このページではOM SYSTEM「OM1」のレビューを掲載しています。
OM-1のレビュー一覧
- OM SYSTEM OM-1 徹底レビュー 完全版
- OM SYSTEM OM-1を使いやすくするためのカスタマイズ解説
- OM SYSTEM「OM-1」徹底レビュー Vol.5 ダイナミックレンジ編
- OM SYSTEM「OM-1」徹底レビュー Vol.4 オートフォーカス編
- OM SYSTEM OM-1を一か月使って感じた良いところ・悪いところ
- OM SYSTEM「OM-1」徹底レビュー Vol.4 ISO感度ノイズ編
- OM SYSTEM OM-1で野鳥を撮影する
- OM SYSTEM「OM-1」徹底レビュー Vol.3 連写・ドライブ編
- OM SYSTEM OM-1に最適なSD UHS-IIカードはどれか?
- OM SYSTEM「OM-1」徹底レビュー Vol.2 メニュー編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | MFTとしては高価だが適切 | |
サイズ | MFTとしては大きいが適切 | |
重量 | MFTとしては重めだが適切 | |
グリップ | 握りやすいが周辺の操作性が悪い | |
操作性 | 手が小さいと操作しにくい点あり | |
応答性 | 起動速度以外は良好 | |
AF性能 | 応答性良好だが追従精度は要改善 | |
画質 | JPEGが驚くほど良くなった | |
カスタマイズ | 良好だが要改善点あり | |
メニュー | 努力は認める | |
レンズ | 充実したラインアップ | |
ファインダー | この価格帯としては非常に良好 | |
モニター | この価格帯としては非常に良好 | |
バッテリー | 容量・充電・給電で不満無し | |
満足度 | 今後のブラッシュアップに期待 |
評価:
OM-1 V1.0
恐らく、評価が分かれるカメラ。
価格を考慮すると「積層型BSI」「新プロセッサ」「クアッドピクセル方式AF検出」「高解像ファインダー・モニター」「新型バッテリー」など、ハード面が非常に充実。小型軽量ボディによくぞここまで詰め込んだものだと驚く。応答性は当然のように良好で、操作性は改良され、電源周りも良くなっている。操作性は好みが分かれると思うが、強化されているのは間違いない。
その一方で、マイクロフォーサーズの「フラッグシップモデル」として見ると、AFアルゴリズムの詰めが甘く、このようなスピードタイプのカメラを本当に必要としている人にとって「おや?」と感じる部分が多い。メニューやカスタマイズなども含めて、ソフト面が煮詰まっていないと感じるが、ハードを活かす伸びしろはある。今後のファームウェアアップデート次第で化けるカメラだ。
Index
まえがき
カメラのおさらい
カメラの特徴
- 商品ページ/仕様表
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- 発売日:2022-03-18
- 売り出し価格:?245,520
- イメージセンサー:積層・裏面照射型
ー有効画素数:約2037万画素
ーローパスフィルタ:不明
ー裏面照射型:対応
ー手ぶれ補正:5軸7.0段 - プロセッサ:TruePic X
- AF:
ーAF方式:ハイブリッド
ー測距点:1053点
ーカバーエリア:全域
ー検出機能:車両/鉄道/航空機/動物/鳥 - 連写:
・AF/AE固定:約120コマ秒
・AF/AE追従:約50コマ秒 - 動画:
ー4K:60p 202Mbps
ーFull HD:240fps - ファインダー:OLED 576万ドット 0.82倍
- モニター:3.0型 162万ドット バリアングル
- 通信機能:5GHz Wi-Fi・Bluetooth
- 対応メディア:SD UHS-II×2
- バッテリー:BLX-1
- サイズ:134.8×91.6×72.7mm
- 重量:599g
マイクロフォーサーズとしては初となる積層型CMOSセンサーを搭載した最新のミラーレスカメラ。解像性能は従来通り2000万画素ながら、AF/AE追従で50コマ秒の高速連写(RAW)に対応し、AF/AE固定の場合は驚異の120コマ秒で連写が可能となっている。さらにプロキャプチャーモードで撮影できるコマ数は従来の2倍となり、一瞬のシャッターチャンスに強いカメラだ。
AFは従来通り像面位相差AFに対応しているが、クアッドピクセル方式の位相差検出を実現しており、センサー全域でクロスタイプのAFが利用可能である。さらに低照度における測距輝度範囲が拡張され、E-M1Xのみだった被写体認識AFにも対応している。また、被写体の検出速度もE-M1X比で改善しているとされている他、従来は対応していなかった犬や猫の検出も可能だ。
従来通りメモリーカードがSD UHS-IIとなっているのは残念だが、幸いにもSlot2もSD UHS-IIに対応した。書き込み速度が低下することなくサブストレージへのバックアップが可能である。
また、バッテリーは従来と互換性のない大容量の新型モデルに切り替わっている。撮影可能枚数がCIPA準拠の数値で1.25倍となっているのは注目に値する。
カメラのサイズはほとんど従来通りで、E-M1XやGH6と比べて小型軽量だ。機動力を残しつつ、E-M1X比でさらに高性能なカメラである。
価格をチェック
売り出し価格はE-M1X以下、E-M1 Mark III以上だ。マイクロフォーサーズとしてはかなり高価な機種だが、E-M1X比で高性能であり、積層型CMOSセンサーを20万円台で手に入れることが出来ると考えると魅力的である。また、ファインダーやモニターのスペックなどはAPS-Cやフルサイズと比べても遜色ない贅沢な作りである。
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カメラレビュー
外観・箱
箱・付属品
箱
従来通り黒を基調としたデザインだ。マイクロフォーサーズのロゴやモデルネームを表示している。しかし従来の箱と比べて、カメラは実写から図面へと変化し、全体的に彩度や光沢を抑えたシンプルな箱となっている。
率直に言えば少し安っぽい。参考までにE-M1 Mark IIIの箱を掲載する。
付属品
- USBケーブル
- バッテリーBLX-1
- 外付けフラッシュFL-ML3
- フラッシュ用ポーチ
- ストラップ
- 説明書
- 保証書
ここ最近のOM-Dシリーズには付属していなかった外付けフラッシュ「FL-LM3」が付属している。
FL-ML3はカメラ付属のコンパクトフラッシュながら左右上下に首を振ってバウンス撮影が可能となっている。さらに、光量はカメラ内蔵のフラッシュと比べると強力だ。サイズが小さいので、必須でない場合もポケットなどに携帯しやすい。
新型バッテリーBLX-1は従来のBLH-1と互換性が無いので気を付けたい。OM-1に乗り換える際は買い替える必要がある。ちなみに購入時のバッテリー残量はゼロで、カメラに装着しても起動しなかった。購入後に直ぐ使いたい場合はUSB-PD対応バッテリーなどで急速充電する必要がある。(初期ロットだけかもしれない)
バッテリー用の外部充電器は別売りなので注意が必要だ。USB経由でボディ内充電が可能となり、外部充電器は必要なアイテムでは無いが、複数のバッテリーを携帯したい場合に外部充電器が無いと少々不便である。
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外観
デザイン
OM SYSTEM発表後の新機種だが、ファインダー部には引き続き「OLYMPUS」のロゴを使用している。「OM SYSTEM」のロゴは前面左下にさりげなく添えられている。
OMデジタルによると「OLYMPUS」のロゴが入るカメラはOM-1が最後になるかもしれないとのこと。将来的にファインダー部のロゴは「OM SYSTEM」となるのかもしれない。既にボディキャップは「OM SYSTEM」に切り替わっている。
全体的なフォルムはE-M1 Mark IIから続くハイエンドモデルらしい形状だ。ただし、E-M1 Mark II・Mark IIIと比べると、少し曲面が増えている(ファインダー部や肩の形状など)。
カメラ底面は従来通り、縦位置グリップ用の接続端子があり、ゴムカバーで端子を保護している。底面の大部分は金属製だが、バッテリースロットのドアのみプラスチック製だ。
バッテリースロットの蓋を開けると、しっかりとシーリングされたドアが飛び出てくる。
質感
E-M5 Mark IIIやE-P7など、ポリカーボネート製のカメラボディが増えてきたものの、ハイエンドモデルは依然としてマグネシウム合金製だ。前面・上面・背面・グリップなど、あらゆる箇所が非常に堅牢と感じる。
