このページではキヤノンの交換レンズ「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」のレビューを掲載しています。
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧
- キヤノン RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー 完全版
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.6 ボケ編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.5 周辺減光・逆光編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.4 諸収差編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.3 解像チャート編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.2 遠景解像編
- RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビューVol.1 外観・操作性・AF編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 手ごろな広角ズーム | |
サイズ | 非常にコンパクト | |
重量 | 非常に軽量 | |
操作性 | 普通に良好 | |
AF性能 | 全体的に良好 | |
解像性能 | 良好だが歪曲補正で低下 | |
ボケ | 広角としては良好 | |
色収差 | 倍率色収差は補正が要る | |
歪曲収差 | 15mmで補正必須 | |
コマ収差・非点収差 | 完璧ではない | |
周辺減光 | 歪曲収差を補正すると良好 | |
逆光耐性 | 良くはない | |
満足度 | コスパ良好な15mm広角ズーム |
評価:
コスパ良好な15mm広角ズーム
15mm始まりながら小型軽量で手ごろな価格の広角ズームレンズだ。防塵防滴には非対応で、望遠端は30mmと短めだが、広角レンズのエントリーモデルとしては非常に優れた選択肢となる。補正込みで考えると優れた光学性能で、あまり妥協せずに使い続けられるのも特徴と言えるだろう。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | ボケが得にくい、パースがきつい | |
子供・動物 | ISO感度が上がりやすいが使い勝手良し | |
風景 | コストパフォーマンス良好 | |
星景・夜景 | 周囲の点像再現性が良くない | |
旅行 | 小型軽量だが防塵防滴に非対応 | |
マクロ | 撮影倍率は高いが広角は使い勝手が悪い | |
建築物 | 歪曲収差の補正必須で周囲の解像性能低下 |
Index
まえがき
キヤノンRFマウントシステムで3本目となる広角ズームレンズだ。先に登場した「F2.8 L」「F4 L」と異なり、開放F値が変動するLシリーズではない手ごろな価格のレンズである。2018年にEOS Rシリーズが始まり、僅か4年でここまでレンズラインアップを揃えたのは流石のキヤノンと言うほかない。キヤノンが掲げるフルラインアップ戦略の本気度を伺うことが出来る。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | RF | 最短撮影距離 | 0.28m AF 0.128m MF |
フォーマット | 35mm | 最大撮影倍率 | 0.52倍 |
焦点距離 | 15-30mm | フィルター径 | 67mm |
レンズ構成 | 11群13枚 | 手ぶれ補正 | 5.5段分 |
開放絞り | F4.5-6.3 | テレコン | - |
最小絞り | F22-32 | コーティング | SSC |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ76.6×88.4mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 390g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
レンズキャップ |
開放F値は大きめだが、手ぶれ補正を搭載しつつ非常にコンパクトで軽量な広角ズームレンズだ。15mmの広い画角をカバーするAF対応ズームレンズとしては知り得る限り最小・最軽量である。(ただし、15mmを諦めるとソニー「FE PZ 16-35mm F4 G」が驚くほどコンパクトだ)
