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タムロン 70-300mm F4.5-6.3 Di III RXD レンズレビュー 完全版

このページではタムロンのニコンZマウント用レンズ「70-300mm F4.5-6.3 Di III RXD」のレビューを掲載しています。

70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろな価格
サイズ スペックを考慮すると平凡
重量 スペックを考慮すると平凡
操作性 最小限だが良好
AF性能 接写以外は十分に高速
解像性能 接写と望遠側で低下
ボケ 微ボケが騒がしい場合あり
色収差 状況によって軸上収差が目立つ
歪曲収差 望遠側は補正必須
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 まずまず良好
逆光耐性 まずまず良好
満足度 コストパフォーマンス良好

評価:

コスパ良好のスタンダード望遠ズーム

これと言って光るスペックや性能を備えている訳ではないものの、全体的に安定感のある望遠ズームレンズに仕上がっています。接写や望遠側に抜群の光学性能を期待しなければ、手ごろな価格の300mm望遠ズーム。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 ボケ質が平凡
子供・動物 良好なAF速度
風景 200mm以降で解像性能が低下
星景・夜景 明るいレンズではない
旅行 軽いものの全長は長い
マクロ 寄りやすいレンズではない
建築物 歪曲収差に注意

まえがき

2020年にソニーEマウント用のフルサイズ対応望遠ズームとして発売されたタムロンレンズです。このレンズをベースとして、2022年にタムロン初となるニコンZマウント用レンズが登場。ニコンとライセンス契約の下で開発・製造されており、一眼レフ時代と比べて互換性の高いレンズに仕上がっていると思われます。基本的な光学設計はソニー版と同じですが、レンズ単体でファームウェアアップデートが可能となるUSB-Cポートが追加されています。

概要
レンズの仕様
マウント Z 最短撮影距離 0.8-1.5m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 1:9.4-1:5.1
焦点距離 70-300mm フィルター径 67mm
レンズ構成 10群15枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F4.5-6.3 テレコン -
最小絞り F22-32 コーティング BBAR
絞り羽根 7枚
サイズ・重量など
サイズ φ77×150.3mm 防塵防滴 簡易防滴
重量 580g AF RXD
その他 Lens Utility
付属品
レンズフード

タムロンDi IIIシリーズのレンズとしては最短撮影距離や最大撮影倍率が平凡以下なのが残念。手ごろな価格を考慮すると妥協すべきポイントかもしれませんが、出来ればもう少し接近して撮影できると良かったです。

LDレンズを含む10群15枚構成の光学設計を採用。MTFを見る限りでは中央から隅に向かってパフォーマンスがいくらか低下しているように見えますが、実写でどのように反映されるのか、これからのテストで確認してみましょう。

 

価格のチェック

売り出し価格は7万円程度。ソニーE用が5万円台だったことを考えると少し割高と感じますが、他に選択肢が無い現状を考慮すると妥協すべき点と言えそうです。競合レンズの登場で価格が落ち着くと良いですねえ。

70-300mm F4.5-6.3 Di III RXD Nikon Z
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70-300mm F4.5-6.3 Di III RXD Sony E
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

タムロンらしい白を基調としたデザインの箱。マウント部と同じように箱の底面にルミナスゴールドのカラーを採用。レンズ本体は発泡樹脂で前後を固定して梱包されています。

レンズ本体の他に円筒型レンズフードと説明書、保証書、シリアルナンバー記載のシールが付属しています。

外観

外装は光沢の残る黒色の塗装が施されています。一見すると一眼レフ用レンズSPシリーズのような金属外装にも見えますが、触ってみるとプラスチック製の外装だと分かる質感です。ミラーレス用レンズは競合他社もプラスチック製の外装を採用するメーカーが多く、特に違和感はありません。しっかりとした作りで、旧デザイン(28-75mm F2.8 Di III RXDなど)と比べて傷や指紋に強くなっているように見えます。

