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銘匠光学 TTArtisan AF 56mm F1.8 X-mount レンズレビュー 完全版

このページでは銘匠光学「TTArtisan AF 56mm F1.8」のレビューを掲載しています。

TTArtisan AF 56mm F1.8のレビュー一覧

    おことわり

    今回は国内代理店より無償提供の「TTArtisan AF 35mm F1.8」を使用してレビューしています。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。

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    管理人の評価

    ポイント 評価 コメント
    価格 手頃な価格
    サイズ 小さくない
    重量 やや軽い
    操作性 絞りリングなし
    AF性能 必要十分
    解像性能 周辺や隅が甘い
    ボケ 後ボケがやや硬調
    色収差 良好な補正状態
    歪曲収差 良好な補正状態
    コマ収差・非点収差 あまり良くない
    周辺減光 カメラ側で過補正気味
    逆光耐性 TTArtisanとしては良好
    満足度 手頃な価格できちんとした性能

    評価:

    手頃な価格できちんとした性能

    どれを取っても抜群の性能とは言えないものの、手頃な価格のポートレートレンズとしてはバランス良くまとまっています。決定打に欠けるのは確かですが、価格を抑えて56mmを楽しみたいのであれば、検討すべき選択肢。

    While it is not an outstanding performer in any of these areas, it is well balanced for an affordable portrait lens. It lacks definitive performance, to be sure, but if you want to enjoy the 56mm at a lower price, this is an option to consider.

    まえがき

    銘匠光学「TTArtisan」ブランドにおける4本目のAFレンズ。F1.8の大口径レンズとしては「TTArtisan AF 35mm F1.8」に次いで2本目となり、今回はフルサイズ判で85mm相当の画角をカバーするAPS-Cレンズとなっています。富士フイルムやソニーには純正をはじめとして、SIGMA、VILTROX、YONGNUOなど競合製品が数多く存在するセグメントであり、後発メーカーとしてTTArtisanが存在感を発揮できるの注目したいと思います。

    • 公式ウェブサイト
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    • 焦点工房
    • データベース
    • 売り出し価格:¥29,700
    • フォーマット:APS-C
    • マウント:E / X /Z
    • 焦点距離:56mm
    • 絞り値:F1.8-F16
    • 絞り羽根:9枚
    • レンズ構成:9群10枚
      超低分散レンズ1枚・高屈折率レンズ2枚
    • 最短撮影距離:0.5m
    • 最大撮影倍率:不明
    • フィルター径:52mm
    • サイズ:φ65×62mm
    • 重量:233-245g
    • 防塵防滴:-
    • AF:STM
    • 手ぶれ補正:-
    • その他機能:
      ・金属外装
      ・電子接点付きレンズキャップ

    光学系は独自に開発したと思われる9群10枚構成。低分散ガラス1枚と高屈折レンズ2枚を使用しています。最短撮影距離は0.5mと平凡ですが、この点で優れているのはXF50mmF2 R WRE 50mm F1.8 OSSくらい。どちらも販売価格がTTArtisanの倍近く、競合製品とは言えません。

    価格のチェック

    国内での売り出し価格は2万円後半。APS-Cレンズとしては手頃な価格設定ですが、VILTROX「VILTROX AF 56mm F1.7」とYONGNUO「YN50mm F1.8 DA DSM」が2万円前半で販売していることを考慮すると若干高め。この価格差が価値としてどのような表れているのか、今後のレビューで明らかにしていきたいと思います。

    TTArtisan AF 56mm F1.8
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    PERGEAR      

    レンズレビュー

    外観・操作性

    箱・付属品

    まず最初に驚いたのが箱のデザイン。従来はファブリック調のカバーを張り付けた独特なデザインでしたが、今回はグレーを基調とした箱にレンズロゴやレンズ構成などがプリントされています。従来のほうが個性的でしたが、これはこれでアリだと思います。箱の外観こそ一新していますが、中の梱包は従来通り。レンズ本体は形状に切り抜かれた発泡素材に包まれています。同梱品はレンズキャップとフード。そして説明書や保証書などが付属します。

    外観

    レンズ外装は金属製のしっかりとした作り。同価格帯でプラスチック製鏡筒のVILTROXやYONGNUOと比べると質感が良く、金属製ボディと相性の良い外観。VILTROXの質感も悪くありませんが、ボディとの一体感はTTArtisanのほうが良好。

    レンズは全体的に黒色の塗装が施され、装飾は一切ありません。表面の印字はプリントが大半ですが、シリアルやマウント指標は刻印されています。他のTTArtisan AFレンズと同じく、レンズリアキャップに電子接点を搭載。ファームウェアアップデートはレンズにこのキャップを装着して実施します。紛失しないように注意。

