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RF100-400mm F5.6-8 IS USM 徹底レビュー 遠景解像編

キヤノン「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」のレビュー第二弾を公開。今回は恒例の撮影地点からEOS R5と組み合わせて遠景解像性能を確認しています。

RF100-400mm F5.6-8 IS USMのレビュー一覧

まえがき

2021年10月14日に「RF16mm F2.8 STM」と共に発表されたRFマウントの超望遠ズームレンズ。特筆すべきはレンズサイズと重量。EFマウントの「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」と比べ、全長が164.7mmと短く、重量は半分以下に抑えられ、非常に携帯性の良い400mmズームレンズに仕上がっている。その代償は開放F値の暗さに現れており、特に望遠端の400mmは開放F値が「F8」と非常に暗く、EFレンズと比べて1段もF値が大きくなっている点には注意が必要。

概要
レンズの仕様
マウント RF 最短撮影距離 0.88m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 0.41倍
焦点距離 100-400mm フィルター径 67mm
レンズ構成 9群12枚 手ぶれ補正 5.5段
開放絞り F5.6-8 テレコン 対応
最小絞り F32-45 コーティング SSC
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ79.5×164.7mm 防塵防滴 -
重量 約635g AF NanoUSM
その他 レンズフード別売り
付属品
レンズキャップ前後

手ごろな価格の小型軽量な超望遠ズームだが、意外にもテレコンバージョンレンズに対応している。このため、開放F値はF16と暗くなるが、800mm F16として使うことができる面白い仕様である。また、最大撮影倍率が0.41倍と高く、ちょっとしたマクロ撮影も可能となっている。テレコンを組み合わせることで最大0.82倍まで拡大が可能。
フォーカス駆動にはナノUSMを使用しており、高速かつ静かで正確な動作を期待できる。ただし、フォーカスリミッターを搭載していないので、大デフォーカスからの復帰は苦手。カメラ側の性能が求められる。

全長はRF24-105 STM2本分。大きなレンズに違いはないが、それでも400mmまでをカバーする望遠ズームレンズとしては明らかに小型軽量である。全体的な作りは「非L」シリーズらしいが、他のレンズと異なりコントロールリングとフォーカスリングが分離している点は評価したいポイント。

小型軽量で、さらに手ごろな価格の超望遠ズームだが、そのぶん光学性能には妥協が必要。MTFを見てすぐわかる通り、望遠側は高周波の実線と破線が極端に分かれているので、高解像はあまり期待しないほうがいいかもしれない。ただし、低周波は比較的安定しているので、実写でどのような結果が得られるのか興味深いポイント。

価格のチェック

売り出し価格は8万円ちょっと。100-400mmクラスの望遠ズームとしては安く、一眼レフ用レンズのサードパーティ製レンズに近い。当然ながら純正Lレンズと比べると段違いに安い。

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遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2021-10-29:晴れ
  • カメラ:EOS R5
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ

100mm

光学4倍ズームの超望遠レンズとしてはまずまず良好に見える。ぱっと見では周辺部まで非点収差や色収差が少なく、風景撮影などパンフォーカスの撮影でも十分に満足のいく性能。ただし、等倍でチェックすると隅に向かって画質が低下していることが分かる。以下では絞り開放から3段絞りまでの詳細を等倍で確認する。

中央

絞り開放からシャープで、細部のディテールまで十分な再現性を備えているように見える。開放F値が暗く、回折が始まるまでの間隔が短いレンズにおいて、絞り開放の光学性能が高いのは重要。絞っても大きく改善しないが、1段絞る(F8)とハイライトのコントラストが僅かに改善しているように見える。2段絞り(F11)でもパフォーマンスは維持されているものの、3段絞る(F16)と回折の影響で僅かにソフトとなる。

周辺

絞り開放は中央と比べてディテールのコントラストが弱く、解像感で見劣りする。とは言え、極端な画質低下は見られず、全体的に見れば十分良好な性能だと思う。さらにカメラやDPP4出力時にデジタルレンズオプティマイザ(DLO)を適用することで最適な結果を得られる可能性が高い。F8まで絞ると少し改善するが、それ以上の改善は見られない。F11、F16でも同程度のパフォーマンスを得ることが出来る。

四隅

ピントの芯はハッキリと分かるものの、拡大してチェックすると甘い描写に見える。MTF曲線通り、非点収差は良く抑えているものの、全体的にパフォーマンスが低下しているのが原因か?1段絞ると画質に改善傾向が見られ、2段絞ると画質のピークとなる。

135mm

全体的に100mmよりも良好なパフォーマンスを発揮しているように見える。特に周辺部から隅の画質に安定感があり、積極的に絞り開放を使える印象あり。

中央

100mmと同じく絞り開放から良好なシャープネスを実現している。細部のコントラストが僅かに低い部分があると感じる場合はF8まで絞ると改善する。さらに絞っても顕著な改善は見られず、F8からF11付近まで画質ピークを維持。回折の影響が強くなるF16は絞り開放のF6.3よりも僅かに甘い。

