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タムロン 20-40mm F/2.8 Di III VXD レビューVol.5 ボケ編

タムロン「20-40mm F/2.8 Di III VXD」のレビュー第五弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

20-40mm F/2.8 Di III VXDのレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

軸上色収差のテストと同様、後ボケが滲みを伴う柔らかい描写であるのに対し、前ボケは縁取りが少し強めの描写。極端な違いではないので、全体像からするとニュートラル寄りのボケ質と言えそうです。軸上色収差の影響はゼロと言えないものの、使い勝手が良い。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

20mm

中央とその周辺の描写は良好ですが、フレーム隅に向かって部分的にアウトラインが強調される騒がしい描写。周辺部が騒がしい場合は1~2段絞ると安定感が増します。非球面レンズによる玉ねぎボケの効果はほとんど見られず、広角レンズとしては評価できるボケ質です。

24mm

口径食の影響は小さくなるものの、アウトラインが強調されるのは20mmと同じ。状況によっては1段ほど絞ったほうが見栄えの良いボケが得られる可能性あり。

28mm

口径食はさらに小さくなりますが、アウトラインが強調される領域が広がっているように見えます。F4まで絞るとかなり安定した描写となるので、状況によっては積極的に絞りたいところ。

35mm

広角・中間域と比べると明らかにボケのアウトラインが目立ちます。絞ると改善するので、意識的に少し絞って撮影したほうが良さそう。

40mm

基本的に35mmと同じ傾向が続きます。

ボケ実写

20mm

20mmと短い焦点距離ですが、接写性能とF2.8を活かすことでボケを大きくすることが可能。接写時は背景をしっかりとぼかすことができ、後ボケの大部分は滑らかで綺麗に見えます。玉ボケのテストでも判明しているように、周辺部のボケにはアウトラインが付きやすく、実写でも同様の傾向があるように見えます。ボケは少し小さくなりますが、F4まで絞るとことで周辺部の描写が改善します。

撮影距離が長くなると、騒がしく見えるボケの領域が広くなります。それでも色収差や口径食などはよく抑えられており、極端に悪目立ちする描写ではありません。騒がしいと感じた場合は少しだけ絞ってみると改善する可能性あり。

被写体との距離がさらに離れると、当然ながらボケは小さくなります。ボケも決して滑らかで綺麗とは言えませんが、ボケが小さいので悪目立ちする可能性は低い。

40mm

広角側と比べるとアウトラインが強調されたボケ質ですが、見苦しい描写ではなく、(シャボンボケのようで)これはこれでアリなのかなと。もしも気になる場合はF4まで絞ると大きく改善します。

撮影距離が少し長くなっても同様の傾向が続きます。絞ることで改善するので、安定感のある描写とも言えそう。これと言って悪目立ちする要素は無く、特殊な小型軽量のF2.8ズームと考えると評価できる質感

ボケ描写に滑らかさは微塵もありませんが、色収差や玉ねぎボケはよく抑えられています。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、絞り開放で撮影した結果が以下の通りです。

20mm

全身をフレームに入れた場合にボケを得るのは難しい。多少ボケた感じも得られますが、環境ポートレートとなりそう。上半身くらいまで近寄ると、背景が徐々にボケ始めます。被写体を背景から分離したいのであれば少なくともバストアップか顔のクローズアップまで近寄る必要あり。

40mm

20mm F2.8と異なり、全身をフレームに入れも多少のボケを得ることが可能。ただし、被写体を背景から分離するほどではなく、そのような場合は膝上・上半身くらいまで近寄りたいところ。バストアップまで近寄ると十分なボケ量を得ることができます。

今回のまとめ

単焦点レンズ並みとは言えないものの、特殊なズームレンジの小型軽量なF2.8ズームとしては良好なボケ描写に見えます。ズーム全域で悪目立ちする領域はほとんどなく、玉ねぎボケや口径食がよく抑えられているのはGood。

広角域でも接写性能とF2.8を活かすことで十分なボケ量を得ることができ、似たようなズームレンジの競合他社よりも柔軟性の高い表現が可能となっています。小型軽量で扱いやすいので、大胆なアングルやクローズアップも比較的容易に撮影可能。

40mmを使えば撮影距離が少し長くなっても十分なボケを得ることができます。これは一般的な16-35mm F2.8と一線を画す使い勝手の良さなのかなと思うところ。個人的には「40mm F2.8」を常用して、状況に応じて20mmまでのズーム域を活用すると良い感じでした。

購入早見表

20-40mm F/2.8 Di III VXD
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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