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キヤノン RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビュー 完全版

このページではキヤノンの交換レンズ「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」のレビューを掲載しています。

RF24mm F1.8 MACRO IS STMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 やや高め
サイズ コンパクト
重量 とても軽い
操作性 必要十分
AF性能 高速だが駆動音あり
解像性能 全体的に優れている
ボケ 小ボケが騒がしい
色収差 軸上色収差が少し目立つ
歪曲収差 RAWは補正必須
コマ収差・非点収差 価格を考慮すると厳しい
周辺減光 RAWは補正必須
逆光耐性 まずまず良好
満足度 携帯性の良い24mm

評価:

ひとくちコメント

小型軽量ながら高解像で機能的な24mm F1.8。光学性能は完璧からは程遠いものの、気軽に使う24mm単焦点レンズとしてはバランスが良い。その一方で繰り出し式フォーカスや厳しい点像再現性など、強いこだわりを持って選ぶレンズとしては厳しい評価の部分が多い。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 ボケが騒がしい
子供・動物 AF速度が平凡
風景 高解像で手ぶれ補正あり
星景・夜景 隅の点像再現性が低い
旅行 小型軽量で携帯性が良い
マクロ 高い撮影倍率と実用的な解像性能
建築物 歪曲収差を補正する必要あり

まえがき

(特殊な超望遠レンズを除くと)35mm F1.8、85mm F2、50mm F1.8、16mm F2.8に続く5本目の無印(非L)単焦点RFレンズだ。そして、0.5倍のハーフマクロと光学手ぶれ補正に対応したラインアップとしては3本目となる。そしてこのシリーズでは最も画角の広いレンズである。

概要
レンズの仕様
マウント RF 最短撮影距離 0.14m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 0.5倍
焦点距離 24mm フィルター径 52mm
レンズ構成 9群11枚 手ぶれ補正 5段分
開放絞り F1.8 テレコン -
最小絞り F22 コーティング SSC
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ74.4×63.1mm 防塵防滴 -
重量 270g AF STM
その他
付属品
キャップ

一眼レフ用の似たコンセプトのレンズ「EF24mm F2.8 IS USM」が存在する。サイズや重量はよく似ているが、開放F値が「F1.8」と1段以上小さくなり、効果的な手ぶれ補正や0.5倍のハーフマクロに対応しているのが魅力的だ。ただし、インナーフォーカスでは無く、最短撮影距離付近では鏡筒が大きく伸びる点には注意が必要だ。

レンズサイズは35mm F1.8とよく似ており、「24mm F1.8 IS」としてはコンパクトである。防塵防滴に非対応などいくつかデメリットがあるものの、普段使いに適したレンズサイズは強みと言えるだろう。

価格のチェック

売り出し価格はEF24mm F2.8 IS USMよりも2万円ほど高く、気軽に追加できる価格設定では無い。価格を考慮するとレンズフードくらい付属してもらいたいが、残念ながら別売りだ。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

キヤノンRFレンズらしい光沢のある黒を基調としたデザインの箱だ。レンズ外観の写真とレンズ名などがプリントされている。中は間仕切りされておらず、レンズ本体は大きめの緩衝材で梱包されている。

レンズ本体の他に前後のレンズキャップと説明書と保証書が付属する。レンズフードは付属していないが、必要であればオプションとして追加購入することが出来る。シンプルなフードだが4千円とやや高価なのが残念だ。レンズも安くは無いので、出来れば付属して欲しかった。幸いにも、RF15-30mmとは異なりRF24mmのレンズフードはEF24mm F2.8 IS USMと共用である。既に互換性のある社外品がいくつか存在するので、純正にこだわりが無ければサードパーティ製フードも一つの選択肢となる。

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JJC製

外観

パッと見はキヤノンRFレンズでお馴染みのデザインだ。しっかりとしたプラスチック製の外装にゴム製フォーカスリング、樹脂製コントロールリングを備えている。所有する喜びをかきたてる質感ではないが、RF-Sレンズほどの安っぽさはない。全体的にグレーのマットな塗装が施され、一眼レフ用レンズよりもスレや傷に強くなっている。

側面にはAF/MF切替スイッチと手ぶれ補正スイッチを搭載している。操作性はRF35mm F1.8と全く変わらないので、違和感なくレンズ交換が可能である。

繰り出し式のフォーカスを採用しており、マクロの撮影距離では内筒が前方へ伸びる。ガタツキは無いものの、誤ってぶつけてしまうリスクを避けるためにレンズフードの装着をおススメする。