F4 LやF2.8 Lと比べると一回り、二回り小さく、日常的に使いやすいレンズサイズに仕上がっているように見える。フィルター径も67mmと小さく経済的だ。驚くべきことに、最大撮影倍率が0.52倍と高く、ちょっとしたマクロ撮影にも対応可能だ。ただし、これはMF時のみであり、AF時は撮影倍率がグッと低くなることを理解しておく必要がある。
価格のチェック
売り出し価格の最安値は77,220円だ。カメラメーカー純正の広角ズームレンズとしては非常に手頃な価格を実現している。サードパーティのレンズメーカーが付け入る隙の無い価格設定とラインアップである。
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
キヤノンRFレンズらしい光沢のある黒を基調としたデザインの箱だ。レンズ外観の写真とレンズ名などがプリントされている。中は間仕切りされておらず、レンズ本体は大きめの緩衝材で梱包している。
レンズ本体の他に前後のレンズキャップと説明書と保証書が付属する。レンズフードは付属していないが、必要であればオプションとして追加購入することが出来る。シンプルなフードだが4千円とやや高価なのが残念だ。レンズも安くは無いので、出来れば付属して欲しかった。
レンズフード EW-73E | |||
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外観
パッと見はキヤノンRFレンズでお馴染みのデザインだ。しっかりとしたプラスチック製の外装にゴム製ズームリング、樹脂製コントロールリングを備えている。所有する喜びをかきたてる質感ではないが、RF-Sレンズほどの安っぽさはない。全体的にグレーのマットな塗装が施され、一眼レフ用レンズよりもスレや傷に強くなっている。
側面にはフォーカス/コントロールの切替スイッチと手ぶれ補正スイッチを搭載。AF/MF切替スイッチは無いので、カメラ側で操作する必要がある。ズームリングのロック構造は見当たらない。
ズームリングを操作すると内筒が伸びるタイプのレンズだ。内筒は樹脂製だがガタツキは無い。ほとんど伸びないので、どの焦点距離で固定しても取り回しは良好である。
ハンズオン
400gを切る非常に軽量な広角ズームレンズだ。「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」とほぼ同じサイズ・重量を実現している。さらに「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」を加えて携帯性の高いシステムで15mmから400mmまでをカバーできるのは魅力的だ。EOS Rシステムを始動してから僅か4年で廉価ズーム3本を揃えるのは流石のキヤノンと感じる。
前述した通り、ズーム操作で内筒が伸びるものの大きく伸びることは無い。最長は15mm時で30mmに向かって内筒が手前に戻る。
開放F値
焦点距離によって開放F値が変動するタイプのズームレンズだ。F値が変動する焦点距離は以下の通りである。
- 15mm F4.5
- 16mm~21mm:F5.0
- 22mm~26mm:F5.6
- 27mm~30mm:F6.3
大部分の焦点距離でF5.0以上の開放F値となる。低照度時はISO感度を上げたり、シャッタースピードを遅くしたり、適正露出を得にくいレンズであることは理解しておきたい。幸いにも光学手ぶれ補正を搭載しているので、ボディ側の補正がなくとも多少のスローシャッターには対応できるようになっている。
前玉・後玉
前玉はフッ素コーティング処理されていないので、メンテナンス性は良くない。水滴や汚れの付着が予想できるシーンではプロテクトフィルターを装着するのがおススメだ。ねじ込み式フィルターは67mmに対応している。15mmの超広角で67mmに抑えられているのは便利であり、前述した24-105mm STMと100-400mm STMと同じフィルター径なのでNDやC-PLを揃えやすい。
金属製レンズマウントは4本のビスで固定されている。後玉はEOS Rシステムらしく非常に大きい。レンズ交換時などにぶつけて傷をつけないように気を付けたい。マウント部の刻印を見ると、このレンズが台湾製であることが分かる。ちなみに最近の非Lレンズは台湾製が多い。
レンズマウントに防塵防滴処理は施されていない。ニコンZシステムのようなスカートも無いので耐候性は期待しないほうが良いだろう。鏡筒内部の防塵防滴をこの価格帯に期待するのはお門違いだが、せめてレンズマウントの簡易防滴くらいはあると良かった。
フォーカスリング/コントロールリング
レンズ先端にはローレット加工が施された樹脂製コントロールリングを搭載。トルクがほとんど無く、個人的には少し緩いと感じるが滑らかに回転する。リングの機能は側面のスイッチで「フォーカス」「コントロール」を切り替えることが出来る。
