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タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レンズレビュー完全版

このページではタムロン「20-40mm F/2.8 Di III VXD」のレビューを掲載しています。

20-40mm F/2.8 Di III VXDのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろな価格
サイズ 最小クラス
重量 最軽量クラス
操作性 最低限だが良好
AF性能 非常に高速
解像性能 撮影距離による
ボケ 騒がしい場合あり
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 まずまず良好
周辺減光 補正が必要な場合も
逆光耐性 平均的
満足度 便利な小型軽量ズーム

評価:

機動力の高い特殊なF2.8ズーム

20-40mmの便利なズーム域を携帯性の良いレンズサイズで実現。機動力が高く、汎用性の高い便利なレンズに仕上がっています。光学性能は部分的に妥協が必要ではあるものの、致命的な欠点は無く、日常的に使用できるF2.8ズームレンズで価格も手ごろ。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 ポートレートではボケが騒がしいかも
子供・動物 近距離での撮影で相性良し
風景 絞って使えば全域で高解像
星景・夜景 周辺減光に気を付ければ使いやすい
旅行 携帯性良し、光学倍率低め
マクロ まずまず良好
建築物 歪曲収差に注意が必要

まえがき

タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXDは2022年10月に発売されたフルサイズ用「Di III」シリーズ13本目となるレンズです。ズーム全域で開放F値「F2.8」の大口径を実現しつつ、超広角20mmから標準40mmまでをカバーする珍しいズームレンジをカバーしています。

概要
レンズの仕様
発売日 2022年10月27日 初値 87,120円
マウント E 最短撮影距離 0.17-0.29m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 1:3.8-1:5.1
焦点距離 20-40mm フィルター径 67mm
レンズ構成 11群12枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2.8 テレコン -
最小絞り F22 コーティング BBAR-G2
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ74.4×86.5mm 防塵防滴 簡易防滴
重量 365g AF VXD
その他 USB-Cポート
付属品
レンズフード

超広角をカバーしている大口径のズームレンズですが、全長86.5mm、重量365gと小型軽量です。よく似たサイズ感のレンズを挙げるとソニー「FE PZ 16-35mm F4 G」でしょうか。F4 Gほど広い画角をカバーしていないものの、望遠側は40mmまで利用でき、さらにF4よりも1段明るいF2.8で使用可能。F2.8は低照度でISO感度やシャッタースピードの維持に役立ち、さらにボケも大きくすることができます。小型軽量な大口径レンズは周辺部に向かって画質低下の傾向があり、このレンズもMTF曲線を見た限りでは例外ではありません。このあたりが実写でどのように影響しているのか、実際にテストで確認してみたいと思います。

価格のチェック

売り出し価格の最安値は87,120円。大口径のズームレンズとしてはサードパーティ製としても安く、特に純正レンズと比べると段違いに安くなっています。競合製品が無いことを考えると、もう少し高くでも買う人は買いそうですが…。

20-40mm F/2.8 Di III VXD
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

タムロンらしい白を基調としたデザインの箱。マウント部と同じように箱の底面にルミナスゴールドのカラーを採用。レンズ本体は段ボールの仕切りで前後を固定された状態で梱包。

レンズ本体の他に花形レンズフードと説明書、保証書、シリアルナンバー記載のシールが付属しています。

外観

ぱっと見た外観は一眼レフ用のSPシリーズとよく似ていますが、他のタムロンDi IIIシリーズと同じくプラスチック製の外装を採用。ミラーレス用レンズは競合他社もプラスチック製の外装を採用するメーカーが多く、特に違和感はありません。安っぽさは感じず、しっかりとした質感に加えて、旧デザイン(28-75mm F2.8 Di III RXDなど)と比べて傷や指紋に強くなっているように見えます。

 

ズームリングとフォーカスリングはどちらもゴム製カバーを装着。リング表面に粘性は感じず、ゴミの付着は少ないと思われます。外装の文字は全てプリントで、エッチングなど芸が細かい加工は無し。この辺りはタムロンらしく割り切った感があります。ちなみに「設計 日本」「製造 ベトナム」と記載を確認。

Di IIIシリーズの新世代らしく、USB-Cポートを搭載。パソコンやスマートフォンと接続することで、レンズのファームウェアを更新したり、カスタマイズすることが可能です。ただし、カスタムスイッチやFnボタンは搭載していないので、できることは限られています。

