このページではキヤノン「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」のレビューを掲載しています。
RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMのレビュー一覧
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビュー 完全版
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.6 諸収差編
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.5 周辺減光・逆光編
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.4 ボケ編
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.3 解像チャート編
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.2 遠景解像編
- RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.1 外観・AF編
- キヤノン EOS R7 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | フードは付属してほしい | |
サイズ | やや小型 | |
重量 | やや軽量 | |
操作性 | シンプルだが良好 | |
AF性能 | 高速かつ静音 | |
解像性能 | 高倍率としては良好 | |
ボケ | 高倍率としては良好 | |
色収差 | ほぼ問題なし | |
歪曲収差 | 比較的良好 | |
コマ収差・非点収差 | 良好な補正状態 | |
周辺減光 | まずまず良好 | |
逆光耐性 | ゴースト多め | |
満足度 | コスパ良好の高倍率 |
評価:
欠点の少ない高倍率ズームレンズ
抜群の性能とは言えないが、これと言った欠点が少ない、扱いやすい高倍率ズームレンズだ。APS-C EOS Rを導入する最初の一本としておススメしやすいが、キヤノンの18mm始まりは競合他社と比べて画角が少し狭い点に注意が必要となる。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | 望遠側に活路あり | |
子供・動物 | 高速AFだがF値が大きい | |
風景 | 画角は狭いが良好な解像性能 | |
星景・夜景 | まずまず良好だがF値 | |
旅行 | 良好だが防塵防滴ではない | |
マクロ | 高い接写性能 | |
建築物 | 18mm始まりが画角が狭い |
Index
まえがき
EOS R7やR10と共に登場したAPS-C EOS Rシステム初となる交換レンズ。現状でEOS R7のキットレンズ、またはレンズ単体での入手が可能となっている。
概要 | |||
---|---|---|---|
|
|||
レンズの仕様 | |||
マウント | RF | 最短撮影距離 | 0.17m(AF) 0.12m(MF) |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 0.44倍(AF) 0.59倍(MF) |
焦点距離 | 18-150mm | フィルター径 | 55mm |
レンズ構成 | 13群17枚 | 手ぶれ補正 | 対応 |
開放絞り | F3.5-6.3 | テレコン | - |
最小絞り | F22-40 | コーティング | 不明 |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ69.0×84.5mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 310g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
- |
レンズ構成は13群17枚で、1枚のUDレンズと2枚の非球面レンズを使用している。光学系はAPS-C EOS Mシステムの「EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM」とよく似ており、MTFも同じように見える。価格も同程度であることを考えると光学系の流用は自然な流れだが、個人的には新しい光学設計のレンズも見てみたかった。今後はこのレンズのようにEF-Mの流れをくむRF-Sレンズが登場するのかもしれない。
すべてがEF-Mと同じではなく、撮影倍率や最短撮影距離が大幅に向上している。周辺部の画質は低下しているらしいのでマクロレンズのような結果は期待できないものの、Ef-Mレンズでは撮影できなかったクローズアップが可能となっているのは魅力的だ。