ハンズオン
サイズ
従来機と比べてサイズが僅かに異なるものの、基本的にはE-M1シリーズの後継モデルである。手に取った際の違和感はあまりない。
重量
サイズと同じく、E-M1シリーズと比べて大差ない。マイクロフォーサーズの中では少し大きめのボディだが、LUMIX GH6やG9 PROのような一眼レフに迫るサイズ・重量ではない。
カメラグリップ
E-M1 Mark IIIと言うよりはE-M1Xに近い形状のグリップだ。フロントダイヤルやシャッターボタンの配置もよく似ている。手のサイズにもよるが、従来機と比べて小指までしっかりとグリップを掴むことが出来る。
シャッターボタンとコマンドダイヤルはセパレートタイプに変化しているが、操作性にそこまで大きな変化は感じない。リアコマンドダイヤルも埋没式となったが操作感は従来通りだ。
敢えて言えば露出補正ボタンとRECボタンが従来比で押しにくい。個人的には少しシャッターボタン側に寄った配置だと良かった。
E-M1 Mark III比でカメラの横幅に大きな変化は見られないが、イメージセンサーやマウント、ファインダーの配置が左寄りとなり、そのぶん右側の空間に余裕があり、親指でしっかりと握ることができるスペースが生まれている。
コントロールレイアウト
正面
前述したようにフロントダイヤルとシャッターボタンがE-M1Xのようなセパレートタイプに変化している。シャッターボタン同軸ダイヤルと比べると誤操作は少ないはずだ。とは言え、個人的には同軸ダイヤルのほうが好み。
E-M1 Mark IIIのようにボタン同軸ダイヤルであれば、指の腹で豪快に操作することが可能だが、OM-1の場合は指先で操作する必要がある。
背面
E-M1 Mark IIIとよく似た配置だが、(前述した)余裕のあるサムレストにAF-ONボタンを追加している。他のボタンを比べると大きく飛び出した形状で、素早く押しやすくなっている。
AF-ONボタンの実装に伴い、ボタンカスタマイズに「AF-ON」機能が追加された。従来機は「親指AF」を使いたい場合に複数の設定項目を調整する必要があったが、その煩雑さが解消している。初期設定はAF-ONボタンに割り当てられているが、AF-ON機能を他のボタンに移動させることも可能だ。
AF-ONボタンに追いやられるようにFnレバーとAELボタンは左へずれている。右手の親指で押せない位置ではなく、特に問題はないと思われる。Fnレバーは従来通り、カスタマイズで電源レバーとして使うことも可能だ。
マルチセレクター(通称ジョイスティック)の仕様は従来通りだ。相変わらず中央押し込み時の機能が他社と異なり、「測距点を中央に戻す」目的で使用する場合は「HOME」機能のカスタマイズが必要となる。
上面
前述した通り、露出補正ボタンとRECボタンが微妙に使い辛い。個人的にはもう少し前方に、シャッターボタンやコマンドダイヤルとの距離を短くしてほしかった。どちらもカスタマイズ可能で、RECボタンは初期設定でハイレゾショットへの切替機能が登録されている。
モードダイヤルに大きな変化はない。ここ最近の機種らしく、バルブモードが独立している。シャッタースピード優先モードから手動で切り替える手間がないので便利だ。
シャッターボタンの感触は従来通り。半押しまでのストロークは浅めだが、全押し中は深く押し込むことが出来る。下部のコマンドダイヤルは従来の同軸ダイヤルと比べて露出している領域が非常に狭く、意識して指を動かさなければ誤操作の心配が少ない。
左肩のレイアウトに大きな変化は見られないが、ボタンやスイッチのデザインが大きく異なる。フォーカスモードやドライブモードのボタンは従来のフラットな形状から中央が強く窪んでいる独特なデザインだ。少し押しにくいが、誤操作の可能性はグッと抑えられている。
レスポンス
従来通りダイヤル・ボタン操作のレスポンスは良好で、これと言った遅延は見られない。
ファインダー
解像度・発色
E-M1シリーズで使い続けていた236万ドットの液晶パネルを一新し、576万ドットのOLEDパネルを使用。高輝度・高コントラストで高解像を実現しつつ、リフレッシュレートは120fpsを維持している。PEN-FのころのOLEDパネルと比べるとぎらついた印象が少なく、見栄えは良好だ。
ただし、AF時に若干ノイジーとなるのが玉に瑕。従来機はAF時も安定したファインダー像が得られたので、出来ればOM-1もファームウェアアップデートで改善して欲しいところ。
光学系
E-M1 Mark IIやMark IIIの光学系とは異なり、換算0.82倍の新しい接眼光学系を採用している。断面図を見る限りではE-M1Xと同等のようだ。周辺部まで見やすい光学系だが、場合によって僅かに倍率色収差が目に付く場合がある。
アイセンサー
E-M1 Mark IIIと異なり、アイセンサーは光学系下部に搭載している。反応する距離はおよそ5cm前後だ。初期設定ではモニター展開時にアイセンサーが自動的にオフとなる仕組みがあり、これをオンにする設定もある。
モニター
解像度・発色
従来の104万ドットから162万ドットまで高解像化している。同価格帯のAPS-Cやフルサイズと比べても遜色のないスペックだ。ファインダーと同じ発色で、特に設定を変更する必要性は感じられない。
可動方式
従来通りバリアングル方式を採用している。
タッチパネル
メニューシステムやスーパーコンパネが一新されているが、基本的にタッチ操作で出来ることに大きな違いは見られない。
インターフェース
左側面のインターフェースは従来通りだ。上からマイク・ヘッドホン・HDMI D・USB-Cポートを搭載している。
USB-PD対応機器をUSB-Cポートに接続することでカメラ内のバッテリー充電が可能だ。特にUSB-PD製品と組み合わせることで、電源オン時でも給電と充電を併用することができるのはOM-1の特徴だ。
シャッター音
OM-1はメカニカルシャッターの連写速度は10コマ秒までなので、15コマ秒まで可能なE-M1 Mark IIIと比べると遅く感じる。
起動速度
電源を入れてからカメラが起動するまでの時間が少し長い。もしも不意に訪れるシャッターチャンスを待っているのならば、スリープモードで速復帰したほうが良いかもしれない。
ISO感度ノイズ
現像別の比較
サイズが大きいのでFlickrにアップロードした画像を掲載。将来的にFlickrのサービス次第で閲覧できなくなる可能性あり。
OMデジタルの純正現像ソフト「OM Workspace」は最新機能である「AIノイズリダクション」を適用できる状態にしておかないと高ISO感度時のノイズ低減効果に大きな違いが発生するので気を付けたい。ただし、専用データをダウンロードする必要があったり、グラフィックボードのドライバによっては対応していないので注意。手間はかかるものの、それだけの価値はあると思う。
それでもOM-1のボディ内現像ほどバランスの取れた結果とはならない。ボディ出力のJPEGはISO 1600まで一貫した高画質を維持しており、ISO 3200~12800でも解像度とノイズ低減効果のバランスが取れた良好な画質に見える。ISO 25600以降はディテールが溶け始めるものの、それでもOM Workspaceよりも良好な結果だ。
Adobe Lightroomで輝度ノイズ・色ノイズの補正をオフにすると上のような結果となる。ディテールは良好だが、ISO 3200~6400でカラーノイズが目立ちはじめ、ISO 12800~25600で強い影響となる。カラーノイズは補正で簡単に修正できるが、RAWのパフォーマンスはE-M1 Mark IIIと比べて高ISO感度ノイズに大きな改善は見られない。飛躍的に改善したJPEG出力を活かせるかどうかが鍵となりそうだ。
ISO感度別の作例
通常撮影 RAW
Adobe Lightroom Classic CC(ノイズ補正オフ)で現像した結果を掲載する。
カラーノイズの発生は避けられないが、ISO 6400付近まで良好なコントラストを維持している。ISO 12800付近からシャドウのノイズが少しずつ浮き始め、ISO 25600~51200で顕在化する。ISO 102400は緊急時でも使いたくないようなノイズが発生する。
やはり快適に使うことができるのはISO 6400くらいまで。ISO 12800は許容できるとしても、ISO 25600はなかなか厳しい。ISOオートの上限は基本的に「12800」に設定しておくのがおススメだ。
JPEG
ISO 25600付近までISO感度ノイズ浮きを抑えた良好な画質だ。APS-Cやフルサイズとは差があるものの、マイクロフォーサーズとしては良好な結果だ。
