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キヤノン RF28-70mm F2.8 IS STM レンズレビュー 完全版

このページではキヤノン「RF28-70mm F2.8 IS STM」のレビューを掲載しています。

RF28-70mm F2.8 IS STMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 高すぎず安過ぎず
サイズ 最小クラス
重量 最軽量クラス
操作性 Fnボタン以外は完備
AF性能 NanoUSMほどではないが十分
解像性能 接写時以外は非常に良好
ボケ 中距離以降でやや騒がしい描写
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 適度に良好な補正状態
周辺減光 補正が必要な場合が多い
逆光耐性 ゴーストがやや目立つ
満足度 バランスよくまとまった新しい選択肢

評価:

バランスよくまとまった新しい選択肢

非Lシリーズとしては思っていたよりも良くまとまっているレンズ。部分的にカメラ側の補正を必要とする光学設計ですが、遠景の解像性能やレンズサイズ、価格設定を考慮すると受け入れるべき妥協点。良好な解像性能や滑らかで高速なAF、効果的な手振れ補正を備えたバランスの良いレンズに仕上がっています。

売り出し約17万円の価格設定は安すぎず、高すぎず。他社のタムロンやシグマを考慮すると決して安くはないものの、ソニー「FE 24-50mm F2.8 G」も似たような価格であることを考慮すると高すぎるとは言えません。敢えて言えば、10万円を超えるならレンズフードくらい付属してほしかったところ。

This lens is better than I expected for a non-L series lens. Although the optical design requires some camera-side correction, it is a compromise that should be accepted when you consider the resolution performance for distant scenery, the size of the lens, and the price. It is a well-balanced lens with good resolution performance, smooth and fast AF, and effective image stabilization.

The price of around 170,000 yen is not too cheap or too expensive. Considering the lenses from other companies such as Tamron and Sigma, it is not cheap, but considering that the Sony “FE 24-50mm F2.8 G” is also a similar price, it is not too expensive. If I had to say something, I would have liked it to come with a lens hood if it was going to cost over 100,000 yen.

まえがき

2024年9月に正式発表されたキヤノンRFマウントにおける8本目の標準(域をカバーする)ズームレンズ。非Lシリーズとしては珍しく「F2.8」の開放絞り固定ズームで、低照度での撮影や大きなボケを得たい場合に適したレンズとなっています。販売価格が非Lの中では「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」に次いで高価ですが、RFレンズとしては手頃な価格でF2.8ズームを体験することが出来ます。
(2024年9月時点でサードパーティ製のフルサイズ用F2.8ズームレンズはありません)

  • 公式ウェブサイト
  • 管理人のFlickr
  • 最新情報まとめ
  • 発売日:2024年9月27日
  • 予約開始日:2024年9月17日 10時
  • 希望小売価格:オープン
  • キヤノンオンラインショップ:188,100
  • B&H:1,099ドル
  • フォーマット:フルサイズ
  • マウント:RF
  • 焦点距離:28-70mm
  • 絞り値:F2.8-F22
  • 絞り羽根:9枚 円形絞り
  • レンズ構成:12群15枚
  • 最短撮影距離:0.24m
  • 最大撮影倍率:0.24倍
  • フィルター径:67mm
  • サイズ:φ76.5×92.2mm
  • 重量:495g
  • 防塵防滴:対応
  • AF:STM
  • 手ぶれ補正:対応
  • その他機能:
    ・AF/MF/コントロールスイッチ
    ・手振れ補正スイッチ

F2.8ズームながら、標準ズームレンズの中で下から3番目に位置するくらいにコンパクト。ただし、沈胴構造となっているため、使用時は格納している内筒を展開する必要があります。とはいえ、収納性が良く、24-105mm F4 Lよりコンパクトサイズは魅力的。

競合他社の比較的コンパクトなF2.8ズームと比べても収納性が良好。特に光学手振れ補正を搭載しているレンズとしては唯一無二であり、EOS RPやR8などコンパクトなボディと組み合わせる際に最適。

価格のチェック

売り出し価格はカメラのキタムラなどで169,290円が最安値。決して安いとは言えないものの、30万円超の「RF24-70mm F2.8L IS USM」を考慮すると半値近い価格設定。シグマやタムロンの参入で状況が変わる可能性はあるものの、現状では最も手頃なRFマウントのF2.8ズームレンズです。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