フォーカスリング時は操作レスポンスをカメラ側で変更可能だ。ノンリニア・リニア設定が可能で、回転方向も切り替えることが出来る。ただし、ノンリニア時の感度やリニアのストロークを調整することは出来ない。15mm時はノンリニア・リニアどちらでもストロークが短く、30mmで少し長くなる。
コントロールリング時は操作したい機能をカメラ側で設定可能だ。ただし、独立したコントロールリングのようなクリック感が無いので、正直言うと使い辛い。
ズームリング
約70度程度の回転角で操作できる幅広いズームリングを搭載。この価格帯のズームレンズとしては非常に滑らかな操作が可能で、トルクの変化や引っかかりは無い。動画撮影にも使えそうな滑らかさだ。
スイッチ類
左側面にはフォーカス/コントロール切替スイッチと手ぶれ補正スイッチを搭載。触感と抵抗感は程よく、操作で特に不満は感じない。敢えて言えばズームロックがあると良かった。
レンズフード
別売りのレンズフードを手に入れた。キヤノンではお馴染みの樹脂製花形レンズフードだ。ロック構造は無く、内側の内面反射が特に優れているわけでも無いが、これで4千円もするのは納得がいかない。とは言え、逆光の影響を受けやすく、ワーキングディスタンスが短くなりやすいので前玉保護の観点からフードは装着しておきたい。もしも互換性のあるレンズフードがあれば、迷わず安い方を選んだと思う。
装着例
EOS R5に装着した。カメラを手に取った印象としては、やはり24-105mm STMに近い。違和感なく使うことができるだろう。15mm始まりの広角ズームレンズとしては携帯性が良く、気軽に持ち歩くことができるのは強みと感じる。
AF・MF
フォーカススピード
RFレンズでお馴染みのナノUSMでは無く、ステッピングモーター(STM)で動作する。ナノUSMほど電光石火では無いものの、もともとピント移動距離が短い広角レンズで特に不満は感じない。十分に高速で静かな動作だ。
ブリージング
広角側・望遠側どちらもフォーカスブリージングが皆無とは言えないが、全体的に良く抑えられている。実写で悪目立ちすることは無い。
精度
EOS R5・R7・R10に装着してテストしたところ、精度に大きな問題は無く良好なフォーカス精度を維持していた。ピントの再現性も良好だ。ただし、F4.5-6.3の開放F値により夜間や屋内など低照度の撮影環境でAF速度の低下やピントの迷いが発生しやすい。AF補助光などで大きめの開放F値を補う手段を用意したい。
MF
前述した通り15mm側はノンリニアでもストロークが短く少し使い勝手が悪い。30mm側では問題無いものの、基本的にはAFで使うレンズのように感じる。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:EOS R5
- 交換レンズ:RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
15mm
測定結果
手ごろな価格の広角ズームレンズとしては良好な解像性能だ。絞り開放のF4.5でも中央から隅にかけて安定感のある結果を得ることが出来る。絞っても大幅な画質向上は期待できないが、絞り値全域で実用的な画質であることに間違いない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.5 | 4288 | 4250 | 3667 |
F5.6 | 4029 | 4318 | 3914 |
F8.0 | 3910 | 4497 | 3983 |
F11 | 3945 | 4318 | 3782 |
F16 | 3784 | 3617 | 3290 |
F22 | 3182 | 2911 | 2577 |
実写確認
中央から隅まで良好な解像度・コントラストを維持しているのが分かる。ただし、隅に向かうほど倍率色収差の影響が強くなっている。簡単に補正できる収差なので、カメラ内や現像ソフトの色収差補正は適用しておくのがおススメだ。
補正オン
今回のレンズにおける注意点は15mmの歪曲収差が非常に大きいことだ。解像テストは基本的に補正を全てオフにした状態で測定しているので、レンズ本来の歪曲収差が残ったままだ。実際には歪曲収差を補正して写真を利用することになるので現実に即していない。そこで、今回は特別に補正の有無でどれほど性能が変化するのかチェックしてみた。
ご覧のように、歪曲収差を補正することで隅のパフォーマンスが大きく低下していることが分かる。歪曲収差の補正を抜いた状態では確かにシャープだが、実際には補正適用で画質が少し低下する点は理解しておく必要がある。
20mm
測定結果
広い範囲で絞り開放のF5.0から非常に良好な性能だ。比較して隅はパフォーマンスが低下するものの、それでも良好な画質であり、欠点と呼ぶような描写の甘い画質ではない。絞ると多少の改善を期待できるが、F11以降で回折の影響が出始めるので、画質がピークとなる絞り値の選択肢は少ない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.0 | 4040 | 4359 | 3503 |