    ハンズオン

    全長62mm、重量145gで、ソニーや富士フイルム純正レンズよりも軽量。金属鏡筒ながらYONGNUO YN50mm F1.8 DA DSMと並んで最軽量クラスです。文句のつけようがありません。

    前玉・後玉

    前面には固定されて動かない前玉(=インナーフォーカス)とレンズロゴがプリントされたカバー、52mm径のフィルターソケットがあります。前玉はフッ素コーティング処理されていないと思われるので、水滴や汚れの付着が想定される場合は保護フィルターを装着するのがおすすめ。ただし、口述するドーム状レンズフードのおかげで、物理的ダメージからの保護性は高め。

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    金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。後玉は固定され、周囲は反射防止のための黒色塗装。中をのぞいてみると、不要な光の反射を誘発するような光沢はありません。

    フォーカスリング

    幅広い金属製フォーカスリングを搭載。この価格帯のフォーカスリングとしてはとても滑らかに回転します。回転操作の抵抗感はVILTROXよりも少し緩めで、ソニーと同程度。応答性は良好で、滑らかに動作します。ピント移動量はリングの回転速度に依存していますが、全域のストロークは素早く回転しても180度、ゆっくり操作すると2回転弱と長め。微調整でも快適に利用することができます。

    絞りリング

    残念ながら絞りリングは非搭載。とはいえ、同価格帯のVILTROXやYONGNUOも絞りリングを搭載していません。欠点と言うほどのポイントではありません。。

    レンズフード

    TTArtisan AF 35mm F1.8と同じく、特徴的なドーム状のレンズフードが同梱しています。全体的に金属製で本体との一体感は非常に良好。保護性も良好ですが、C-PLや可変NDなどを操作することはできません(そもそも物理的に干渉するので装着できません)。保護フィルターを装着したままフードを利用可能ですが、厚みのある枠だとフードの内側と若干干渉する可能性あり。薄枠フィルターでぎりぎり回避。

    ケラレ耐性

    ドーム状レンズフードを見るとわかるように複数枚のフィルターを重ね掛けしても問題ありません。もちろんフードは装着できませんが…。

    装着例

    グラファイトカラーのX-T30に装着。前述したように、金属製の鏡筒がボディとの一体感を醸し出しています。プラスチック外装のレンズと比べて強みとなるポイント。外装のデザインもシンプルで、主張しすぎない点もGood。XF50mmF2と比べると鏡筒が太いものの、重量はそれほどでもなく、X-T30との組み合わせでフロントヘビーとは感じませんでした。

     

    レンズ名について

    手に入れたサンプルのレンズで撮影した画像データを確認してみると、EXIFに記録されたレンズ名は「MJ56mm F1.8X DA DSM」となっています。「MJ」は銘匠光学のピンイン(中国語のローマ字表記)「Mingjiang Optics」から当てた文字と予想。

    個人的に気になったのはその後の文字列。「56mm F1.8X DA DSM」このようなレンズ名の規則性はYONGNUOに見られるもので、TTArtisanでは扱っていません。このレンズの製造はYONGNUOが引き受けているのでしょうか?(単なる憶測)

    AF・MF

    フォーカススピード

    AFはステッピングモーター駆動で動作。近距離から遠距離まで電光石火とは言えないものの、静止した被写体であれば過不足のないAF速度だと思います。近距離を歩く小動物(猫など)であれば難なく追従が可能。これが富士フイルムボディ(第4世代)の限界なのか、レンズの限界なのか判断が難しいところ。また、ソニーEマウントで動作が変化するのかは不明。

    フォーカスブリージング

    ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

    スライドショーには JavaScript が必要です。

    画角の変化はゼロと言えず、フォーカシングによって少し目立ちます。この価格帯でフォーカスブリージングを抑えたレンズのほうが少ないので、欠点とは言えません。

    精度

    X-T30との組み合わせで大きな問題はありません。他のレンズでは無限遠側でピントの山をつかみ損ねることもありますが、このレンズでそのような場面に遭遇したことは無し。

    MF

    前述したように、価格設定を考慮すると良くまとまっていると思います。

    解像力チャート

    撮影環境

    テスト環境

    • カメラボディ:X-T30
    • 交換レンズ:TTArtisan AF 56mm F1.8 X-mount
    • パール光学工業株式会社
      【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
    • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
    • 屋内で照明環境が一定
    • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
    • RAW出力
    • ISO 64 固定
    • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
      ・シャープネス オフ
      ・ノイズリダクション オフ
      ・色収差補正オフ
    • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
      (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
    • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

    補足

    今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

    テスト結果

    テスト結果

    中央はF1.8から非常に良好ですが、周辺や隅はワンランク・ツーランク低下。絞りにより改善が期待できるものの、均質性を高める場合はF5.6-8まで絞る必要があります。悪くない結果がですが立ち上がりが遅く、4000万画素のX-H2やX-T5には力不足と感じる可能性あり。