40mmから20mmに向かってズームアウトすると、内筒が前方へ伸びる構造。焦点距離20mmで最も長くなり、その際は40mmと比べて1cmほど全長が長くなります。

内筒もプラスチック製ですが、がたつきなどは無く、頑丈な印象を受けます。

ハンズオン

サイズがφ74.4×86.5mm、重量が365gとF2.8の大口径ズームとしては非常にコンパクトで軽量なレンズです。コンパクトな単焦点レンズを一回り大きくした程度のサイズ感であり、様々なカメラバッグに収納しやすいのがGood。

前玉・後玉

タムロンDi IIIシリーズらしく67mmのねじ込み式フィルターに対応。他の多くのDi IIIシリーズレンズとフィルターを共有できるので非常に便利。特にニッチな高濃度NDなどを揃えやすいのは大きなメリットと感じます。

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前玉には防汚コートが施されているので、水滴や油汚れが付着した際のメンテナンスが簡単。とは言え、ダメージが想定できる撮影シーンでは予めプロテクトフィルターなどを装着しておくのがおススメです。

金属製のレンズマウントは4本のビスで固定されています。マウント周囲には簡易防滴用のガスケットを確認できます。カメラ側のマウントと隙間なく装着することが出来るものの、脱着時の抵抗感が非常に強いので注意が必要です。

後玉付近は反射防止のためのマットブラックな塗装が施されています。ズーム操作で後玉は後方へ移動。

フォーカスリング

タムロンDi IIIシリーズでは珍しく、レンズ先端にフォーカスリングを搭載。他のタムロンレンズに慣れていると、ズームリングと勘違いして操作してしまうかもしれません。少しだけ慣れが必要です。10mm幅のフォーカスリングは適度なトルクで滑らかに回転します。レスポンスはUSB-Cポート経由のカスタマイズでリニア(角度調整可能)/ノンリニアに変更できるほか、回転方向も設定することが可能。ノンリニアは応答性が良すぎるので、個人的には90-180度のリニア設定がおススメです。

ズームリング

17mm幅のズームリングは滑らかに回転しますが、指一本でも軽く回転するほど緩い。ただし自重落下する兆候は見られず、滑らかに回転するので微調整は簡単。動画撮影にも利用できそうですが、ズーム全域でストロークが90度近くあるのでワンアクションで20mmから40mmまで操作するのは難しい。

USB-Cポート

マウント付近にファームウェアアップデートやカスタマイズ用のUSB-Cポートを搭載。キャップなしですが、タムロン曰く問題は無いようです。

前述したように、Fnボタンやカスタムスイッチを搭載していないので、カスタマイズできるのはフォーカスリングのみ。それでもレスポンスや回転方向を調整できるのは便利と感じました。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属します。フィルター操作窓やロック構造のない非常にシンプルなフード。逆さ付けに対応しています。

装着例

α7R IVに装着。「単焦点並みにコンパクトなレンズ」とは言いませんが、少なくともF2.8大口径ズームレンズの中では最小・最軽量クラスで間違いないはず。シグマ「28-70mm F2.8 DG DN」よりも短くて軽い。感覚的には「FE 20mm F1.8 G」とほぼ同じなので、片手での撮影でも余裕があります。

グリップとレンズの間には十分な空間があり、手袋を装着したままでも普通に操作できます。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカスはリニアモーター(VXD)駆動で動作。AF-Sでも最短撮影距離から無限遠まで非常に高速で、ほとんど迷うことなく合焦します。40mm側では合焦速度が少し低下しますが、それでもストレスを感じることはないでしょう。AF-Cを使用すると、さらに合焦速度が高くなり、ピント移動が目に見えないほどの電光石火で動作します。最短撮影距離に近い接写時はピントが迷いがちとなるものの、それ以外では非常に快適。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

ゆっくり操作すると目立ちませんが、素早くピント移動する際は画角の変化が目に付きます。ソニーのフォーカスブリージング補正は利用できないので、この画角の変化を許容できないのであれば動画撮影には使用しないほうが良さそうです(深度合成などにも不向きと言えるかもしれません)。

精度

α7R IVやα7 IVと組み合わせて使用している限りではピント精度に関して問題なし。

MF

フォーカスリングは滑らかに回転し、レスポンスやストロークも調整できるので自分好みの操作性に設定可能。ただし、ノンリニア時の感度調整は出来ないので、リニア時の角度設定で調整します。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM4
  • 交換レンズ:20-40mm F2.8 Di III VXD
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

