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SIRUI AF 85mm F1.4 FF レンズレビュー 完全版

このページでは「SIRUI AF 85mm F1.4 FF」のレビューを掲載しています。

SIRUI AF 85mm F1.4 FFのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 同クラスではとても安い
サイズ 比較的コンパクト
重量 とても軽い
操作性 良好だが電子制御に誤動作あり
AF性能 十分な速度・拡大AF時に不安定
解像性能 開放付近がソフト
ボケ 後ボケがとても良好
色収差 倍率色収差がやや目立つ
歪曲収差 糸巻き型歪曲がやや目立つ
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 このクラスとしては適度
逆光耐性 改善の余地あり
満足度 小型軽量・低価格で十分な性能

評価:

小型軽量・低価格で十分な性能

NIKKOR Zなど、カメラメーカー純正品の大口径レンズと比べると「柔らかさ」を残した光学設計です。切れ味を重視する場合は少し絞る必要があるものの、ポートレートレンズとして「柔らかい」描写を重視する場合は純正品よりも相性が良いと感じる可能性あり。販売価格は10万円を切っており、柔らかい描写のポートレートレンズを探しているのであればコストパフォーマンスの高い製品。

The optical design retains a ‘softness’ when compared to the large-aperture lenses of genuine camera manufacturer products such as the NIKKOR Z. If you are looking for a lens that emphasises sharpness, you may need to stop down a little, but if you are looking for a portrait lens that emphasises ‘soft’ rendering, you may find that this product is better suited to your needs than genuine products. The selling price is under 100,000 yen, so if you are looking for a portrait lens with soft rendering, this is a product with high cost performance.

まえがき

三脚や雲台の中国メーカーとして知られているSIRUIが手掛けるフルサイズ対応のAFレンズ。中国レンズメーカーで「フルサイズ用のF1.4 AFレンズ」を投入するのはMeikeに次いで2社目。85mm F1.4 レンズとしては小型軽量で、全長はシグマと同程度、重量はサムヤン(509g)に次いで軽い。AFレンズメーカーとしては後発のSIRUIですが、意欲的な製品となっているようです。

発売日 2024.11.18
初値 ¥82,000
レンズマウント E / X / Z
対応センサー フルサイズ
焦点距離 85mm
レンズ構成 9群14枚
開放絞り F1.4-
最小絞り F16
絞り羽根 15枚
最短撮影距離 0.85m
最大撮影倍率 0.1152倍
フィルター径 67mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング フッ素
サイズ φ80.3×102mm
重量 540g
防塵防滴 対応
AF ステッピングモーター
絞りリング クリック解除対応
その他のコントロール AFLボタン
AF/MFスイッチ
USB-Cポート
付属品 レンズフード

9群14枚のレンズ構成中には2枚のEDレンズと1枚の非球面レンズを使用。MTFを見る限りでは周辺や隅までしっかりと写る光学性能に仕上がっているようです。このあたりが実写でどのような結果となるのか、今後のレビューで確認する予定。

価格のチェック

SIRUI直販では8.2万円。これは現在のサムヤン AF 85mm F1.4 FE II 最安値と同程度。ソニーGM IIと比べると半値以下、シグマよりも数万円安い。ニコンZマウントで競合製品は存在しないものの、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」を同程度の価格で入手可能となっています。

SIRUI AF 85mm F1.4 FF(ワード検索)
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

SIRUI JAPANより購入したので、外箱はSIRUI公式のもの。シンプルな段ボールかと思いきや、封を切ると化粧箱が現れます。

白・黒を基調として、SIRUIらしい青を彩ったデザイン性の高い化粧箱。ここ最近は他の中国メーカーも化粧箱に凝っていますが、SIRUIの箱はその中でも非常に良好。

無理やり開けようとして箱を破らないための取っ手が付いています。これは他社で見ない良いポイント。地味ですが箱まで大事に保管したい人にとって役立つギミックとなっています。

取っ手の両側には未開封を示す封印シール。剥がしてもべたつかない点でVILTROXよりも良好。

レンズ本体は空気を抜いた状態で密閉されています。ここまでする必要性があるのか謎ですが、結露や湿気から保護するには有効な手段かもしれません。また、小ゴミが付着する心配なし。

