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NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR レンズレビュー 完全版

このページではニコン「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」のレビューを掲載しています。

NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 適切な値付け
サイズ 縮長が長い
重量 普通
操作性 ズーム操作しやすい
AF性能 必要十分だが感動はない
解像性能 接写以外は均質性が高い
ボケ ズームとしては滑らか
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 軽度の糸巻き型
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 望遠側の無限遠でやや目立つ
逆光耐性 フレアが良く抑えられている
満足度 幅広いニーズを満たす600mmズーム

評価:

幅広いニーズを満たす600mmズーム

全長が長めで収納スペースが必要となるものの、インナーズーム構造で扱いやすく、ズーム全域で良好な光学性能を発揮する600mmズームレンズ。平凡なステッピングモーター駆動、比較的シンプルなコントロールなどを許容できるのであれば、手ごろな価格で幅広いニーズに対応できる600mmレンズに仕上がっています。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 画角が問題なければ
子供・動物 運動会など広い敷地の屋外イベント向け
風景 均質性が高く使いやすい
星景・夜景 画角・F値・光条がイマイチ
旅行 長めのカメラバッグが必要
マクロ このクラスでは比較的良好
建築物 歪曲小さめで均質性が高いが画角が狭い

まえがき

2023年8月31日発売のニコンZマウント用の超望遠ズームレンズ。現行のラインアップ(ズーム)の中では最も長焦点をカバーしていますが、非S-Lineシリーズと言うことで手ごろな価格を実現。レンズサイズや重量はそこそこあるものの、気軽に600mmの世界を体験してみたい人にとって面白い選択肢となりそうです。また、テレコンバージョンレンズにも対応しており、最大で1200mmの超望遠を利用可能(開放F値が13となりますが)。

概要
レンズの仕様
マウント Z 最短撮影距離 1.3-2.4m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 0.25倍
焦点距離 180-600mm フィルター径 95mm
レンズ構成 17群25枚 手ぶれ補正 5.5段
開放絞り F5.6-6.3 テレコン 対応
最小絞り F32-36 コーティング SIC/F
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ110×315.5mm 防塵防滴 対応
重量 2140g AF STM
その他 インナーズーム・テレコン対応
付属品
フード・キャップ・ケース

特徴はなんと言ってもインナーズーム構造。180mmでも600mmでもレンズの全長は一定に保たれています。600mmに固定したままカメラバッグに収納したり、撮影位置を移動するのが容易であるのは長所と言えるでしょう。一方、伸縮ズームと比べると全長が長く、収納スペースやカメラバッグを選ぶ必要があります。

レンズ構成は17群25枚で、構成中にEDレンズ6枚、非球面レンズ1枚を使用。MTF曲線を見る限りでは単焦点レンズ並みの光学性能を期待することは出来ないものの、180mmから600mmまで大きな変動のない安定したパフォーマンスを発揮するようです。

価格のチェック

販売価格は22.2万円。非S-Lineのレンズとしては高価ですが、純正の600mmズームレンズとしては妥当な価格設定。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

NIKKOR Zシリーズらしく、黒と黄色を基調としたシンプルなデザインの箱です。レンズ本体は段ボールの間仕切りで固定されています。緩衝材は入っていません。

レンズ本体の他、レンズフードやソフトケース、三脚リング、説明書、保証書が付属。

外観

外装のパーツは主にプラスチック素材を使用。手触りは少しプラスチッキーですが、特に安っぽい印象はありません。グリップやズームリングにはゴム製カバーを採用し、フォーカスリングのみプラスチック製。

インナーズーム方式のため、ズーム全域でレンズの全長は一定を維持。無駄な装飾のないシンプルなデザイン。表面の印字は大部分がプリントで、エッチングなど凹凸の加工は施されていません。レンズマウント付近にはシリアルナンバーやCEマークなどもプリントされています。ちなみに製造国は中国。レンズ先端は一見するとフォーカスリングのように見えますが、回転する機構にはなっていません。単なるグリップですが、硬質のゴム製カバーで覆われており、左手でしっかりと掴むことが可能。