価格のチェック
売り出し価格は単品で「61,650円」、EOS R7のレンズキットとして購入すると実質的に5万円台前半だ。競合他社のソニー「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」が同価格帯、ニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」がより高価であることを考えると決して高い値付けではない。
RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
EOS R7のキットレンズとして入手。ボディとセットで購入することで、通常よりも1万円ほど安く手に入れることが出来る。
レンズに関して付属品は前後のキャップのみ。レンズフードは付属しないので買い足す必要がある。純正品の場合は2千円台だが、社外製で問題なければ千円ほど安く入手可能だ。
レンズフード EW-60F | |||
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外観
レンズマウントを含めてプラスチックパーツを多く採用している。プラスチック感は否めないが、頑丈な作りで構造に不安は感じられない。デザインはシンプルで2つのリング以外に操作部が無い。やはりどちらのリングもプラスチック製だが、表面の加工が異なるので触感で区別が可能となっている。
このズームレンズは広角端18mmで最も短くなり、望遠端150mmに向かってズームすると内筒が前方へ徐々に伸びる。150mmまで伸ばすと全長は元の2倍程度となり、さらにレンズフードを装着すると全長はより長くなる。
内筒もプラスチック製だが、過度なゆるみやがたつきは見られない。
ハンズオン
手振れ補正を搭載した高倍率ズームレンズとしては一般的なレンズ重量だ。一眼レフ用のズームレンズと比べると遥かに小型軽量だが、競合他社のミラーレス用レンズと比べると顕著な違いは無い。
前玉・後玉
対応する円形フィルターは55mm径だ。「EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM」と同じ径のため、もしもEOS Rシリーズに乗り換えるのであれば、フードと共にフィルターもそのまま利用できる。フッ素コーティングは採用していないので、水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターを装着したほうが後々のメンテナンスが簡単となる。
レンズマウントはプラスチック製だ。現時点で堅牢性に不安は感じないが、長期的な使用でプラスチックマウントがどのような影響を及ぼすのかは使い続けてみないとわからない。マウント周辺には製造国が台湾であることが示されている。光学系最後尾のレンズはマウント面から突出したミラーレスらしい設計だ。周辺には後玉を保護する役割も持つと思われるレンズガードが備わっている。
フォーカスリング
レンズ先端にはローレット加工が施された樹脂製のコントロールリングを搭載している。このリングはフォーカスリングとして使うことができるほか、コントロールリングとしてカメラ側で露出補正や絞りの操作に設定することが可能だ。残念ながらレンズにフォーカスとコントロールを切り替えるスイッチが無いので、カメラ側で設定する必要がある。専用のコントロールリングと異なり、ノッチが無いので段階的な操作が求められる設定を操作するのは難しい。
ズームリング
幅広のプラスチック製ズームリングを搭載している。適度な抵抗量を伴いつつ、滑らかに回転する。動画撮影のズーム操作にも使えそうな気もするが、手で回転するには滑らかさがあと一息足らない。また、フルズーム時のストロークが90度以上あるので、素早い操作には不向きだ。
レンズフード
レンズフードは別売りだ。純正品「レンズフード EW-60F」はEF-Mレンズと共用のフードであり、現在は社外性のレンズフードも出回っている。
レンズフード EW-60F | |||
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装着例
EOS R7と組み合わせたところ、小さすぎず、大きすぎず、全体的にバランスの良いシステムとなる。フロントヘビーと感じることは無く、一日中の撮影でも厄介と感じることは無い。
AF・MF
フォーカススピード
ナノUSMではなく、ステッピングモーター駆動だが、EOS R7との組み合わせで高速かつ正確なAFを実現している。望遠側で合焦速度が少し低下するものの、それでも許容範囲内に収まっていると感じた。競合他社と比べてレンズのAF性能にアドバンテージがあるわけではないが、カメラのAF性能を十分に活かすことができるAF性能となっている。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