レンズ本体のほか、レンズフードやレンズキャップ、シグマライクなレンズケースが付属します。

数量限定の購入特典として、UVフィルターとブラックミストフィルターが付属。驚いたことに、フィルター両面には傷を防ぐための保護フィルムが張り付けられています。レンズ・フィルターともに丁寧な梱包となっており、初動の購入体験としては大いに満足のいくもの。

外観

レンズの外装は大部分が金属製のしっかりとした作り。一見するとプラスチックのように見える質感はマットブラックの塗装が施されているため。金属外装では珍しい塗装で、主張しすぎない上品な色合い。ちなみに指紋は付きにくい。

鏡筒の中央にはシリーズロゴ「Aurora」とフルサイズ対応であることがプリントされています。正直に言うと「Full Frame」がこの配置はいかがなものかと思いますが、分かりやすくはあります。

側面にはSIRUIのロゴプレートあり。その他、絞り値を含めて全ての表示は加工された上で色づけされています。凝った造り。(シリアルナンバーのみプリント)

ハンズオン

85mm F1.4のレンズとしてはコンパクト。85mm F1.8のレンズと比べて大差ありません。特に全長の長いZ 85mm F1.8 Sをレビューした直後なのでそう感じます。

前玉・後玉

最前面には球状の大きなレンズを搭載。表面はフッ素コーティングされているため、水滴や油汚れが付着した際のメンテナンスが容易。とはいえ、ダメージが予想される場合は保護フィルターを装着しておいたほうが良いでしょう。このレンズは85mm F1.4としては比較的小さい67mm径のフィルターに対応しています。

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金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。レンズマウントにはファームウェア更新用のUSB-Cポートがあります。後玉周囲は不要な反射を抑えるためにマットな黒色の塗装。

さらに周囲は耐候性を確保するためのシーリングがあります。

フォーカスリング

レンズ先端には適度な幅の金属製フォーカスリングを搭載。抵抗感は弱めですが滑らかに回転します。ストロークはカメラ側で設定変更可能ですが、指定の角度に対して正確に動作しません。特に素早く回転した際に誤動作(回転している方向とは逆に動作する)する可能性あり。ノンリニアレスポンスで”ゆっくり”回転する場合は正確なピント合わせが可能。

絞りリング

F1.4からF16、Aポジションまで動作する絞りリングを搭載。全域で1/3段刻みのクリックあり。かなり強めのクリック感があり、正確に動作します。

右側面には絞りリングのクリックを無段階に変更するスイッチがあります。

Fnボタン

左側面にはレンズFnボタンとAF/MFスイッチを搭載。四角いFnボタンは珍しいですが、押しやすさに問題はありません。クリック感が強く、音が発生しやすいので動画撮影には不向き。

レンズフード

プラスチック製の円筒形フード。シグマと同様、フードの付け根にグリップ用のゴムカバーを備えています。中国レンズメーカーのフードとしては凝った造り。ただし、シグマと同じくゴミが付きやすいのが悩ましいところ。

レンズ本体にしっかりと固定できますが、装着時の位置合わせがシビアで、回転して固定する動作が硬め。

ケラレ耐性

付属していたフィルター2枚を装着してもケラレは発生しませんでした。画角の狭いレンズであるため、余裕がありそうに見えます。

装着例

Z  8に装着。ボディが大きいこともあり、85mm F1.4にしては非常にコンパクトなレンズに見えます。カメラバッグへの収納は容易で、手持ち撮影時の負担も少ない。撮影時のフォーカス・絞り操作に問題はなく、快適に操作できます。

AF・MF

フォーカススピード

ステッピングモーター駆動を使用し、静かで滑らかに動きます。最新のAFレンズとしては、決して高速と言えないAF速度ですが、ニコン純正のZ 85mm F1.8 Sも似たような結果が得られています。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

85mm単焦点レンズとして過度ではありませんが、一般的に目立つフォーカスブリージングが発生します。ただし、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」よりも少し良好。