ハンズオン

2kg超と言うこともあり、片手で持つと重量感のあるレンズです。運搬や手持ち撮影が出来ないほどではないものの、長時間の撮影は苦労するはず。一脚や三脚など、重量を支えることができるアイテムを用意しておくと良いでしょう。

前玉・後玉

フィルター径95mmに対応する大きな前玉ですが、600mmズームレンズとしては一般的なサイズです。このサイズのねじ込み式フィルターは種類が限られてくるため、手ごろな選択肢が少ないのが悩ましいところ。ドロップインフィルターには対応していません。フッ素コーティング処理されているので、水滴や油汚れに対するメンテナンス性が高く、深いレンズフードを備えているので、プロテクトフィルターの必要性は低い。とは言え、ダメージが想定される環境ではフィルターを装着しておくことをおススメします。

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レンズ先端は保護性の高いゴムカバーを装着しています。ただし、レンズフィルターを装着するとフィルターが突出するため効果なし。

金属製レンズマウントは5本のビスで本体に固定されています。周囲は防塵防滴用のシーリングあり。レンズ内部はテレコンバージョンレンズとの互換性を確保するために空間があり、周囲は不要な光の反射を抑えるためにマットブラックの塗装が施されています。

フォーカスリング

約1.5cm幅のプラスチック製フォーカスリングを搭載。独立したコントロールリングを持たないため、このリングはコントロールリングを兼用しています。機能を切り替えるにはカメラ側のボタンカスタマイズで設定の変更が必要。リングは適度な抵抗で滑らかに回転します。僅かな力でも引っかかりがなく、操作性は良好。ストロークは回転速度に応じて変化し、素早く回転すると約135°、ゆっくり回転すると720°以上の操作が必要となります。

ズームリング

約6.5cm幅のゴム製ズームリングを搭載。180mmから600mmまでのストロークは70°と短く、一度の操作で広角端から望遠端まで切り替えることができます。インナーズームでレンズの伸縮がなく、リングの抵抗も適度で素早く滑らかに操作が可能。伸縮ズームと異なり、ズーム全域でトルクは一定で、引っかかるポイントはありません。

レンズフード

円筒型のプラスチック製レンズフードが付属しています。フィルター操作窓などは無い、シンプルなデザインのフードです。内側は反射防止のための切込みあり。このクラスはフードの先端に保護性の高いゴムカバーを装着する製品が多いものの、残念ながら本レンズのフードは総プラスチック製。ソニーをはじめ、タムロンやシグマと言った比較的手ごろな価格のサードパーティ製レンズでさえゴム製カバーを装着していることは考えると、頑張ってほしかったところ。

三脚リング

着脱可能な金属製の三脚リング・三脚座が付属。サードパーティ製レンズではアルカスイス互換に対応する三脚座が増えているものの、本レンズは非対応。互換性のあるベースプレートを装着したり、社外製の三脚リングに交換する必要があります。三脚座は大型ネジ穴と小型ネジ穴を一つずつ備え、前後3か所でビデオボス穴に対応。ベースプレートのズレを防ぐことができます。三脚リング側面にはストラップを装着できる金具あり。ニコン製ストラップの他、ピークデザインのアンカーリンクスなども装着可能。

三脚リングは固定用のノブを緩めることで取り外し可能。シンプルな作りで、90度ごとのクリックストップなどには対応していません。F-Fotoに提供していただいた発売前のアルカスイス互換ベースプレートを装着。ビデオボスと大小ネジ穴に対応しているので、三脚座にしっかりと固定することが出来ます。

スイッチなど

マウント付近の側面にはAF/MF切り替えスイッチとフォーカスリミッタースイッチを搭載。機能として最小限で、VRモードの切替やL-Fn2ボタンには非対応。筐体が大きい割にはコントロールがシンプル。また、マウント付近に配置しているので、手持ち撮影では操作し辛いです(左手はもっと前方で支える必要がある)。