キヤノンらしい黒を基調としたシンプルなデザインの箱。
EOS R5 Mark IIと同じく、環境に配慮した梱包材に切り替わっており、プラスチック素材の梱包材がなくなっています。

レンズ本体のほか、書類を除けば同梱するのは前後のレンズキャップのみ。
非Lシリーズのレンズらしく、レンズフードは別売り。キヤノン以外で10万円を超えるレンズにフードが同梱していないブランドはありません。驚くほど高いフードでもないので、出来れば同梱品として扱ってほしいところ。

外観

RFレンズらしく、外装はプラスチック製でグレーの塗装が施されています。ブラック寄りのLシリーズレンズと比べると、グレー味の強いカラーリング。色の違いを除けば、Lシリーズと同程度の質感であり、見劣りはしません。ズームリングは従来通りゴム製で、コントロールリングはローレット加工の施されたプラスチック製。

ズーム時に伸びる内筒もプラスチック製。金属製の内筒ほど頑丈な質感ではないものの、がたつきなどはありません。レンズは防塵防滴仕様であり、可動部には専用のシーリングが備わっています。

ハンズオン

重量は500g未満とF2.8ズームレンズとしては軽量。防塵防滴に対応、そして手振れ補正を搭載しつつ、シグマ「28-70mm F2.8 DG DN」と同程度の重量を実現しています。携帯性が良く、機能的な大口径ズームレンズと言えそうです。

前玉・後玉

防塵防滴仕様ですが、レンズ前面にフッ素コーティングの記述はありません。水滴や油汚れ、ダメージが想定される現場では、予め保護フィルターを用意しておくことをおススメします。

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金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。周囲には防塵防滴用のシーリングがあります。マウント付近には製造国が「日本」であることを示す刻印あり。レンズ最後尾はマウントから突出した位置にあり、レンズ交換時などに傷つけないように気を付けたいところ。なお、フレアカッターはありません。

フォーカスリング

コントロール兼フォーカスリングの役割を持つリングを最前部に搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転しますが、クリック感はありません。静止画用途の露出補正や絞り値調整は難しい可能性あり。MFリング時のストロークはカメラ側で変更可能。

ズームリング

28-70mmの間で調整でき、28mmを超えて回転させることで沈胴構造を格納することが可能。沈胴時のロック機構はありません。抵抗は重すぎず軽すぎずと言ったところ。防塵防滴仕様ですが、ズームリングは硬すぎず、緩すぎず、ちょうどいい抵抗感で操作可能。弱めの力で操作し始めることができ、ズーム全域で引っ掛かるポイントはありません。

内筒格納状態から28mmまで回転した時点で、内筒が2cmほど伸びます。さらに70mmの望遠端に向かって徐々に伸び、最終的に内筒が4.5cm伸びます。F2.8 標準ズームとしては内筒が伸びる量が多いものの、縮長が短いことを考慮すると許容範囲内。

スイッチ

側面にはAF/MF/コントロールと手振れ補正のスイッチを搭載。ここ最近の非Lシリーズらしく、AF/MFの間に「コントロール」機能が配置されています。中間の「コントロール」に設定するのが少し難しいですが、頻繁に切り替える機能ではないため問題とは感じませんでした。

レンズフード

別売り花形フードを導入。RF24-105mm F4-7.1 IS STM用と同じもの。
シンプルなデザインのフードであり、ロックボタン以外にギミックは無し。逆さ付けに対応。

装着例

EOS R5 Mark IIに装着。
RF24-105mm F4-7.1 IS STM」のようなサイズ感のF2.8ズームレンズ。使用時は鏡筒が伸びるものの、少なくとも収納性は非常に良好。普段使いに適したF2.8ズームと言えそうです。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカスはステッピングモーター駆動で動作。十分高速ですが、NanoUSMほど電光石火ではありません。特に望遠側での合焦速度がワンテンポ遅い印象あり。と言っても、STMで十分高速であり、大部分の撮影で大きな問題はないと思います。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

全体的にフォーカスブリージングはゼロと言えないものの、良く抑えられています、

28mm

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35mm

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50mm

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70mm

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精度

EOS R5 Mark IIとの組み合わせで問題無し。

撮影倍率
  • 最短撮影距離:0.24m
  • 最大撮影倍率:0.24倍

最短撮影距離はズーム全域でほぼ同じ。つまり、最大撮影倍率を得るには望遠端である70mmを利用する必要があります。広角側は撮影倍率が低下するものの、寄りにくさを感じるほどではありません。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5 Mark II
  • 交換レンズ:RF28-70mm F2.8 IS STM
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