ハンズオン

全長63.1mm、重量270gのコンパクトな24mm F1.8である。繰り出し式のフォーカスは少し癖があるものの、携帯性の良い大口径の24mmの存在は強みになる。EOS R10やR7などAPS-Cミラーレスと組み合わせても違和感の無いレンズだ。

前玉・後玉

前玉はフッ素コーティング処理されていないので、メンテナンス性は良くない。水滴や汚れの付着が予想できるシーンではプロテクトフィルターを装着するのがおススメだ。ねじ込み式フィルターは52mmに対応している。他にもRF35mm F1.8やEF40mm F2.8などが対応している。

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金属製レンズマウントは4本のビスで固定されている。後玉はEOS Rシステムらしく非常に大きい。レンズ交換時などにぶつけて傷をつけないように気を付けたい。マウント部の刻印を見ると、このレンズが台湾製であることが分かる。ちなみに最近の非Lレンズは台湾製が多い。

フォーカスリング

ゴム製の適度な幅のフォーカスリングを搭載。リングは滑らかに回転し、ざらついたり引っかかる動作は見られない。フォーカスリングのレスポンスは「リニア」「ノンリニア」をカメラ側で変更することが出来るが、ストロークの調整は出来ない。どちらの設定でも一般的な操作速度であれば約180°のストロークを備えている。ノンリニアの場合、ゆっくりと回転することで微調整が可能となっている。特にF1.8のハーフマクロに対応しているので役に立つ機能だ。

コントロールリング

ローレット加工が施された樹脂製のコントロールリングを搭載。この辺りの仕様はRF35mm F1.8と全く同じである。独立したコントロールリングのため、RF16mm F2.8やRF50mm F1.8と異なりクリック感のある操作性だ。無段階コントロールよりトルクが強く、誤操作の心配は無い。

スイッチ

側面にはAF/MFスイッチとISスイッチを搭載。RF35mmと同じ配置・デザインとなっているので配置や触感を体が覚えており、操作しやすい。

レンズフード

EF24mm F2.8 IS USM」と共用の花形レンズフードに対応している。別売り品なので、必要であれば買い足しておこう。価格はRF15-30mm用の新しいレンズフードと同程度だが、フードの内側には反射防止用のフェルト生地を備えたしっかりとした作りである。

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JJC製

RF35mm F1.8のドーム型フードと異なり、伸びる内筒を保護するように装着可能だ。マクロ撮影で接写する機会も多いと思うので、個人的には社外製でもいいのでフードを装着しておくのがおススメである。

装着例

EOS R5に装着したところ、バランスが良く携帯性を損なっていない。このサイズ感で24mm F1.8を利用できるのは素晴らしいことだと思う。おまけに光学手ぶれ補正まで利用可能なので、EOS RPなどコンパクトなフルサイズミラーレスとも相性が良い。

試しにEOS R10に装着してみた。
正直に言うと、EOS R5よりもR10のほうがしっくりと来る。幅・全高・奥行に均質感があり、程よくコンパクトで愛くるしい。レンズフードを装着すると少し違った見え方となるので、R10装着時はフードを外して使いたい。

AF・MF

フォーカススピード

このレンズはステッピングモーターで繰り出し式フォーカスユニットを駆動する。EOS R5と組み合わせたところ、至近距離で高速移動する物体を追従するには力不足だが、一般的な撮影に過不足のない程度に速いことが分かった。
繰り出し式フォーカスとしては静かだが、リードスクリュータイプのSTMレンズと比べると動作音の発生は避けられない。動画撮影時はさらに駆動音を抑えるために低速で動作するので素早いピント合わせには不向きである。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。

ピント位置によって画角が大きく変化するので、状況によってはズームしているように見えてしまうかもしれない。繰り出し式のハーフマクロレンズでフォーカスブリージングを抑えた設計を期待するのは難しい。

精度

EOS R5やR10との組み合わせでピント精度に問題は見当たらなかった。ピント位置の再現性も良好だ。ただし、フォーカスブリージングで画角が大きく変化するので、フレーム隅にピントを合わせる場合はフォーカスエリアから被写体が外れてしまう可能性があるので気を付けたい。

MF

前述した通りフォーカスリングのストロークは約180°だ。適度なストロークでフルマニュアルでの操作もやぶさかではない。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5
  • 交換レンズ:RF24mm F1.8 MACRO IS STM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズプロファイルオフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