色だけで言えばISO 25600まで大きな変化のない再現性で使いやすいように見える。シャドウのノイズ浮きも目立たない。
手持ちハイレゾ RAW
手持ちハイレゾショットが使える環境であれば、ノイズを抑えた良好な画質を得ることが出来る。ISO 25600以降はカラーノイズの影響が強くなるものの、シャドウのノイズはあまり目立たない。ISO感度を抑えて手ぶれの心配をするくらいなら、高感度の手持ちハイレゾショットも一つの選択肢になる。
ISO 25600までとても良好な画質だ。ISO 51200も多少の変質を許容できるのであれば十分に使える範囲に収まっているように見える。
ダイナミックレンジ
ISO 200 通常
フルサイズやAPS-Cと比べるとダイナミックレンジが狭いのは間違いなく、特にシャドウを強めに持ち上げると強めのカラーノイズが発生する。カラーノイズは比較的処理しやすいので、RAW現像時はカラーノイズの補正をオンにしておくのがおススメだ。
逆にハイライトはフルサイズ並みに粘り強く、全体的に白飛びを回避するための実効ISO感度を採用しているように見える。もしもシャドウの諧調を重視する場合は拡張ISO感度「80」「100」などを検討してみよう。
ISO 200 三脚ハイレゾショット
驚いたことに、三脚ハイレゾショットを使用すると同じ露出でも実効ISO感度が変化しているように見える。通常では白飛びしなかった+5EVで白飛びが発生し、影響は+4EVの回復でも見られる。その一方でシャドウはカラーノイズが大幅に低減し、-4EVまで実用的な復元が可能となり、-5EVもカラーノイズの処理次第で許容範囲内となる。もちろんモノクロで出力するのであれば問題無いだろう。
ISO 80
ISO 80で露出をISO200の場合と揃えると、白飛びしやすくなる一方でシャドウのノイズは良く抑えられている。このことから、拡張の低ISO感度は常用ISO感度よりも実効ISO感度の基準が低くなっていると思われる。もしも白飛びを気にしない環境で、シャドウの諧調を重視する場合は拡張ISO感度の使用がおススメだ。流石に-5EVの復元は難しいが、-4EV程度までの復元は良好な結果を期待できる。
ISO 80 三脚ハイレゾショット
ISO 200のハイレゾショットと同じく、ハイライト側のダイナミックレンジが狭くなっているように見える。ただし、シャドウ側が広がっているか?と言うとそうでもなく、全体的に見てダイナミックレンジが狭い印象を受ける。ハイレゾショットを使うのであれば、拡張ISO感度は避けたほうが良いかもしれない。
オートフォーカス
AFモードの紹介
S-AF
他社と同じく一度だけAFを動作させるモード。合焦後はボタン操作しない限りAFが動作することは無い。基本的に位相差検出AFとコントラスト検出AFのハイブリッド方式だと思われる。OM-1のスペックシートには一眼レフ用4/3レンズ装着時の動作に関する記述が抜けているが、おそらく従来通り位相差検出AFで動くはず。
C-AF
他社と同じくAFを動作させ続けるモード。常に指定したフォーカスエリアや検出した被写体にピントを合わせ続ける。他社と異なる点として、E-M1 Mark IIなどはC-AF時が「位相差検出AFのみ」で動作する仕様だった(抜粋を下部に掲載)が、OM-1も同様のシステムを継承しているのか不明。
E-M1 Mark IIは、静止画撮影時のC-AFや追尾AF(C-AF+TR) において、瞬時にボケ量を検出可能な位相差AFのみで動作するようになったこともE-M1からの大きな進化です。この進化により、様々なスポーツシーンで主要被写体にピントを合わせ続けることができるようになりました。また、主要被写体をAFエリア内に捉え続けることが難しいシーンでは、性能が向上した追尾AF(C-AF+TR)をお使いいただくのもおすすめです。
なお、マイクロフォーサーズ用レンズでのS-AFについては、基本的にはコントラストAFで動作するようになっていますが、コントラストAFが発動する直前まで、ファーストレリーズを押していない間は位相差AFを使って情報を取るようにしています。位相差AFの情報を手がかりとして使うことで、コントラストAFでのピント抜けを改善しています。こうした工夫もあって、S-AFのコントラストAFの動作についても、従来以上に安定していることが体感できると思います。
MF
他社と同じくフォーカスリングでピントを操作するモードだ。一部のフォーカスクラッチ構造を搭載しているレンズはリニアレスポンスで操作可能だが、搭載していないレンズは基本的にノンリニアで操作することになる。
C-AF+TR
他社で言うところの追従優先、ロックオンAF、3Dトラッキングなどと似たAFモードだ。AF開始後はフレーム全域を利用して被写体を追従し続ける。特にフレーム内を不規則に動くような場合に有効となるモードだが、残念ながらOM-1の追従性能はお世辞にも良くない(FW 1.00時点)。非常に乗り移りやすく、被写体検出や顔検出による小まめな補正が必要だ。
プリセットMF
基本的にはMFと同じだが、このモードに移行すると予め設定しておいたピント距離にフォーカスが自動的に移動する。設定可能な数値は0.1m?999.9mで設定でき、実際にAFを動作させて自動的に数値を取得する方法もある。ゾーンフォーカスや風景写真でお世話になるモードだ。ボタンカスタマイズで専用機能を登録しておくと、ボタン操作でプリセットMF距離に回帰することもできる。
その一方でプリセットMFを使わない人にとっては少し邪魔な存在だ。AF後の微調整でMFモードへ移行しようとした場合、プリセットMFを通過すると自動的にピントが移動してしまう。個人的にはプリセットMFを非表示にしておきたいと感じる。
また、遠景ではそのまま撮影できるほどのピント位置に寄せてくれるが、(被写界深度が狭い)近距離で正確なプリセット位置は期待しないほうが良い。
星空AF
E-M1 Mark IIIで実装した比較的新しいAFモードだ。夜間で星空を撮影するための特別なAF機能である。通常とは操作方法が異なるので、最初に説明書や実機で動作をよく確認することをおススメする。
AFターゲットモード設定
- ALL:1053点
- Single:1点
- Small:9点
- Cross:39点
- Middle:63点
- Large:165点
OM-1はグループターゲットの表記が何故か英語に切り替わっているが、基本的にサイズや形状は従来通りだ。ただし、測距点の高密度化に合わせて、使用する測距点の数は増えている。
設定メニュー画面では、利用するターゲットモードの状況を視覚的に確認できる。明るいグレー色で表示されている部分が利用可能な測距点だ。1点AFである「Single」は測距点が上下左右2点間隔で間引かれているのが分かる。
プリセットのターゲットモードは全て2点スキップだ。つまり、「13×9=117ポイント」でターゲットエリアを調整可能となる。素早く操作できる一方、三脚などにカメラを固定した状態でエリアの微調整が難しくなる。このような場合はカスタムターゲットモードを使う必要がある。
カスタムターゲットモード
プリセットのターゲットモードに加えてカスタムターゲットモードが4枠ある。各カスタム枠で水平39点・垂直27点の幅でサイズを調整可能だ。正方形のみならず、長方形や横一文字にも設定可能である。ただし、LUMIXのような菱形の形状にはできない。
また、水平8ステップ・垂直5ステップで移動ステップを調整することができる。フレーム上を素早く移動したいのであればステップ数を大きくし、もしも微調整を重視するのであれば、「1×1」に設定しておくと良いだろう。
AFターゲット表示
地味に厄介な存在。
AFで合焦した部位を緑色の枠で表示する機能だが、他社と比べると癖が強い。初期設定は「On1」で合焦時に「一時的」に緑枠を表示する。S-AFの場合は合焦後に緑枠が消えることでフレームを確認する際に便利なのだと思う。しかし、この設定はC-AFにも適用され、AF中にも関わらず緑枠が消えてしまい、どこに合焦しているのか視認できなくなる。もちろん「On1」が便利と感じる人もいるだろうが、個人的に初期設定は「On2」が良いのではないかと思う。
AFターゲット表示の例
状況を固定してAFモードとターゲット表示設定を切り替えた場合の写り方を比較した。
C-AF
On1は初動でピントを掴んだ際に緑枠が点灯し、その後はすぐに消灯してC-AFの動作が続く。
On2の場合、ピントが合っている部分が常に更新された緑枠が表示される。
C-AF+TR
On1の場合、追従対象を専用の緑枠で表示し続ける。この際、ターゲットモードのエリア枠を無視して(フレーム全域で)追従し続けるので、エリア枠は意味が無くなる。