精度

拡大AF時にピントの山を掴み損ねることがありました。このあたりは環境を変えて再度テスト予定。
また、前述したようにAF速度が高速と言えないので動体撮影ではピント合わせが追い付かないことがあります。

MF

フォーカスリングの素早い回転による誤作動を除けば、微調整時できちんとピントを合わせることが可能。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 8
  • 交換レンズ:SIRUI AF 85mm F1.4 FF
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

近距離テストでは絞り開放付近が全体的にソフト。球面収差が残存しており、コントラスト低め。軸上色収差の影響も僅かにあります。F2まで絞ると少し改善しますが完璧とは言えません。F2.8まで絞ると劇的に改善、特に中央で非常にシャープな結果を得ることができます。

周辺や隅もF5.6-8まで絞ると非情に良好ですが、倍率色収差の影響で測定数値が伸び悩んでいるように見えます。実際の現像では色収差を簡単に補正できるため、より良好な結果を期待できます。

中央

少なくとも近距離では球面収差の変動が大きく、かなりソフトな結果となります。解像性能の観点で見るとマイナスですが、ボケ質や全体の描写としてはプラスに作用する可能性があります。

このような傾向は2段絞るとほぼ収束。以降は非常にシャープな結果となります。キレのあるピント面が必要であれば、最低でも2段絞るのがおススメ。

周辺

基本的には中央と同じ傾向。比較して若干ソフトですが、画質の極端な落ち込みはありません。ただし、前述したように倍率色収差の影響が出始めるため、コントラストの高いシーンでは不自然な色づきが気になる可能性あり。

四隅

周辺と同程度ですが、倍率色収差の影響はさらに強くなります。このため、絞っても数値的に改善の伸びしろが少なめ(倍率色収差は絞っても改善しない)。簡単に補正できるので無視できる範囲内、とはいえ、高輝度シーンでは目立つ可能性あり。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3013 2377 2359
F2.0 3644 3104 2428
F2.8 4689 3595 2679
F4.0 4774 3811 3018
F5.6 4812 4321 3368
F8.0 4818 4380 3205
F11 4029 3817 3090
F16 3830 3230 2827

実写確認

競合製品との比較

SIRUIは絞り開放がソフトですが、絞ると中央が大幅に改善。周辺や隅も良好ですが、同価格帯のZ 85mm F1.8ほど安定感はありません。悪くない結果でしすが倍率色収差が目立ち、測定数値に影響している可能性あり。

傾向としてはサムヤンと似ているものの、全体的に良好。ただし、テスト機が異なるので参考までに。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.1.8 吹雪ときどき晴れ・強風
  • カメラ:Z 8
  • 三脚:Leofoto LS-325C ストーンバッグ装着
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic  現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

解像チャートテストの結果と似ています。絞り開放付近は残存収差の影響でややソフト。しかし、全体的に極端な画質の落ち込みはありません。中央はF2.8で、周辺や隅はF5.6まで絞ると非常に良好な結果を得ることが出来ます。

中央

F1.4でコントラストがやや低くなるものの、細部は良く解像しているように見えます。F2で改善し、F2.8でピークの結果。細部にモアレが発生するくらいには良く解像しています。以降に大きな変化はなく、F8以降で徐々に回折の影響を受ける。

周辺

中央と比べると少し低下しますが、極端な画質の低下はありません。絞ると徐々に改善し、F4-5.6で非常に良好な結果が得られます。

四隅

周辺と同じ傾向。大きな違いは見られず、隅まで安定した結果が得られています。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

フレーム中央・フレーム隅どちらでピントを合わせても結果はほぼ同じ。像面湾曲の影響はほとんどありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

このレンズでやや気になるポイントの一つ。絞り値全域で、フレーム隅に倍率色収差が目につく程度に残存しています。カメラで簡単に補正できる収差の一つですが、ボケが色付く場合は補正できない場合あり。とはいえ、実写で目立つシーンは限られているため、過度に心配する必要はありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧ではないものの、比較的安価な85mm F1.4としては良く抑えられています。実写で問題となる可能性はほとんどありません。水面の反射や金属面の照り返しで少し色づく程度。