ズーム全域でフォーカスブリージングはとても良好に抑えられている。接写性能が非常に高いレンズだが、特に大きな問題は見当たらない。フォーカスは滑らかで、画角変化が無く、非常に快適だ。広角側の結果が良いレンズは多いが、望遠側まで綺麗に抑えているのは評価に値する。
精度
EOS R7との組み合わせて大きな問題は見られない。
MF
電子制御で滑らかに動作する。カメラ側で「リニア(回転量)」「ノンリニア(回転速度)」を選択可能だが、「ノンリニア」時は広角側でのストロークが非常に短く扱いが難しい。個人的には「リニア」がおススメだが、リニアの場合は望遠側のストロークが少し長め(約1.5回転)となる。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:EOS R7
- 交換レンズ:RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・プロファイル補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
18mm
中央は絞り開放から3500を超える非常に良好な解像性能を発揮している。さらに絞ると4000を超える数値となる。これは良好な単焦点レンズに匹敵する性能だ。しかし、18mmの接写時は大きな像面湾曲があり、特に中央とフレーム端を比較するとピント位置が明らかに異なっているのが分かる。 このため18mmの近距離撮影でパンフォーカスを狙うのであれば、被写界深度を深くするため、十分に絞って撮影する必要がある。なおパンフォーカスの必要がなければ、被写体にピントを合わせることでフレーム端でも絞り開放から十分なシャープネスを得ることが可能だ。
ただしフレーム端にピントを合わせたとしてもシャープネスのピークは2段から3段ほど絞った先にある。この際、中央シャープネスは回折の影響で性能のピークを通り越してしまう。とは言え、十分シャープな描写に違い無いので、フレーム全体の均質性を優先するのであれば中央を犠牲にしてでも F5.6からF8まで絞るほうが良い。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F3.5 | 3623 | 2570 | 2575 |
F4.0 | 4210 | 2616 | 2384 |
F5.6 | 4231 | 3283 | 2694 |
F8.0 | 3645 | 3467 | 2914 |
F11 | 3136 | 3053 | 2818 |
F16 | 2771 | 2591 | 2384 |
F22 | 2148 | 2064 | 1938 |
24mm
24mmも引き続き中央は良好な性能だ。中央の性能は18mmほどではないが、絞り開放から非常に良好である。さらにフレームの周辺部そして四隅の解像性能は18mmより向上し、絞り開放からピークの性能を得ることができる。
フレーム全域で絞りによる画質の向上は見られず、全体的にF8までピークの性能が続く。 F8以降は回折の影響が強くなり、最小絞りのF25に向かって急速に解像性能が低下する。被写体深度が十分であれば小絞りは避けるべきだろう。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4182 | 3667 | 3330 |
F5.6 | 3644 | 3652 | 3363 |
F8.0 | 3779 | 3630 | 3220 |
F11 | 3307 | 2891 | 2847 |
F16 | 2836 | 2608 | 2473 |
F22 | 2045 | 2094 | 1907 |
F25 | 1886 | 1742 | 1705 |
35mm
全体的な均質性はさらに高まり、絞り開放からフレーム全域で非常に良好な性能が得られる。絞り開放からピークの状態であり、この性能は F11まで持続する。 F11を超えると回折の影響が強くなり、急速に性能が低下する。常用できる絞り値の幅は狭いが、絞り開放からピークの性能が得られることで特に大きな問題は感じない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.6 | 3991 | 3802 | 3558 |
F8.0 | 3991 | 3824 | 3759 |
F11 | 3821 | 3674 | 3510 |
F16 | 2642 | 2630 | 2450 |
F22 | 2127 | 1986 | 1929 |
F29 | 1735 | 2292 | 1573 |
50mm
ピークの性能はやや低下するが35 mmに負けず劣らずの性能だ。絞り開放からフレーム全域で3500前後となる非常に良好な結果を得ることができ解説の影響が強くなる F11まで良好な結果を得ることができる。絞りの自由度はさらに狭くなるが、やはり解放から良好な解像性能を得られるので問題は感じない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.6 | 3386 | 3559 | 3252 |
