写からは程遠いものの、予想していたよりも滑らかで特に騒がしい印象はありません。
撮影距離その2
三脚の全高を170cmに調整し、3つの距離からF2.5で撮影したのが以下の作例。
全身ポートレートのような撮影距離では、背景ボケが十分に大きくならず被写体分離が難しい。ボケは少し騒がしいものの、全体的にボケが小さいので騒がしさが目立つことはありません。
上半身程度まで撮影距離を詰めると、背景から車体を分離できる程度のボケ量を得ることはできます。この際のボケは柔らかい描写と言えませんが色収差が少なく球面収差の悪影響も見られず使いやすい描写。
さらにバストアップまでの距離を短くすると程よい被写界深度に加え、十分綺麗で大きなボケを得ることができます。この際のボケは目障りだと感じる色収差や口径食の影響が目立ちにくく、比較的良好な描写に見えます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
このレンズはカメラに装着すると、歪曲収差の自動補正をオフにすることができません。このため、カメラ出力の JPEG では歪曲収差の自動性が強制的に適用されます。 しかし、社外製 RAW 現像ソフトではレンズプロファイルがなければ歪曲収差の補正を適用することができず、レンズ本来の歪曲収差が現れます。 カメラ出力の JPEG と Adobe Lightroom でRAW現像したイメージを比較したのは以下の通り。
ご覧のように、レンズプロファイルを適用しない場合、比較的穏やかな樽型歪曲が発生。正直に言うと 歪曲収差の補正を強制的に ON にするほどの収差量とは思えませんが、ソニーはこの収差をユーザーに見せないと決めたようです。
現状、Adobe Lightroom にはこのレンズのプロファイルが存在しません。このため、手動で補正値を入力して修正する必要があります。ゆがみ補正を使い、およそ「+8」で歪曲収差を解消可能。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認 最短撮影距離
絞り開放付近で顕著な周辺減光が発生します。大口径レンズほど強い光量落ちでは無いものの、小口径のレンズとしては目立つように見えます。F4まで絞ってもいくらか残存しており、F5.6でも少し残っています。完全に解消するためにはF8まで絞るのがおススメ。もちろん、ボディ側のレンズ補正を適用することで周辺減光は簡単に解消可能です。
実写で確認 無限遠
基本的に最短撮影距離と同じ傾向が見られます。比較して僅かに減光が強いものの、実写で差を感じるほどでは無いかも。3段絞ったF8でも僅かに残っていますが、これが問題と感じることは無いはず。
参考(最短撮影距離:無限遠)
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
実写で確認
四隅でいくらかコマ収差の影響があります。 パソコンや一般的なプリントサイズで四隅のコマ収差が目立つことはないでしょう。ただし、四隅をクロップしたり、特別に大きなプリントをする場合、コマ収差が少し気になるかもしれません。収差は1段絞ると改善し、F4で四隅まで問題なくなります。
逆光耐性・光条
その1
フレア・ゴーストは良好に抑えられていますが、強い光源が正面にあるとゴーストは完璧には抑えることが出来ません。薄いゴーストなので目立つ機会は少ないと思いますが、屋内・夜間の人工照明などでは気を付けたいところ。
そしてF11以降の小絞りではレンズフレアが極端に増えています。
その2
強い光源が四隅にある場合、絞り開放付近では問題ありません。とても良好な逆光耐性に見えます。絞ると徐々に隠れていたゴーストが顕在化しますが、問題が大きくなるのはF11前後から。
光条
少し面白い傾向があります。
絞り開放では当然ながら光条が発生しないものの、1/3段絞ったF2.8では綺麗な光条が発生。この傾向はF4まで続きますが、F5.6では光条が消えてしまい、F16以降で再びシャープな光条となります。なぜこのような現象が見られるのか不明。
総評・作例
肯定的見解
ココがポイント
- 小型軽量ながら総金属製の鏡筒
- 防塵防滴
- AFLボタン・絞りリング(デクリック機能付き)
- スタイリッシュなレンズフード
- リニアモーター駆動の高速AF
- 近距離でフレーム全域が高解像
- 遠距離で大部分が高解像(絞ると全域)
- 倍率色収差をほぼ完璧に補正
- 軸上色収差が僅か
- ニュートラルなボケ味
- 絞り開放から高コントラストで良好な彩度
- コマ収差が無視できる程度
- 逆光耐性が良好