20mm

テスト結果

中央は絞り開放から解像チャートで測定できる上限に到達。非常に良好なパフォーマンスを発揮し、回折の影響が強くなるF8付近まで同様の結果が続きます。F11以降は回折の影響で徐々に性能が低下しますが、F22の最小絞りでも良好な結果を期待できます。

周辺部は中央と比べるとF2.8の性能が低下するものの非常に良好。さらに、F4まで絞ると中央と同程度の優れた結果を発揮します。隅は周辺部と比べるとワンランク低い画質で、絞り開放のみややソフトな結果となるので注意が必要。全体的なピークはF8周辺で、広角20mmの近接解像テストとしては優れた性能と言えるでしょう。

注意点として、近接時は像面湾曲が強く、フラットな被写体を正面から撮影する場合は全体にピントが合いません。ピントを合わせた箇所はシャープですが、パンフォーカスを狙う場合は強めに絞る必要があります

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4623 3711 1747
F4.0 4642 4683 3486
F5.6 4623 4804 3980
F8.0 4623 4770 4121
F11 4508 4197 3856
F16 3895 3746 3334
F22 3050 2917 2638
実写確認

24mm

テスト結果

20mmと同じくF2.8から非常に良好。特に周辺部も中央と同程度のパフォーマンスを発揮し、隅は20mmと比べると実用的な画質がF2.8から得られます。F5.6以降は均質性も非常に高く、フレーム全域で単焦点レベルの解像性能を発揮。ただし、20mmと同じく像面湾曲が強いので、実写ではピントの山が外れて少しソフトに写る領域があるかもしれません。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4700 4457 2947
F4.0 4719 4822 3971
F5.6 4739 4804 4492
F8.0 4739 4842 4457
F11 4705 4371 4352
F16 4075 3975 3529
F22 3069 3287 2759
実写確認

28mm

テスト結果

中央から周辺部はF2.8から解像チャートの上限に突き当たるほど優れた性能を発揮。隅もF2.8から良好な画質を期待できます。F2.8のコンパクトなズームレンズとしては驚異的なパフォーマンス。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4819 4784 3467
F4.0 4819 4804 4199
F5.6 4819 4804 4667
F8.0 4819 4845 4683
F11 4784 4405 3838
F16 3983 3780 3694
F22 3297 3138 2843
実写確認

35mm

テスト結果

中間域を超えると、周辺部や隅の性能が低下傾向となります。周辺部はF2.8における解像性能が低下し、隅は絞っても大きく改善しません(良好な状態ではありますが)。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4737 4138 3366
F4.0 4804 4708 3213
F5.6 4819 4744 3953
F8.0 4860 4558 3853
F11 4440 4525 3953
F16 4006 3869 3544
F22 2860 3103 2765
実写確認

40mm

テスト結果

40mmは最もパフォーマンスが低下するポイント。中央は依然として良好な結果を維持していますが、周辺部や隅のパフォーマンスがストンと低下。それでもF5.6-8まで絞ると改善するので、風景撮影など絞れるシーンでは特に問題を感じないはず。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4851 2990 2562
F4.0 4905 4019 2765
F5.6 4905 4285 2697
F8.0 4923 4801 3966
F11 4420 4354 3901
F16 4006 3838 3512
F22 3120 2973 2798
実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • カメラ:ILCE-7RM4
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
    ・レンズ補正オフ

20mm

  • 中央:
    F2.8から非常に良好で、F4まで絞るとコントラストが僅かに改善します。ピークはF5.6までで、F8で僅かに低下、F11以降は徐々に画質が低下します。
  • 周辺部:
    中央と比べるとコントラストが少し低下するものの、良好な解像性能を維持しています。F4まで絞るとコントラストが改善し、F8までピークの性能を維持。以降は中央と同じく低下します。
  • 四隅:
    周辺部と比べて顕著な低下がみられず、良好なパフォーマンスを実現しています。絞るとシャープネス・コントラストの両方が底上げされ、非常に良好な結果を得ることが可能。

