銘匠光学「TTArtisan AF 75mm F2」のレビュー第一弾 外観・操作・AF編を公開。手頃な価格ながら金属鏡筒のしっかりとした作りでした。ただし、フィルターとフードの干渉、拡大AFが不安定など注意点あり。
おことわり
今回は国内代理店より無償提供の「TTArtisan AF 75mm F2」を使用してレビューしています(感謝)。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。
スポンサーリンク「焦点工房」
簡易的なまとめ
フルサイズ用の中望遠レンズとしては手頃な価格(3万円台)で導入できる点が特徴。価格のわりに筐体の作りは良好で、外観も気にする人はYONGNUOやサムヤンよりもおススメしやすいレンズ。ただし、フィルター枠とフードの干渉やMF時の段階的な移動、拡大AF時の動作が不安定など、妥協すべき点があることに留意してください。フォーカス周辺の問題はファームウェアアップデートで改善することを期待。
The main feature of this lens is that it is an affordable (in the 30,000 yen range) medium telephoto lens for full-size cameras. The build quality is good for the price, and if you're concerned about appearance, this lens is easier to recommend than YONGNUO or Samyang. However, please note that there are some points that need to be compromised, such as interference between the filter frame and hood, gradual movement when using manual focus, and unstable operation when using magnified AF. We hope that the focus peripheral issues will be improved with a firmware update.
TTArtisan AF 75mm F2のレビュー一覧
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.5 ボケ編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.4 諸収差編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.3 遠景解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.2 解像チャート編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
まえがき
TTArtisanブランドで5本目となるAFレンズ(フルサイズ用としては2本目)。AFレンズでは比較的珍しい焦点距離「75mm」を採用しており、直接競合するのはサムヤン「AF 75mm F1.8 FE」のみ。販売価格は日本国内で36,900円で、フルサイズミラーレス用の中望遠レンズとしては非常に安価。
- 初値:36,900円
- マウント:Sony E / Nikon Z
- フォーマット:フルサイズ
- 焦点距離:75mm
- レンズ構成:7群10枚
- 開放絞り:F2
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:9枚
- 最短撮影距離:0.75m
- 最大撮影倍率:不明
- フィルター径:62mm
- 手ぶれ補正:-
- テレコン:-
- コーティング:不明
- サイズ:φ67×74mm
- 重量:328-340g
- 防塵防滴:-
- AF:STM
- その他:絞りリング
- 付属品:-
レンズ構成は7群10枚で、そのうち1枚に超低分散ガラスを使用。AFはステッピングモーター駆動のインナーフォーカス方式を採用しています。鏡筒にはクリックタイプの絞りリングを搭載しており、カメラ側のコントロールが少ない場合でも絞り値を簡単に調整することが可能。
レンズの全長は74mmと短く、重量は300g前半。サムヤン(69mm・230g)ほど小型軽量ではないものの、金属鏡筒・絞りリングなどを考慮するとコンパクトで軽量なレンズに仕上がっています。
価格のチェック
前述したとおり、販売価格は36,900円と非常に安価。中国レンズメーカーでも「85mm F1.8」と言えば5万円前後であり、3万円台は(セールを除いて)見たことがありません。光学性能次第ではコストパフォーマンスの高い中望遠レンズとなりそうです。
外観・操作性
箱・付属品
TTArtisanではお馴染み、ファブリック調のカバーを張り付けた独特なデザイン。MFレンズはグレーのカバーでしたが、AFレンズはブラックを採用しています。APS-C用のAFレンズは箱の質感やデザインを一新していましたが、75mm F2では元に戻っています。書類を除くと、レンズの付属品はフードとキャップのみ。リアキャップはレンズ更新用のUSBドックとなっているので、紛失しないように気を付けたいところ。
外観
筐体は全体的に金属製のしっかりとした作り。プラスチック鏡筒のYONGNUOと比べると質感が良く、金属製ボディと相性の良い外観。5万円台の中国メーカー製レンズと比べて遜色ありません。
レンズは全体的に黒色の塗装が施され、装飾は一切ありません。他のTTArtisan AFレンズと同じく、レンズリアキャップに電子接点を搭載。ファームウェアアップデートはレンズにこのキャップを装着して実施します。紛失しないように注意。