ズーム・フォーカスリングはどちらもゴム製カバーを装着。リング表面に粘性は感じず、ゴミの付着は少ないと思われます。タムロン最新のDi IIIシリーズと比べるとコントロールポイントが少なく、FnボタンやAF/MFスイッチなどはありません。

外装の文字は全てプリントで、エッチングなど芸が細かい加工は無し。この辺りはタムロンらしく割り切った感があります。ちなみに「設計 日本」「製造 中国」と記載を確認。最近はベトナム製のタムロンレンズも増えてきましたが、このレンズは従来通り中国製となっています。

内筒もプラスチック製ですが、300mmまで伸ばしても顕著なガタツキはありません。

マウント付近にはソニーEマウント版になかったUSB-Cポートを搭載。防水構造のためキャップは不要とのこと。パソコンとケーブル接続することで手軽にファームウェアアップデートが可能となりました。残念ながら最新設計のタムロンレンズと異なり各種カスタマイズには対応していません。

ハンズオン

全長150.3mm、重量580gと、70-300mm 望遠ズームとしては一般的なサイズです。Fマウントアダプター経由で一眼レフ用70-300mmを使うよりもずっとコンパクト。「NIKKOR Z 70–200mm f/2.8 VR S」と比べると半分以下の重量であり、現状でニコンZマウントの望遠ズームレンズとしては最小・最軽量の選択肢(DX 50-250を除く)。携帯性を重視しつつ望遠域を使いたいのであれば、真っ先に検討するレンズとなるでしょう。

前玉・後玉

タムロンDi IIIシリーズらしく67mm径のねじ込み式フィルターに対応。Zマウントは他にもタムロンOEMと思われるF2.8ズームレンズが充実しているので、各種67mmフィルターを揃えるのもアリ。このレンズは前面にフッ素コーティング処理が施されていないので、汚れや水滴の付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターの装着をおススメします。

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金属製のレンズマウントは4本のビスで固定。周囲は簡易防滴用のゴム製シーリングが施されています。

ズーム操作により光学系は全体的に前方へ移動します。後玉を含めて移動するので、センサー周辺にて空気の動きが発生する可能性を否めません。

フォーカスリング

15mm幅のフォーカスリングを搭載。電子制御式のフォーカスリングとしては僅かにトルクが強く、滑らかに回転しますが、僅かにざらつきを感じます。

ズームリング

57mmのゴム製ズームリングは幅広く掴みやすい。回転操作はまずまず滑らかですが、望遠側と広角側でトルクが少し異なります。滑らかなズーム操作も可能ですが、トルクの違いでズーム速度を一定に保つのは難しい。

300mmまでズームすると内筒が6cmほど伸びます。堅牢性に不安はありませんが、撮影場所を移動する場合やカメラバッグに収納する場合は70mmに設定してレンズを短くする必要があるでしょう。ちなみにズームロック機能はありません。

焦点距離ごとの開放F値

70-86mm F4.5
87-113mm F4.8
114-138mm F5.0
139-174mm F5.3
175-209mm F5.6
210-262mm F6.0
263-300mm F6.3

70mmから300mmまで開放F値がF4.5からF6.3まで1段分大きくなります。この間のF値は通常よりも細かい1/6段刻みで徐々にF値が大きくなります。F値の変化は均質的で、200mmまではF5.6を維持しており、最も暗くなるF6.3は263mm以降と限定的。

レンズフード

プラスチック製の円筒型レンズフードが同梱しています。フィルター操作窓やロック構造の無い非常にシンプルなフードですが、本体の外観や質感を損なわないしっかりとした作り。

収納時に逆さ付けも可能ですが、その際はズームリングの大部分が隠れてしまいます。ズーム操作できないこともないですが…。

装着例

Z 7に装着。FTZ経由の一眼レフ用70-300mmを使用するよりもコンパクトで、ミラーレスらしい望遠ズームの撮影を楽しむことが出来そうです。この種のズームレンズを片手で扱うことは少ないと思いますが、片手のみでの撮影も可能。グリップとレンズの間には十分な空間があり、手袋を装着したままでもカメラグリップをしっかりと握ることが出来ます。

