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NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR レンズレビュー Vol.5 諸収差・逆光 編

ニコン「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差と、ピント位置による周辺減光の影響や光源の配置で逆光耐性がどのように変化するのかチェックしています。

NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRのレビュー一覧

収差と逆光耐性

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ズーム全域で良好な補正状態です。特に目立つ焦点距離はありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ピント面の前後に僅かな色づきがあるものの、これが実際に問題となる可能性は非常に低い。絞り開放から心配せずに利用することが可能と言えるでしょう。

球面収差

良好な補正状態です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

180mm

極わずかな糸巻き型。無補正でも特に目立ちませんが、直線がフレーム端に入るのであれば補正を適用したほうが良いでしょう。

スライドショーには JavaScript が必要です。

300mm

180mmと同じく弱めの糸巻き型。やはりフレーム端に直線が入るのであれば補正を入れておいたほうが良さそう。補正をオフにしたところでメリットは無いと思われるので、常時オンで問題ないはず。

スライドショーには JavaScript が必要です。

600mm

他の焦点距離と同じか、やや強め。

スライドショーには JavaScript が必要です。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

180mm

F5.6の絞り開放で四隅にわずかな光量落ち。このままでも大きな問題ではありませんが、画質に大きな影響なく補正も可能。1段絞るとほぼ解消します。

600mm

広角側と比べて無限遠側の周辺減光が強め。1段絞ると改善しますが、絞り開放を使う際はヴィネッティング補正をオンにしておいたほうが良いでしょう。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

広角側の隅でわずかな変形が見られるものの、無視できる範囲内に抑えられています。

逆光耐性・光条

中央

NIKKOR Z レンズらしく、フレアやゴーストが良く抑えられています。完璧とは言えませんが、強い逆光シーンでもフレア・ゴーストの影響が僅か。

中央と比べるとゴーストがいくらか目立つものの、タムロン150-500などと比べると良好な結果が得られているように見えます。

光条

絞っても先細りする光条とはなりません。最小絞りまで分散型の光条です。光条がシャープになるタイミングも遅く(F16-22あたり)、このレンズで光条を得るために絞るのはおススメしません。

まとめ

これと言って書くことがほとんどありません。
収差は全体的に良好な補正状態で、残存する僅かな色収差や歪曲収差はカメラや現像ソフトの補正で簡単に修正することが出来ます。他の収差で問題と感じるようなポイントは無く、快適に利用できる光学性能と言えそうです。敢えて言えば×2.0 テレコンバージョンレンズを装着すると球面収差と思われる像の甘さが目立ちます。拡大しなければ気にならないかもしれませんが、F16くらいまで絞ったほうが良好な結果を期待できるはず。
大部分の領域で周辺減光は問題と感じないものの、600mmで風景を撮影する際はF6.3における周辺減光が少し気になるかもしれません(180mmでも未補正の場合はF5.6で僅かに発生)。
180-600mmの狭い画角で逆光耐性が問題と感じるシーンは少なく、さらに強い光源をフレームに入れてもフレアは良く抑えられています。ゴーストの発生がゼロとは言えませんが、このクラスのズームレンズとしては健闘していると思います。

購入早見表

作例

オリジナルデータはFlickrにて公開。

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