28mm

テスト結果

中央はF2.8から良好な性能ですが、周辺や隅は非常にソフト。良好な結果を得るにはかなり絞る必要があります。近距離や接写では収差が変動・性能低下しやすく、特に広角域を使ったクローズアップではよく見る傾向です。このレンズに限った話ではありません。遠景テストの結果が良好である点に留意。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 3814
F4.0 4675 2698
F5.6 4556 2830
F8.0 4348 3419 1947
F11 4197 3877 3017
F16 3699 3644 3142
F22 2978 3015 2919
実写確認

35mm

テスト結果

基本的には28mmと同じ傾向。ただし、周辺や隅は絞りにより改善しやすい。回折の影響こそあれ、F11まで絞ると中央に近い結果をフレーム全体で得ることが出来ます。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4484
F4.0 4463 2757 2128
F5.6 4350 3307 2925
F8.0 4579 3442 3121
F11 4273 4241 4027
F16 3508 3709 3189
F22 2992 2930 2814
実写確認

50mm

テスト結果

中央は依然として良好で周辺や隅の性能は広角域よりも改善しています。F5.6まで絞るとフレーム隅までシャープな結果を得ることが可能。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4569
F4.0 4735 3266 2262
F5.6 4802 4194 3390
F8.0 4802 4905 3563
F11 4186 3901 3804
F16 3725 3483 3422
F22 3253 3002 2780
実写確認

70mm

テスト結果

望遠端でも中央の性能に目立つ低下はありません。周辺や隅は”比較的”安定した結果を得ることが可能。ただし、満足のいく結果を得るにはF5.6くらいまで絞ったほうが良いでしょう。ベストを尽くすのであればF8-F11あたり。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4311 2192
F4.0 4983 2869 1863
F5.6 4961 4159 3133
F8.0 4677 4756 3101
F11 4338 4177 3896
F16 3674 3442 3257
F22 3098 3053 2832
実写確認

レンズ比較

RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM

低価格・小型軽量・小口径のレンズですが、広角端から中央~隅まで一貫した性能が得られるレンズです。中央のピーク性能はイマイチですが、周辺や隅の安定した性能はRF28-70mm STMよりも良好。特にEOS R8など解像性能の高くないカメラと組み合わせるのに最適。

35mmや50mmの同じ絞り値ではRF28-70mm STMも健闘。中央の解像性能が高いぶん有利と言えるかもしれません。

遠景解像力

テスト環境

  • 2024.9.27:晴れ:やや強めの風(ストーンバッグで対応)
  • カメラ:EOS R5 Mark II
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

28mm

F2.8から全体的に良好。隅に若干のソフトさがあるものの、F5.6まで絞るとシャープな結果が得られます。倍率色収差の影響が残っているため、カメラや現像ソフトでの補正を推奨。欠点と言うほどの領域は見られず、非Lの標準ズームレンズとしては健闘しているように見えます。

中央

周辺

四隅

35mm

基本的には28mmと同じ傾向。中央はF2.8からシャープな結果が得られ、周辺や隅は2段絞るとベスト。とはいえ、F2.8から実用的な画質であり、躊躇なく使っていける性能です。

中央

周辺

四隅

50mm

中央から隅まで一貫性の高い性能。ただし、コマ収差の影響か隅に向かってコントラストが僅かに低下します。F4-F5.6でほぼ改善するので問題なし。ベストを尽くす場合はF8をチョイス。

中央

周辺

四隅

70mm

50mmと同じく、中央から隅まで一貫した画質。隅のみ若干の低下が見られるものの、F4-5.6で改善します。

中央

周辺

四隅

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

28mm

過度ではないものの、若干の色収差が残存しています。

35mm

28mmと同程度。

50mm

広角域と同じか、やや少ない。

70mm

他の焦点距離と比べると良好な補正状態です。全体的に見て、キヤノン標準ズームとしては良好な結果。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

28mm

極わずかに残存していますが無視できる程度。大部分の撮影で問題ありません。

35mm

28mmと同じく、目立つ問題はありません。

50mm

広角側と比べると僅かに収差が強くなっているようにも見えますが、基本的には問題なし。

70mm

このズームレンズで最も目立つ焦点距離。ピント面前後に若干目に付く色収差が発生しています。と言っても許容範囲内に収まっており、これが目立つシーンは限られています。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