AF・MF

フォーカススピード

「RXD」と呼ばれているステッピングモーター駆動を使用。リニアモーター駆動(タムロンで言えば「VXD」)ほど電光石火のフォーカス速度ではありませんが、適度に高速で滑らかなフォーカスを実現。望遠側の開放F値が6.3とやや暗めなので、低照度におけるフォーカス速度の低下は否めないものの、日中の良好な光環境では満足のいくフォーカス速度。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

最短撮影距離が長いということもあるのか、ズーム全域でフォーカスブリージングは良く抑えられています。

精度

Z 7との組み合わせてAFの精度は良好です。ピント位置の再現性も良く、特に大きな問題はありません。

MF

ステッピングモーター駆動のMFは段階的な動作が目立たず、とても滑らかに動きます。レスポンスはフォーカスリングの回転速度に応じて移動速度が変化。素早く回転すると約90度でピント全域を移動可能。ゆっくり回転すると360度以上のストロークで、高精度のMFができます。望遠側にズームすると全体的にストロークが長くなり、ピント全域を移動するのに素早く回転しても360度程度の操作が必要となります。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 7
  • 交換レンズ:70-300mm F4.5-6.3 Di III RXD Z-mount
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

70mm

テスト結果

中央は絞り開放から非常に良好ですが、周辺部や隅は像面湾曲や諸収差の影響で非常にソフトな結果となります。絞ることで徐々に改善しますが、満足のいく結果が得られるまで数段絞る必要があり、隅まで画質を改善するつもりなら回折の影響を加味してもF16-F22まで絞ることになるでしょう。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.5 4304
F5.6 4152 1626
F8.0 3996 2532
F11 3881 3611
F16 3707 3427 2642
F22 3084 2898 2836
実写確認

ご覧のように像面湾曲の影響を回避(各部位ごとにピントを合わせた)したとしても周辺部や隅は非常にソフトな結果となります。70mmで接写する場合、被写体は中央付近に配置するのがおススメです。

100mm

テスト結果

基本的には70mmと同じ。中央は絞り開放から非常に良好である一方、周辺部や隅はかなり絞る必要があります。ただし、70mmよりも改善速度が速く、周辺部のみであればF8~F11で実用的な画質を得ることが出来ます。隅もF11~F16まで絞れば許容範囲内となります。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.8 4065 1691
F5.6 4028 2046
F8.0 3857 3295
F11 3707 3669 2668
F16 3501 3407 2855
F22 2859 3008 2878
F25 2878 2859 2785
実写確認

作例を見ると分かるように、周辺部までならばF8まで絞るとかなりシャープな結果を得ることが出来ます。ただ、隅まで良好な結果を期待したい場合はF16付近までは絞りたいところ。この焦点距離でも像面湾曲の影響が強く残っているので、狙った被写体にしっかりとピントを合わせておく必要があります。

200mm

テスト結果

広角側と比べて周辺部や隅の画質が安定する一方、中央のパフォーマンスは低下傾向となります。低下したとはいえ、シャープな結果に違いは無く、安定感のある結果は広角側よりも使い勝手が良好。基本的に絞り開放から回折の影響を受けるまで大きな変化はありません。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 3350 3054 2845
F8.0 3782 3332 3195
F11 3554 3286 3396
F16 3458 3386 3314
F22 2845 2917 2755
F29 2412 2502 2486
実写確認

数値通り、中央の切れ味は少し落ちているように見えますが、周辺部や隅の安定感は捨てがたいものがあります。もしも近くの小さな被写体を撮影する場合は200mm以上がおススメ。

300mm

テスト結果

中央のパフォーマンスはさらに低下しますが、周辺部や隅は少し向上し、全体的に均質性の高い結果を得ることが出来ます。周辺部や隅に向かって大きな画質低下が無く、手ごろな価格の望遠ズームレンズの望遠端としては良好な結果と言えるでしょう。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 3332 3169 3072
F8.0 3440 3259 3177
F11 3733 3133 3126
F16 3350 3151 3223
F22 2804 2791 2832
F32 2268 2143 2124
実写確認

