DPReviewが富士フイルム「XF50mmF1.0 R WR」のレビュー公開。絞り開放付近のシャープネスは甘く、軸上色収差の影響もありますが、美しいボケの評価がとても高くなっている模様。
DPReview:Fujifilm XF 50mm F1.0 R WR field review
レンズの紹介:
- 富士フイルム製の特に明るいポートレートレンズだ。
- フルサイズで75mmに相当する。
- 2020年秋に発売され、価格は1499.95ドルだ。
- かなり近い存在として2本のXF56mmF1.2が存在する。
ビルドクオリティ:
- XF56mmと異なり防塵防滴仕様だ。さらに絞り羽根は7枚ではなく、9枚である。
- 総金属製の外装は非常に頑丈だ。品質も良好である。
携帯性:
- XF56mmと比べて遥かに大きく、重いレンズだ。重量は2倍以上である。
- フィルターサイズはXF56mmのような62mm径ではなく、77mm径を使用する。
- これ以上重い富士フイルムXマウントの単焦点レンズと言えばXF200mm F2くらいである。
- 大きく重いレンズだが、F1.0の大口径を考えるとそれほど大きくは無いし、過度な重さも感じない。フルサイズのF1.4レンズと似ている。
- X-T4との組み合わせでバランスは良好だ。小さなボディではフロントヘビーと感じるかもしれない。
操作性:
- 鏡筒にはフォーカスリングと絞りリングのみ搭載している。他のコントロールは全くない。
- 2つのリングはどちらも電子制御だ。
- フォーカスリングは滑らかに回転し、適度な抵抗量を備えている。
- 絞りリングは1/3段ごとにクリックが発生する。Aポジションでカメラ側での操作が可能だ。
オートフォーカス:
- DCモーター駆動のAFはこのレンズの強みとは言えない。最短撮影距離から無限遠まで約0.8?1秒ほどかかり、間違いなく遅い側のレンズだ。
- スタジオポートレートでは問題無いが、ウェディングやストリート、低照度ジャーナルフォトではシャッターチャンスを逃してしまうかもしれない。
- 浅い被写界深度でピント合わせに苦労することもあれば、最短撮影距離が長いために被写体へ寄り切れない時もある。
- この種のレンズで発生しがちなフォーカスブリージングは目に見えない程度に抑えられている。これには驚いた。
マニュアルフォーカス:
手ぶれ補正:
- レンズに手ぶれ補正は搭載していない。
解像性能:
- 絞り開放のシャープネスは強みと言えないが、ポートレートが目的であれば問題にはならない場合もある。
- 絞ると改善するが、F1.4やF2.0でもソフトに見える。スウィートスポットに近づけるためにはF2.8前後まで絞る必要がある。
- 絞り開放はシャープではないが、像面は非常にフラットだ。絞り値に関係なく、フレーム全域で一貫したシャープネスである。
像面湾曲:
- 記載なし。
ボケ:
- 玉ねぎボケやバブルボケの兆候は見られず、非常に滑らかなボケ味だ。前後のボケも美しい。
- F2.0よりも明るい絞り値では、口径食の影響を受けやすい。さらにF2.0~2.8の絞りで玉ボケが角ばっているように見える。
- 問題は小さく、全体的に見るとボケは非常に望ましいものだ。
色収差:
- 軸上色収差はF1.4やF2.0まで絞っても目立つ場合がある。後処理の難しい収差であるため、これは残念だ。
球面収差:
- 記載なし。
歪曲収差:
- 記載なし。
周辺減光:
- 記載なし。
コマ収差:
- 記載なし。
逆光耐性:
- 優れた逆光耐性である。コントラストの低下は極僅かで、ゴーストは全く見られない。
総評
最初に述べたように、XF50mmF1.0はニッチな製品だ。開放F値がF1.0と非常に明るく、ポートレート撮影や被写界深度の浅さを重視する撮影者をターゲットにしているのは明らかだ。そのため、F2.8よりも明るい絞り値で撮影した場合にソフトネスが目立つなど、画質面ではいくつかの欠点があるが、多くのフォトグラファーはその美しいボケ味を求めて、喜んでシャープネスを無視するだろう。
画質で気になる点があるとすれば軸上色収差だ。これは、ピント面の前後にそれぞれ飽和したマゼンタとグリーンのフリンジとして現れ、デジタル補正で修正するのは難しい。
また、オートフォーカスの遅さも気になる。スタジオなどで静止した被写体を撮影する場合や、マニュアルでのピント調整だけで済むように撮影では気にならないと思う。しかし、より難しい被写体、動くポートレート、光量の少ない場所での撮影では、どうしても失敗してしまうことがある。また、Xマウントの単焦点レンズの中では、かなり大きくて重く、価格も高いレンズであることは否めない。小型のボディで撮影や、コントラスト検出のみのAFに耐えられないのであれば、代わりに56mm F1.2 APDレンズを検討すべきだと思う。また、コストを重視するのであれば、標準の56mm F1.2の方がはるかにリーズナブルだ。明るさもほぼ同等で、しかも絞り開放からシャープな描写が得られ、軸上色収差も明らかに少ない。
しかし、もしあなたがポートレート撮影の際に背景をできるだけ目立たせたくないと考えていて、レンズのコストや大きさ、価格に我慢できるのであれば、その素晴らしいボケ味にケチをつけるのは難しい。
- 長所:
・大型ボディとのバランスが良い
・甘美なボケ
・フラットなピント面
・優れた逆光耐性
・フォーカスブリージングが無い
・防塵防滴
・優れた操作性
・効果的なレンズフード- 短所:
・F2.8まではあまりシャープではない
・F2.0以下での軸上色収差
・F2.0以下での口径食
・遅いAF
・撮影倍率が低い
・光学手ぶれ補正なし
・大きく重い
・非常に高価
とのこと。
他のレビューサイトでも指摘されているように、開放のシャープネスはイマイチですが、ボケ描写はかなり良好みたいですね。軸上色収差の色付きは残念ですが、これが目立たないシーンでは優れたボケを得ることが出来そうです。(ただ、隅の小さなボケは口径食などの影響で少し荒れているように見える場合もある)
ボケ描写は主観的な評価となりやすいので、実際に作例を確認しながら購入を検討するのが良いでしょう。Flickrには既に500を超えるユーザー投稿が公開されているので参考になるかもしれません。
個人的にこのレンズの描写は好みであり、開放の甘いシャープネスも特に問題とは感じません。後はDCモーター駆動のAFが自身のシチュエーションに適しているかどうか。DPReviewの動画レビューを見る限りでは、明るい環境で静止体を撮影するのであれば特に問題は無さそう。
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