「SIRUI AF 85mm F1.4 FF」のレビュー第五弾 諸収差編を公開。球面収差と倍率色収差、歪曲収差が問題となる場合があるものの、多くのシーンでは許容範囲内に収まっているようです。
簡易的なまとめ
85mm F1.4 のAFレンズとしては手頃な価格ですが、諸収差の補正状態はきちんとしています。特に問題となりやすい軸上色収差はとても良好な補正状態。これで問題となることはほとんどありません。高輝度でも目立ちにくく、特に厳しいシーン以外では許容範囲内。
倍率色収差はボケの色づきで目立つ場合があるものの、それ以外のシーンでは自動補正で修正可能な場合が多い。歪曲収差は一括して修正できますが、できればレンズプロファイルで自動的に修正してほしかったと感じるレベルの収差量が残存。
Although it is a reasonably priced 85mm f/1.4 AF lens, the state of correction for various aberrations is good. In particular, the correction for axial chromatic aberration, which is prone to causing problems, is very good. This means that there are almost no problems. Even at high brightness, it is not noticeable, and it is within acceptable limits except in particularly demanding scenes.
Although magnification chromatic aberration may be noticeable in the colouring of the bokeh, in other scenes it can often be corrected automatically. Distortion can be corrected all at once, but there is still a level of aberration that I would have liked to have been corrected automatically using a lens profile.
SIRUI AF 85mm F1.4 FFのレビュー一覧
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.5 諸収差編
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.4 ボケ編
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.3 遠景解像編
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.2 解像チャート編
- SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
![](https://i0.wp.com/asobinet.com/wp-content/uploads/2021/05/FE40G-review-DSCF5398-X-T20-33mmF1.4XM-33-mm-ISO-200-resize.jpg?resize=1060%2C122&ssl=1)
ピント面が分かりやすいように加工しています。
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
フレーム中央・フレーム隅どちらでピントを合わせても結果はほぼ同じ。像面湾曲の影響はほとんどありません。
- 中央ピント
- 隅ピント
- 中央ピント
- 隅ピント
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
- 良好な補正
- 倍率色収差あり
実写で確認
- F1.4
- F16
このレンズでやや気になるポイントの一つ。絞り値全域で、フレーム隅に倍率色収差が目につく程度に残存しています。カメラで簡単に補正できる収差の一つですが、ボケが色付く場合は補正できない場合あり。とはいえ、実写で目立つシーンは限られているため、過度に心配する必要はありません。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
完璧ではないものの、比較的安価な85mm F1.4としては良く抑えられています。実写で問題となる可能性はほとんどありません。水面の反射や金属面の照り返しで少し色づく程度。
軸上色収差の問題とは別に、F1.4からF2.0へ絞った際にピントの山が遠側へ移動する問題が発生しています。これは残存する球面収差の影響があると思われ、撮影時に注意する必要があります。
- F1.4
- F2.0
- F2.8
- F4.0
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
- 糸巻き型歪曲
- 適切な補正
- 樽型歪曲
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
未補正のRAWでやや目立つ糸巻き型の歪曲収差が残っています。レンズプロファイルを自動的に適用できないレンズとしては過剰な歪みであり、状況によっては現像ソフトなどで手動補正が必要と感じる可能性あり。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
- 良好な補正状態
- 悪い補正状態
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
フレーム隅で極わずかな影響を受けるものの、ほぼ問題ありません。コマ収差は適切に補正されているように見えます。
- F1.4
- F2.0
- F2.87
- F4.0
球面収差
F1.4
前後玉ボケの描写には差異があることが分かります。球面収差を完璧に補正しているとは言い難く、これはピント面のコントラスト低下や前後ボケ質に影響を及ぼしている可能性あり。
また、軸上色収差テスト結果から分かるように、F1.4からF2.0へ絞る際にピント位置が遠側へ移動する「フォーカスシフト」の原因となっています。
F2.0
F2まで絞ると球面収差の影響が低減しています。まだ完璧とは言えないため、ベストを尽くすのであればF2.8まで絞るのがおススメ。これは遠景解像テストの結果と似ています。
まとめ
85mm F1.4 のAFレンズとしては手頃な価格ですが、諸収差の補正状態はきちんとしています。特に問題となりやすい軸上色収差はとても良好な補正状態。これで問題となることはほとんどありません。高輝度でも目立ちにくく、特に厳しいシーン以外では許容範囲内。
倍率色収差はボケの色づきで目立つ場合があるものの、それ以外のシーンでは自動補正で修正可能な場合が多い。歪曲収差は一括して修正できますが、できればレンズプロファイルで自動的に修正してほしかったと感じるレベルの収差量が残存。
最も気を付けたいのは球面収差によるフォーカスシフトですが、ニコン機ではF5.6まで実絞り測距で動作するので問題ありません。(本レンズはF1.4とF2.0の間でシフト)F1.4の明るさでピント合わせ後にMFモードへ移行する場合は注意が必要です。
購入早見表
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作例
関連レンズ
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