Z 7のセンサー性能を最大限活かす性能ではありませんが、安定感があり使いやすい300mmに見えます。Z 6など低解像センサーであれば、特に不満を感じることは無いでしょう。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2022年9月29日 晴れ 無風
  • カメラ:Nikon Z 7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:ISO 64 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CCにて現像
    ・シャープネスオフ
    ・格納された外せないプロファイル補正オン

70mm

フレーム中央から周辺部は絞り開放から非常に良好な解像性能を発揮。絞ると周辺部に僅かな改善が見られるものの、基本的には絞り開放から実用的な画質と言えます。近距離のテスト結果と比べると安定感のある結果。ただし、フレーム隅のみ少しソフトな描写となっているので、パンフォーカスの結果が重要であればF8くらいまで絞って撮影するのがおススメ。

100mm

中央や周辺部は70mmと同じく絞り開放から非常に良好。さらに70mmでソフトだったフレーム隅に描写は改善しており、全体的に絞る必要性を感じない。とても良好な解像性能。

200mm

200mm付近から中央のパフォーマンスが低下し始める。広角側ほどの切れ味は無く、絞ると僅かに改善するのみ。周辺部や隅も似たような結果となりますが、安定感のある画質に違い無し。

300mm

望遠端の300mmも200mmと同じく中央解像性能が低下します。決して悪い結果ではありませんが、NIKKOR Zレンズなどと比べると見劣りするかもしれません。ただし、周辺部に向かって顕著な画質の低下が無く、このクラスの望遠ズームレンズとしては安定感があると感じています。

撮影倍率

最短撮影距離は70mmで0.8m、この際の撮影倍率は1:9.4(約0.10倍)です。300mmでは最短撮影距離が1.5mとなり、撮影倍率は1:5.1(約0.19倍)となります。撮影倍率は広角端で最も小さく、望遠端に向かって徐々に大きくなる模様。全体的にクローズアップに適しているとは言えず、昆虫や植物を大きく撮影するのが難しい。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

70mm

6100万画素のα7R IVでクロップしても目立ちません。少なくとも70mmは良好に補正しているようです。

100mm

70mmと同じく良好に補正されています。

200mm

70-100mmと比べるとわずかに色づきが目に付き始めますが、依然として最小限に抑えられています。

300mm

200mmと同程度で問題ありません。70mmからの状態を考慮すると、ズーム全域で倍率色収差の心配をする必要はなさそうです。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

70mm

小口径の望遠ズームレンズとしては、高コントラストな領域に少し目に付く色収差が発生しています。F8まで絞るとほぼ完全に抑えることが可能ですが、絞り開放付近を使う際は色収差が目立つ場合があるかもしれません。

100mm

70mmよりも僅かに色収差の影響が強くなります。やはりF8まで絞るとほぼ改善。

200mm

広角側よりも色収差の影響が強くなります。これがボケの色づきとなり、騒がしい描写の一端となっている可能性あり。

300mm

望遠端の300mmでは軸上色収差が最も目立ちます。F8まで絞ると改善しますが、完全に抑えたい人はF11まで絞る必要があり。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

ここ最近のレンズとしては珍しく、後ボケがやや硬調で、前ボケが少し滑らかなボケ質となっています。このため、背景のボケは輪郭が残りやすく、状況によっては2線ボケなど騒がしい描写に繋がる可能性があります。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

70mm

玉ボケの内側の描写、ボケのアウトラインと色づき、隅における口径食などなどを考慮すると、70mmの玉ボケは良好な描写には見えません。F5.6まで絞ると口径食と色収差が改善しているように見えるので、露出が問題なければ少し絞ったほうが心地よい見栄えとなる可能性あり。