ハンズオン
全長74mm、重量328gで、ソニー純正やVILTROXも軽量。金属鏡筒ながらYN85mm F1.8R DF DSMと同程度に抑えられています。文句のつけようがありません。
前玉・後玉
しっかりとした作りですが、注意点が一つ。
フィルター径62mmに対して、レンズフード用マウントが小さく、フィルター装着時にフードの着脱と干渉しやすくなっています。フィルター枠の直径が大きい製品(特に可変NDやC-PL)は干渉する可能性が高い。
金属製のレンズマウントは4本のビスで固定。防塵防滴用のシーリングはありません。光学系最後尾付近にはフレアカッターがあり、内部は反射を抑えるためのマットブラックな塗装が施されています。
フォーカスリング
金属製のフォーカスリングを搭載。適度に滑らかですが、個人的に期待するよりも抵抗感が弱め。少し緩く感じます。リニアレスポンスで、フォーカス移動量は回転速度に依存しません。ストロークは180度弱であり、最短撮影距離が長めの中望遠レンズとしては十分。
応答性は十分ですが、フォーカスリング操作時の移動が滑らかとは言えません。特に拡大して微調整する際に段階的なピント位置の移動が目立ちます。75mm F2で気にするポイントではないかもしれませんが、MFを重視する際は注意。
絞りリング
絞り全域で1/3段刻みのクリック付き絞りリングを搭載。きちんとしたクリック感で滑らかに操作できます。クリックを解除する機能はありません。
装着例
α7R Vに装着。
サムヤン75mm F1.8ほどコンパクトではないものの、筐体の質感を維持しつつ小型軽量なレンズに仕上がっています。感覚としては50mm F1.8に近い状態で手持ち撮影が可能。レンズ直径が小さいため、グリップの空間を圧迫していません。
AF・MF
フォーカススピード
レンズのファームウェアはVer.14。
ステッピングモーター駆動で動作。動体撮影で多用したいAF速度ではありませんが、静止した被写体であれば十分なフォーカス速度に見えます。AF-S・AF-Cどちらを使用してもAF速度はほぼ同じ。
少なくとも現段階のファームウェアでは拡大AF時の動作が良くありません(動画サンプルはありません)。ピントが合わないこともないのですが、動作が不安定で、不必要にウォブリングが発生しているように見えます。
AF駆動音はゼロと言えず、静か状況ではファインダー使用時にモーター音が聞こえます。ボディ内蔵マイクでは音を拾うかもしれません。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
最短撮影距離が長いレンズのわりには画角の変化が目立ちます。
精度
カメラ側のピント位置に問題がなければ、静止した被写体、ゆっくり動く被写体は問題なし。
MF
前述したように、リニアレスポンスで細部が段階的にジャンプします。特に夜の遠景でMFを使用する際は気になるかもしれません。
まとめ
フルサイズ用の中望遠レンズとしては手頃な価格(3万円台)で導入できる点が特徴。価格のわりに筐体の作りは良好で、外観も気にする人はYONGNUOやサムヤンよりもおススメしやすいレンズ。ただし、フィルター枠とフードの干渉やMF時の段階的な移動、拡大AF時の動作が不安定など、妥協すべき点があることに留意してください。フォーカス周辺の問題はファームウェアアップデートで改善することを期待。肝心の光学性能はというと、価格を考慮すると期待以上。ピント面はシャープでコントラストが良好。F2から色収差が良く抑えられています。完璧な補正ではないので、厳しい環境では色収差が発生するものの、収差が目立つシーンは限られているはず。
コマ収差がやや目立つため、中望遠の夜景用レンズとしては少し絞る必要がありそう。四隅のボケが騒がしくなる場合もあり(若干ですが)、そのような場合は少し絞ったほうが良いかもしれません。フォーカス面で気になったのは前述した拡大AFに加え、最短撮影距離が長いこと。ただし、競合他社と同程度であり、このレンズが極端に寄りにくいわけではありません。ただ、75mmの画角と最短撮影距離の感覚は少し慣れが必要と感じました。シャープなレンズなので、APS-Cクロップを活用するのも一つの手。
購入早見表
このような記事を書くのは時間がかかるし、お金もかかります。もしこの記事が役に立ち、レンズの購入を決めたのであれば、アフィリエイトリンクの使用をご検討ください。これは今後のコンテンツ制作の助けになります。
作例
関連レンズ
- NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
- FE 85mm F1.8
- FE 85mm F1.4 GM II
- FE 85mm F1.4 GM
- 65mm F2 DG DN
- 85mm F1.4 DG DN
- 90mm F2.8 DG DN
- AF 75mm F1.8 FE
- AF 85mm F1.4 II
- 7Artisans AF 85mm F1.8
- VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8
- AstrHori AF 85mm F1.8
- YN85mm F1.8S DF DSM
関連記事
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.5 ボケ編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.4 諸収差編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.3 遠景解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.2 解像チャート編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編