F5.6 | 4407 | 4507 | 3676 |
F8.0 | 4658 | 4463 | 3720 |
F11 | 4021 | 4211 | 3750 |
F16 | 3731 | 3789 | 3255 |
F22 | 3296 | 2902 | 2543 |
F29 | 2800 | 2606 | 2348 |
実写確認
15mmと同じく、全体的にシャープだが倍率色収差の影響が残っている。レンズ補正は適用しておくべきだ。
24mm
測定結果
20mmと同じくフレームの広い範囲で絞り開放から良好だが、隅で性能がやや低下する。全体的に性能のピークは絞り開放からF8までで、絞り過ぎると回折の影響でパフォーマンスが徐々に低下する。特にF22からF29は非常にソフトとなるので、被写界深度やスローシャッターが必要なシーン以外では避けたいところ。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.6 | 4329 | 4041 | 3453 |
F8.0 | 4270 | 4037 | 3413 |
F11 | 3890 | 3919 | 3543 |
F16 | 3647 | 3737 | 3342 |
F22 | 3101 | 2840 | 2747 |
F29 | 2596 | 2519 | 2298 |
実写確認
これまでと同じく倍率色収差が目立つものの、安定感のある解像性能を引き続き実現している。接写して撮影することになる広角レンズの解像チャートテストで、ここまで隅の性能を維持しているのは称賛に値する。
30mm
測定結果
望遠端の30mmでは全体的に少し性能が低下するものの、やはり広い範囲は絞り開放から良好だ。隅にしても欠点と呼べるような画質低下は見当たらない。開放F値が大きく、絞りによる画質改善が得られる前に回折でパフォーマンスが低下してしまうのは避けられない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 4266 | 3824 | 3335 |
F8.0 | 4086 | 3945 | 3017 |
F11 | 3945 | 3757 | 3393 |
F16 | 3724 | 3724 | 3246 |
F22 | 3154 | 2820 | 2734 |
F32 | 2319 | 2258 | 2009 |
実写確認
他のズーム域と同じく安定感のある結果が得られる。24mmまでと異なり倍率色収差の補正状態も良好だ。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2022年8月28日 曇り 無風
- カメラ:EOS R5
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO 100 電子先幕 2秒セルフタイマー
- RAW:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
・レンズ補正オフ
・ノイズ補正オフ
15mm
完璧とは言えないが、全体的に安定感のある解像性能だ。中央は絞り開放からシャープでピークの状態であり、周辺部は倍率色収差や非点収差の影響が抜けらないがソフト補正次第で良好な結果が得られる。隅は周辺減光の影響を受けるものの、安定した解像感で欠点とは感じない。
中央
絞り開放から非常に良好だ。絞りによる改善は得られず、F4.5からF8付近までピークの状態が続く。F11以降は回折による低下が見られ、特にF22はソフトな描写となるので出来れば避けたい。
周辺
中央と比べると倍率色収差などの影響で細部のコントラストが低下する。絞っても改善しないところを見ると、MTF通り非点収差が強めに残っているようだ。
四隅
周辺部と比べて極端な画質低下は見られない。安定感のある性能だ。やはり絞っても劇的な改善は期待できない。
20mm
15mmと同じく中央は絞り開放からピークの状態が続く。周辺部は画質が少し低下するものの、極端な収差は見られず専用のプロファイルで収差を補正すると多少の改善は期待できる。隅もやはり安定感のある描写だ。
中央
15mmとほとんど同じ傾向だ。特筆すべき点は無い。
周辺
15mmと同じく倍率色収差や非点収差がディテールに多少の影響を与えているが、全体像で見ると安定している。絞っても改善は見られない。
四隅
絞り開放から良好な画質だが、絞っても画質が大幅に改善しない点は周辺部と同じだ。絞っても周辺減光はしつこく残る。
24mm
全体的に見ると15mmや20mmと同じ傾向だが、周辺部や隅の非点収差に改善傾向が見られる。手ごろな価格の広角ズームレンズとしては立派な性能だ。