100mm

引き続き口径食と色収差が目立ちます。また、最短撮影距離がやや長めのためボケを大きくするのは苦手です。70mmほどではありませんが、ボケが騒がしいと感じたらF5.6くらいまで絞ると改善する可能性あり。

200mm

接写性能の高いレンズではありませんが、焦点距離が長いぶんボケを大きくしやすくなっています。部分的にブレているボケがありますが、これは風で光源が揺れていた可能性あり。基本的には広角側と同じで、口径食と色収差の影響が強く、アウトラインもやや目立ちます。

300mm

これまで通り、口径食と色収差の影響が強く、ボケが小さくなるにつれて粗が目立ちやすくなります。

ボケ実写

状況にもよると思いますが、いつものテストシーンでは色づきや口径食が目立ちません。べた褒めするほど良くもありませんが、酷評するほど悪くもない感じ。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて絞り開放で撮影した結果が以下の通りです。

70mm

70mm F4.5の絞り開放では後ボケを大きくすることはできません。それでも背景から少し分離しているように見えます。アウトラインと色づきの強い後ボケですが、全体的にボケが小さいので目立ちません。

135mm

135mm F5でも、ポートレートシーンで後ボケを得ることができそうです。完璧なボケ質とは言いませんが、70mmと同じく悪目立ちはしていないように見えます。

300mm

300mm F6.3を使えば、被写体を背景から分離することができているように見えます。もちろん背景の輪郭を溶かすのは難しいですが、被写体を強調するには十分かなと。ボケには色収差や強めのアウトラインが発生しているのでお世辞にも褒められた質感ではありませんが、極端に悪い描写でもなく、実用的な画質は維持しているように見えます。

球面収差

ボケの縁取りに補正差を感じるものの、極端な描写の差は見当たりません。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

70mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

ほぼ無視できる程度の樽型歪曲です。レンズプロファイルを適用することで綺麗に補正できますが、プロファイルなしでも十分良好に補正されています。

100mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

70mmから一転して、やや目立つ糸巻き型歪曲が発生。このままでは直線的な被写体を入れると中央に向かって歪んで見る可能性あり。幸いにもニコンのRAWにはレンズプロファイルが格納されているので、特殊な現像ソフトを使用していない限りは自動補正が有効となるはず。

200mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

100mmよりも少し強めの糸巻き型歪曲が発生。これを修正するためには4辺を少し引き延ばす必要があります。

300mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

200mmと同じく強い目の糸巻き型歪曲が発生。自動補正が有効なので心配する必要はありませんが、補正を適用できない環境では手動補正が必要となる可能性があります。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

70mm

最短撮影距離

絞り開放で四隅に向かってやや目立つ周辺減光が発生。自動補正で低リスクの修正が可能ですが、光学的に抑えたいのであればF5.6-F8まで絞ると解消します。ただし、完璧に抑えようとするとF11くらいまで絞る必要があるので注意。

無限遠

最短撮影距離と同程度の周辺減光が発生します。やはり絞ると徐々に改善しますが、完璧に抑えようとするとF11くらいまで絞る必要あり。

135mm

最短撮影距離

70mmと比べると影響が穏やかです。開放から大きな問題はありませんが、背景がフラットな場合は少し目に付くかもしれません。F8くらいまで絞ると解消します。

無限遠

70mmと同じく最短撮影距離とほぼ変わらない量の周辺減光が発生。無限遠側の周辺減光としては穏やかですが、光学的に抑えたい場合はF8まで絞る必要があります。

300mm

最短撮影距離

望遠端は影響が強くなるかと思いきや、このレンズの中では最も影響が目立たない焦点距離です。絞り開放から穏やかで、F8まで絞ると解消します。

無限遠

最短撮影距離と比べるとやや目立つ周辺減光が発生。ただし、F8まで絞ると大きく改善、完璧に抑えたい場合はF11まで絞る必要があります。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

