富士フイルム「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や操作性、カメラに装着してAF/MFの使いやすさなどを確認しています。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroのレビュー一覧
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー 完全版
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.5 諸収差編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.4 ボケ編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.3 遠景解像編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.2 解像チャート編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.1 外観・操作・AF編
まえがき
2022年11月に発売された富士フイルムXシリーズ3本目のマクロレンズ。これまで等倍に対応したマクロレンズは「XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro」のみで、汎用性が高く広い画角の「XF60mmF2.4 R Macro」は撮影倍率が0.5倍止まりでした(それにAFが遅い)。この30mmマクロは2本のレンズよりも遥かに広い画角で、1.0倍のマクロ撮影に対応しています。画角は標準33mmよりも少し広いくらいで、マクロのみならず、日常の撮影にも使いやすいレンズとなっています。
概要 | |||
---|---|---|---|
レンズの仕様 | |||
発売日 | 2022年11月25日 | 希望小売価格 | 97,900円 |
マウント | X | 最短撮影距離 | 0.1m |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 1.0倍 |
焦点距離 | 30mm | フィルター径 | 43mm |
レンズ構成 | 9群11枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | EBC |
絞り羽根 | 9枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ60×69.5mm | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 195g | AF | リニア |
その他 | 絞りリング | ||
付属品 | |||
キャップ・フード・包装クロス |
一般的な単焦点レンズと比べると少し大きめですが、インナーフォーカスで等倍のマクロ撮影に対応。リニアモーターによる高速AFや防塵防滴を実現しています。等倍マクロに対応していますが、その際の撮影距離は0.1mです。レンズの全長が69.5mmであることを考慮すと、ワーキングディスタンスはほとんどありません。十分な撮影距離を撮りたい生物やライティングを使ったマクロ撮影には不向きです。
ノートブックコンピューターを開いてクリエイションが始まるように、テーブルの上から創造は始まる。机の上の小さなスペースから、世界を旅するところまで、これ一本で対応できる万能感。扱いやすい焦点距離でありながら、少しだけ新鮮。しかも等倍マクロ。いつでも撮影者に寄り添ってくれる。
とあるように、カメラに付けっぱなしで日常的に使うことができる万能レンズを目指していた模様。「等倍」はマクロ撮影のためと言うよりは「寄り切れない被写体はない」と言ったコンセプトでの設計なのかもしれませんね。
価格のチェック
売り出し価格はカメラ専門店の最安値で79,200円。APS-C用の標準マクロレンズとしては決して安い価格設定ではありませんが、防塵防滴やリニアモーター駆動の本格的な等倍マクロレンズと考えると適切な値付けと感じるかもしれません。価格に見合った光学性能を備えているかどうかはこれからチェックしていきたいと思います。
XF30mmF2.8 R LM WR Macro | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
従来通り、富士フイルムらしい黒を基調としたシンプルなデザインの箱です。焦点距離が大きく表示されているので非常に分かりやすいです。
箱を開けると緩衝材なしでレンズが梱包されています。
付属品はレンズキャップとフード、ラッピングクロスが付属します。
外観
XFシリーズらしい、全体的に金属パーツを採用した頑丈な作りです。フォーカスリングや絞りリングを含めて金属製であり、価格に見合った高級感のあるレンズに仕上がっています。表面は少し光沢を残したブラックの塗装で、カメラボディのブラックと調和のとれたカラーリングです。
コントロールはフォーカスリングと絞りリングのみ。AF/MFスイッチはありません。シリアルナンバーを含めた各種表示は従来通りシールで張り付けられています。滅多なことでは剥がれませんが、角が一度めくれると徐々に剥がれ始めるのが悩ましいところ。シリアルくらいは刻印やプリントにしてほしかったです。ちなみに製造国はタイ。