中央
F5.6から非常に良好だ。同時に登場したRF24mm F1.8と見比べても大きな違いは無い。
周辺
倍率色収差が僅かに残存し、非点収差の影響もいくらか見られるが、等倍でチェックしなければ良好な画質と言える。とは言え、24mm F1.8と同じ絞り値で確認すると違いは歴然としている。
四隅
解像度は高いと言えないが、コマ収差や非点収差の影響が抑えられた良好な画質だ。EOS R6やEOS RPなど、比較的解像度が低いカメラと組み合わせた場合は不満を感じることが少ないと思う。
30mm
ズームレンズの望遠端と言えば性能が低下するポイントだが、少なくともこのレンズには当てはまらない。解像度のピークは少し低下しているかもしれないが、周辺部まで安定感のある画質だ。
中央
他のズームレンジと同じく、絞り開放からピークの性能を発揮している。細部の解像度は単焦点レンズと比べると見劣りするかもしれないが、低解像度のセンサーであれば特に大きな違いは分からないかもしれない。
周辺
24mmと同じく倍率色収差が残存しているものの、まずまず安定した画質を維持している。ベストを尽くすのであれば単焦点レンズであるのは間違いないが、細部の解像度を重視しなければ十分に良好な結果を得ることができる。絞っても性能は改善しない。
四隅
ズームレンズの望遠端におけるフレーム隅は画質低下が顕著で弱点となりがちだが、このレンズは全く問題ない。高解像とは言えないものの、極端な画質の低下は見られず、色収差や非点収差も良く抑えられている。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
15mm
周辺部や隅を確認すると、僅かに倍率色収差が残存していることが分かる。極端に目立つわけでは無いものの、コントラストが高い状況では実写でも目視できるくらいの色収差が発生する可能性あり。色収差の自動補正は常に適用しておいたほうが良いだろう。
20mm
基本的に15mmと同じような量の倍率色収差が残存している。絞りによる変化は少ないが、どちらかと言えば絞り開放のほうが目立つ。
24mm
広角側と比べると倍率色収差の影響が少し緩和している。実写では絞り開放でも目立たず、絞るとさらに少し改善する。
30mm
24mmからさらに改善し、絞り値全域で倍率色収差の影響は僅かだ。自動補正を適用せずとも全く問題が無いように見える。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
15mm
ほんの少し残存しているようにも見えるが、実写でこれが問題となるシーンは限りなくゼロに近いと思われる。球面収差の影響が残っており、後ボケはソフトで色収差も目立ちにくい。逆に前ボケは硬調なので、ボケの縁取りに色づきが発生すると少しでも目立つ可能性あり。
24mm
基本的に15mmと同じ。絞り開放から無視できるが、2段絞るまでにほぼ完璧に解消する。
30mm
15mmや24mmと同じ。やはり後ボケがソフトなので目立ちにくく、前ボケは目立つ場合あり。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
軸上色収差のテスト結果からも分かるように、少なくとも接写時は後ボケが柔らかい描写となり、前ボケがやや硬調。広角ズームで前ボケがフレームに入る機会が少ないことを考えると、後ボケ寄りのボケ描写は肯定的に評価できるポイントだ。軸上色収差の影響もほとんど目立たないので、広角レンズとしては滑らかで柔らかい描写である。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
15mm
小型軽量な広角レンズとしては口径食が目立たない点は評価できる。その一方で、コントラストが高い状況では倍率色収差の影響が非常に目立つ。色収差補正で回避できる場合もあると思うが、強めの縁取りには気を付けておいた方が良いだろう。とは言え、15mmでこれほど大きな玉ボケを得るためには被写体にかなり近寄る必要がある。
20mm
15mmとは打って変わって最短撮影距離が長くなるため、玉ボケを大きくしようとしてもこれが限界となる。玉ボケは大きくないし、お世辞にも綺麗とは言えない。とは言え、15mmほど倍率色収差の影響は目立たず、絞り開放から悪目立ちする要素はほとんど無い。
24mm
基本的に20mmと同じ傾向が続く。決して強みと言えるボケでは無いが、悪目立ちすることは無い。
30mm
20mmや24mmと比べて焦点距離が長く、F値が大きいものの玉ボケは少し大きくなる。口径食は目立たず、ボケの縁取りが悪目立ちすることもない。手ごろな価格の広角レンズとしては評価できる描写だ。
ボケ実写
15mm