周辺

100mmと比べて絞り開放から細部のコントラスト・シャープネスがどちらもしっかりとしている。十分満足のいく画質だが、F8まで絞るとコントラストがわずかに改善しているように見える。さらに絞っても顕著な改善は見られず、F8からF11付近まで画質ピークを維持。回折の影響が強くなるF16は絞り開放のF6.3よりも僅かに甘い。

四隅

中央や周辺部と比べると少し甘い画質となるが、それでも100mmの隅と比べるちと安定感がグッと増しているように見える。F8まで絞るとマイクロコントラストが僅かに改善し、細部の解像感も良好となる。F11?F16で顕著な改善は見られない。

200mm

135mmと同じく、中央から隅まで、しっかりとした解像性能を発揮している。絞り開放F値は「F7.1」と暗いが、開放から安心して使える性能だと思う。

中央

傾向は100mmや135mmと同じ。良好なシャープネス・コントラストだが、1段絞るとハイライトの滲みが解消して解像感が増している。ピークはF8で、F11?F16にかけて徐々にパフォーマンスが低下している。

周辺

基本的な傾向は中央と同じ。絞り開放から良好な性能だが、1段絞るとコントラストが改善する。ピークはF8で、F11?F16にかけて徐々にパフォーマンスが低下している。

四隅

僅かに非点収差や倍率色収差の影響が見られるものの、十分良好な光学性能に見える。絞ってもあまり改善しないが、敢えて言えばF8前後がピークの画質と言える。

300mm

絞り開放が「F8」となるズーム望遠域。中央は思ったよりも健闘しているが、周辺部・隅は画質が苦しくなっているように見える。

中央

200mmまでと比べるとコントラストが少し低下しているようにも見えるが、基本的に誤差の範囲であり、十分良好な画質と言える。F11まで絞るとコントラストが僅かに改善してピークの画質となる。F16~F22は回折の影響が明らかに発生するので、出来ることならば避けたい。

周辺

シャープネスは悪く無いように見えるが、コントラストはあまり良くない。絞ると僅かに改善するものの、顕著な画質改善は期待しないほうが良い。このあたりはDLOの効き目が良いので、積極的に活用していきたい。

四隅

極端な描写の甘さは無いが、非点収差のような像の甘さが見られ、さらに倍率色収差もいくらか残存している。画質が破綻しているわけでは無いので、DLOやレンズ補正などを組み合わせることで良好な結果を得ることが可能。絞りによる画質改善は期待できない。

400mm

驚いたのが中央画質。これと言った画質の低下が見られず、十分良好な結果を得られているように見える。古い一眼レフ用の70-300mmと比べると遥かに良い。周辺部や隅の画質も悪くない結果であり、画像処理次第では絞り開放から十分に使える結果だと思う。

中央

ピークのシャープネスは低下しているかもしれないが、これと言った描写の甘さが見られず、コントラストもしっかりとしている。シャープネスをオフにしたRAWでこの結果が得られているので、ボディ内出力のJPEGであれば欠点を感じない描写だと思う。(若干、線が太いと感じるかもしれないが)
絞りによる改善効果はほとんど無いので、被写界深度の調整以外でF8以降を使う必要性を感じない。

周辺

よく見ると、少し甘い。それでも等倍でシビアなチェックをしなければ、(4倍ズームの望遠端としては)かなり良好な画質だと思う。コントラストは少し低いが、ピントの芯はしっかりとしている。倍率色収差の影響が見られるので、ベストな結果を得るには補正が必須だと思われる。
絞りによる改善効果はほとんど無いので、被写界深度の調整以外でF8以降を使う必要性を感じない。

四隅

300mmと同じく、やはり非点収差や倍率色収差の影響が見られる。それでも極端な描写の甘さは見られず、画像処理次第では実用的な画質が得られる可能性あり。絞ると周辺減光は改善するものの、シャープネスやコントラストで大きな改善は得られない。

今回のおさらい

手ごろな価格の超望遠ズームレンズとしては良好な解像性能を備えているように見える。特に中央画質は100mmの広角端から400mmの望遠端まで全く問題が無く、動体をフレーム中央で撮影するのであれば大いに満足のいくレンズになると思う。大きくクロップしても球面収差はよく補正されており、低価格の望遠ズームに多いハイライトの滲みや色収差は良く抑えられている。

周辺部や隅は決して最高のパフォーマンスとは言えないものの、レンズサイズや価格設定を考慮すると「良好である」と言えるかもしれない。少なくとも135mmから200mmは光学的にも良好に見え、300mmや400mmもデジタルレンズオプティマイザやレンズ補正などを込みで考えると実用的な画質だと思う。高解像なEOS R5では画質の粗が見えて少し苦しいかもしれないが、低解像のEOS R6なら何の問題もないはず。古い70-300mmと比べると多少高いかもしれないが、アップグレードする価値は十分にある(開放F値が暗い点には注意が必要だが)。

他のマウントを見渡してみると、手ごろな価格の超望遠ズームが色々と揃っている。これらと比べて、必ずしも画質で秀でているとは言えないものの、1?未満の超軽量な望遠ズームはこのレンズだけ。この携帯性で同程度の画質を実現していることに価値があると思う。(それにAFは超高速で手ぶれ補正は効果的)

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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