このレンズのセールスポイントは「小型軽量」「防塵防滴」「高機能」がセットになっていること。ただし、それはあくまでも外観的な特徴であり、実際に使ってみると、非常にシャープでコントラストの高いレンズであることが分かります。小型軽量ながらフレームの大部分がF2.5からシャープで、細部をクロップしてもコントラストが強く、小口径ながらパンチのある描写を楽しめるのは面白い。ボケは完璧と言えませんが、悪目立ちせず、パンチのあるピント面がしっかりと主張するので問題ナシ。諸収差は全体的に良好に補正されており、特にこれと言って問題と感じるポイントは無し。逆光耐性は良好で、リニアモーター駆動のAFは非常に高速。
批判的見解
ココに注意
- 40mm F2.5としては高価
- フォーカスブリージングが大きい
- F2.5のレンズとしては口径食が強い
- 7枚絞りでボケが角ばるのが早い
- 玉ボケに非球面レンズの影響あり
- この画角としては少し目立つ樽型歪曲
- F2.5のレンズとしては周辺減光が強い
まず最初に考えたいのは「40mm F2.5」で売り出し価格7万円超のレンズが自分の必要かどうか。2?3万円安く「45mm F2.8 DG DN」「AF 45mm F1.8 FE」を購入することが出来るので、光学性能にコストパフォーマンスを求めると厳しい戦いが待っています。シグマ45mm F2.8のビルドクオリティも良好で、特に接写時の後ボケはソニー以上。サムヤン45mm F1.8はソニーよりも大口径で、光学性能も良好。全体的にソニー40mm F2.5 Gの光学性能・機能性・AFはより良好ですが、価格差を正当化できるほどの差となるか微妙なところ。
オートフォーカスは間違いなく高速ですが、フォーカスブリージングが非常に目立つのも確か。静止画では気にならないかもしれませんが、AF-SではAFごとに歪曲収差補正が途切れるようなちらつきが発生するのは目障りと感じます。この点で言えばシグマのほうが良好(サムヤンは同様に目立つ)。
光学性能で大きな問題はありませんが、敢えて言えば玉ボケが少し粗く見えること、強い周辺減光には気を付けたいところ。
総合評価
小型軽量ながら高機能・高性能でパンチのある描写を楽しめる40mm単焦点レンズ。競合レンズと比べると価格は少し高いですが、この画角でベストを尽くすのであれば検討する価値がある一本。個人的にはディテールの表現が気に入っており、特にパンチの強い色やコントラストがおススメ。
万人におススメできるか?と言うとそうでもなく、初心者ならサムヤン「AF 45mm F1.8 FE」のほうが単純にボケ量が多く、光学性能もしっかりとしているので満足度が高くなるかもしれません。
購入早見表
FE 40mm F2.5 G | |||
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併せて検討したいレンズ
45mm F2.8 DG DN
シグマ「Iシリーズ」の45mm単焦点レンズ。ソニーと比べて少し口径が小さいものの、焦点距離が長いので、実写でボケ量の差はそれほど大きくないはず。ソニーよりも遥かに手頃な価格ながら、金属製鏡筒の頑丈な作りが特徴的。ステッピングモーター駆動のAFはソニーほど速くないものの、ブリージングが少なく見栄えの良いフォーカシングがGood。
解像性能は撮影距離によってソニーほどシャープでは無いものの、球面収差を敢えて残した滲むように柔らかい後ボケが特徴的。ボケの質感を重視するのであれば、シグマのほうがおススメ。逆にコントラストの高いパンチのある描写が好みであればソニーのほうがおススメ。
45mm F2.8 DG DN Leica L | |||
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45mm F2.8 DG DN Sony E | |||
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AF 45mm F1.8 FE
サムヤン製の大口径レンズ。小型軽量ながら「F1.8」と開放F値が小さく、ソニーと比べて明らかにボケが大きい。シャープネスは絞り開放から良好ですが、中央と周辺の差が大きく、絞ってもF2.5 Gほどシャープとはなりません(ただし十分良好ではある)。
レンズ外装はプラスチック製、絞りリングやAFLボタンも無く、AF速度はシグマやソニーよりも遅い。比較してビルドクオリティは明らかに低いものの、そのぶん手ごろな価格設定は魅力的。ソニー純正「FE 50mm F1.8」はさらに安いですが、絞り開放の画質を重視するのであればサムヤンも面白い選択肢。
作例
関連レンズ
- 40mm F1.4 DG HSM
- 45mm F2.8 DG DN
- AF 45mm F1.8 FE
- Batis 2/40 CF
- NOKTON 40mm F1.2 Aspherical SE
- NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
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