ハンズオン
手に取ってみると、金属とガラスの塊らしい質感があります。サイズを考慮すると195gと密度を感じる重量があります。と言っても絶対的に見れば非常に軽量で、コンパクトなカメラに装着してもバランスが崩れることはありません。
前玉・後玉
小さな前玉の周囲には43mmの円形フィルターソケットを搭載。前玉にフッ素コーティングが施されていると言った記載は見当たらないので、水滴や汚れの付着が想定される場合は保護フィルターの装着がおススメ。特にマクロ撮影時はワーキングディスタンスが短いので、物理的な接触によるダメージを避けるためにも保護フィルターを装着しておいたほうが良いかもしれません。
レンズマウントは金属製で、4本のビスで本体に固定されています。後玉周囲は黒塗りされ、不要な光の反射を抑えるデザイン。
フォーカスリング
金属製で24mm幅のフォーカスリングを搭載。電子制御によりリニアモーター駆動のフォーカスレンズを操作します。フォーカスリングのレスポンスはリニアと思われ、素早く回転してもゆっくり回転しても、ピント全域のストロークは約135度となります。ストロークの半分ほどはマクロ領域の操作に使われ、もう半分で通常の撮影距離を操作できます。
ヘリコイドのフォーカスリングよりもトルクは緩めですが、比較的長いストロークのフォーカスリングを操作するには程よいトルクと言えそうです。
絞りリング
10mm幅の金属製絞りリングを搭載。F2.8からF22まで1/3段刻みでクリック付きの操作が可能。クリック感は期待していたよりも僅かに弱め。誤操作は無いと思いますが、ゼロと言い切れない程度の緩さです。X-S10はコマンドダイヤルを使った操作がしやすく、この際「A」ポジションに固定することが可能です。
レンズフード
プラスチック製の円筒型フードが付属。安っぽい印象はなく、本体に装着した際の見た目は自然です。内側には反射防止用のマットな塗装が施されていますが、植毛などはありません。
逆さ付けに対応していますが、この際はフォーカスリングが隠れてしまうので注意。また、レンズの最短撮影距離を考慮するとフードが長すぎる(影が映り込む)ので、等倍マクロ時はフードを外して使うことになると思います。フードが邪魔だと感じたら、社外製のパンケーキ向けフードを検討してみもいいでしょう。(例えばF-FotoのEW-43互換フードなど)
装着例
X-S10に装着。ボディに対してレンズが突き出した外観となりますが、バランスは良好で、組み合わせた際の重量は700g以下。X-S10はカメラ側でボディ内手ぶれ補正を搭載しているので、マクロ撮影時に気になるシフトブレに対応することが可能です。撮影スタイルでカメラをグリップしたまま絞りリングやフォーカスリングの操作で問題はありません。
AF・MF
フォーカススピード
リニアモーター駆動のAFは非常に高速かつ静かに動作します。X-S10と組み合わせて至近距離から無限遠まで1秒もかからない快適なAFを実現。DCモーター駆動のXF60mmと比べると雲泥の差であり、快適なAFでマクロ撮影を楽しみたいのであればおススメ。
AF-Cは接近時にまずまず良好な追従性能を発揮しますが、被写体が離れていく際は対応できない可能性が高い。ただし、これはカメラ側の問題となるので、将来的に改善すると思われます。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
ご覧のように、画角の変化がゼロとは言えませんが、等倍マクロレンズであることを考慮すると非常によく抑えています。一般的な撮影距離であればフォーカスブリージングが目立つことはまずないでしょう。
精度
このレンズに限ったことではありませんが、富士フイルム機は微妙にピントを外した状態で合焦することがあります。カメラ側の要素を除けば良好なAF精度だと思いますが、第四世代のカメラではミスショットを確認。X-T5やX-H2など、高解像センサーモデルでどのように改善するのか気になるところです。
MF
前述したとおり、リニアレスポンスで約135度のストロークを備えています。大部分はマクロ側に使われており、遠景で使用する領域は思ったよりも少ないです。
今回のまとめ
兎にも角にもオートフォーカスが非常に高速なマクロレンズです。インナーフォーカスの標準マクロが高速AFであるのは驚くべきことではありません。とはいえ、Xマウントレンズでこれほど快適なAFを実現しているマクロレンズはないと思います。また、10万円を下回るXF単焦点レンズにリニアモーターを採用したのはこれが初めてではないでしょうか?それだけでも購入を検討する価値があると思います。さらに金属外装・防塵防滴・インナーフォーカスなどを考慮すると長く付き合うことができる標準マクロに仕上がっているのかなと。
光学性能のテストはこれから徐々に公開予定。まだまだ使い込んでいませんが、価格なりのパフォーマンスは期待してもいいのかなと思います。と言っても「抜群の解像性能」と言うよりはバランス重視の印象が強く、使い勝手の良さを優先したレンズと感じました。
購入早見表
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作例
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