全体的に見て、コンパクトな広角大口径ズームレンズとしては立派なパフォーマンスです。

24mm

  • 中央:
    20mmと同じく絞り開放から非常に良好。絞っても顕著な改善は見られず、ピークの性能はF8まで続きます。
  • 周辺部:
    20mmと比べると非点収差のような影響が目立ち、結果として画質が低下しているように見えます。絞るとF8に向かって徐々に改善しますが、抜群の解像性能には見えません。
  • 四隅:
    周辺部から激しい落ち込みはないものの、F2.8では少しソフトな画質です。フレーム隅までしっかりとした結果が得たい場合はF5.6くらいまでは絞るのがおすすめ。

20mmと比べると周辺部~隅の画質低下が少し気になりますが、絞れば改善するので大きな問題ではありません。

28mm

  • 中央:
    広角側と比べるとF2.8のコントラストが少し低下しているように見えます。F4まで絞ると改善してピークの結果を得ることが可能。以降はF8付近まで性能を維持しています。
  • 周辺部:
    24mmと同じく絞り開放付近で僅かに像の流れが発生しています。絞ると徐々に改善し、ベストな結果を得たい場合はF5.6まで絞るといいでしょう。
  • 四隅:
    ・周辺部よりも少しソフトな描写。絞ると徐々に改善し、F8でベストな結果を得ることができます。

基本的には24mmと同じ傾向。

35mm

  • 中央:
    他の焦点距離と同じく非常に良好な結果を得ることができます。
  • 周辺部:
    24mmや28mmと比べると非点収差の影響が小さく見えます。F2.8からほとんど問題がないように見えます。
  • 四隅:
    僅かにソフトですが、極端な画質の低下は見られません。F5.6前後まで絞れば満足のいく結果が得られます。

ピークの性能は低下していますが、フレーム全体の安定感は中間域よりも良好に見えます。

40mm

  • 中央:
    他の焦点距離と比べるとF2.8のシャープネスやコントラストが低下し、画質がワンランク低下。それでも良好な画質ですが、F4・F5.6まで絞ると大きく改善する余地を残しています。
  • 周辺部:
    中央はやや低下気味ですが、周辺部は28mmや35mmと同程度のパフォーマンスを維持。望遠端の周辺部としては良好な結果と言えるでしょう。
  • 四隅:
    周辺部と同じく、顕著な画質低下は見られず、F4~F5.6まで絞ると非常に良好な結果を得ることができます。

35mmと同じくピークの性能は低下しますが、フレーム隅まで安定感のある解像性能を実現しています。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

20mm

影響は軽微ながら状況によっては目に見える色収差が残存。絞り開放付近はソフトな描写で色収差の影響がマイルドに見えるものの、シャープさが増すF4~F5.6で明瞭な色収差へと変化します。

24mm

基本的に20mmと同じ傾向で、同程度の収差が残っています。

28mm

広角側と比べると収差が僅かに穏やかとなります。

35mm

28mmと同程度。補正なしでも十分良好ですが、低リスクで収差を完璧に修正することもできます。

40mm

35mmとほぼ同じですが、よく見ると影響が少し小さくなっています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

20mm

完璧な補正状態ではなく、ピント面の前後にうっすらと色収差が発生しています。少なくとも近距離では前後のボケ質に違いがあり、滲む後ボケは色収差が目立たないものの、固い前ボケはマゼンダの色ずれが少し目立つように見えます。

28mm

広角側と同じくピント面の前後にうっすらと色収差の影響あり。ただし、実写でこれらが問題と感じるシーンは多く無いはず。絞り開放のピント面でコントラストが低いと感じたら軸上色収差が問題となっている可能性あり。

40mm

望遠端でも引き続き軸上色収差の影響が僅かに残っています。軽微ですが、完全に抑えるためには2~3段絞りたいところ。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

軸上色収差のテストと同様、後ボケが滲みを伴う柔らかい描写であるのに対し、前ボケは縁取りが少し強めの描写。極端な違いではないので、全体像からするとニュートラル寄りのボケ質と言えそうです。軸上色収差の影響はゼロと言えないものの、使い勝手が良い。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

20mm

中央とその周辺の描写は良好ですが、フレーム隅に向かって部分的にアウトラインが強調される騒がしい描写。周辺部が騒がしい場合は1~2段絞ると安定感が増します。非球面レンズによる玉ねぎボケの効果はほとんど見られず、広角レンズとしては評価できるボケ質です。

24mm

口径食の影響は小さくなるものの、アウトラインが強調されるのは20mmと同じ。状況によっては1段ほど絞ったほうが見栄えの良いボケが得られる可能性あり。

28mm

口径食はさらに小さくなりますが、アウトラインが強調される領域が広がっているように見えます。F4まで絞るとかなり安定した描写となるので、状況によっては積極的に絞りたいところ。