On2の場合、挙動は同じだがC-AFのようなクラスター表示となるとなる。
被写体認識
被写体認識を組み合わせると表示方法がさらにややこしくなる。
- C-AF On1:検出枠は表示され続けるが、緑枠は初動のみ。
- C-AF On2:検出枠とクラスター緑枠が表示され続ける。
- C-AF+TR On1:検出した被写体を覆うように緑枠を表示し続ける。瞳を検出しても枠は小さくならない。
- C-AF+TR On2:被写体検出時の挙動はC-AF On2とよく似ているが検出枠が表示されないので不安になる。
通常はOn2が使いやすいと感じるものの、C-AF+TR使用時に被写体検出の枠が表示されないのが不便だ。いずれにせよ、E-M1 Mark IIIまでのOM-Dや競合他社のように「瞳を追い続ける」ような表示方法が存在しない。
HOME設定
OM-1はサブセレクタ押し込みやボタンカスタマイズに「HOME呼び出し」機能がある。
これは基点となるAFエリアやモードを指定しておくことで、位置やモードを切り替えてもボタン一発で瞬時に回帰することができる機能だ。
OM-1のサブセレクタは他社で言うところの「押し込みでAFエリアの中央復帰」機能が無い。その代わりにHOMEにAFターゲット位置を中央に設定しておくことで似たような機能を利用可能となる。
この際にAFターゲットモードも変更可能だが、必要なければオフにすることも出来る。ボタンの再押し込みで直前の設定に復帰することは出来ないので、極端なHOME設定は避けたほうが良い。
AFターゲット位置はプリセットの2×2ステップで選択可能。どのような設定でも「1×1」ステップで選択することは出来ない。初回のセットアップは手間がかかるが、他社よりも柔軟性のあるボタンの仕込みの復帰システムを利用可能だ。
注意点として、サブセレクターの押し込みは初期設定でHOME機能になっていない。ボタンカスタマイズの設定で機能の変更が必要だ。
AFリミッター
ここ最近はボディ制御でAFリミッターを利用できるメーカーも増えてきたが、ミラーレスで真っ先に取り入れたのはオリンパスだったと記憶している。メニュー画面のデザインは一新されているが、リミッターの設定は従来通り3種類の登録が可能だ。呼び出し機能をボタンに登録しておくと、ボタンとダイヤル操作で素早く選ぶことが可能となる。
レンズ側で対応しているAFリミッターと同様、マクロ撮影・金網越しの望遠撮影などで有効活用できる機能。ただしプリセットMFと同様にピント位置の数値が正確とは限らない。撮影環境に合わせて設定し直しておくのがおススメだ。
ボタンカスタマイズ(AF関連)
- AEL:従来機では「親指AF」でお世話になる機能だったが、AF-ONが分離したことでAEL本来の機能のみで使うことが出来るようになった。
- AF-ON:OM-1の新機能。前述通り、従来機で「AEL/AFL」の一部機能だったAF-ONが独立して使えるようになった。初期設定でAF-ONボタンに配置されている機能で、さらに設定で顔検出を無効にしてAFを使うことが可能だ(後述)。また、MF時にAF-ONでAFを動作させることも可能となっており、何かと便利な機能である。
- 顔選択:E-M1 IIIから導入した機能で、複数の顔を検出している場合はボタンを押しながらダイヤルを操作することで任意の顔を選択することができる。場合によっては便利な機能だが、OM-1の貴重なボタン枠を一つ使って割り当てるべきかどうか悩むところ。
- 顔・瞳検出:人物の顔/瞳の検出機能をオンオフする。それだけのためにOM-1の貴重なボタン枠を一つ使って割り当てるべきかどうか悩むところ。
- 被写体検出:被写体の検出機能をオンオフする。ボタンを押しながらダイヤル操作で被写体を変更することも可能だ。被写体検出は撮影シーンやタイミングによって有効でない場合もあるため、瞬時にオンオフできるようにしておくと使いやすかった。
- AFリミッター:前述したAFリミッター機能のオンオフを設定する他、ボタンを押しながらダイヤル操作で1~3の設定枠を変更可能。
- AFターゲットモード/位置:ボタンを押すことで専用モードへ切り替わるが、サブセレクター操作で同様の結果を得ることも可能となっている。OM-1で積極的に割り当てる必要は無い。
- HOME:前述したようにボタン操作で設定したモード/位置にAFターゲット設定を戻す機能。サブセレクター押し込みに設定できる唯一の機能だが、ボタンカスタマイズで他のボタンに割り当てることも出来る。
- ピーキング:読んで字のごとく。ボタン押し込みのダイヤル操作でピーキングの色を変えることが出来ると良かった。
- 拡大:読んで字のごとく。
- MF切替:ボタンを押すことで瞬時にMFへの切替が可能。
Fnレバー MODE2
FnレバーをMODE2にすることで、2種類のAF設定を記憶することが可能。「AF/MF」として使うこともできるし、「AF-S/AF-C」として使うことも可能だ。ターゲットモードや位置の切替に使ってもいいが、代替え機能があるのでもったいない気がする。残念ながら被写体検出機能はレバー操作によって切り替わることが無い。
応答性
AF-S
位相差検出とコントラスト検出のハイブリッド方式のはずだが、近距離から遠景まで迷うことなく超高速で合焦する。マクロ域から無限遠の場合は合焦速度が僅かに低下するものの、ほとんどストレスフリーで使うことが可能だ。
AF-C
E-M1 Mark IIIなどと同じシステムであれば、位相差検出のみで動作する。S-AFも高速だが、C-AFはさらに目に見える形で高速化する。
低照度AF
良好な光環境の時と比べると合焦速度は極端に低下するが、夜間のイルミネーションシーンでもF4ズームで問題なくピントを合わせることが可能だ。合焦速度もストレスが溜まるほど速度が低下するわけではない。ただし、良好な追従AFが必要な場合はF4よりも明るいレンズが必要だと感じた。
フォーカス精度
2016年から使い続けているM.ZUIKI DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROでテスト。
中央1点を使用したS-AF・C-AFで同じ被写体を10回ほど撮影した(撮影ごとにピントを外す動作を入れている)。フォーカス位置の再現性に大きな問題は見られず、像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッドらしく良好な結果が得られた。
ただし、OM-1はC-AF時に前景へピント合わせようとする癖が非常に強く、(被写体認識の有無に関わらず)AFターゲットエリア内に前景が少しでも入ると引っ張られる傾向が見られる。レリーズ優先で撮影すると、ちょうど前景に引っ張られそうになっている瞬間を撮影してしまう場合もあり「ちょいピンボケ」の写真を量産してしまう可能性あり。もしも「ピント精度が良くない」と感じた場合は「S-AFでも同じ傾向が見られるか?」「1点AFでも同じ傾向が見られるか?」などを確認してみると良いだろう。
また、いつ前景に引っ張られているのか?を可視化するためにも「AFターゲット表示」をOn2にしておくことをおススメする。将来的にファームウェアアップデートでこの傾向が改善されることを期待したい。
顔・瞳検出
顔検出・瞳検出は従来通りのシステムだ。顔のみ・瞳あり・左右の瞳を使用することができる。
検出はAFターゲットエリアよりも優先順序が高く、指定エリアに関係なくフレーム全域を利用することになる。システムとしては富士フイルムと似ている。
顔・瞳AFのボタン設定
前述した通り、顔検出時は優先的にAFが動作する。場合によっては意図しない場所で顔を検出してしまい、狙ったところにAFでピントを合わせることが出来ない場合もあると思う。そんな時はシャッターボタンとAF-ONボタンで役割を変えておくと瞬間的な危機を回避できるかもしれない。例えばシャッター半押しAFの時は顔検出に反応し、AF-ONボタンを操作する際は顔検出を無視してAFが動作するようにしておくと良いだろう。
検出性能のチェック
顔検出は被写体が小さくても利用可能だが、瞳検出は被写体に近寄らないと利用できない。もちろん、マイクロフォーサーズレンズの被写界深度を考慮すると、瞳検出が必要な撮影距離は限られている。OM-1の動作距離で特に大きな問題は無いだろう。
同じ撮影環境でテストしたE-M1 Mark IIIと比べると明らかに検出精度が低下している。マネキンで定量的なテストしているが、キヤノンやソニー、ニコン、パナソニックなど主要なカメラメーカーは普通に検出するマネキンである。いったいぜんたいどうしちゃったのか?
