タムロン「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」のレビュー第六弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など、様々な収差の影響を恒例のテストで確認しています。
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像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
全体的に極端な影響は発生しないものの、周辺部に向かって僅かに近側へピントが移動しているようにも見える。実際、フラットな解像力チャートを撮影すると影響がハッキリと現れる。つまり、周辺部にピントを合わせると、四隅でピントが合う一方、中央でピントが合わない事態が発生する。
この現象は最短撮影距離付近だけでなく、無限遠側でもわずかに影響が見られる。もしも遠景でパンフォーカスを狙いたいのであれば像高5割付近にピントを合わせて、しっかり絞って撮影するのがおススメ。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
色収差補正オフのJPEG出力
Adobe Lightroomで現像すると、例え色収差補正をオフにしても倍率色収差が自動的に補正されている。しかし、カメラ出力のJPEGで色収差を補正をオフにすると、実際の倍率色収差が確認可能。従来はLightroomでRAW現像した作例を掲載しているので、今回はカメラ出力で撮影した作例を以下に公開する。
ご覧のように、ズーム全域で目に付く倍率色収差が発生している。比較的簡単に補正できる収差だが、状況によっては細部の画質低下の一因となる。また、強制適用される自動補正だけでは望遠側の収差を修正しきれないので、追加の補正が必要。この場合も簡単に修正できるので、特に大きな問題は無い。
28mm
35mm
50mm
75mm
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
28mm
絞り開放から大きな問題は見られない。極僅かに残存収差が見られるものの、これが厄介と感じるシーンはごく限られてくるはず。
35mm
28mmと同じ傾向。大きな問題は見られない。
50mm
広角側と比べると、ピント面前後に僅かな色付きが見られる。それでもシグマ28-70mm F2.8 DG DNと比べると遥かに良好な補正状態であり、問題となるシーンは少ないと思われる。
75mm
50mmよりもさらに色付きが強くなる。それでもシグマ24-70mm F2.8や28-70mm F2.8と比べると良好な補正状態である。
球面収差
28mm
前後のボケ質に大きな違いは見られない。敢えて言えば軸上色収差が僅かに発生しているものの、それも大きな問題ではない。ボケの縁取りはほとんど無く、これが綺麗なボケ味に繋がっていると思われる。また、輪線ボケ(玉ねぎボケ)の兆候は皆無で、良好な研磨状態。
35mm
基本的に28mmと同じ傾向。縁取りは最小限に見える。
50mm
広角側と比べると軸上色収差が少し強くなる。ボケ質は良好で、広角側と比べて大きな変動は見られない。
75mm
他の焦点距離と比べると軸上色収差が目立つ。ボケへの影響はゼロと言えず、場合によって気になる色付きとなるかもしれない。ただし、内側の描写はとても綺麗で、積極的に評価できるポイント。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
28mm
28mmとしては少し目に付く樽型歪曲だが、驚くほどの収差量では無いように見える。とは言え、直線的な被写体を撮影する場合は補正必須。
35mm
この段階で既に糸巻き型歪曲へと変化する。程度は穏やかだが、直線的な物体がフレームの端から端まで伸びている場合は補正したいと感じるかもしれない。
50mm
標準ズームの50mmとしては強めの糸巻き型歪曲が発生する。場合によっては不自然に見えるので補正が必要。
75mm
50mmと同じく強めの糸巻き型歪曲が発生する。かなり目立つので注意が必要。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
28mm
絞り開放から良好な補正状態で大きな問題は見られない。シグマ2本と比べると良好な補正状態である。
35mm
引き続きシグマと比べて良好で、絞り開放から顕著な非点収差は見られない。
50mm
僅かに点光源の変形が見られるものの、特に大きな問題は無い。
75mm
僅かに非点収差の影響があるようにもみえるが、それでも大きな問題は無し。
今回のまとめ
歪曲収差と倍率色収差がいくらか残存しているものの、この二つはカメラや現像ソフトの自動補正で簡単に修正できる。よって大きな問題とはならない。Adobe Cemra RAWでも既に専用の補正用プロファイルに対応している。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN」「28-70mm F2.8 DG DN」は望遠側で軸上色収差が目立ち、このレンズも多少は同じ収差が目に付く。しかし、シグマ2本と比べると良好な補正状態であり、問題と感じるシーンは遥かに少ない。ボケ質がより良好なのはシグマだが、ボケ質の差を考慮しても色収差の補正状態は魅力的。
意外だったのがコマ収差の補正状態。ズーム全域で点像再現性が良く、収差の影響は僅か。夜景や星景の写真で使うのであれば面白い選択肢となるかもしれない。
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