タムロン「20-40mm F/2.8 Di III VXD」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
20-40mm F/2.8 Di III VXDのレビュー一覧
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レンズレビュー完全版
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.6 周辺減光・逆光編
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.5 ボケ編
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.4 諸収差編
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.3 解像チャート編
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.2 遠景解像編
- タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.1 外観・操作性・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
20mm
影響は軽微ながら状況によっては目に見える色収差が残存。絞り開放付近はソフトな描写で色収差の影響がマイルドに見えるものの、シャープさが増すF4~F5.6で明瞭な色収差へと変化します。
24mm
基本的に20mmと同じ傾向で、同程度の収差が残っています。
28mm
広角側と比べると収差が僅かに穏やかとなります。
35mm
28mmと同程度。補正なしでも十分良好ですが、低リスクで収差を完璧に修正することもできます。
40mm
35mmとほぼ同じですが、よく見ると影響が少し小さくなっています。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
20mm
完璧な補正状態ではなく、ピント面の前後にうっすらと色収差が発生しています。少なくとも近距離では前後のボケ質に違いがあり、滲む後ボケは色収差が目立たないものの、固い前ボケはマゼンダの色ずれが少し目立つように見えます。
28mm
広角側と同じくピント面の前後にうっすらと色収差の影響あり。ただし、実写でこれらが問題と感じるシーンは多く無いはず。絞り開放のピント面でコントラストが低いと感じたら軸上色収差が問題となっている可能性あり。
40mm
望遠端でも引き続き軸上色収差の影響が僅かに残っています。軽微ですが、完全に抑えるためには2~3段絞りたいところ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
20mm
陣笠状の歪みを伴う樽型歪曲です。画角や小型軽量なレンズサイズを考慮すると、もう少し大きな歪曲収差が残っていると予想していましたが、どうやら補正状態は良好のようです。ただし、陣笠状の歪曲を手動補正は難しいので、レンズプロファイルは必須。
24mm
20mmと同程度の、比較的穏やかな樽型歪曲が発生します。
28mm
光学的に良好な補正状態です。歪曲収差が樽型から糸巻き型に変化する折り返し地点。
35mm
無補正の場合は中央に向かってすぼんで見える糸巻き型歪曲。影響は軽微ですが、35mmで中程度の糸巻き型歪曲が発生するレンズは珍しい。
40mm
さらに目立つ糸巻き型歪曲が発生します。自然風景では目立たないかもしれませんが、直線的な被写体をフレームに入れると補正が必須と感じます。
球面収差
20mm
前後のボケ質に大きな変化はなく、安定感のあるボケ質が得られます。あえて言えば、前ボケのアウトラインが少し硬め。
40mm
僅かに玉ねぎボケの痕跡が見られるものの、前後のボケは安定感があり、描写の違いはごくわずかに抑えられています。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
20mm
完璧な補正状態ではないものの、実写ではほとんど問題なく使用することができます。
24mm
基本的に20mmと同程度の結果が得られます。
28mm
広角側と比べると、収差の影響が少し目立つように見えます。
35mm
20mmや24mmと同程度で、大きな問題は見られません。
40mm
35mmと同じく、若干の影響を除けば問題ないレベル。
今回のまとめ
歪曲収差は補正必須と感じる場合もありそうですが、その他は全体的に良好な補正状態を実現しているように見えます。完璧ではないものの、実写で収差が気になるシーンは限られてくるはず。色収差は高コントラストなシチュエーションでも目立たない程度によく抑えられています。
軸上色収差はわずかに残っていますが、実写で問題と感じるシーンはほとんどありません。F2.8使用時にピント面が少し低コントラストとなるかもしれませんが、絞れば急速に改善します。
歪曲収差は少し目立ちますが、自然風景などであれば無補正でも問題ない程度に抑えられ、補正が必要な場合でもプロファイルを使って簡単に修正することができます。
全体的に見て、諸収差でこれと言った欠点を抱えているようには見えません。20-40mmと特殊なズームレンジで小型軽量なレンズですが、良好な光学性能を実現しているようです。
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