70mm

絞り開放から周辺部まで特に大きな問題は見当たりません。

100mm

70mmと比べると影響が僅かに目に付きますが、それでも大きな問題とは言えない量に抑えられています。

200mm

100mmと同じく、完璧ではないものの、無視できる範囲内に抑えられています。

300mm

200mmと同程度の補正状態です。

逆光耐性・光条

70mm

レンズ間の反射と思われるゴーストは避けられませんが、光源を中心としたフレアは良く抑えられています。センサー面の反射と思われるRGBのフレア以外はほとんど問題ありません。

光源を隅に移動すると、小さなゴースト以外はよく抑えられています。手ごろな価格の望遠ズームレンズとしては良好なパフォーマンスに見えます。

300mm

300mmで強い光源をフレームに入れるとゴーストが大きくなり、絞るとさらに悪化します。センサー面の反射も目立つので、強めの光源はフレームに入れないほうが良いでしょう。300mmと画角が狭いので、光源を回避するのは難しく無いはず。

光源をフレームから外すとフレアの影響はだいぶ抑えることができます。ゴーストの影響は少し残りますが、絞っても過度な問題は見られません。

光条

F16-F22付近まで絞るとシャープな光条が発生します。この価格帯のレンズとしては良好な描写と言えるでしょう。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 手ごろな価格(ソニー版と比べると高いものの)
  • USB-Cポートによるファームウェアアップデートに対応
  • 現状で最小・最軽量のZマウント望遠ズーム(2022年)
  • まずまず滑らかなフォーカスリング
  • まずまず滑らかなズームリング
  • 高速AF
  • フォーカスブリージングが抑えられている
  • ズーム全域で安定感のある遠景解像
  • 倍率色収差の補正
  • 周辺減光が穏やか
  • コマ収差と非点収差の補正
  • 逆光耐性
  • シャープな光条

手ごろな価格で安定感のあるパフォーマンスを発揮する望遠ズームレンズ。「抜群の光学性能」「抜群のビルドクオリティ」「抜群のAF」と言ったべた褒めの評価は出来ないものの、この価格帯の望遠ズームとしては欠点が目立たず、全体的に使い勝手の良いレンズに仕上がっています。2022年時点でニコン純正のNIKKOR Zレンズに10万円以下の望遠ズームがないことを考えると、気軽に望遠を利用したい人にとって最有力候補となります。

悪かったところ

ココに注意

  • 最小限のコントロールレイアウト
  • 各種カスタマイズに非対応
  • 低照度や低コントラストでAF性能が低下しやすい
  • 接写時に周辺画質が低下
  • 望遠側で解像性能のピークが低下
  • 最短撮影距離が長い
  • 軸上色収差が場合によって目立つ
  • 背景の微ボケが騒がしくなる可能性あり
  • 歪曲収差が目立つ

ソニー版の価格設定を考慮するとニコンZマウント版はやや高く、価格設定を考慮するとコントロールの少なさやピークの解像性能には少し不満を感じます。また、ミラーレス用の望遠ズームレンズとしては接写性能が平凡で、クローズアップに適しておらず、汎用性が良くないのがマイナスポイント。仮に、10万円程度ニコンが70-300mmの純正レンズを投入するのであれば、ニコンも要検討かなと。

総合評価

満足度は85点。
大きな欠点もなく、価格なりの結果を期待できる望遠ズームレンズの無難な選択肢。どれをとっても極めて優秀とは言えませんが、70-300mmを気軽に使いたい人にとっては面白い選択肢となるかもしれません。ただし、将来的に競合モデルが登場した際に武器となる強みがパッと出てこないので、価格次第では選り負けてしまう可能性あり。

アダプター経由で「AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR」を使うのはアリか?
個人的にはありだと思うし、実際にZ 7と組み合わせて使用していました。アダプターのコストやサイズは要検討ですが、もしも一眼レフ用のレンズ資産があるのであれば、アダプターの追加投資のみで利用できるはず。ネイティブZマウントのタムロンに乗り換えるのも一つの選択肢ですが、小型軽量化以外にこれと言ってメリットが無いように思えます。

購入早見表

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