Dustin Abbottがシグマ「20mm F2 DG DN」のレビューを公開。優れた光学性能とビルドクオリティのレンズと評価しつつ、ソニーGよりも目立つ歪曲収差と光量落ちに注意が必要と指摘しています。
Dustin Abbott:Sigma 20mm F2 DG DN (iSeries) Review
外観・構造:
- 私は総金属製で細部へのこだわりを持つ「シグマ Iシリーズ」の設計哲学が大好きだ。
- ビルドクオリティは間違いなくArtシリーズよりも良好だ。
- レンズフードも金属製である。適度に深い花形で、レンズ本体との一体感がある。
- フィルターサイズは62mmだ。あまり一般的なサイズでは無いので好きではない。例えばNiSiの角形フィルターキットに62mmのアダプターは付属していない(ステップアップリング)。
- 内部に耐候性はないが、レンズマウントにシーリングが施されている。
- 一般的なレンズキャップの他に、マグネット式のレンズキャップが含まれている。ただし、フード装着時には脱着が難しい。
携帯性:
- 直径70mm、全長72.4mmで、重量は370gと非常にコンパクトなレンズである。
- レンズの設計においてフィルターサイズの優先順序が低いことに問題は無いが、同シリーズでフィルターを共有できないことには注意が必要だ。
操作性:
- Aポジションに対応する絞りリングを搭載している。1/3段ごとに正確で明確なクリックストップがあり、これを解除することは出来ない。
- 動画撮影の観点から、絞りリングのクリックを解除できると良かった。
- 側面にはAF/MFスイッチがある。AF時には白の塗装が見え、MF時は黒の塗装が見えるように、視覚的な工夫が施されている。
- フォーカスリングはLマウントならばリニア・非リニアにレスポンスを切り替えることが可能だ。
フォーカス:
- 最短撮影距離は0.22mだ。ワーキングディスタンスは短いが、画角が広いので撮影倍率は0.15倍である。これはソニーFE 20mm F1.8 Gyorimo小さな倍率であり、タムロン20mm F2.8 Di III OSDの0.5倍よりも遥かに低い数値だ。
- ステッピングモーター駆動のAFは静かで高速に動作する。
- 静かな環境でレンズを使用しても、AFの動作音は聞こえなかった。
- フォーカスブリージングは穏やかで、僅かに変化するだけだ。
- フォーカス精度はとても良好だ。
手ぶれ補正:
- 光学手ぶれ補正は非搭載だ。
- 手ぶれ補正を利用したい場合は対応するボディを用意しなければならない。
解像性能:
- 非常にシャープなレンズだ。α1の5000万画素でも良好なディテールとコントラストが得られる。
- 絞り開放から全体的に優れたコントラストと解像度だ。どこを見ても素晴らしい。四隅の画質に違いは見られず、偏心の状態も良好だ。
- F2.8まで絞るとコントラストと解像度がさらに向上するが、F4以上まで絞ってもあまり改善しない。これは早い段階で高い性能に達していることを意味している。
- 解像度を得るために絞る必要は無く、被写界深度の調整に使えばよい。
- 撮影倍率は高くないが、接写時もかなり良好な結果が得られる。
像面湾曲:
- 接写でもピント面は驚くほどフラットだ。
ボケ:
- 玉ボケには口径食の影響が少しある。
- シャープでコントラストの高いレンズであり、後ボケが騒がしくなる傾向がある。
色収差:
- 軸上色収差は良好に補正されている。
- 倍率色収差は良好に補正されている。
球面収差:
歪曲収差:
- 目立つ樽型歪曲が発生している。
- 手動で補正すると、陣笠状の歪曲が残ってしまう複雑な形だ。
- レンズプロファイルを適用することで、よりキレイな仕上がりになると思う。
- この点でソニーGレンズはより適切に補正している。
周辺減光:
- F2で光量落ちが目立つ。修正するにはLightroomの補正値で「88」必要だった。
- 絞ると改善するが、解消することはない。
- この点でソニーGレンズはより適切に補正している。
コマ収差:
- F2でも非常に良好な結果が得られた。
- ただし、周辺減光の影響が強いので天体写真を撮影する際は光量補正時にノイズが目立つかもしれない。
逆光耐性:
- 逆光耐性はとても良好だ。ゴーストやフレアはほとんど見られない。
総評
私はこのシリーズの24mm F2が大好きで、欠点が少ないと感じている。しかし、20mm F2ではそれがあまり当てはまらない。このレンズは、ある指標では優れた性能を発揮し、ある指標では重大な光学的妥協を伴っている。シグマがこの焦点距離でこの絞り値のレンズをコンパクトにまとめたことには感心するが、同じようなことをソニーがすでにやっていたことに気づかざるを得ない(しかも、少しだけ口径が大きい)。
強い歪曲収差と重い光量落ちが、それ以外の優れた光学性能の足を引っ張っている。 このレンズは非常にシャープで、素晴らしいコントラストを持ち、優れたコマ収差補正、フレア耐性、色収差補正を実現している。 オートフォーカスも良好で、iシリーズの作りとデザインを気に入っている。購入を検討されている方にとっては、素晴らしい長所が短所を十分に上回るかどうかが問題となるだろう。
このレンズに興味を持つかどうかは、検討しているカメラシステムによって異なる。この焦点距離に近いLマウントの選択肢は少なく、コンパクトで高性能な単焦点が699ドルというリーズナブルな価格で提供されているのは興味深いことだ。 しかし、ソニー側の競争は激しく、この200ドルの価格差が破格でない限り、ソニーFE 20mm F1.8 Gよりもシグマを勧めるのは難しい。 しかし、その欠点を我慢すれば、シグマ20mm F2 DG DNは素晴らしい写真を撮ることができる。
- 長所:
・美しく機能的な外装
・簡易防滴
・AFが高速で静か
・色収差がきちんと補正されている
・シャープネスとコントラストは絞り開放から全体的に良好
・逆光耐性がとても良好
・コマ収差補正が良好
・コンパクトサイズ
・価格設定が適切- 短所:
・樽型歪曲が大きく複雑
・周辺減光が強くてしつこい
・62mmフィルター
・FE 20mm F1.8 Gの存在
とのこと。
ライカLマウントであれば競合レンズが存在しないものの、ソニーEマウントでは純正レンズをはじめ、同じような画角でタムロン、トキナー、ツアイス、サムヤンなどなど競合レンズが数多く存在する焦点距離ですね。比較的後発のシグマが、激戦区の20mmでどのような需要を得られるのか気になるところ。
全体的に優れた光学性能を発揮していますが、歪曲収差と周辺減光がかなり目立つとDustin Abbot氏は指摘しています。この二つの欠点はカメラや現像ソフトで簡単に補正が可能であり、Contemporaryラインに属する「Iシリーズ」はこれらを自動補正に依存しつつ、コンパクトサイズを目指したり、他の収差補正を優先していると思われます。この辺りを理解していないと、RAW現像時に驚くかもしれません。(もちろん、Dustin Abbott氏も理解している模様)
ただ、それを考慮してもソニー「FE 20mm F1.8 G」の存在が大きい模様。
私もFE 20mm F1.8 Gを使ったことがあり、かなり良いレンズだと感じています。光学的に歪曲収差が補正されてる点には驚きました。ただし、周辺減光はかなり目立つので、シグマ比で劇的な改善は期待しないほうが良いかなと思います。とは言え、接写時も周辺部まで良好な解像性能を維持しており、ほとんど欠点の無い、パフォーマンスを考慮すると手ごろな価格のレンズに違い無し。
特にDustin Abbott氏の生活圏ではシグマとソニーの価格差が200ドルしかないので、ソニーの優位性を感じるのかもしれません。日本国内では3.5万円ほどの価格差となっているのが悩ましいところ。特にシグマは販売を開始したばかりであり、時間と共にもう少し値下がるかもしれません。価格差を考慮すると、歪曲収差を妥協出来ればシグマのコストパフォーマンスも魅力的と言えそうです。
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