従来機であればC-AF+TRと顔検出の組み合わせが便利だったのだが、OM-1では全く安定しない。
試しに私の顔でテストしてみると、まずまず良好に検出して追従した。ただし、仮装や特殊メイクを施した人物の検出は難しいかもしれない。人間を猿だと割り切って被写体検出「動物」で検出したほうが上手くいく場合もあった。
被写体検出機能
OM-1はモータースポーツ・航空機・鉄道・鳥・動物を検出可能だ。残念ながらパナソニックのような「人体」の検出には対応していない。ただし、前述したように「動物」で人間を検出することも可能である。人間の後ろ姿でも検出する場合があり、思ったよりも便利に使うことが出来る。
検出する被写体は対応ボタンを長押ししつつ、ダイヤル操作で変更可能だ。
合焦部分を可視化するためにターゲット表示は「On2」を使用。動物検出は瞳にも対応している。ただし、AFが常に瞳にピントを合わせているわけでは無く、瞳の周辺を追いかけるAFシステムとなっている。特に前景にピントを合わせる傾向が強く、場合によっては瞳がピンボケしてしまっているケースもある。
C-AF+TRとターゲット表示「On1」を利用すると、検出した被写体全体をフレーミングするので分かりやすいが、瞳を検出しているのかどうか分からないし、どこを中心として合焦しているのかも不明だ。
前述したように「On2」を利用すると検出枠が非表示となるが、実際にどの部分を合焦しているのか判断できるようになる。On2の合焦部位を見る限りでは、被写体検出時のC-AFとC-AF+TRの挙動はほぼ同じに見える。
被写体を検出していたとしても、前景が検出フレームに入りこむと乗り移る可能性あり。明らかに前景がボケているのだが、それでも乗り移ろうとする兆候が見られる。この辺りの挙動は他社の被写体検出と異なるポイント。私はE-M1Xに被写体検出が実装された時から言及しているのだが、オリンパスの被写体検出はあくまでもAFエリアのフレーミングのみ機能し、被写体の色情報や深度情報が考慮されていないのかもしれない。
マニュアルフォーカス
フォーカスアシスト
OM-1のマニュアルフォーカスは「拡大」「ピーキング」「フォーカス距離指標」でアシスト可能だ。それぞれフォーカスリング操作時に自動アシストするかしないか設定することが出来る。
ピーキングは色を変更できるほか、ピーキングの強度や背景の輝度調整に対応している。設定項目が多いので、MF操作が多いのであれば、ボタンカスタマイズかマイメニューで引き出しやすくしておきたい。
メニューシステム
見た目はスタイリッシュでカッコいいものの、実際に使ってみると「おや?」と首をかしげるポイントが多い。
撮影メニュー1
撮影に関する基本的な設定が集まっている(AFと動画を除く)。このため、カテゴリーが多く、8ページ構成で46項目の設定にアクセスすることが可能だ。従来はカスタマイズメニューに存在した項目の多くがこちらに移動しているので、従来のOM-Dユーザーは目的の設定を見つけるまで時間がかかると思う。
旧メニューのように、第二層のカテゴリを判断する色・文字の表示は全くないので、第三層の設定項目を見ながらページを行き来することになる。このあたりのデザインは旧メニューシステムのほうが良かった。ただし構成は間違いなく良くなっている。
- 基本設定/画質
カスタムモードの登録や保持設定の変更が可能。そのほかにRAWとJPEGの出力設定やアスペクト比などを変更できる。さらに従来のカスタムメニュー「G」ページに配置されていた一部の機能がココへ移動している。 - ピクチャーモード/WB
ピクチャーモードのプリセットや、ホワイトバランスに関する設定を変更可能だ。ホワイトバランスは従来のカスタムメニュー「G」ページから移動している。Artフィルターはピクチャーモードにまとめられているが、ニコンのピクチャーコントロールほど自由度は高くない。 - ISO/ノイズ低減
ISO感度の上限下限の設定や、低速限界などの調整が可能。さらに高ISO感度のノイズリダクションや低ISO感度時の解像優先などを設定できる。 - 露出
従来はカスタムメニュー「E」ページで、測光と共にまとめられていた項目が独立した。フリッカーや露出ステップ、基準値調整なども設定可能だ。 - 測光
これまではカスタムメニュー「E3」にまとめられていた機能群だ。さらに「AEL」ボタンが独立したことで、AELの便利な機能が追加されている。 - フラッシュ
カスタムメニュー「F」の機能群に加えて、バウンス調光設定などが追加されている。 - ドライブモード
シャッター方式や連写速度などの設定にアクセスすることができる。従来は撮影メニュー2やカスタムメニューに分散していた項目がまとまっているので非常に使いやすい。電子先幕モードである「低振動撮影」や電子シャッターモードである「静音撮影」の設定を素早く調整できる項目が新たに追加されている。 - 手ぶれ補正新機能として「手振れ補正アシスト」を利用可能だ。シャッター半押し時に、画面中央に手振れを示すインジケーターが表示される。これは半押し時・露光中も表示されるので手振れを抑える目安になると思う。
撮影メニュー2
この「撮影メニュー2」タブには特殊な撮影機能がまとめられている。ハイレゾショットやライブNDなどコンピューショナルな合成写真に加え、各種ブラケットやインターバル撮影機能がある。目新しい機能は無いが、全体的に使い勝手が良くなり、合成処理も高速化しているのでお世話になる機会は間違いなく増えると思う。
- コンピューショナル撮影
OM SYSTEM独自のハイレゾショットやライブNDをはじめ、深度合成や多重露光に対応している。深度合成は従来までブラケットにまとめられアクセスし辛かった機能だが、今回は第2層から選択することができ、マイメニューにも登録可能だ。OM-1は新プロセッサによる合成処理が非常に速いため、これらの機能を使う機会は増えると思う。 - ブラケット撮影
従来は「ブラケット」からさらに下の階層で調整が必要だった機能群が第2層にまとめられ、アクセスしやすくなっている。ブラケットを多用している人は朗報だ。 - その他の撮影機能
インターバル撮影やライブコンポジット・ライブバルブなどの機能にアクセスできる。以前のライブコンポジット設定項目はカスタムメニュー「E」ページにあったりしてメニュー画面を行き来する必要があったことを考えると最適化されている。
AFメニュー
- AF1
カスタムメニュー「A」に含まれていたいくつかの機能がまとめられている。フォーカスモード関連のページだ。シャッターボタン半押し時の動作をC-AF/S-AFで切り替えることも可能となっている。 - AF2
AF補助光や被写体・顔/瞳検出に関連した設定項目がまとめられている。相変わらずC-AF時のクラスター表示は初期設定でオフとなっているので、「AFターゲット表示」の設定で「on2」に切り替える必要がある。
顔検出のオンオフは従来のようなターゲットモードで切り替えることが出来なくなってしまった。このため、素早く切り替える際はスーパーコンパネを使ったり、ショートカットボタンを配置するする必要がある。なお、被写体検出と顔/瞳検出は全く別のシステムであるため、ショートカットボタンは個別に二つ必要だ。 - AF3
C-AFのカスタマイズやAFリミッター・AFスキャンの調整が揃っている。状況に応じて設定を変える必要性が高い項目が多く、アクセスする頻度が多い。その割に3ページ目となっているので、通常のメニューから設定項目にたどり着くのは不便と感じる。必要に応じてマイメニューを積極的に活用したい。 - 動画AF
特にこれと言って大きな変更点は無い。 - AFターゲットの設定/操作
フォーカスエリアに関連した設定項目が揃っている。特にAFターゲットモード設定はデザインが切り替わっているので慣れが必要だ。カスタムターゲットモードにはアクセスし辛くなったように感じる。なぜ通常のターゲットモードと統合したのか小一時間問い詰めたい。
相変わらずマルチセレクター押し込みで「中央に戻る」機能は存在しない。このため、HOME登録で疑似的に「中央に戻る」設定を記憶させておく必要あり。 - MF
MFやFMFアシストに関連した機能が揃っている。
動画メニュー
- 基本設定/画質
コーデックや画質モード、P/A/S/Mなどの設定項目が揃っている。OM-1はオリンパス系譜のカメラとしては初めて10bit 4K 60p動画に対応した。ただし、10bitを利用できるのはH.265時のみ。さらに4K動画時にALL-Iを選択することは出来ない。同時期に登場したLUMIX GH6と比べると自由度はかなり低い。 - ピクチャーモード/WB