35mm

広角・中間域と比べると明らかにボケのアウトラインが目立ちます。絞ると改善するので、意識的に少し絞って撮影したほうが良さそう。

40mm

基本的に35mmと同じ傾向が続きます。

ボケ実写

20mm

20mmと短い焦点距離ですが、接写性能とF2.8を活かすことでボケを大きくすることが可能。接写時は背景をしっかりとぼかすことができ、後ボケの大部分は滑らかで綺麗に見えます。玉ボケのテストでも判明しているように、周辺部のボケにはアウトラインが付きやすく、実写でも同様の傾向があるように見えます。ボケは少し小さくなりますが、F4まで絞るとことで周辺部の描写が改善します。

撮影距離が長くなると、騒がしく見えるボケの領域が広くなります。それでも色収差や口径食などはよく抑えられており、極端に悪目立ちする描写ではありません。騒がしいと感じた場合は少しだけ絞ってみると改善する可能性あり。

被写体との距離がさらに離れると、当然ながらボケは小さくなります。ボケも決して滑らかで綺麗とは言えませんが、ボケが小さいので悪目立ちする可能性は低い。

40mm

広角側と比べるとアウトラインが強調されたボケ質ですが、見苦しい描写ではなく、(シャボンボケのようで)これはこれでアリなのかなと。もしも気になる場合はF4まで絞ると大きく改善します。

撮影距離が少し長くなっても同様の傾向が続きます。絞ることで改善するので、安定感のある描写とも言えそう。これと言って悪目立ちする要素は無く、特殊な小型軽量のF2.8ズームと考えると評価できる質感

ボケ描写に滑らかさは微塵もありませんが、色収差や玉ねぎボケはよく抑えられています。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、絞り開放で撮影した結果が以下の通りです。

20mm

全身をフレームに入れた場合にボケを得るのは難しい。多少ボケた感じも得られますが、環境ポートレートとなりそう。上半身くらいまで近寄ると、背景が徐々にボケ始めます。被写体を背景から分離したいのであれば少なくともバストアップか顔のクローズアップまで近寄る必要あり。

40mm

20mm F2.8と異なり、全身をフレームに入れも多少のボケを得ることが可能。ただし、被写体を背景から分離するほどではなく、そのような場合は膝上・上半身くらいまで近寄りたいところ。バストアップまで近寄ると十分なボケ量を得ることができます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

20mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

陣笠状の歪みを伴う樽型歪曲です。画角や小型軽量なレンズサイズを考慮すると、もう少し大きな歪曲収差が残っていると予想していましたが、どうやら補正状態は良好のようです。ただし、陣笠状の歪曲を手動補正は難しいので、レンズプロファイルは必須。

24mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

20mmと同程度の、比較的穏やかな樽型歪曲が発生します。

28mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

光学的に良好な補正状態です。歪曲収差が樽型から糸巻き型に変化する折り返し地点。

35mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

無補正の場合は中央に向かってすぼんで見える糸巻き型歪曲。影響は軽微ですが、35mmで中程度の糸巻き型歪曲が発生するレンズは珍しい。

40mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

さらに目立つ糸巻き型歪曲が発生します。自然風景では目立たないかもしれませんが、直線的な被写体をフレームに入れると補正が必須と感じます。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

20mm

最短撮影距離

一般的に最短撮影距離は無限遠と比べて周辺減光が緩和する傾向がありますが、このレンズは最短撮影距離でもF2.8で目立つ周辺減光が発生します。絞ると改善しますが、完璧には解消せず、F4以降は絞ってもほとんど変化がありません。気になる場合はソフトウェアによる補正が必須となります。小型軽量な広角大口径ズームの代償と言える部分かもしれません。

無限遠

最短撮影距離と同程度の目立つ周辺減光が発生します。面白いことに、絞るった際は最短撮影距離よりも周辺減光の影響が少なくなっています。

28mm

最短撮影距離

広角端20mmと比べると周辺減光の影響が穏やかとなります。F4まで絞るとわずかに改善しますが、それ以降はほとんど同じ。

無限遠

最短撮影距離と比べると周辺減光が僅かに強くなります。

40mm

最短撮影距離

望遠端40mmは周辺減光が強くなるかと思いきや、このズームレンズでは減光が最も穏やかな焦点距離となります。F4まで絞ると影響はほぼ解消可能。

無限遠

最短撮影距離と同程度で、特に大きな変化はありません。

球面収差

20mm

前後のボケ質に大きな変化はなく、安定感のあるボケ質が得られます。あえて言えば、前ボケのアウトラインが少し硬め。

40mm

僅かに玉ねぎボケの痕跡が見られるものの、前後のボケは安定感があり、描写の違いはごくわずかに抑えられています。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