28mm

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目立つ樽型歪曲であり、手動補正が難しい陣笠状の歪みを伴います。補正用のレンズプロファイルは必須。補正に伴い、四隅が少し引き延ばされています。レンズ補正に依存するこの種の設計は珍しくなく、特に驚くような収差の量ではありません。

35mm

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28mmと比べると非常に穏やかな樽型。補正無しでも無視できる範囲内ですが、よく見ると陣笠状の歪みがあります。

50mm

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広角側から一転して、やや目立つ糸巻き型の歪曲収差。状況によっては目立つため、補正必須と考えておいたほうが良いかもしれません。

70mm

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50mmよりも少し強めの糸巻き型歪曲。この焦点距離も補正必須。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

28mm

点光源に極わずかな変形が見られるものの、無視できる範囲内。隅を大きくクロップしない限り問題視する必要はありません。

35mm

28mmと同程度。

50mm

広角側と比べると内向性のコマ収差がやや目立つようになります。軽微な問題ですが、気になる場合はF4-F5.6まで絞ると改善します。

70mm

50mmと同じ傾向。

球面収差

28mm

前後のボケ質に大きな変化がない良好な補正状態。

70mm

28mmと同じく問題無し。軸上色収差のテスト通り、28mmと比べて色づきが目立ちます。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

ニュートラル寄りで縁取りが少ないボケですが、70mmでは軸上色収差の影響でボケに色づきが見られます。惜しい。

前ボケ

後ボケと比べるとボケの輪郭が少し硬め。やはり若干の色収差が目に付きます。少し気になる場合は絞ることで改善します。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

28mm

非球面レンズの使用により、玉ボケの内側に同心円状のムラがあります。気になるほどではありませんが、コントラスト強めの現像処理では目立つ可能性あり。また、四隅は口径食の影響で玉ボケが変形しており、これを改善するには2段絞る必要があります。

35mm

28mmと同傾向ですが、口径食の影響は軽め。F4まで絞るとほぼ解消します。

50mm

口径食の影響を受けるのは隅の一部のみ。色収差の影響は少なく、ボケの縁取りは僅か。全体的にズームレンズとしては良好な見栄えです。

70mm

50mmと比べて口径食の影響が強くなり、軸上色収差の影響でボケの縁取りに色付きが発生しています。それでも悪くない描写ですが、玉ねぎボケが少し目立ちます。

ボケ実写

28mm

ボケが大きい場合は問題ないものの、ボケが小さくなるとフレーム周辺や隅の描写が騒がしくなります。少し騒がしいと感じる場合は1~2段絞ると改善します。

50mm

広角側よりも安定感のある描写ですが、ボケが小さくなると周辺が少し騒がしくなる傾向あり。この場合も1段ほど絞ると改善します。

70mm

四隅の口径食は目立つものの、ボケ質は全く問題ありません。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

28mm

全身をフレームに入れて満足のいくボケが得られるほど大口径ではありません。この際にハイライトのボケが騒がしくなる可能性があるため、F4くらいまで絞ったほうが良い場合があります(ボケが小さいので目立ちませんが)。バストアップ程度まで近寄ると、ボケの悪い部分が目立たなくなります。

50mm

28mmと比べるとボケが大きくなり、全身をフレームに入れても背景を少しぼかすことが出来ます。この際のボケは縁取りが強く、ハイライトが多いと少し騒がしく感じるかもしれません。絞りを調整したり、撮影距離を詰めることで改善可能。

70mm

フレームに全身を入れても背景を分離する程度にぼかすことが可能。この際のボケ質は許容範囲内で、28mmや50mmと比べると欠点が目立ちません。口径食はやや強めですが、大きな被写体をぼかしたい場合は70mmを使うのがおススメ。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

28mm

最短撮影距離

歪曲収差の補正もオフにすると四隅に強い減光効果が発生。これは絞っても解消せず、ケラレのように残存します。ただし、歪曲収差を修正する際に四隅が引き延ばされるため、基本的には問題無し。四隅を除けば影響のある範囲が狭く、残る軽微な問題は減光補正で解消します。