玉ボケのテストでは倍率色収差が目立ったものの、一般的な実写テストではそこまで大きな問題とはならないように見える。ピント面直後のボケは滑らかで柔らかい描写となり、玉ボケの縁取りは目立たない。広角15mmの小口径レンズとしてはなかなか良い感じだ。
撮影距離が長くなることで、当然ながらボケが小さくなる。この場合、周辺部のボケが少し騒がしく見えるが、ボケが小さいので結果的に悪目立ちすることは少ないと思われる。
30mm
広角ズーム30mm F6.3のボケとしては滑らかで綺麗な描写だ。玉ボケの内側に若干のムラが見え隠れするものの、手ごろな価格の単焦点レンズと見比べても悪くない結果のように感じる。ピント面から背景へのグラデーションも滑らかで綺麗である。
15mmと同じく撮影距離が長くなると後ボケは少し騒がしくなる。と言ってもボケの縁取りは強く無く、口径食や色収差の影響も抑えられている。安価な広角ズームとしては十分なパフォーマンスのボケ描写に見える。これと言って指摘するポイントは無い。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立て、30mm F6.3で撮影距離を変えながら作例を撮った写真が以下の4枚だ。
当然ながら全身をフレームに入れると被写体を背景から分離するのは非常に難しい。上半身でもボケ量は不十分で、バストアップでなんとか分離できるように見える。顔のクローズアップであれば十分なボケ量と言えるが、被写体との距離が近すぎるのでライティングが難しいと思われる。
球面収差
前後に顕著な描写の違いは見られない。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
15mm
多くの無印RFレンズと同じく、歪曲収差の補正はかなり割り切った設計だ。そもそも論としてイメージサークルが35mmフルサイズセンサーに足りておらず、四隅は真っ黒でケラレているように見える。これを歪曲収差の補正時に引き伸ばして帳尻を合わせている。自動補正やプロファイルを備えた現像ソフトであれば全く問題ないが、RAWを自動的に補正できない社外製の現像ソフトなどでは注意が必要である。幸いにも、メジャーなAdobe Lightroom Classic CCなどには既にプロファイルが存在する。
この結果が許せないという人もいると思うが、競合他社でも似たようなコンセプトのレンズは数多く存在する(それでもイメージサークルが足りないというレンズは少ないが…)。また、最近ではLレンズでも強めの歪曲収差を補正しているモデルもある。歪曲収差を光学的に補正しないぶん、小型軽量化やその他の収差を良好に補正するのであれば、それはそれでミラーレスらしいレンズと言える。
20mm
15mmとは打って変わって光学的な歪曲収差が良く抑えられている。それでも収差はゼロと言えず、補正時には目に見える形でクロップが発生するので注意が必要だ。また、歪曲収差は陣笠状の歪みを伴っているので、手動での補正は難しいと思われる。
24mm
ぱっと見は収差がほとんど目立たない。よく見ると僅かに補正されているが無視できる範囲内だ。
30mm
広角・中間域と異なり穏やかな糸巻き型の歪曲収差へと変化する。樽型歪曲と異なりクロップは発生しないが、直線的な被写体をフレーム周辺部に配置すると違和感があるので補正は適用しておきたい。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
15mm
最短撮影距離
歪曲収差が無補正の状態と隅に目立つ光量落ちが発生する。補正でどうにかなるレベルでは無いので、素直に歪曲収差の補正でトリミングした方が良いだろう。歪曲収差の補正を適用してしまえば、残った周辺減光は僅かである。
無限遠
最短撮影距離と比べると光量落ちが少し強くなるものの、驚くほどの差とはなっていないように見える。とは言え、光量落ちがゼロでは無いので、気になるのであれば自動補正を適用しておくのがおススメだ。
24mm
最短撮影距離
無補正のRAWでも全く問題が無いように見える。全体的に薄っすらと影響がある光量落ちは絞ると改善するものの、改善速度が穏やか過ぎてアテにならない。
無限遠
最短撮影距離と比べると少し強めの光量落ちが発生する。1段絞ると改善するので、自動補正か絞りで調整したい。
30mm
最短撮影距離
基本的には24mmとあまり変わらないように見える。
無限遠
最短撮影距離よりも影響は強くなるが、それでも問題は軽微で無視できる。
コマ収差・非点収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
15mm
補正は完璧とは言えず、フレーム隅でやや目立つ変形が発生する。ただし、遠景解像性能のテストを見た限りでは、強く影響を受けるシーンは限られてくると思われる。実用的な絞り値では、絞ってもあまり改善しない。
20mm