装着例

Nikon Z 8に装着。装着した状態で三脚リングの位置で重心が安定します。Z 8との組み合わせで総重量が約3㎏とかなり重いものの、手持ち撮影でバランスは取りやすい。ビデオ雲台に搭載しても水平を維持しやすいのはGood。少し気になったのはZ 8装着時にマウントが完全に固定されないこと。マウント回転方向に若干のガタツキがあります。撮影に問題は無いものの、三脚リングを回転したり、横位置と縦位置を持ち帰る際に少しガタツキを感じるのが残念。

AF・MF

フォーカススピード

このレンズのオートフォーカスはステッピングモーター駆動で動作します。マルチフォーカス(フローティング)とは言及していないので、おそらく小さなフォーカスレンズを1基のステッピングモーターで動かしているものと思われます。近接時の収差変動は解像チャートテストで確認予定。

非マルチフォーカスでステッピングモーター駆動のレンズながら、オートフォーカスはまずまず快適なスピードで動作します。リニアモーター駆動ほどの電光石火ではないものの、スピードを重要視しなければ大きな問題と感じるシーンは少ないはず。

カメラ側の問題もあると思いますが、低コントラストや低照度では合焦までの速度が低下します。また、大デフォーカス時は併せたいピント方向とは逆に移動する動作が大振りで、復帰するまで少し時間がかかりすぎている印象あり。このあたりはカメラ側のAFアルゴリズムが改善することで合焦速度の向上を期待したいところ。さらに、大デフォーカスで背景にピントが合うと、引っ張られる傾向もあります。ニコンだけの話ではありませんが、他社と比べると前景への復帰が少し鈍い。

×2.0装着時

×2.0テレコンバージョンレンズ装着時は開放F値が「F13」と非常に暗くなります。現行のNIKKOR Zラインアップの中では「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S + 2.0×」と並んで最も暗い開放F値と言えるでしょう。にも関わらず、日中の光環境であれば問題なくAFが動作します。中央のみならず、周辺部や隅にAFエリアを移動してもきちんと動作しました。

ただし、(解像テストで紹介予定ですが)マスターレンズと比べると解像性能が甘めで、低コントラストや低照度ではパフォーマンスがガタっと崩れる可能性がありそう。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。全体的に画角の変化が皆無とはいかないものの、良く抑えられているように見えます。

180mm

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300mm

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400mm

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500mm

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600mm

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精度

Z 8との組み合わせで今のところ問題なし。開放F値が大きいので低照度ではパフォーマンスが低下しやすいものの、日中では問題なく利用できます。フォーカス位置の再現性も高い。

MF

素早く回転しても適度なストロークで操作可能。特に被写界深度が浅くなりやすい超望遠ズームレンズとしては適切なストロークだと感じました。移動量は回転速度に依存するため、MFを多用するのであれば、少し慣れが必要かもしれません。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 8
  • 交換レンズ:NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

180mm

中央から隅に向かって性能が大きく低下するものの、中央に関しては絞り開放F5.6から非常に良好な性能を発揮。周辺部も良好ですが、中央と比べると1グレード低め。F8まで絞ると少し改善します。隅は描写が乱れがちで、F8までソフト。F8でも完璧からは程遠く、F11まで絞る必要があります。ただし、絞ったとしても中央や周辺部には追い付きません。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 4342 3145
F8.0 4731 3819 2067
F11 4673 3800 2818
F16 4247 3644 2886
F22 3322 3920 2800
F32 2551 2340 2267
実写確認

300mm

基本的には180mmと同じ傾向が続きます。極めてシャープな中央解像から隅に向かって大きく低下。ただし、隅の性能は180mmほどソフトではなく、ピークは若干向上。隅の性能が必要なければ、基本的に絞り開放からピークの性能と言えるでしょう。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.0 4757 3914 2581
F8.0 4777 3958 2897
F11 4579 3977 3220
F16 3904 3842 3220
F22 3359 3148 3052
F32 2632 2532 2396
F36 2516 2243 2282
実写確認