F8.0 | 3562 | 3591 | 3697 |
F11 | 3280 | 3000 | 2869 |
F16 | 2708 | 2614 | 2497 |
F22 | 2014 | 1864 | 1986 |
F32 | 1850 | 1457 | 1376 |
F36 | 896 | 1686 | 667 |
70mm
50 mm からさらにピークの性能は低下するが、 絞り開放から良好なパフォーマンスであることに違いはない。 絞り開放から隅まで3000円を超える良好な結果であり、絞ることで中央や周辺部は少し向上する。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 3293 | 3091 | 3132 |
F8.0 | 3572 | 3420 | 3111 |
F11 | 3350 | 3038 | 3030 |
F16 | 2595 | 2818 | 2653 |
F22 | 2037 | 2142 | 2034 |
F32 | 1469 | 1408 | 1412 |
F40 | 1203 | 1385 | 1064 |
100mm
中央や周辺部は引き続き良好だが、 四隅の絞り開放は性能がやや低下する。極端な低下ではないが一段絞ることで周辺部に近い性能に達する。F8以降は性能が急速に低下する。被写界深度に応じて小絞りを使うこともできるが、可能であれば F6.3から F8までを使うように意識したい。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 3549 | 3230 | 2776 |
F8.0 | 3618 | 3186 | 3198 |
F11 | 3084 | 3008 | 2803 |
F16 | 2712 | 2656 | 2539 |
F22 | 2130 | 2027 | 1907 |
F32 | 1610 | 1478 | 1428 |
F40 | 982 | 測定不能 | 測定不能 |
150mm
望遠端である150mmは全体的に性能が低下する。中央は絞り開放から良好だが、周辺部や四隅は2500を下回ってしまう。2段ほど絞ると周辺部と四隅が改善するものの、中央は回折の影響でいくらか低下。 F 11以降は全体的に回折の影響は強いので避けた方がいいだろう。最小絞りであるF40は利用することができるものの、性能が極端に低下するので解像性能を無視してよい場合を除いて避けることをおすすめする。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 3159 | 2408 | 2429 |
F8.0 | 3195 | 2875 | 2515 |
F11 | 2977 | 2808 | 2781 |
F16 | 2477 | 2475 | 2255 |
F22 | 1977 | 1836 | 1858 |
F32 | 1949 | 1363 | 758 |
F40 | 測定不能 | 測定不能 | 測定不能 |
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2022年6月23日
- カメラ:EOS R7
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO100
- RAW:CR3 Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
・そのほか初期設定
・カメラ補正は極力オフ
18mm
高倍率ズームの広角端としては良好な結果だ。抜群の解像性能ではないが、絞り開放から中央から隅まで良好な結果を得ることができる。隅の端でも画質の破綻が無く、安定感がある。レンズ補正やDLO(デジタルレンズオプティマイザ)を適用することで、さらに良好な結果となるだろう。絞っても顕著な改善効果は得られないものの、フレーム隅の画質が少し向上する。絞りはF22まで利用可能だが、F11以降は回折の影響が顕著となるので被写界深度が必要でない限りはおススメしない。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
24mm
基本的に18mmと同じ傾向だ。中央から周辺部まで広い範囲で18mmよりも少し良好に見えるが、じっくり見比べないと分からない程度の差である。やはり絞っても顕著な改善効果は得られない。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
35mm