動画専用のピクチャーモードにアクセス可能だ。Flat、OM-Log400、HLGを使用可能である。 - ISO/ノイズ低減
ISOとノイズリダクション関連の設定項目が揃っている。 - 手ぶれ補正
動画撮影時の補正方式と補正強度を選択可能だ。2項目しかないので、ISOページと統合しても良かったのでは? - 録音/接続
従来通りの録音機能とHDMI関連の項目が揃っている。 - 撮影アシスト
センターマーカー、ゼブラ、赤枠表示機能がある。
再生メニュー
特筆すべき項目が無いので割愛する。高速連写に対応しているので、そろそろ連写時のグループ表示機能が欲しいところだ。
- ファイル
- 操作
- 表示
カスタマイズメニュー
- 操作
従来のカスタマイズメニュー「B」にあたる機能が揃っている。ボタンカスタマイズは静止画と動画に分かれており、さらに動画モードではシャッターボタンを使い録画開始することも出来るようになった。また、ダイヤル設定の中にはメニューにおけるリアコマンドダイヤルの循環設定が追加されている。 - 操作
その他操作に関する設定項目の寄せ集め。このメニューシステムにおいて、「メニューカーソル設定」は重要となっているので目を通しておきたい。 - ライブビュー表示
ライブビューに関連した項目が揃っている。従来のカスタマイズメニューで言えば「D」に当たるページだ。従来の機能に加え、「ナイトビュー」や「自分撮りアシスト」が追加されている。 - info表示
3ページ目と同じく、従来の「D」にあたる機能が揃っている。「シャッター半押し時の表示/水準器表示」機能が追加されている。 - 撮影のその他
ガイド線やマルチFnの設定を変更することが可能。従来通りガイド線の色は自由に変更することが可能だ。さらにファインダー・動画専用のガイド線を細かく設定できるようになっている。
セットアップメニュー
- カード/フォルダ/ファイル
カードのフォーマットやスロット設定など。これと言って目新しい項目は無いが、どちらもSD UHS-II対応スロットとなったので、バックアップやリレー時にボトルネックの心配がなくなっている。 - 情報記録
従来通りレンズ情報として2つのボディキャップレンズが登録されている。 - モニター/音/接続
モニター/EVFの輝度や色の調整が可能だ。記憶が正しければ、従来まではモニターの輝度/色調整のみで、ファインダーは調整できなかったはず。HDMI出力は4K 60pまで対応している。 - Wi-Fi/Bluetooth
無線通信接続に関連した設定項目が集まっている。新発売の無線リモコンとペアリングする機能もこのページにある。電源オフ時のバックグラウンド通信は初期設定で「オフ」となっているので、常時接続を利用したい場合は「スマートフォンの接続設定」からバックグラウンド通信に関する設定の変更が必要だ。 - 電池/スリープ
従来通り、バッテリー残量や劣化度を確認することができ、低消費電力モードなどもこのページに揃っている。 - リセット/日時/言語/その他
従来通り。
マイメニュー
E-M1Xで初導入され、E-M1 Mark IIIにも存在したマイメニューはOM-1でも健在。通常のメニュー画面でRECボタンを押すことで任意の機能をマイメニューに登録できる仕組みは秀逸だ。登録できる機能は「5ページ」×「7行」=「35項目」である。特に使う頻度が多い機能やページが入り組んでいる場所にある機能を登録しておきたい。メニューボタンで優先的にマイメニューからスタートできる設定もある。(カスタマイズメニュー2 メニューカーソル設定)
カスタマイズ
内容量が多いので別ページを参照。
連写・ドライブ
連写速度
各連写モードに対応している連写速度は以下の通りだ。
(★は連写時のブラックアウトあり)
フラッシュ | AF/AE | 連写速度 | |
メカニカル★ | 可能 | 可能 | 1-10fps |
静音撮影★ | 可能 | 可能 | 5-20fps |
SH1 | 不可 | 固定 | 60/100120fps |
SH2? | 不可 | 可能 | 25/50fps |
ProCap | 不可 | 可能 | 5-20fps |
ProCapSH1 | 不可 | 固定 | 60/100120fp |
ProCapSH2 | 不可 | 可能 | 25/50fps |
メカニカルシャッターの最高速度は「10fps」で、E-M1 Mark IIIのような「15fps」には対応していない。フラッシュ同調時のメカニカルシャッターを使った高速連写では不利となるが、それ以外でメカニカルシャッターの「AF/AE固定15fps」が有利となるシーンはそう多くないと思われる。
大きく変わったのは静音連写モードで、最高120fpsでRAW出力に対応している。シングルショットと変わらない画質で120fpsまでRAW出力に対応しているカメラは非常に珍しい。
従来機に近い追従連写は「静音連写」で利用でき(ただしブラックアウトあり)、OM-1固有の連写速度が必要な場合は「SH1」「SH2」を使用する。ただし、フラッシュが利用できるのは「静音連写」のみで、SH1/2は非対応となる。また、「SH2」の50fpsで追従連写時は対応しているレンズが限られているので注意が必要だ。対応するレンズは以下の通りである。
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
PROレンズでも「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」は非対応であり、「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」もSH2 50fpsを利用することが出来ない。ただし、AF/AE固定であればSH1の120fpsまで利用可能だ。
バッファ・バッファクリア
OM-1のスペックシートでは最大撮影コマ数が以下のようになる。
連写速度 | RAW |
10fps | 139枚 |
20fps | 108枚 |
120fps | 92枚 |
50fps | 96枚 |
一時的にメモリに貯めることができるRAWは約90枚で、それ以上の連写撮影時はSDカードへの書き込み速度が重要となる。今回はSD UHS-IIの中では最も書き込み速度が速いSONY TOUGH Gシリーズを使用してテストした。測定するのは一定時間内で撮り続けた際の撮影枚数をチェックした。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
10コマ秒 | 49 | 100 | 153 |
20コマ秒 | 101 | 186 | 235 |
60コマ秒 | 139 | 197 | 251 |
100コマ秒 | 140 | 197 | 249 |
120コマ秒 | 140 | 194 | 248 |
- 10コマ秒
公称値通りの連写速度で撮影することができ、その後もバッファが詰まることなく撮影を続けることが可能だ。バッファクリア時間はほぼゼロである。 - 20コマ秒
5秒間の撮影であれば公称値通りの撮影枚数を稼ぐことが出来る。ただし、5秒を超えるとバッファが詰まりはじめ、最終的に10コマ秒程度までパフォーマンスが低下する。 - 60コマ秒
5秒までにバッファが詰まり(おそらく2秒前後)、公称値通りの撮影枚数は記録できない。以降は10コマ秒までパフォーマンスが低下する。 - 100コマ秒
やはり5秒までにバッファが詰まり、結果的に撮影枚数は60コマ秒と変わらない。 - 120コマ秒
100コマ秒と比べてさらにバッファが詰まりやすい。そして最終的な撮影枚数は60/100コマと同程度だ。
以上のテスト結果から、20コマを超えると明らかにSDカードへの書き込み速度がボトルネックとなっていることが分かる。RAWのファイルサイズから想定される書き込み速度は約200MB/sで、これは各所で測定されているSDカードの書き込み速度とほぼ一致する。さらに高速書き込みに対応するSDカードが登場するかどうか不明だが、今のところ最善の選択肢でもバッファクリアは10コマ秒が限界だ。
ちなみに、各メーカーのSD UHS-IIをテスト(120fps RAW)したところ、以下のような結果となった。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