400mm

周辺部や隅の性能が向上し、中央に近い結果を得ることが出来ます。非常に均質性の高い結果であり、このズームレンズにおけるスウィートスポット。F6.0から非常に良好ですが、F8まで絞ると周辺部や隅の性能がピークとなります。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.0 4777 3895 3478
F8.0 4420 4285 4214
F11 4777 4362 3341
F16 4162 3707 3350
F22 3379 3206 2825
F32 2396 2493 2127
F36 2139 2262 2050
実写確認

500mm

400mmと比べると周辺や隅が性能低下。周辺はF8まで絞ると改善しますが、隅は向上しません。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4420 3236 3379
F8.0 4754 4305 3448
F11 4735 4019 3560
F16 4226 3682 3285
F22 3447 3160 3110
F32 2436 2245 2245
F36 2220 2132 2105
実写確認

600mm

中央は望遠端の600mmでも非常に良好な性能を発揮。周辺部もそれに近い結果を得ることが出来ます。隅のみ性能が大きく低下するものの、2段絞ると改善。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4286 3984 2359
F8.0 4613 3913 2827
F11 4668 3613 3276
F16 4306 3613 3257
F22 3342 2958 2934
F32 2397 2153 2316
F36 2340 2097 1910
実写確認

遠景解像力

撮影環境

  • 撮影日:2023年8月31日・曇天・風強め
    (コンディション悪め、ブレを極力抑える環境で撮影しましたが、いくつかのカットでブレが発生しています。ただし、陽炎の影響はかなり抑えられています。)
  • カメラ:Nikon Z 8
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:INNOREL F60
  • 露出:ISO100 絞り優先AE
  • RAW:Lightroom Classic CC現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
  • 同じ被写体を中央・周辺部・隅と3回撮影、それぞれクロップして比較
    (従来は1枚の写真をクロップしますが、超望遠は被写界深度が浅いので難しい)

180mm

F5.6から中央~隅で非常に均質的なパフォーマンスを発揮。絞ると改善しますが、顕著な変化はありません。

中央

F5.6からまずまず良好ですが、若干のソフトさはF8で改善。ハイライトがやや滲みを伴うものの、600mmズームレンズとしては良好な結果が得られています。

周辺

中央とほぼ同じ結果。クロップした際の見分けがつきません。

四隅(F5.6で微ブレ?)

中央や周辺と比べて周辺減光の影響あり。解像性能は依然として良好で、中央や周辺部と比べて遜色なし。

300mm

ハイライトのコントラストが弱めと感じるものの、解像性能は非常に良好。ただし、中央から隅にかけて若干の低下が見られます。F8~F11にかけて周辺部と隅が改善し、均質性がピークとなります。

中央

150mmと同じく、何の不満もない良好な結果。やはりハイライトのコントラストが低いので、露出を上げた状態で撮影すると、もやっとした写りに感じるかもしれません。

周辺

中央と比べると絞り開放の結果が若干ソフトですが、F8まで絞るとほぼ同等。快適に使える性能。

四隅

中央や周辺部と比べると、絞り開放がソフト。と言っても極端に酷いわけではなく、画像処理できちんと修正することができそう。F8~F11で良好な結果へと改善します。

400mm

少しキレが落ちてきたかなと感じるものの、中央は依然として良好。周辺部や隅も絞れば改善します。風景撮影で均質性を重視するならF11くらいまで絞るとピークに到達。

中央

単焦点レンズの水準を期待しなければ、解像性能は非常に良好。

周辺

F6.0でコントラストが僅かに低下。F8まで絞ると中央に近い結果を得ることができます。

四隅

周辺部と遜色のない結果ですが、ピークはF11あたり。と言っても絞り開放との差は小さく、画像処理も考慮するとF6.0から実用的な画質。

500mm

中央と周辺部・隅に少し性能差が見られるものの、少し絞ると広い範囲で均質性が向上。ただし、広角側や中間域と比べて、隅のパフォーマンスは向上しなくなります。と言っても大きな弱点とはならず、問題視する必要はありません。