24mmで定型の解像力チャートを撮影するためには撮影距離をかなり短くする必要がある。一般的に、レンズの性能は無限遠側で最高のパフォーマンスを発揮し、近接時は収差変動などでパフォーマンスが低下する傾向がある。このため、広角レンズと解像力チャートの相性が悪い。
にも関わらず、この24mm F1.8は絞り開放から隅まで非常に良好な結果である。広角レンズとしては驚くべき性能だ。

中央

中央は絞り開放から以上にシャープだ。僅かに残存する軸上色収差はF2.8まで絞るとほぼ完璧に抑えることが出来る。F2.8でパフォーマンスはピークを迎え、F8まで同水準の結果を維持している。F11以降は回折の影響で徐々に低下するものの、それでもF16までは立派な性能だ。

周辺

中央と比べると僅かにソフトとなるが、かなり細かくチェックしないと分からない程度の画質低下だ。基本的には中央と同水準と考えて問題ない。F2.8まで絞ると数値上も中央と同等のパフォーマンスを発揮するようになる。以降は中央と同じくピークを維持し、F11以降で低下する。

周辺減光は強くなるが、基本的には絞り開放から周辺部と同程度のパフォーマンスを維持している。コントラストが少し低下して見えるものの、F2.8まで絞ると劇的に改善する。絞れば中央と遜色のない解像性能だ。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.8 4254 3798 4038
F2.0 4330 3754 3844
F2.8 4560 4433 4474
F4.0 4581 4920 4425
F5.6 4581 4549 4567
F8.0 4562 4456 4542
F11 4406 4348 4038
F16 3738 3644 3626
F22 2948 2918 2730

実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2022年8月27日 くもり 無風
  • カメラ:EOS R5
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:絞り優先AE ISO 100 電子先幕
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CCで現像
    ・シャープネスオフ
    ・レンズ補正オフ
    ・ノイズオフ

テスト結果

フレームの隅から隅までパーフェクトとは言い難いが、大部分はF1.8から非常に良好な解像性能を発揮する。ただし、像高8割くらいから外側では非点収差かコマ収差の影響が目立ち、若干ソフトな印象を受ける。これは絞ることで大きく改善するのでコマ収差の可能性が高い。F5.6前後まで絞ればフレーム隅まで非常に良好な結果を得ることができる。

中央

絞り開放から良好なコントラストと解像度が得られる。絞ると僅かに改善するが、基本的にはF1.8からほとんどピークの性能だ。

周辺

周辺部もF1.8から非常に良好な解像性能が得られる。中央と比べるとコントラストが僅かに低いものの、F2.8まで絞ることで改善する。F4前後まで絞れば細部までパンチの効いたコントラストが得られる。

隅は絞り開放付近でコマ収差の影響が目立ち始める。全体像に極端な描写の粗は無いものの、状況によってはコントラストが低下したり、少しソフトな結果となる。絞ることで急速に改善し、F2.8~F4まで絞ると細部のコントラストがしっかりとする。ベストを尽くすのであればF5.6~F8まで絞りたいところだ。

隅の端

フレーム隅の端はさらにコマ収差の影響が強くなり、周辺減光の影響も強いので低照度・低コントラストのソフトな描写となる。F2.8まで絞っても影響は残っているので、カリッとした結果を得たい場合は少なくともF4まで絞りたい。F4以降に大きな改善は見られないが、状況によってはもう少し絞ったほうが良いかもしれない。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

遠景解像テストの撮影環境で、F1.8の絞り開放設定でピントを中央・隅に合わせてそれぞれ撮影した結果(の隅をクロップしたもの)が以下の作例である。確認しやすいように周辺減光の影響を考慮して露出を補正している。

ご覧のように、ピント位置に関わらず画質は一定水準を維持している。このレンズは(少なくとも重要となる遠景撮影で)像面湾曲の大きな問題がないようだ。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

僅かに倍率色収差の痕跡があるものの、フレーム周辺部でも極端に目立つほど残ってはいない。後処理が比較的簡単な収差なので、特に心配する必要は無いだろう。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

完璧な補正状態とは言えず、絞り開放のピント面前後にはいくらか軸上色収差の痕跡が残っている。極端に目立つわけでは無いが、強めのコントラスト環境下では場合によって結果に影響を感じるかもしれない。多くの状況ではF2.8まで絞れば十分に補正できると思うが、それでも足りない場合はF4まで絞る必要がある。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

