キヤノン「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧
- キヤノン RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー 完全版
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.6 ボケ編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.5 周辺減光・逆光編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.4 諸収差編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.3 解像チャート編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.2 遠景解像編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.1 外観・操作性・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
15mm
周辺部や隅を確認すると、僅かに倍率色収差が残存していることが分かる。極端に目立つわけでは無いものの、コントラストが高い状況では実写でも目視できるくらいの色収差が発生する可能性あり。色収差の自動補正は常に適用しておいたほうが良いだろう。
20mm
基本的に15mmと同じような量の倍率色収差が残存している。絞りによる変化は少ないが、どちらかと言えば絞り開放のほうが目立つ。
24mm
広角側と比べると倍率色収差の影響が少し緩和している。実写では絞り開放でも目立たず、絞るとさらに少し改善する。
30mm
24mmからさらに改善し、絞り値全域で倍率色収差の影響は僅かだ。自動補正を適用せずとも全く問題が無いように見える。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
15mm
ほんの少し残存しているようにも見えるが、実写でこれが問題となるシーンは限りなくゼロに近いと思われる。球面収差の影響が残っており、後ボケはソフトで色収差も目立ちにくい。逆に前ボケは硬調なので、ボケの縁取りに色づきが発生すると少しでも目立つ可能性あり。
24mm
基本的に15mmと同じ。絞り開放から無視できるが、2段絞るまでにほぼ完璧に解消する。
30mm
15mmや24mmと同じ。やはり後ボケがソフトなので目立ちにくく、前ボケは目立つ場合あり。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
15mm
多くの無印RFレンズと同じく、歪曲収差の補正はかなり割り切った設計だ。そもそも論としてイメージサークルが35mmフルサイズセンサーに足りておらず、四隅は真っ黒でケラレているように見える。これを歪曲収差の補正時に引き伸ばして帳尻を合わせている。自動補正やプロファイルを備えた現像ソフトであれば全く問題ないが、RAWを自動的に補正できない社外製の現像ソフトなどでは注意が必要である。幸いにも、メジャーなAdobe Lightroom Classic CCなどには既にプロファイルが存在する。
この結果が許せないという人もいると思うが、競合他社でも似たようなコンセプトのレンズは数多く存在する(それでもイメージサークルが足りないというレンズは少ないが…)。また、最近ではLレンズでも強めの歪曲収差を補正しているモデルもある。歪曲収差を光学的に補正しないぶん、小型軽量化やその他の収差を良好に補正するのであれば、それはそれでミラーレスらしいレンズと言える。
20mm
15mmとは打って変わって光学的な歪曲収差が良く抑えられている。それでも収差はゼロと言えず、補正時には目に見える形でクロップが発生するので注意が必要だ。また、歪曲収差は陣笠状の歪みを伴っているので、手動での補正は難しいと思われる。
24mm
ぱっと見は収差がほとんど目立たない。よく見ると僅かに補正されているが無視できる範囲内だ。
30mm
広角・中間域と異なり穏やかな糸巻き型の歪曲収差へと変化する。樽型歪曲と異なりクロップは発生しないが、直線的な被写体をフレーム周辺部に配置すると違和感があるので補正は適用しておきたい。
球面収差
前後に顕著な描写の違いは見られない。
コマ収差・非点収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
15mm
補正は完璧とは言えず、フレーム隅でやや目立つ変形が発生する。ただし、遠景解像性能のテストを見た限りでは、強く影響を受けるシーンは限られてくると思われる。実用的な絞り値では、絞ってもあまり改善しない。
20mm
15mmと同じくフレーム隅で点光源の変形が顕著だ。やはり絞りによる改善速度が遅く、解消するにはかなり絞る必要がある。低照度でこれほど絞るにはシャッタースピードやISO感度の妥協が必要だ。
24mm
20mmほどではないものの、それでも影響は明らかに目に見える。解消するには少なくともF11までは絞っておきたい。
30mm
他の焦点距離と比べると穏やかだが、影響がゼロになったわけでは無い。
まとめ
色収差の補正は完璧と言えないものの、基本的に倍率色収差は低リスクで自動補正が可能であり、カメラや現像ソフトの補正をオンにしておけば問題と感じるシーンは多く無い。コントラストが高いシーンには注意が必要だが、それでも多くの状況で追加補正が必要とは感じていない。
注意すべきは広角側の歪曲収差だ。強い樽型歪曲が残っているので、人工物など直線的な線が入るような状況では電子補正が必須となる。陣笠状の歪みを伴っているので手動で綺麗に補正するのは非常に難しい。カメラ内で補正するか、プロファイルを適用できる現像ソフトで処理するしかない。幸いにも問題と感じるのは15mmのみで、望遠側へズームするほど歪曲収差の問題は軽減する。
コマ収差・非点収差の補正も完璧とは言えないが、実写で点像再現性が問題と感じるシーンはあまり無かった。ただし、周辺部の解像性能やコントラストの改善という意味では少し絞って使ったほうが良いと思われる。この場合、ズーム全域でF11付近まで絞ると僅かながら改善を感じると思われる。とは言え、回折との兼ね合いがあるので高画素機ではバランスが取りづらいかもしれない。
全体的に見て、電子補正を活用できる環境であれば、このレンズの諸収差について心配する点はほとんど無い。低価格の小口径な広角ズームに極上の点像再現性さえ求めなければ、概ね妥協できる範囲内に収まっているように見える。小型軽量で低価格な広角ズームレンズとしては良くまとまっていると思う。
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