15mmと同じくフレーム隅で点光源の変形が顕著だ。やはり絞りによる改善速度が遅く、解消するにはかなり絞る必要がある。低照度でこれほど絞るにはシャッタースピードやISO感度の妥協が必要だ。
24mm
20mmほどではないものの、それでも影響は明らかに目に見える。解消するには少なくともF11までは絞っておきたい。
30mm
他の焦点距離と比べると穏やかだが、影響がゼロになったわけでは無い。
逆光耐性・光条
15mm
強い光源をフレーム中央に受けるとフレアとゴーストが目に見える形で発生する。逆光耐性として褒められた結果ではないものの、特に違和感や不快感のあるフレアでは無く、個人的にこれはこれで良い。絞ると光源周辺のフレアは抑えられるが、センサー由来と思われるRGBの反射が目立つようになる。
光源をフレーム隅に配置すると、まずまず良好な逆光耐性となる。絞り開放付近における影響は僅かで、全体的なコントラスト低下は見られない。ただし、絞ると隠れていたゴーストが徐々に顕在化する。
30mm
基本的に15mmと同様だ。フレアは良く抑えられているよにも見えるが、無数のゴーストは避けられない。
光源が隅にあると影響は軽微だが、よく見ると巨大なゴーストが薄っすらと発生している。絞ると徐々に目立つようになるが、実写で問題と感じるシーンはそう多く無い。
光条
小絞りではシャープな光条となるが、回折の影響を受ける前に明瞭な光条は発生しない。あまり期待しないほうが良いと思われる。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 小型軽量
- 手ごろな価格設定
- 67mm径フィルターに対応
- 高速かつ静かで滑らかなAF
- 良く抑えられたフォーカスブリージング
- ズーム全域で安定感のある解像性能
- 軸上色収差を良好に補正
- 無視できる程度の球面収差
- 滑らかな後ボケ
- 悪目立ちしない玉ボケ
- 穏やかな周辺減光(歪曲収差 補正時)
なんと言っても手ごろな価格で小型軽量な広角ズームであることが強みとなる。競合他社の純正広角ズームで、これほど手ごろな価格の選択肢を用意しているメーカーは他に無い。開放F値が暗いので低照度やボケを大きくしたい撮影には不向きだが、広角ズームレンズにそれらを求めるエントリーユーザーはそう多く無いと思われる。67mmと控えめのねじ込み式フィルターを利用でき、オートフォーカスも快適だ。
光学性能は歪曲収差や周辺減光など補正必須と感じる部分もあるが、補正込みで考えれば全体的に許容範囲内で高水準にまとまっている。要求レベルの高いユーザーでも、部分的な弱点が問題なければ満足のいくレンズに仕上がっていると感じることだろう。
悪かったところ
ココに注意
- レンズフードが別売り
- 独立したコントロールリングがない
- AF/MFスイッチなし
- 防塵防滴に非対応
- 開放F値が暗い
- 歪曲収差補正時に周辺解像性能が低下
- 全域で倍率色収差が少し目立つ
- 巨大な樽型歪曲(15mm)
- 周辺の点像再現性
- 逆光耐性
- 光条でシャープな描写を得にくい
最も目に付いたのは非Lレンズらしい部分。レンズフードなし、コントロールリングなし、同梱レンズフードなし、防塵防滴非対応など、コストダウンできる部分は徹底的にコストダウンしているように見える。他社のように簡易防滴くらいは対応して欲しかったところだが、その辺りも省略しているのは実にキヤノンらしい。
光学性能は前述したように歪曲収差や倍率色収差などに妥協が見られるものの、電子補正を受け入れることで大きな弱点とは感じない。もちろん広角側の非点収差などが解像性能の足かせとなっていることは否めないが、極端に画質が低下していると感じるポイントは見当たらない。逆光耐性も完璧とは言えないが、酷評するほど悪くはない。
総合評価
満足度は90点。
広角ズームに大口径や耐候性を求めなければ、小型軽量で高性能なレンズに仕上がっている。コンパクトながら15mm始まりの広い画角は「これぞ広角レンズ」を味わってみたい人にとって面白い視点となる。望遠側は30mmまでと短いが、24mmや28mmで終わる広角ズームが存在していることを考えるとまだまだ長いほうである。15mmと30mmを両方使えると考えると便利な広角ズームレンズだ。
これまで述べてきたように、光学性能は補正込みで考えると悪くない。小型軽量な15mm始まりの広角ズームレンズとしては健闘しているように見える。決して最高性能とは言えないが、そのような場合はF2.8 LやF4 Lなどグレードの高いレンズや大口径の単焦点レンズが選択肢になってくると思われる。RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMが気軽に広角写真を初めて見たい人にとって面白いレンズとなることは間違いない。
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