ニコン「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8のレビュー一覧
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.5 諸収差編 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF 編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
70mm
Z 8のRAWは自動的に倍率色収差が補正されてしまうため、光学的にどれほどの収差が残っているのか確認することはできません。とは言え、実写テストの結果を見る限りでは良好な補正状態に見えます。輝度差のあるシーンやボケへの色づきが少なく、ほとんど目立ちません。
105mm
70mmと同じく良好な補正状態です。
180mm
広角・中間域と比べると僅かに増加しているようにも見えますが、問題となるような収差の量からは程遠い。良好な補正状態を維持しています。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
70mm
良好な補正状態です。厳しい環境でも色づきはごく僅か。
105mm
やや硬めの後ボケにうっすらと色が付く程度。70mmと同じく良好な補正状態です。
180mm
完璧ではないものの、ほとんど無視できる程度に良く抑えられています。
球面収差
70mm
完璧な補正状態ではなく、前後のボケ質が目に見える形で偏っています。ボケ質の観点で言えば後ボケが柔らかくなら好ましい偏りですが、解像性能やコントラストを考慮すると、悪影響があると感じるかもしれません。
105mm
基本的には70mmと同じ傾向。後ボケは縁取りが目立たない綺麗で滑らかな描写ですが、前ボケの縁取りは硬め。
180mm
70mmや105mmと同じ傾向が続きます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
70mm
倍率色収差と同じく、強制的に補正されてしまう項目です。従来はRAW Therapeeで確認していましたが、Z 8の高効率RAWは非対応。レンズ補正を抜いた結果を確認することができません。少なくとも補正後の結果は特にこれと言った問題がないように見えます。
105mm
70mmと同じく、プロファイル補正後の結果。これと言って目立つ収差は残っていません。
180mm
タムロン版の諸レビューを見る限りでは強い糸巻き型歪曲のはずですが、補正後の結果は特に大きな問題がないように見えます。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
70mm
F2.8から良好な補正状態です。
105mm
70mmと同じく大きな問題はありません。
180mm
他の焦点距離と同じく問題なし。
まとめ
デジタル補正を含めて、色収差・歪曲収差・コマ収差などは良好に補正されています。前述した収差に関しては特に大きな問題もなく、ズーム全域で安心して使うことが可能。問題となるのは球面収差で、接写時のみならず、遠景でもF2.8を使った撮影では解像性能に影響あり。シャープでコントラストの高い結果を期待するのであれば、少なくともF4まで絞るのがおススメです。接写時は像面湾曲もかなり目立ちますが、この際に平面な被写体を正面から撮影する機会は多くないと思われ、特に心配する必要はありません。と言っても、接写時はピントを合わせても周辺・隅のパフォーマンスがガタっと低下するので、絞ったほうが良好な結果を得られるのは間違いありません。
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