    中央

    F1.8の絞り開放からシャープ。色収差や球面収差によるコントラスト低下も少なく、満足のいく結果が得られています。価格を考慮するとコストパフォーマンス良好。

    周辺

    中央と比べるとソフトな画質で、絞ることで徐々に改善。ベストを尽くすならF8まで絞りたいところ。

    四隅

    周辺から隅にかけて急激に落ち込みはありません。もちろんソフトな画質ですが、F8まで絞ると良好な結果を期待できます。

    数値確認

    中央 周辺部 四隅
    F1.8 3630 2513 1698
    F2.0 3782 2515 1755
    F2.8 3706 2972 2032
    F4.0 3706 3040 2267
    F5.6 3646 3339 2828
    F8.0 3415 3175 2908
    F11 3175 3073 2834
    F16 2851 2615 2488

    実写確認

    VILTROX AF 56mm F1.4 との比較

    テスト機の解像性能が若干異なるので参考までに。そのあたりを考慮しても、周辺や隅の性能はVILTROX AF 56mm F1.4のほうが良好。絞り開放から安定した結果を得ることができます。

     

    SIGMA 56mm F1.4 DC DN との比較

    VILTROXと同じ傾向。TTArtisanよりも周辺や隅の性能が良好です。

    像面湾曲

    像面湾曲とは?

    ピント面が分かりやすいように加工しています。

    中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

    最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

    ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

    参考:ニコン 収差とは

    実写で確認

    中央にピントを固定した状態で、F1.8からフレーム全体でピントを合わせることができるように見えます。ただし、F1.8からフレーム全体でシャープなレンズとは言えず、隅まで良好な結果を得るにはF8くらいまで絞る必要があります。

    倍率色収差

    倍率色収差とは?

    主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

    参考:ニコン 収差とは

    実写で確認

    絞り全域で良好な補正状態。追加の補正は特に必要ないように見えます。

     

    軸上色収差

    軸上色収差とは?

    軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

    参考:ニコン 収差とは

    実写で確認

    ピント面の直前・直後にわずかな色づきが発生するものの、低価格の大口径レンズとしては良好な補正状態です。完璧ではありませんが、価格を考慮すると文句のつけようがありません。

    歪曲収差

    歪曲収差とは?

    歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

    参考:ニコン 収差とは

    比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

    実写で確認

    スライドショーには JavaScript が必要です。

    未補正状態でごく僅かな樽型の歪曲収差。この状態でも目障りと感じることはほとんどありません。

    コマ収差

    コマ収差・非点収差とは?

    コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

    参考:ニコン 収差とは

    絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

    実写で確認

    フレーム隅に点光源のわずかな変形がみられ、これはF4-5.6まで絞ると改善します。絞り開放でも無視できる範囲内ですが、点像にこだわる場合、このレンズは選択肢から外したほうが良いでしょう。

    球面収差

    前後のボケ質に大きな差はなく、良好な補正状態であることがわかります。この価格帯のレンズとしてはかなり良好。あえて言えば、前ボケの縁取りが若干強めですが、ボケの味付け程度。

    前後ボケ

    綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

    ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

    後ボケ

    やや硬めのボケ質ですが、色収差による色づきが無く、過度に悪目立ちする要素はありません。価格帯を考慮すると十分。

     

    前ボケ

    後ボケとは反対に、少し柔らかいボケ質。色収差による色づきも少なく、非常に満足のいく描写。個人的には後ボケに欲しかった描写ですが、ポートレートレンズでは前ボケを入れる機会も多いと思われます。

    玉ボケ

    口径食・球面収差の影響

    口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

    口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

    球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

    実写で確認

    色収差の影響が少なく、口径食も穏やか。非球面レンズを使用していないため、玉ボケの内側は滑らかな描写。全体的に欠点の少ない玉ボケ。あえて言えば縁取りが若干硬めですが、それが問題と感じるシーンは少ないはず。9枚円形絞りが功を奏しているのか、絞っても玉ボケが角ばりにくい。ボケが小さくなるまで良好な結果を期待できます。

    ボケ実写

    至近距離

    どちらかと言えば優等生的なボケですが、あたりさわりが無く、使い勝手が良さそうに見えます。F1.8の絞り開放からピント面のコントラストは良好で、特に絞る必要性を感じません。逆に言えば、これ以上の柔らかい描写が得られないため、状況に応じてソフトフィルターやブラックミストなどで対応するといいでしょう。

    近距離

    被写体との距離が離れた場合でも描写の傾向は同じ。硬調なので背景のコントラストによっては少し騒がしく感じるかもしれません。

    中距離

    接写や近距離と同じ。撮影距離が長い場合は口径食の影響が強くなります。気になる場合はF2.8-4まで絞ると改善します。

    ポートレート

    全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離では、フレーム周辺部の後ボケが騒がしくなります。状況に応じて少し絞ったほうが良さそう。とはいえ、ボケが小さいので目立たない可能性もあります。膝上・上半身程度まで近寄ると、低価格レンズとしては十分に綺麗なボケが得られます。バストアップや顔のクローズアップは文句なし。

    周辺減光

    周辺減光とは?

    フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
    中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

    ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

    最短撮影距離

    少なくともX-T30との組み合わせで、Lightroom Classic CC編集時に適用されるレンズ補正をオフにすることができません。この際、周辺部が中央よりも明るくなる「過剰補正」となっていることがわかります。極端ではありませんが、フラットな光量の背景では目立つかもしれません。この現象はF4まで絞ると改善します。

    無限遠

    最短撮影距離ほどではないものの、わずかに過剰補正の影響がみられます。

    逆光耐性・光条

    中央

    完璧からは程遠いものの、過去のTTArtisanレンズと比べると良くなっています。壊滅的なフレアは発生せず、光源付近に影響を及ばすのみ。

    強い光源をフレームから外した場合、フレーム全体で良好なコントラストを維持。絞っても顕著な影響はありmせん。

    光条

    F16まで絞ると、先細りするシャープな描写。APS-Cの回折を考慮するとF8-11くらいに抑えたいところですが、この際は分散するタイプの光条となります。

    まとめ

    良かったところ

    ココがおすすめ

    • 手ごろな価格設定
    • 総金属製のしっかりとした鏡筒
    • 中央解像がF1.8から良好
    • 軸上・倍率色収差の補正状態が良好
    • 歪曲収差の補正状態が良好
    • 球面収差による問題なし
    • (TTArtisanとしては)逆光耐性が良好

    手ごろな価格を考慮すると、画質がバランスよくまとまっています。「56mm F1.8」のレンズは、おそらく絞り開放で大きなボケを主体とする撮影になると思われ、そのような場合に適切な結果を得ることができます。抜群とは言えませんが、十分に良好。

    悪かったところ

    ココに注意

    • 個性的な形状のレンズフード
    • 絞りリングがない
    • フォーカスブリージングがやや目立つ
    • フレーム隅が絞り開放付近でソフトな画質
    • 後ボケがやや硬調
    • 周辺減光がカメラ側で過剰補正

    致命的な問題には遭遇していませんが、完璧な56mmを探しているのであれば別の選択肢を要検討。絞り開放付近はフレーム周辺や隅の解像性能低下が目立ち、後ボケは少し硬調。鏡筒は金属製ですが防塵防滴には非対応で、絞りリングもありません。また、レンズフードが特殊な形状のため、組み合わせるフィルターが限定されます。

    総合評価

    満足度は90点。
    価格を考慮するとおススメしやすいレンズ。56mmの単焦点レンズとしては低価格で、バランスよくまとまった光学性能を備えています。ポートレートレンズ数あれど、3万円以下の選択肢としては要検討。

    TTArtisan AF 56mm F1.8
    楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo
    PERGEAR      

    購入を悩んでいる人

    純正レンズ

    どれも魅力的な選択肢ですが、全体的にTTArtisanよりも高価。最も安い「XF50mm F2 R WR」ですらTTArtisanよりも倍以上の販売価格。値付けが問題とならないのであれば、光学性能・操作性・互換性の観点から純正がおススメ。

    SIGMA 56mm F1.4 DC DN

    TTArtisanよりも高価ですが、XF50mmF2 R WRよりも安く、F1.4の大口径に対応したシグマ製レンズ。F1.4の大口径ながらコンパクトで、重量はTTArtisanと大きな差がありません。これと言って大きな欠点もなく、簡易防塵防滴付き。5万円出せるのであれば、個人的には本レンズがおすすめ。

    VILTROX AF 56mm F1.4

    TTArtisan以上・SIGMA以下の手頃なF1.4レンズ。この価格帯としては珍しく絞りリングを搭載。解像性能はまずまず良好で、TTArtisanよりも良好。コーティングのためかコントラストが低めで、逆光耐性はあまり良くありません。また、色収差はTTArtisanよりも目立つため、状況によってはF2.8くらいまで絞る必要があります。

    VILTROX AF 56mm F1.7

    TTArtisanにとって最大のライバルとなる存在。TTArtisanよりも手頃な価格を実現しています。光学性能も良好と聞きますが、個人的には未テストにつきノーコメント。(近日サンプルをもらえる予定なので、そのうちレビュー予定)

    購入早見表

    TTArtisan AF 56mm F1.8
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    作例

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