Sony | 140 | 194 | 248 |
Kingston | 134 | 186 | 240 |
Transend | 128 | 177 | 222 |
Lexer | 110 | 126 | 154 |
Cobalt | 141 | 197 | 252 |
ベストを尽くすのであればProGrade DigitalのCOBALTやSONYのTough G Seriesがおススメだ。とは言え、手ごろな価格のKingstonやTranscendと大きな違いがないので、コストパフォーマンスを求めるのであればKingstonやTranscendで良いと思う。
静音撮影モード
従来通り「静音撮影モード」で電子音や補助光、フラッシュの設定連動が可能だ。
オートISO
従来通りISOオート時の上限・下限を設定可能だ。OM-1は高ISO感度の性能が向上したためか、上限値の初期設定が「25600」となっている。これはE-M1 Mark IIIの初期設定「6400」と比べて2段分高い数値だ。それだけ高ISO感度耐性に自信があるのだろう。
さらに従来通りISOオート時の低速限界設定を利用可能だ。
システムは従来通りで、パナソニックのようにFnボタンに割り当てることは出来ない。ただし、従来機と異なり、「ISOオート低速限界」設定をマイメニューに設定可能となっている。より素早く設定値を変更できるようになった。個人的に多用する機能なので地味に嬉しい。(とは言え、パナソニックのようにFnボタンとして登録できると良かった)
プロキャプチャーモード
E-M1 Mark IIから実装しているプロキャプチャーモード(シャッター全押しから半押しまで一定時間を遡って記録することが可能)はOM-1で大きな進化を遂げた。機能的には従来通りだが、従来機で35枚までだった遡及枚数が70枚まで倍増している。一瞬のシャッターチャンスを捕捉するための撮影枚数が倍となったのは非常に大きい。
ただし、前述した通りバッファは倍増したと言えず、70コマを使いきると次の撮影までにバッファクリアの時間が必要な点には注意が必要だ(最速SD UHS-IIカードでも90コマ分のバッファを処理するのに9秒間かかる)
状況に応じて連写速度とプリ連写枚数を調整する必要がある。
ローリングシャッター
CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的だが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていない。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的だ。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすい。
動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用している。海外企業で「PIXII」のようなカメラがグローバルシャッターを採用しているが、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通りだ。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまっている。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。それでも電子シャッターとしては非常に良好な結果であり、従来のマイクロフォーサーズカメラの中ではトップクラスだ。
他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。
非積層型CMOSセンサーでもE-M1 Mark IIIの4/3 20MPセンサーやEOS R5の45MPセンサーも健闘している。E-M1 Mark IIIの時点で多くの被写体は十分良好と感じていたので、OM-1の幕速はほぼ完璧と言えるだろう。特に20万円台でこのようなパフォーマンスのミラーレスが手に入るのは魅力的だ。
参考
電子シャッター利用時に蛍光灯下で高速シャッターを使うと以下のような影響が見られる。
蛍光灯は1秒間に120回点滅(西日本)を繰り返している。毎秒120回の点滅中、撮像時に1回の点滅がフレームに写りこんでいるため、単純計算で8.3msと言ったところである。E-M1 Mark IIIやE-M1Xが16.6msだったことを考えると約2倍の速度である。これはフラッシュ同調速度が1/50秒から1/100秒まで改善している点と一致する結果だ。
ちなみにISO12800を超えると蛍光灯の点滅が2回写りこむようになる。これは16.6msであり、E-M1 Mark IIIの通常時と同程度のパフォーマンスだ。ISO感度を上げすぎるとローリングシャッターの幕速が低下する点に留意しておこう。と言っても、マイクロフォーサーズでISO12800以降を(画質の観点から)積極的に使う気はしない。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 外付けフラッシュFM-LM3付属
- 新型バッテリー
- IP53対応のマグネシウム合金ボディ
- E-M1Xのように大きなグリップ
- 念願のAF-ONボタンと独立したAELの機能が充実
- 高解像EVF・LCD
- USB-PDによる給電動作中のバッテリー充電に対応
- JPEGのノイズリダクション画質が良くなった
- ハイレゾショットなど合成機能の高速処理化
- 応答性と測距点の密度が高いAF
- エリアや距離のカスタマイズが可能なAF
- 被写体検出AF
- 幅広いカスタマイズに対応
- 新構造・新構成のメニューシステム
- AF/AE追従 50fpsでRAW出力の連続撮影に対応
- AF/AE固定 120fpsでRAW出力の連続撮影に対応
- 最大70コマまで遡及してRAW出力可能なプロキャプチャーモード
- E-M1 III比で2倍のセンサー読み出し速度
デジタルカメラのコアとなるイメージセンサーとプロセッサが一新され、E-M1XやE-M1 Mark IIIを「旧世代」と一蹴できるポテンシャルを備えている。特に「スピード」が強化され、クアッドピクセル方式の位相差AFに対応しているにも関わらず、E-M1 Mark III比で2倍の読み出し速度を実現。さらに2倍以上の連続撮影速度で追従AFを利用でき、ハイレゾショットなどの合成処理も高速化している。
色々と言いたいことはあるが、「刹那のシャッターチャンス」は間違いなくとらえやすくなった。50fpsのC-AF対応プロキャプチャーモードは非常に使いやすし、状況によっては高速移動する被写体も粘り強く追従する。
特に至近距離で手前に向かってくる被写体にはかなり強い。フルサイズやAPS-Cの同価格帯の製品で追従連写がここまで上手くいくカメラは無いはずだ。携帯性と瞬間的なシャッターチャンスを重視するのであれば大いにおススメできるカメラに仕上がっている。
価格を考慮するとハードウェアも充実している。同価格帯のフルサイズやAPS-Cと比べても遜色のないファインダーと液晶モニターを搭載し、IP53にまで対応する防塵防滴仕様のマグネシウム合金ボディは贅沢と言うほかない。
驚いたのが刷新されたメニューシステムだ。構造の変化のみならず、構成が変わり、多くの機能についてデザインも一新している。(20万円ちょっとのカメラで)ここまでするリソース捻出は大変だったと思う。
悪かったところ
ココに注意
- マイクロフォーサーズとしては高価
- マイクロフォーサーズとしては少し大きめのサイズ
- グリップ上部のボタンが押し辛い
- コマンドダイヤルが操作し辛い
- マルチセレクター押し込みの機能が少ない
- ドライブ・フォーカスモードの呼び出しに対応するボタンが少ない
- 起動速度が遅い
- ISO感度ノイズ耐性は従来通り
- ダイナミックレンジは従来通り(ややハイライト重視)
- カラープロファイルのプリセットに大きな変化なし
- AFが前景に引っ張られやすい
- 顔/瞳の検出能力がE-M1 III比で低下
- 連写時の写真をまとめる機能が無い
- 新メニューシステムの操作性が悪い
- CFexpress非対応でバッファクリアが遅い
- ISOオート低速限界設定のショートカット機能がない