中央

若干の滲みがあるものの、シャープで良好な結果。色収差の影響は特になし。F8で滲みが抑えられ、コントラストが改善します。ピークはF11あたり。

周辺

開放こそ中央と差がありますが、F8~F11で近い結果を得ることが可能。

四隅

中央や周辺部よりもコントラストが低く、絞っても大きな改善はありません。ただし、特に顕著な画質の乱れはなく、安定感のある性能。

600mm

望遠端でも顕著な性能は見られず、中央から隅まで安定感のある結果を得ることができます。絞りによる性能向上はほとんどありません。

中央

焦点距離による被写体のクローズアップは可能ですが、ピークの解像性能やコントラストは低下しているように見えます。絞ると若干の向上が期待できるものの、顕著な画質向上はありません。

周辺

基本的には中央と同じ。ピークこそ低いものの、望遠端ながら広い範囲で均質性の高い性能と言えるでしょう。やはりF8でコントラストの改善が見られます。

四隅

目に見える像の甘さは無く、中央や周辺部とほぼ同じ結果を得ることができます。よく見ると少し甘いですが、F8付近まで絞るとほぼ同じ。ピークはF11あたり。

1200mm(Mid F5.6のみJPEG)

中央から隅まで一貫した性能ですが、マスターレンズの600mmと比べると結像がかなり甘め。1200mmで大きなクロップはしないと思いますが、クロップ無しでも細部のディテールはあまり期待しないほうが良いでしょう。RAWが破損したため「Mid F5.6」のみJPEG出力を使用していますが、ご覧になると分かるように、カメラの画像処理で見栄えの良い結果が得られます。

中央

周辺

四隅

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ズーム全域で良好な補正状態です。特に目立つ焦点距離はありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ピント面の前後に僅かな色づきがあるものの、これが実際に問題となる可能性は非常に低い。絞り開放から心配せずに利用することが可能と言えるでしょう。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

基本的には前後でボケ質の差が少ないニュートラルな描写。ただし、よく見てみると、後ボケが僅かに滑らか。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

180mm

縁取りが目立たない綺麗な描写です。ここ最近の同クラスは良好な描写のレンズが多く、区別化できるような強みではないものの、少なくとも欠点とは感じません。軸上色収差による色づきも僅か。このサイズのボケであれば口径食が小さく、フレーム全域で良好。

300mm

基本的に180mmと同じ傾向。

600mm

描写は他の焦点距離と同じですが、広角や中間域と比べると口径食が少し強めに発生します。大きなボケとなる場合は問題ありませんが、ボケが小さくなる(撮影距離が長い場合)と隅に向かって玉ボケが変形しやすくなります。以下に作例を掲載。

ボケ実写

全高170cmの三脚を人物に見立て、各焦点距離の絞り開放で撮影した結果が以下の通り。

180mm

「180mm F5.6」らしく、ボケは得られますが大口径ズームと比べるとかなり小さい。微ボケの領域が広く、やや硬めで縁取りがあり、少し騒がしく感じるかもしれません。ただ、過度に目立つ縁取りが発生している訳ではなく、色収差の影響も僅か。

600mm

開放F値は6.3ながら、焦点距離が600mmと非常に長いのでボケは得やすい。やはり微ボケが騒がしい場合もありますが、ボケが大きくなりやすいので目立ちません。

サンプル

鳥の直後に防護ネットあり。微ボケとなり、やや2線ボケの兆候が見られます。撮影距離が長い場合でも背景をぼかすことが出来ます。溶けるように滑らかな描写ではありませんが、超望遠ズームレンズとしては許容できるボケ質に見えます。比較的近距離。猫など小動物を600mmで撮影する場合は大きなボケが得られます。この際は滑らかで綺麗、口径食も少なく、使い勝手が良好。

球面収差

良好な補正状態です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

180mm

極わずかな糸巻き型。無補正でも特に目立ちませんが、直線がフレーム端に入るのであれば補正を適用したほうが良いでしょう。

スライドショーには JavaScript が必要です。

300mm

180mmと同じく弱めの糸巻き型。やはりフレーム端に直線が入るのであれば補正を入れておいたほうが良さそう。補正をオフにしたところでメリットは無いと思われるので、常時オンで問題ないはず。

