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50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.4 諸収差編

タムロン「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。

50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDのレビュー一覧

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

50mm

レンズ補正をオフにした状態(RAWには強制的に補正が適用されるので「オフ」のJPEGを使用)でも倍率色収差は極僅かで無視できる範囲内に収まっています。コントラストの高い状況で四隅をよく見ると色ずれを確認できるかもしれませんが、そのような場合も代償少なく簡単に補正することが可能。

100mm

50mmよりも色収差は少なくなっているように見えます。

200mm

6100万画素のα7R IVと組み合わせても色ずれはほぼありません。

300mm

200mmと同じく非常に良好な状態。

400mm

基本的には200mmや300mmと同じく補正無しでも無視できる範囲内に収まっています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

50mm

軸上色収差は極僅かで、とても良好に補正されています。前後のボケ質をよく見てみると、後ボケが柔らかく、前ボケが硬めの描写。滲むような後ボケで色づくことはまずないと思われ、仮に硬い前ボケに色づきが発生したとしても最小限だと思われます。

100mm

50mmと同じく非常に良好な補正状態です。ゼロではありませんが、ゼロに近いパフォーマンス。

200mm

広角側と同じく非常に良好な補正状態です。

300mm

望遠側でも良好な補正状態が続いています。

 

400mm

望遠端まで特に問題はありません。

球面収差

50mm

前後のボケ質に大きな変化はありませんが、僅かに描写の違いがある模様。ボケが大きい場合でも同様の傾向が続きます。

200mm

基本的には広角端と同じ。ボケが小さい場合はアウトラインが強調される可能性あり。

400mm

基本的には他の焦点距離と似たような傾向が続きます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

50mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

「広角端だから樽型だろう」と思いきや、かなり目立つ糸巻き型歪曲が残っています。人工物など直線的な被写体が周辺部に入る場合はレンズ補正やプロファイルを適用して歪曲収差を補正するのがおススメ。樽型と違って四隅の引き延ばしが発生しないため、積極的にレンズ補正を利用したいところ。

100mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

「ズーム中間域だから歪曲収差も低下するだろう」と思いきや、50mmよりも顕著な糸巻き型歪曲となります。手動補正にはLightroomで「-11」程度の補正量が必要。やはり補正をオフにして撮影するメリットはあまり無いと言えるでしょう。

200mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

100mmと同じく強めの糸巻き型歪曲。レンズ補正で綺麗に修正可能なので、極力プロファイルを利用した補正がおススメです。

300mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

広角側や中間域と同じく強めの糸巻き型歪曲が発生。やはりレンズ補正はオンにして撮影するのがおススメです。

400mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

望遠端まで目立つ糸巻き型歪曲が残っています。この結果、ズーム全域で目立つ糸巻き型歪曲が確認できたので、レンズ補正で歪曲収差を積極的に補正しておきたいところ。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

50mm

絞り開放から影響は僅かで、実写で問題と感じるシーンは少ないはず。

100mm

50mmと同じくコマ収差の影響は小さいように見えます。

200mm

広角側と比べると放射方向のフレアが少し強くなったようにも見えますが、それでも影響は軽微で問題とは感じません。

300mm

広角・中間域と比べると少し影響が強くなり、状況によっては少し目に付くかもしれません。

400mm

300mmと同様に見えます。

まとめ

倍率色収差や軸上色収差はどちらも良好に補正されています。「APO」と冠するほど完璧な補正状態ではありませんが、それでも実写で追加の補正が必要と感じるほどの収差が発生する機会は少ないはず。絞り開放からコントラストの高いピント面が得られます。

このような暗い(開放F値が大きい)レンズで絞るとISO感度やシャッタースピードに負担がかかるので、絞り開放を安心して使うことができるメリットは大きい。解像性能をはじめ、補正の難しい軸上色収差を良く抑えているのは強みと言えるでしょう。

諸収差で注意すべき点があるとすれば歪曲収差。ボディや現像ソフトで簡単に補正可能ですが、無補正のRAWには非常に目立つ糸巻き型歪曲がズーム全域で残っています。レンズプロファイルを利用できないRAW現像ソフトウェアを使用している人は手動での補正が必須。

コマ収差や非点収差の補正は完璧とは言えないものの、実写で問題と感じたことはありません。絞り開放で木漏れ日を四隅に配置する場合は点光源の変形が発生するかもしれませんが、それでも悪目立ちすることは無いでしょう。

全体的に見て、高倍率ズームレンズとしては良好な補正状態を維持しています。歪曲収差は自動補正に依存しているものの、それ以外で不満と感じるポイントはありません。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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