前後に顕著な差が見られないニュートラルなボケだ。このテストではピント面前後に軸上色収差の影響でボケに色が付いてしまい、前後のボケがどちらも少し騒がしく見える。ボケが大きくなることで騒がしさは緩和するが、ピント面直前・直後の描写には少し注意した方が良いだろう。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

アンチフリッカー機能を使わず撮影してしまい、作例は部分的にフリッカーの影響を受けている。玉ボケのみを見ると、内側は滑らかな描写で、縁取りは目立たないことが分かる。ただし口径食の影響を受けているので周辺部に向かってボケが少し騒がしくなる可能性がある。少なくとも撮影したピント距離では軸上色収差が目立たない。

撮影距離ごとの玉ボケ

絞り開放F1.8を使用し、最短撮影距離から無限遠まで徐々にピントをずらしながら撮影したのが以下の通りだ。

ボケが大きいうちは見栄えの良い描写だが、ボケが小さくなると急速に騒がしい描写へと変化する。何が原因か特定することは出来ないが、描写の乱れ方から非点収差・コマ収差が影響しているように見える。

ボケ実写

至近距離

玉ボケでのテスト通り、ボケが大きい場合は全体的に滑らかで綺麗な描写だ。軸上色収差の色付きは目立たず、周辺部まで滑らかな描写を維持している。広角24mmのボケとしては申し分ない。F2.8まで絞っても問題なく、それ以降でもボケが悪目立ちすることは無い。小絞りまで十分に良好だ。

近距離

被写体との距離を長くすると、当然ながらボケは少し小さくなる。それでも全体的に綺麗で滑らかな描写だ。ただし、周辺部のフレーム端は騒がしくなる兆候が見られ、場合によっては少し目立つかもしれない。これは少し絞ることで改善するので、周辺部のみ目立つ場合はF2やF2.5あたりを使ってみると良いかもしれない。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、騒がしいと感じる領域が広がる。絞ることで騒がしさは改善するが、全体的に安定感を得るにはF4くらいまで絞る必要がある。もちろん背景との距離やコントラストによって変化するので柔軟にF値を調整するのがおススメだ。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立ててポートレートの距離感で撮影したのが以下の作例だ。

フレームに全身を入れる撮影距離でもボケを得ることは出来るが、中途半端なうえに後ボケが非常に騒がしくなる。このような場合は絞ってパンフォーカスを狙ったほうが良いかもしれない。膝上・上半身くらいまで近寄ると背景から被写体を分離するのに十分なボケを得ることができる。ボケは多少騒がしい描写だが悪目立ちはしない。バストアップまで近寄ると、まずまず綺麗で大きなボケを得ることが出来る。顔のアップで完璧となるが、撮影距離はないに等しい。

球面収差

前後のボケ質には描写の違いが見られ、球面収差が完璧な補正状態ではないのが分かる。ボケが大きい場合に描写の差は目立たなくなるが、ボケが小さいと少し騒がしく見えるかもしれない。この傾向は実写でも確認済みだ。球面収差による目立つフォーカスシフトの影響は見られない。

 

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

定点撮影のRAWファイルを補正オン・オフで現像したのが以下の作例だ。

スライドショーには JavaScript が必要です。

ご覧のように、RAWには目立つ樽型歪曲収差が残っている。ちょっとした魚眼レンズのように強い収差が残っているので、このまま使うのは非常に難しい。手動補正も可能だが、綺麗に修正したいのであれば専用のプロファイルを使った方が良いだろう。歪曲収差を補正するにあたり、周辺部をトリミングして四隅を引き伸ばしているのが分かる。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

今回のテストでは未補正のRAWを使用しているので、通常(カメラ出力のJPEG)であればクロップしている領域も含まれている。周辺減光はF1.8から軽微で問題ないレベルだが、0.5倍の撮影倍率で大きなフォーカスブリージングを伴うレンズとしては少し目立つように見える。絞ると徐々に改善し、F5.6付近で隅の端を除いて解消する。

無限遠

最短撮影距離とは打って変わって非常に目立つ周辺減光が発生する。歪曲収差の補正で隅がトリミングされることで多少の改善は見られるが、それでもF1.8でフラットな露出を期待する場合はレンズ補正や周辺減光の手動補正が必要だ。絞ると光学的に素早く改善するので、風景撮影のようなシーンで困ることは無いだろう。