スライドショーには JavaScript が必要です。

600mm

他の焦点距離と同じか、やや強め。

スライドショーには JavaScript が必要です。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

180mm

F5.6の絞り開放で四隅にわずかな光量落ち。このままでも大きな問題ではありませんが、画質に大きな影響なく補正も可能。1段絞るとほぼ解消します。

600mm

広角側と比べて無限遠側の周辺減光が強め。1段絞ると改善しますが、絞り開放を使う際はヴィネッティング補正をオンにしておいたほうが良いでしょう。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

広角側の隅でわずかな変形が見られるものの、無視できる範囲内に抑えられています。

逆光耐性・光条

中央

NIKKOR Z レンズらしく、フレアやゴーストが良く抑えられています。完璧とは言えませんが、強い逆光シーンでもフレア・ゴーストの影響が僅か。

中央と比べるとゴーストがいくらか目立つものの、タムロン150-500などと比べると良好な結果が得られているように見えます。

光条

絞っても先細りする光条とはなりません。最小絞りまで分散型の光条です。光条がシャープになるタイミングも遅く(F16-22あたり)、このレンズで光条を得るために絞るのはおススメしません。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 頑丈で防塵防滴の外装
  • インナーズーム構造で収納性・携帯性が良好
  • テレコンバージョンレンズ対応
  • ズーム操作が簡単
  • 接写性能が競合他社よりも良好
  • 均質性が高くズーム全域で一貫した解像性能
  • 色収差補正が良好
  • 滑らかで綺麗なボケ
  • 適度な歪曲収差
  • コマ収差の補正状態が良好
  • 逆光時にフレアが良く抑えられている

なんと言っても特徴はインナーズーム構造でレンズが伸び縮みしないこと。600mmに固定した状態でも全長に変化がなく、そのまま収納したり携行することが出来ます。ジンバル雲台搭載時に再調整の必要性が低い。さらにズームリングの操作は指2本で操作できるほど軽く、微調整や素早いズーム操作に対応可能。肝心の光学性能は接写時に周辺低下が目に付くものの、一般的な撮影距離ではフレーム全体・ズーム全域で一貫性が高く、良好な結果を得ることが出来ます。同じくインナーズーム構造のソニーと比べると接写性能が高いので、小動物や植物など小さな被写体にも利用しやすいのがGood。

悪かったところ

ココに注意

  • フォーカス/コントロール兼用リング
  • 伸びるタイプと比べて縮長が長くて重い
  • レンズフードにゴムカバーなし
  • 三脚座はアルカスイス互換ではない
  • リニアモーター駆動と比べると合焦速度が見劣りする場合あり
  • 接写時に周辺のパフォーマンス低下

インナーズーム構造は現地での撮影や傾向、収納に役立つものの、伸び縮みするズームレンズと比べると縮長がやや長め。このため、カメラバッグや防湿庫などには広い収納スペースが必要となります。また、非S-Lineレンズらしく操作系はシンプルで、小さなフォーカス/コントロール兼用リングが使い辛いと感じます。L-Fn2ボタンやメモリーセットボタンもありません。ステッピングモーター駆動のAFは大部分の撮影で十分なAF速度ですが、大きくピントがずれてしまった際に復帰する速度はぼちぼち。近距離から遠側へ大きく移動する際などはリニアモーター駆動との差を感じる場合あり。

総合評価

幅広いユーザーの600mm需要を満たすと思われる180-600mmズームレンズ。ズーム全域で良好な光学性能を実現しており、ボケも綺麗で使いやすい。AFも十分高速で、シンプルなコントロールに慣れてしまえば不満はほとんどありません。テレコン装着時に過度な期待は禁物ですが、「非S-Lineの600mmレンズに22万円の価値はあるか?」と聞かれれば「ある」と答えるでしょう。ただし、伸縮するズームレンズと比べるとサイズが大きいため、収納性はイマイチ。なんだかんだで用途を選ぶレンズです。コンパクトサイズを重視する人はタムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」や100-400mmのAPS-Cクロップなどを検討するのも一つの手。お金に糸目をつけず、携帯性の良い600mmを探しているのであれば、PFレンズ使用の「NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S」がコンパクトで軽量。

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