マイクロフォーサーズのカメラとしては大きく重いカメラである。そのぶん操作性が良好であれば問題ないのだが、E-M1 III比でコマンドダイヤルの形状やグリップ上部のボタン配置は改悪と感じた(感じ方には個人差はあると思う)。また、従来通り左肩にある2つのボタンはカスタマイズすることができず、他のボタンに割り当てることが出来る機能は限定的だ。
操作性は妥協するとして、最も気になったのはAFだ。
応答性や被写体検出に問題は感じないが、前景にピントを合わせようとする傾向が見られ、特に前景や遮蔽物が多いシーンでは被写体からピントが抜けてしまう場面が多々見られた。OM-1の驚くような応答性や被写体検出性能を備えていたとしても、肝心の被写体にピントを合わせ続けることが出来なければ宝の持ち腐れである。C-AF+TRの追従性も従来通りなので、場合によっては古き良き1点AFや多点AFで被写体を追いかけ続ける必要が高い。被写体検出が主流となりつつある2022年のフラッグシップモデルとしては実に残念な結果である。
もう一つの大きな問題点がバッファクリアだ。バッファそのものはRAWで90枚前後撮れるので問題無いと思うが、撮影後にバッファからSD UHS-IIへの書き込み時間が長すぎる。高性能なSD UHS-IIを使ったとしても最長で10秒程度のバッファクリアが発生してしまう。最大70コマを遡及して保存できるプロキャプチャーモードを使うと、次の撮影までに待ち時間が発生してしまうのが地味に痛い。
それに連写における一連のカットをまとめて管理できないのも面倒だ。一度の連写で100コマ前後の画像データが記録され、それを一括してレート付け・コピー・削除することが出来ない。120fpsの連写に対応しているのだから、その後の管理や整理まで意識したデザインであって欲しい。
RAWの画質(ISOやダイナミックレンジ)に大きな改善が見られないのは残念だが、センサーの読み出し速度やクアッドピクセル方式のAFを実現しつつ、E-M1 IIIと同等の画質を維持できているのであれば御の字だ。また、ソフトウェアによって現像結果が異なるという話も聞くので、そのうち比較テストを実施したい。
JPEGの処理はかなり改善しているが、カラープリセットがほとんど従来通りである。競合のパナソニックをはじめ、ソニーやパナソニック、ニコンなどはここ数年で大きな進化を遂げている。そこまでの進化を求めないにしても、E-P7に搭載した「カラー/モノクロ プロファイル」を搭載していると良かった。
総合評価
満足度は85点。
良いところもあるが、それ以上に”フラッグシップモデルとして”気になる部分が多い。特に前景に引っ張られやすいAFは要改善と感じるし、C-AF+TRの改善にもそろそろ着手して欲しい。バッファクリアは(ハード面の問題なので)どうにもならないと思うが、せめて連写時の画像データを一つにまとめる機能くらいは付け欲しいところだ。同様にメニューシステムの操作性や機能性もブラシュアップが必要である。この価格帯で全てに完璧を求めるのは難しいと思うので、せめてフラッグシップモデルらしいAFを期待したい。
色々と言いたいことはあるが、それでも「OM-1でなければ」「オリンパス(OM SYSTEM)でなければ」撮れない、撮りにくいシーンはあると感じる。50/120fpsのRAW連写は貴重であり、70枚も遡及してRAWデータを保存できるプロキャプチャーモードは驚くほど便利だ。一部のフルサイズ、APS-Cでプロキャプチャーモードと似たような機能を備えつつあるが、それでも「追従AF50fps」「70枚の遡及」「通常と同じ画質」で撮影できるカメラは見当たらない。
さらに応答性の高いAFは(現状だと)使い方次第でフルサイズやAPS-C以上に食いつくことが可能である。さらに今後のファームウェアアップデート次第でAF性能が大化けする可能性は十分にある。
また、効果的なボディ内手ぶれ補正やND64相当まで機能するライブND、8000万画素まで拡張できるハイレゾショットなどもOM-1の魅力の一部である。特に処理速度が速くなったハイレゾショットが使いやすいと感じる。まだ対象となる被写体は限られているが、それでも積極的に活用できる機会は広がっている。
全体的に見て、20万円のカメラに驚くほどの機能性を詰め込んだカメラだが、限られたリソースの中で色々と煮詰まっていない部分が多いと感じた。AFアルゴリズム、メニューの操作性、カスタマイズの自由度やシステムなどは要改善点がある。OM-1のパフォーマンスに魅力を感じてE-M1 Mark IIIなどから乗り換えを検討する人も多いと思うが、現在(ファームウェア1.0)の長所と短所は購入前に理解しておきたい。
今後、この価格で手厚いファームウェアアップデートを期待できるのか不明だが、OM SYSTEMの将来を左右する試金石だと思うので、ここは頑張って欲しいところ。特に前景に引っ張られるAFは早めに対処されると嬉しい。
同価格帯のフルサイズやAPS-Cと比べて
(思いついたことを羅列しているので纏まりがありません。)
積層型CMOSセンサー搭載のフラッグシップモデルと言うことで「Z 9」「α1」「EOS R3」などと比べられがちだが、OM-1の価格はフルサイズミラーレスで言うところのミドルクラスだ。比べるとしたら「α7 IV」「Z 6II」「EOS R6」などである。
同価格帯のフルサイズミラーレスと比べると、最上級かそれに近いハードウェアを備えていることが分かる。高解像・高倍率の電子ファインダー、高解像の背面モニター、積層型BSI CMOSセンサー、最新プロセッサ、マグネシウム合金ボディ(IP53対応)などなど。さらに1053点のクロスタイプ像面位相差AFに対応し、フレーム全域を位相差AFでカバーしているのも一つのポイントとなる。
極め付けはAF/AE追従の連写性能だ。20万円ちょっとのカメラで、最大50fpsの連続撮影で追従連写に対応しているカメラは他に無い。センサーサイズをAPS-Cに妥協しても、このRAW連写速度を実現しているカメラは現状で存在しない。さらに、この価格帯のフルサイズミラーレスはメカニカルシャッターの必要性が高く、追従連写時はブラックアウトが発生し、その際の追従AF性能は明らかに低下する。
例えばα7 IVはOM-1よりも良好な追従AFだが(特にトラッキングAF)、連写時の追従性や応答性はOM-1ほどではない。また、電子シャッターの高速連写に対応していたとしても(例えばEOS R6)、レックビューだったり、ローリングシャッターの影響を受けやすいカメラが多い。この価格帯でスピードとAF性能の両立を考えているのであれば、OM-1は小型センサーながら検討すべき価値がある。
ISO感度やダイナミックレンジの観点で見ると、OM-1は間違いなくフルサイズやAPS-Cセンサー以下である。OM-1は適正露出でハイライトがフルサイズ並みに粘るが、そのぶんシャドウにノイズが乗りやすいので注意が必要だ。逆にシャドウを重視した露出に設定しておくと、センサーサイズ差はあまり感じない。どちらにせよ、フルサイズでも白飛びすることはあるし、シャドウを持ち上げることでノイズは間違いなく増える。センサーサイズ差のダイナミックレンジ差を気にするくらいなら、ハーフNDやHDR合成などカメラ以外の部分を強化したほうが効果的である。
高ISO感度の画質が低下するのは避けられない。特にRAWは高ISO感度でカラーノイズが発生しやすく、ディテールに影響を受けやすい。大口径レンズを使ったり、シャッタースピードを抑えた低ISO感度の維持が重要となる。ただし、JPEG出力に限って言えば、ISO5000~6000くらいならAPS-Cやフルサイズと遜色なく使うことが出来る。
高画素フルサイズからクロップすることで、実質APS-C・マイクロフォーサーズの画角や撮影倍率を得ることができる。6100万画素のα7R IVユーザーだが、確かにそのような側面はあると思う。
ただし、クロップ時のピント精度はそううまくいかない。マイクロフォーサーズ並みにクロップした際の測距点は限られており、1点AFのサイズも大きい。特にマクロ撮影や大口径レンズ、超望遠レンズを使った際の浅い被写界深度を素早くコントロールするは難しい。比較してOM-1はマイクロフォーサーズのセンサーサイズで1053点のAFを実現している。同じ撮影距離で同じ被写体を同じ焦点距離のレンズで撮影しているとしたら、細かくピント位置を調整できるのはOM-1である。
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