軸上色収差の問題とは別に、F1.4からF2.0へ絞った際にピントの山が遠側へ移動する問題が発生しています。これは残存する球面収差の影響があると思われ、撮影時に注意する必要があります。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

未補正のRAWでやや目立つ糸巻き型の歪曲収差が残っています。レンズプロファイルを自動的に適用できないレンズとしては過剰な歪みであり、状況によっては現像ソフトなどで手動補正が必要と感じる可能性あり。

スライドショーには JavaScript が必要です。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

フレーム隅で極わずかな影響を受けるものの、ほぼ問題ありません。コマ収差は適切に補正されているように見えます。

球面収差

F1.4

前後玉ボケの描写には差異があることが分かります。球面収差を完璧に補正しているとは言い難く、これはピント面のコントラスト低下や前後ボケ質に影響を及ぼしている可能性あり。

また、軸上色収差テスト結果から分かるように、F1.4からF2.0へ絞る際にピント位置が遠側へ移動する「フォーカスシフト」の原因となっています。

F2.0

F2まで絞ると球面収差の影響が低減しています。まだ完璧とは言えないため、ベストを尽くすのであればF2.8まで絞るのがおススメ。これは遠景解像テストの結果と似ています。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

残存する球面収差の影響があるため、前後のボケ質はニュートラルではありません。後ボケは滲みを伴う柔らかいボケ質へと変化しており、ボケの輪郭が残りにくい描写。前ボケよりもフレームに入る機会が多い後ボケが柔らかい描写となるのは強み。

前ボケ

後ボケとは逆に、前ボケは輪郭が残りやすいボケ質です。状況によっては2線ボケとなる可能性がありますが、後ボケと比べると回避しやすい問題。どうしても気になる場合はF2・F2.8まで絞ると改善します。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

内側は滑らかですが、色収差の影響でボケの縁取りに若干の色づきが発生しています。特に倍率色収差の影響が強いためか、フレーム隅で目立つ傾向あり。小型サイズを考慮すると、口径食の影響は軽微。

1段絞る(F2.0)と軸上色収差の影響がほとんど無くなり、隅の口径食も改善します。倍率色収差による色づきは回避できませんが、それ以外は概ね良好。絞り羽根が15枚と多いため、絞っても綺麗な円形を維持しています。

2段絞り(F2.8)でも円形の綺麗な描写。口径食の影響はほとんどありません。

ボケ実写

至近距離

「85mm F1.4」で被写体に接近すると被写界深度は非常に浅い。ボケが大きく、質感を議論するような撮影距離ではありません。敢えて言えば、残存する球面収差によりコントラストが若干低い。(過度ではなく、味付け程度)

近距離

撮影距離が少し長い場合でも、後ボケは全体的に柔らかく滑らかな描写。ボケの輪郭は目立たず、色収差の影響はありません。

ブラックミストフィルター比較

レンズに付属するブラックミストフィルターを装着して撮り比べた結果が以下の通り。効果の薄いソフトフィルターを通したようなコントラスト低下が得られます。主に影響をうけるのはハイライトで、光が拡散しているように見えます。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。全身がフレームに入るような撮影距離でも後ボケは滑らかで綺麗。球面収差の影響は軽微で、ボケ質に大きな影響はありません。フレーム隅の質感も良好。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

過度とは言えない程度にやや強めの減光が発生。レンズサイズを考慮すると、良く抑えられているように見えます。F2-F2.8まで絞るとほぼ解消。

無限遠

最短撮影距離側と比べて、少し強めの減光が発生します。F2.0まで絞っても目立つため、光学的に抑えたい場合はF2.8まで絞る必要があります。それでも、85mm F1.4 の周辺減光として驚くような効果ではありません。

逆光耐性・光条

中央

本レンズの直前でレビューした「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と比べるとフレア耐性は低め。絞り値に依らずフレアが発生し、光源付近のコントラストが低下しています。絞るとさらに目立つゴーストが大量に発生。お世辞にも逆光に強いとは言えません。これはSIRUIだけの問題ではなく、中国レンズメーカーの課題と言えるかもしれませんが…。

