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50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.5 ボケ編

タムロン「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」のレビュー第五弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDのレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

軸上色収差のテストでも判明しているように、後ボケが少し滲みを伴う柔らかい描写で、逆に前ボケは少し硬めの描写。望遠レンズは前ボケが入る機会も多く、この辺りの匙加減を好むかどうかは個人差があるはず。とは言え、基本的には後ボケを入れる機会のほうが多くなると思われ、多くの撮影シーンで滑らかな後ボケを期待できます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

50mm

「50mm F4.5」と明るくないレンズですが、ハーフマクロの接写性能を活かすことで大きなボケを得ることが可能。隅に向かって口径食の影響が見られるものの過度ではなく、気になる場合はF8くらいまで絞ると改善します。玉ねぎボケの兆候は無く、ズームレンズとしては良好な描写。

100mm

50mmと同じく口径食や色収差の影響を抑えた扱いやすい玉ボケに見えます。単焦点レンズほど心地よい見栄えではないものの、悪目立ちすることは無いはず。

200mm

広角側と同じく、ズームレンズとしては使い勝手の良い描写が続きます。

300mm

広角側や中間域と比べると口径食が少し強くなります。2段ほど絞ると改善しますが、ボケや露光で妥協が必要となるので妥協点を見つける必要あり。

400mm

300mmよりも口径食の影響が強くなっているように見えますが、玉ボケそのものは滑らかで綺麗。

ボケ実写

50mm

少なくとも接写時は周辺部まで概ね良好で、滑らかな後ボケを得ることが出来ます。隅の玉ボケに少し騒がしさを感じるものの、これが悪目立ちすることはほぼ無いでしょう。1~2段絞っても同程度の描写を維持していますが、絞り過ぎるとボケのアウトラインが強調されてしまうので注意が必要です。

200mm

50mmと同じく良好な後ボケが得られます。高倍率ズームのボケとしては評価できる描写。

400mm

400mmでも高い撮影倍率を維持しているので、当然ながらボケはかなり大きくなります。小絞りでもボケ質に欠点はほとんど感じません。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、30mm F6.3で撮影距離を変えながら作例を撮った写真が以下の通り。

50mm

50mm F4.5は被写界深度が深く、被写体を背景から分離できるほどのボケを得ることが難しいです。特に全身をフレームに入れるような撮影距離ではボケがかなり小さくなります。ただし、膝上、上半身くらいまで近寄るとボケが十分に大きくなり、バストアップで被写体が完全に背景から分離。顔のクローズアップでは背景の輪郭が分かりにくくなるほどのボケが得られます。ボケ質は単焦点と比べる様な質感ではありませんが、高倍率ズームレンズとしては健闘している印象。

150mm

焦点距離が長くなると、暗い開放F値でも背景から被写体が浮かび上がる程度にはボケを得ることが可能。この際のボケ質は拡大すると少し騒がしく見えるかもしれませんが、パッと見た限りでは特に問題が無いように見えます。上半身くらいまで近寄ると十分なボケ量が得られ、顔のクローズアップでは背景の情報を溶かすことができます。

400mm

400mmならばF6.3でも非常に大きなボケを得ることが出来ます。ただしワーキングディスタンスが長くなるので、遮蔽物や背景の処理が難しくなる可能性あり。撮影距離が長い場合のボケ質は単焦点レベルとは言えませんが、接写時は欠点が薄くなり、綺麗なボケが得られているように見えます。

まとめ

望遠レンズと言えばボケのアウトラインが強調されやすく、騒がしい描写となりがち。特に高倍率で設計が複雑な本レンズのボケには期待していませんでした。しかし、実写では思っていたよりも騒がしさが目立たず、このクラスとしては非常に扱いやすい描写を実現しているように見えます。

単焦点と同水準とは言いませんが、撮影距離が長い場合でも滑らかで、単焦点に近い描写と感じる場合はあります。光学8倍の高倍率望遠ズームレンズとして驚いたポイント。

ボケの傾向はズーム全域で一定で、騒がしくなりそうな50mmでも良好な描写を維持しています。もちろん「50mm F4.5」で大きなボケを期待することは出来ませんが、持ち前の接写性能で被写体に十分に近寄ることでボケを大きくすることは可能。望遠ズームでボケを重視するのであれば、個人的にはおススメしやすい一本。

購入早見表

50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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