広角側と同じくフレーム全域で良好な解像性能だ。隅に向かってコントラストが低下するので、切れ味を追求するのであれば画像処理や後処理で調整が必要となるかもしれない。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
50mm
広角・標準域を超えても安定感のある結果は健在だ。中央や周辺部のみならず、隅まで良好となる。ただし絞っても大きな改善効果は得られない。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
70mm
中央のコントラストが低下してきたようにも見えるが、基本的には良好な解像性能だ。周辺部や隅に顕著な性能低下は見られず、良く言えば均質性が向上している。これまでと同様、絞っても大きな改善効果は無い。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
100mm
70mmと同じくフレーム全体で均質性が高く、良好な画質を実現している。広角側と比べると倍率色収差の影響が少ないようにも見える。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
150mm
望遠端となる150mmでは中央のコントラスト低下が少し気になるものの、隅に向かって大きな性能低下は見られない。
中央
開放 | |
F8 |
周辺
開放 | |
F8 |
四隅
開放 | |
F8 |
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
18mm
完璧には補正されておらず、フレーム隅で倍率色収差が残存しているのが分かる。と言っても過度に残っているわけではなく、そのままでも悪目立ちするシーンは少ないと思われる。簡単に適用できるソフトウェア補正を適用したとしても、画質への影響は僅かだ。
50mm
18mmと比べて色収差は少なくなり、ほとんど知覚できない水準まで良好に補正されている。追加のソフトウェア補正は必要ないように見える。
150mm
50mmと比べると少し増加しているが、18mmよりも良好だ。つまりほとんど心配する必要はない。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
18mm
倍率色収差と同じく完璧な補正状態ではないが、追加補正の必要性は低い。
70mm
18mmよりも良好な補正状態だ。絞り開放から何の問題も見られない。
150mm
50mmと同じく全く問題ない。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
前後のボケ質に大きな違いが無い比較的ニュートラルな描写だ。敢えて言えば後ボケが少し滑らかに見えるが、実写では目立たないと思われる。軸上色収差の影響が僅かに残っているものの、大部分のシチュエーションで問題と感じない程度である。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
18mm
APS-Cの18mm F3.5と言えども、レンズの接写性能が高いのでボケを大きくすることが可能だ。これを活かせるシチュエーションは限られてくるものの、ボケ質は良好で口径食の影響も少ない。高倍率ズームの広角端としては良好な描写である。
50mm
18mmと同じく口径食の影響が目立たず、ズームレンズとしては滑らかな描写の玉ボケだ。1~2段絞っても実用的な描写を維持している。
150mm
少なくとも玉ボケを大きくしたい場合は口径食の影響が少なく、描写も非常に良好だ。ニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」と比べて縁取りが目立たず、内側の描写は遥かに綺麗である。
ボケ実写
18mm
玉ボケのテストと異なり、実写シーンではフレーム隅のボケが口径食の影響を強く受けていることが分かる。それでも過度に騒がしい描写ではなく、色収差の影響も少ない。高倍率ズームの「18mm F3.5」としては上々の結果だ。
撮影距離が長くなるとフレーム隅の描写がさらに騒がしくなる。お世辞にも褒められた描写では無いが、ニコン18-140mmと見比べると比較的滑らかな描写だ。
50mm
開放F値が5.6と大きいが、接写時は滑らかな後ボケを得ることができる。フレーム隅まで口径食の影響が少なく、色収差などで悪目立ちすることもない。
撮影距離が長くなり、相対的にボケが小さくなると、コントラストが高い背景で少し騒がしく見えるかもしれない。ただし18mmほど隅の描写が荒れず、扱いやすい描写が続く。
150mm
150mm F6.3と言えど、接写時はボケが非常に大きく、そして滑らかになる。数段絞っても全く問題が無い。F22あたりから少し騒がしく見えるようになるが、F22まで絞ってボケを得たい機会はそう多く無いはずだ。