コマ収差・非点収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

コマ収差は絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

点像再現性はお世辞も良好とは言えず、フレーム隅に向かって目立つ変形が見られる。これは隅をクロップせずとも、全体像でフレーム隅をじっと眺めると分かる程度に大きな変形だ。大口径の広角レンズとは言え、この補正状態で夜景や天体撮影におススメは出来ない。絞ることで徐々に改善し、F2.8~F4の間で解消する。

逆光耐性・光条

中央

完璧とは言えないが、強い光源をフレーム中央に配置した状態としては良好な逆光耐性だ。ただし、目立つゴーストを避けることが出来ず、状況によっては後処理が必要となる。

キヤノンの無印レンズとしてはずいぶんと良好な逆光耐性だ。強い光源を隅に配置した場合は絞り開放からほとんど問題は発生せず、絞るといくつかゴーストが発生する程度に抑えられている。キヤノンはこのような光学系でフレアを抑制する特許を出願しており、逆光耐性には自信があると思われる。

光条

F8くらいからシャープな光条が発生し始め、F11からF22で綺麗な光条を得ることができる。回折とのバランスを取るのであればF11~F16がベストか。この価格帯の広角レンズとしては非常に綺麗な光条だ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 小型軽量
  • 光学手ぶれ補正を搭載
  • 0.5倍の撮影倍率
  • 独立したコントロールリングを搭載
  • 近距離でも全体的に優れた解像性能
  • 遠景でも絞ると全体的に優れた解像性能
  • まずまず良好な倍率色収差の補正
  • 滑らかな玉ボケ・大ボケ
  • 無印RFレンズとしてはまずまずの逆光耐性
  • 綺麗な光条

小型軽量ながら0.5倍の撮影倍率や光学手ぶれ補正に対応した大口径の広角レンズだ。「24mm F1.8」としてはコンパクトで、APS-Cボディに装着しても違和感が無いのは間違いなく強みとなる。実際、私はEOS R5よりもR10に装着して使用している場合が多い。光学性能も良好で、レンズ補正に依存している部分もあるが、接写時を含めてピント全域で良好な解像性能を発揮するのは魅力的である。

悪かったところ

ココに注意

  • レンズフードが別売り
  • 防塵防滴ではない
  • フォーカシングで内筒が伸びる
  • ギア式のステッピングモーター駆動
  • フォーカスブリージングが目立つ
  • 軸上色収差が少し目立つ
  • ピント前後のボケが騒がしい
  • 歪曲収差が非常に目立つ
  • 無限遠の周辺減光が非常に目立つ
  • コマ収差の補正状態

価格を考慮するとレンズフードや簡易防滴くらいは対応して欲しかった、と言うのが正直な所だ。フォーカシングで伸びる鏡筒やギア式のステッピングモーター駆動は0.5倍の撮影倍率を考慮すると妥協すべきポイントかもしれないが、好みが分かれるポイントだと感じる。解像性能は良好だが、歪曲収差や周辺減光など、レンズ補正を前提としているような部分がいくつか見受けられる。個人的にレンズ補正は積極的に活用すれば良いと考えているものの、それでも後処理が難しいコマ収差や非点収差の補正はもう少し頑張って欲しかった。夜景や星景では周辺部の残存収差が少し気になるかもしれない。

総合評価

満足度は90点。
おそらく、好みが分かれるレンズだ。「24mm F1.8」に何を求めるかによってレンズの評価は大きく変わってくる。特にこだわりが無く、気軽に24mmを使ってみたい人にとって、このレンズは小型軽量で扱いやすい高性能な選択肢となるだろう。その一方で、夜景や星景などで使用する広角大口径レンズを期待している人にとっては残存収差の量は許せないと感じるかもしれない。また、動画撮影でもフォーカスブリージングや駆動音などを考慮すると適したレンズとは感じない人が多いと思われる。

個人的には24mmのカジュアルユーザーなので、携帯しやすく高性能な24mm F1.8を使うのがとても楽しい。ボディ内手ぶれ補正を搭載していないボディに装着しても気軽にスローシャッターを利用でき、APS-Cボディでも違和感のないサイズがGood。扱いやすい焦点距離・画角と言うこともあり、多くのユーザーがボディに付けっぱなしの常用レンズになると予想している。

購入早見表

RF24mm F1.8 MACRO IS STM
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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