無限遠

最短撮影距離と同程度ですがケラレの範囲は僅かに改善します。

50mm

最短撮影距離

28mmと比べると全体的に遥かに軽微。F2.8から問題ありませんが、F4まで絞るとさらに改善します。

無限遠

影響が若干強くなるものの、その差は無視できる程度。どちらもカメラや現像ソフトの補正で修正可能。

70mm

最短撮影距離

ズーム中間域と比べると強くなるものの、28mmほどではありません。絞ればほぼ解消します。

無限遠

最短撮影距離よりも若干強めですが、F4まで絞ると大幅に改善します。

逆光耐性・光条

28mm

光源付近のフレアは抑えられていますが、レンズ間面反射と思われるゴーストが複数発生。絞り開放からやや目立ち、絞るとさらに悪化します。このあたりは低価格で小型軽量な「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」がより良好。

70mm

28mmと比べると影響は軽微。ゴーストがゼロとは言えないものの、全体的に無視できる程度に抑えられています。

光条

F11から明瞭で先細りするシャープな光条が発生。非常に綺麗な光条であり、回折の影響が少ないF11付近から利用することが出来ます。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • キヤノン純正としては手頃な価格のF2.8ズームレンズ
  • 小型軽量
  • 光学手振れ補正を搭載
  • まさかの防塵防滴
  • 遠景で一貫性の高い解像性能
  • 色収差補正が良好
  • シャープな光条

サードパーティ製品が乏しいRFマウントでは貴重な小型軽量で比較的安価なF2.8ズームレンズ。さぞや妥協が伴うのだろうと思いきや、予想外に良くまとまっています。専門性が要求されるシーンではハイグレードレンズとの差が目に付くものの、一般的な用途では十分なパフォーマンス。遠景ではシャープな結果が得られ、近距離では滑らかなボケ。非Lシリーズとしては珍しく防塵防滴仕様であるため、撮影時のコンディションを選ばずに使えるのは嬉しいポイント。

さらに、光学手振れ補正を搭載しているため、ボディ側に手振れ補正のないEOS R8やEOS RPのようなカメラとも相性が良好。

悪かったところ

ココに注意

  • 沈胴構造のため使用時は展開する必要性あり
  • レンズフードが別売り
  • 近距離で周辺・隅の性能が低下
  • 強い樽型・糸巻き型の歪曲収差
  • 中距離以降のボケは周辺部がやや騒がしい
  • 周辺減光が強い(歪曲収差とセットで補正が必要)

まず気を付けたいのは小型軽量なレンズサイズが沈胴構造によって実現していること。使用する際は鏡筒を伸ばす必要があり、不意に訪れるシャッターチャンスに対して多少の遅延が発生します。

光学的には接写時の周辺解像と未補正RAWにおける強い歪曲収差に注意。歪曲収差や周辺減光と共に補正できるものの、接写の解像性能低下は大幅に絞らないと改善しません。接近して周辺や隅の性能が重要となるシーンは少ないものの、アーカイブなどでの使用を検討しているのであれば気を付けたほうが良いでしょう。

後ボケは焦点距離や撮影距離によって騒がしい描写。ただし、「過度ではない」ギリギリのところに抑えられているように見えます。個人的には許容範囲内。

結論

満足度は95点。
非Lシリーズとしては思っていたよりも良くまとまっているレンズ。部分的にカメラ側の補正を必要とする光学設計ですが、遠景の解像性能やレンズサイズ、価格設定を考慮すると受け入れるべき妥協点。良好な解像性能や滑らかで高速なAF、効果的な手振れ補正を備えたバランスの良いレンズに仕上がっています。

売り出し約17万円の価格設定は安すぎず、高すぎず。他社のタムロンやシグマを考慮すると決して安くはないものの、ソニー「FE 24-50mm F2.8 G」も似たような価格であることを考慮すると高すぎるとは言えません。敢えて言えば、10万円を超えるならレンズフードくらい付属してほしかったところ。

購入するを悩んでいる人

RF24-105mm F4 L IS USM

28-70mm F2.8よりも若干大きなサイズのF4ズームレンズ。接写時の解像性能とボケの質感は28-70mm F2.8よりも良好ですが、遠景の解像性能や倍率色収差の補正状態は28-70mm F2.8がより良好。機材オタクとしておススメするなら28-70mm F2.8で、24mmや105mmが利用できて(画質的に)80点が取れれば良いプロのツールと考えると24-105mm F4 L。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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