撮影距離が長くなっても後ボケは良好な描写だ。F16付近まで絞っても大きな問題は感じない。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立ててポートレートの撮影距離でレンズの絞りを開放して撮影した。結果は以下の通りである。
18mm
残念ながら18mm F3.5の人物撮影でボケを得るのは難しい。かなり接写する必要があり、その際のボケもあまり大きくない。
50mm
上半身くらいから徐々にボケが強くなり、顔のアップでは十分なボケ量を得ることができる。
150mm
全身をフレームに入れても何とか被写体を分離することが出来る。上半身やバストアップまで近寄ると十分なボケ量となり、顔のクローズアップで背景を溶かすまでに至る。
球面収差
18mm
軸上色収差の影響が僅かに見られるものの、前後のボケ質に大きな違いは見られない。球面収差は良好に補正されているように見える。玉ボケには非球面レンズを研磨した際のムラのようなものが見えるが、ニコンと比べると穏やかで目立たない程度に抑えられている。
70mm
前ボケのほうが縁取りが少し強調されているものの、極端な描写の違いは見当たらない。やはり非球面レンズの研磨状態が良く、玉ボケへの悪影響が少ないように見える。18mmと比べて軸上色収差の影響が少ないのはテスト通りだ。
150mm
70mmと同じく軸上色収差の影響が少ない。球面収差は良好に補正され、前後の描写に大きな違いは見られない。ズーム全域で補正状態は良好だ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
18mm
光学的にはやや目立つ樽型歪曲だが、カメラで自動的に補正される。既にAdobe製品は専用のレンズプロファイルがあるほか、EF-M 18-150mmと同じ光学系なので、同様のプロファイルで綺麗に補正可能と思われる。リニアな歪みではなく、陣笠状の歪曲を伴うので手動補正は難しい。全体的に見て、ミラーレス用高倍率ズームの広角端としては歪曲収差を良く抑えているほうだ。例えばニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」はより目立つ収差が残っている。
35mm
広角端とは打って変わって糸巻き型の歪曲収差となる。ニコンほど歪曲収差は強くないが、影響量は軽微と言えず、直線的な被写体を撮影する場合はレンズプロファイルで間違いなく補正しておきたい。
50mm
35mmと同程度の糸巻き型歪曲が続く。
70mm
35mmや50mmと同程度だ。それ以上に悪化はしておらず、ミラーレス用の高倍率ズームとしては控えめな歪曲収差に抑えられている。
100mm
ズーム中間域と同程度だ。極端な問題は見られないが、直線的な被写体を入れる場合は補正を適用しておきたい。
150mm
望遠端でも特に大きな変化は見られない。高倍率ズームとしては良好な補正状態だ。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
18mm
絞り開放付近で隅に目立つ光量落ちが発生するものの、F5.6まで絞るとほぼ解消する。F8以降は補正無しで完全に無視できる程度の影響に抑えることができる。
無限遠
最短撮影距離
無限遠と比べると僅かに改善するが、基本的には同じ傾向だ。F8以降で完全に無視できる程度に抑えることが出来る。
35mm
無限遠
絞り開放から全く問題ない。F8まで絞るとほぼ完璧だ。
最短撮影距離
絞り開放から全く問題ない。F8まで絞るとほぼ完璧だ。
70mm
無限遠
35mmと比べると、絞り開放が全体的にうっすらと影響を受けているように見える。とは言え、ほぼ無視できる程度の影響良だ。F8まで絞ると完璧に抑えることが可能。
最短撮影距離
無限遠と同じ傾向だ。
150mm
無限遠
このズームレンズで最も光量落ちが目立つポイントだ。絞り開放で周辺部に向かって減光が発生し、F8まで絞っても影響は残っている。完全に抑えるためにはF11まで絞る必要がある。
最短撮影距離
無限遠とは打って変わって光量落ちは僅かとなる。絞り開放からほとんど問題の無い状態だ。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
18mm
完璧な補正状態とは言えないものの、大きく拡大してもコマ収差の影響はほとんど無い。良好な補正状態である。
50mm
18mmと比べるとやや目立つが、それでも驚くような収差は残っていない。点像再現性を特に重視しない限りは問題とならないだろう。
150mm
望遠端でも良好な補正状態を維持している。
逆光耐性・光条
18mm
強い光源がフレーム中央に入ると、目立つフレア・ゴーストの影響が見られる。あまり褒められた結果ではない。さらに、絞るとセンサー由来と思われるRGBのゴーストが顕在化する。