光源を隅に配置した場合、絞り開放における問題はほとんどありません。ただし、絞りを閉じると複数のゴーストが発生しています。

光条

絞り羽根が15枚と多く、それが光条になると30本。光条の描写そのものはシャープですが、不均一で、あまり目立たない形状。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 手頃な価格
  • 小型軽量
  • 化粧箱の作りと充実した付属品
  • 鏡筒が金属製で頑丈
  • 防塵防滴・フッ素コーティング
  • 操作性の良い絞りリング
  • 絞ると全体的にシャープ
  • 軸上色収差の補正状態が良好
  • コマ収差の補正状態が良好
  • 柔らかい後ボケ
  • 玉ボケが角ばらない
  • 口径食の影響が少ない

手頃な価格とサイズで十分以上の結果が得られるポートレートレンズ。F1.4の絞り開放はやや緩めの描写ですが、程よい緩さが長所となる場合もあります。小型軽量な大口径レンズはフレーム隅に向かって荒れる傾向があるものの、本レンズはフレーム隅まで安定感のある描写。口径食による歪みや収差の影響が少なく、「緩さ」を許容できるのであればF1.4から実用的な画質。

また、数段絞ることで全体的にシャープな結果を得ることが可能。開けてふんわり、絞ってシャープな、NIKKOR Z S-Lineとは異なる描写を楽しむことができるレンズです。

悪かったところ

ココに注意

  • MFリングを素早く回すと誤動作がある
  • レンズフードの装着が固い
  • 絞り開放がやや緩めの描写
  • 倍率色収差がやや目立つ
  • 糸巻き型の歪曲収差がやや目立つ
  • フォーカスシフトの影響あり
  • 逆光耐性はNIKKOR Zほどではない

絞り開放の緩さは残存収差によるもので、状況によっては撮影に悪影響を及ぼします。特に気を付けたいのはフォーカスシフト。F5.6まで実絞りAFのニコンZカメラで問題となることはありませんが、F1.4でAF後にピント固定で絞る場合は注意が必要。倍率色収差や歪曲収差は補正可能ですが、レンズプロファイルによる自動補正が適用できないため、後処理で修正する必要があります。

ビルドクオリティは全体的に良好ですが、フォーカスリングの素早い操作時に誤動作が発生します。これはファームウェアアップデートで改善する可能性もありますが、現時点では注意が必要。

結論

NIKKOR Zなど、カメラメーカー純正品の大口径レンズと比べると「緩さ」を残した光学設計です。切れ味を重視する場合は少し絞る必要があるものの、ポートレートレンズとして「柔らかい」描写を重視する場合は純正品よりも相性が良いと感じる可能性あり。販売価格は10万円を切っており、柔らかい描写のポートレートレンズを探しているのであればコストパフォーマンスの高い製品。

拡大AF時の精度、MF操作時の誤動作など、ファームウェアの部分で改善が必要と感じる部分があるものの、全体的に見るとおススメしやすいポートレートレンズ。

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競合製品について

NIKKOR Z 85mm f/1.2 S

正直に言うと、これを買うことが出来るのであれば悩む必要はありません。
しかし「85mm F1.2の価格・サイズがどうしても無理」と言うのであれば、ニコンZマウントにおいてSIRUIは貴重なポートレートレンズと言えるでしょう。

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NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

SIRUIと同じような価格帯で入手できる「85mm F1.8」の純正品。SIRUIのような「F1.4」ではないものの、純正品としてAFやフォーカスリングの動作を心配する必要はありません。光学性能は絞り開放から非常に良好で、SIRUIをF1.8まで絞るよりも高コントラスト・高解像。おまけに逆光耐性が非常に良好。オールラウンドな85mmを探しているのであればこちらがおススメ。

ただし、85mm F1.4よりも何故か鏡筒が長い。また、絞り開放から硬めの描写となるので、少し緩い描写を期待する場合にはSIRUIのほうが好みと感じるかもしれません。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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