20mm

完璧な補正状態ではないものの、実写ではほとんど問題なく使用することができます。

24mm

基本的に20mmと同程度の結果が得られます。

28mm

広角側と比べると、収差の影響が少し目立つように見えます。

35mm

20mmや24mmと同程度で、大きな問題は見られません。

40mm

35mmと同じく、若干の影響を除けば問題ないレベル。

逆光耐性・光条

20mm

強い光源を正面から受けると、フレアはよく抑えられているものの、いくつものゴーストが発生します。極端に悪目立ちするゴーストではありませんが、状況によっては被写体を邪魔する不自然な描写となってしまう可能性あり。さらに、絞るとゴーストが収束してやや目立つ描写となります。

光源をフレーム隅まで移動した場合にも複数のゴーストが発生します。これらを回避したいのであれば、光源をフレームから外れるように調整しなければなりません。さらに、絞ると目立つゴーストが発生するので絞りすぎに注意。

40mm

20mmとは打って変わって40mmではゴースト・フレアともによく抑えられています。影響が皆無とは言いませんが、フレアやゴーストが目立ちやすい環境でも良好な結果。

フレーム隅の光源も完璧とは言えないものの、良好な結果を期待できます。

光条

F11付近からシャープな光条へと変化します。回折とのバランスを考慮するのであればF16あたりがベスト。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 特殊で便利なズーム域
  • 小型軽量
  • 手ごろな価格設定
  • 簡易防滴
  • USB-C経由の更新・カスタマイズ
  • 統一された67mmフィルターソケット
  • VXD駆動の高速AF-C
  • 近接時も良好な解像性能
  • 遠景で良好な解像性能
  • 倍率色収差の補正
  • 接写性能
  • コマ収差の補正

強みとなるのは「20-40mm」と特殊なズーム域をカバーする小型軽量なF2.8ズームレンズであること。通常の超広角ズーム・標準ズームで両立することのない焦点距離をレンズ1本で済ませることができるのは魅力的。さらにF2.8の大口径で、低照度での撮影や、大きなボケを演出したい場合にも選択肢となるのがGood。特殊なズームレンズにも関わらず、手ごろな価格設定も強みと言えそう。

光学性能は完璧とは言えないものの、一般的な撮影であれば満足のいく解像性能・収差補正・ボケ・逆光耐性を実現しているように見えます。簡易防滴やレンズのカスタマイズ、VXD駆動の高速AFや高い接写性能など機能面も充実しています。オールラウンドな性能を備えた新しいジャンルの大口径ズームレンズ。

悪かったところ

ココに注意

  • ズームリングが緩い&ロック不可
  • フォーカスブリージングが少し目立つ
  • 接写時に像面湾曲が顕著
  • 望遠側の周辺部がF2.8で性能低下
  • フレーム周辺部の後ボケ
  • 歪曲収差
  • 広角側の周辺減光
  • 広角側のゴースト
  • ショートズーム

致命的な弱点はありませんが、接写時に周辺部の解像性能が低下したり、周辺部のボケが騒がしいなど、部分的に気になるところはあります。とはいえ、レンズの長所を考慮すると妥協できる項目が多く、歪曲収差や周辺減光などはカメラやソフトウェアで簡単に補正が可能。

光学2倍のショートズームが不便と感じる人もいることでしょう。広角ズームと比べると画角が狭く、標準ズームと比べると画角が広すぎる。このあたりは慣れが必要なのかなと。

総合評価

満足度は95点。
小型軽量で汎用性の高い、大口径の広角/標準ズームレンズです。光学性能はずば抜けて良好というわけではありませんが、携帯性・利便性・機能性のバランスが良く、使い勝手の良いレンズに仕上がっています。この1本で済むシチュエーションも多く、荷物を減らし、機動力を高めたいときに考慮したいレンズ。

購入早見表

20-40mm F/2.8 Di III VXD
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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