フレーム隅に強い光源がある場合でも無数のゴーストが目立つ。この辺りの性能はニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」のほうが遥かに良好だ。フレアやゴーストが気になるシーンではレンズフードを装着して光源の強い光がレンズに直接入らないように注意したい。
150mm
望遠側でも基本的にフレアとゴーストの影響は免れない。ただし、ゴーストは広角側より少ないので、状況によっては問題ない場合もある。とは言え、全体的にニコンの競合レンズのほうが優れた逆光耐性である。
広角側と比べると軽微な影響だが、絞ると潜在的なフレアがゴーストとして目立ち始める。
光条
F8付近から光条が発生し始め、F16でシャープとなる。小絞りではかなり見栄えの良い光条が得られるものの、回折の影響を考慮すると小絞りまで絞るのが悩ましいところだ。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- キットレンズとして入手可能
- 一眼レフ用よりも小型軽量
- 滑らかに回転するフォーカスリング
- 滑らかに回転するズームリング
- 高速かつ滑らかなステッピングモーター駆動
- フォーカスブリージングが目立たない
- ズーム全域で良好な中央解像性能
- 18mm/150mm以外で良好な周辺部の解像性能
- 色収差の良好な補正状態
- 均質的で滑らかな前後のボケ
- 目立つ欠点のない玉ボケ
- 適度な歪曲収差
- 中間域の周辺減光
- コマ収差が適度な補正状態
- 綺麗な光条
一眼レフ用のレンズと比べて小型軽量かつ高性能な高倍率ズームレンズだ。ズーム全域で安定感のある解像性能と収差の補正状態を実現しており、さらに効果的な手ぶれ補正やオートフォーカスが組み合わさって汎用性の高いレンズとなっている。競合他社と比べて優れているのはボケの滑らかさとシャープな光条、そして光学的に補正された歪曲収差だ。他社と区別できる決定打には欠けるものの、高性能なAPS-C EOS Rシリーズと組み合わせるには最適な一本に仕上がっている。
悪かったところ
ココに注意
- レンズフードが別売り
- プラスチックマウント
- 18mm始まり
- 防塵防滴に非対応
- フッ素コーティングなし
- 専用コントロールリングなし
- 接写時に18mmの周辺部で解像性能が低下
- ズーム両端で周辺減光が少し目立つ
- 逆光耐性がもう少し良好だと良かった
最も気を付けるべきは18mmのレンズであることだ。競合他社の18mm始まりと異なり、センサーサイズが少し小さなキヤノンAPS-Cにとって18mm始まりはフルサイズ換算で約29mm相当となり画角が少し狭く感じる。壮大な風景や距離を取ることが出来ない屋内での撮影など、画角の狭さが不便となるかもしれない。2022年8月現在、RF-Sレンズに広角ズームが存在しないので、18mmよりも広い画角を利用するためにはアダプター経由で一眼レフ用レンズを使うしかない。
その他にも欠点はいくつか挙げることが出来るが、ディールブレーカーとなるような致命的な欠点は存在しない。敢えて言えばレンズフードが同梱していると良かったし、逆光耐性はもう少し頑張って欲しかった。せめて防塵防滴仕様だと旅行など行楽で使いやすかったかもしれない。(他社の同クラスは防塵防滴や簡易防滴が多い)
総合評価
満足度は90点。
全体的にバランスが良く、APS-C EOS Rシリーズのキットレンズに相応しい仕上がりだ。完璧でなければ抜群のパフォーマンスとも言えないが、それでもキットレンズとして過不足なく、致命的な欠点が無いので安心して使用できる。EOS R7に相応しいか?と言うと、もう少しハイアマ向けのレンズをリリースして欲しかったところだが、防塵防滴などにこだわらなければ十分なパフォーマンスを備えていると感じる。
RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMはどうなのか?
キットレンズとして入手する場合は実質1万円ちょっとで手に入れることが出来る。非常に安価な標準ズームレンズだ。沈胴構造で携帯性が非常に良好なので、カメラバッグを選ばずに収納することが出来る。ただし、強みと言えばそれくらいで、18-150mmと比べてショートズームながら光学性能が優れているわけでは無く、ボケ質はむしろ悪いくらい。18mmの開放F値は大きく、ズームリングとフォーカスリングの間隔が狭いので誤操作しやすい。個人的な見解となるのが、携帯性・収納性をよほど重視しない限り無視してかまわないレンズだと思う。差額の数万円を払ってでも高倍率ズームをキットレンズとして手に入れるのがおススメである。もしも18-45mmが気になるのであれば、そのうち流通するであろう新古品や中古品を買って試してみるのがおススメだ。
購入早見表
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作例
関連レンズ
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