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M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO レンズレビュー 近距離解像編

OMデジタルソリューションズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO 」のレビュー第三弾を公開。今回は恒例の解像力チャートを使った解像性能のテストを実施しています。

まえがき

2021年6月に登場したオリンパス「M.ZUIKO PRO」シリーズ12本目となるレンズ。
カバーしている焦点距離が「8-25mm(35mm判換算 16-50mm)」と特殊で、「望遠端が伸びた広角ズーム」なのか「ズームレンジが広角側にずれた標準ズーム」なのか判断に迷うところ。公式ウェブサイトでは「高倍率ズーム」のカテゴリですが、光学倍率は「12-40mm F2.8 PRO」よりも小さい。このことから「光学2倍の7-14mm F2.8 PROと比べて高倍率の広角ズーム」と考えているのかもしれませんね。

概要
レンズの仕様
マウント MFT 最短撮影距離 0.23m
フォーマット 4/3 最大撮影倍率 0.07倍
焦点距離 8-25mm フィルター径 72mm
レンズ構成 10群16枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F4 テレコン -
最小絞り F22 コーティング ZERO
絞り羽根 7枚 フッ素C 対応
サイズ・重量など
サイズ φ77×88.5mm 防塵防滴 対応
重量 411g AF STM
その他 L-Fn・フォーカスクラッチ
付属品
キャップ・フード・ラッピングクロス・説明書・保証書

やはり特徴は超広角8mmから標準25mmまでをカバーするズームレンジ。超広角と標準ズームを兼ね備え、特に旅行や風景写真などで活躍が期待できます。レンズを交換できないような悪天候でも広角?標準を使うことができたり、「広角+標準」と「望遠」の2台体制でシステムを組みやすくなりました。Vlogなど動画撮影でも使い勝手の良いズームレンジですね、
ただし、開放F値がF4固定のため、ボケを大きくしたり、屋内や低照度での撮影は苦手となる。


レンズサイズは12-45mm F4 PROよりも大きく、12-100mm F4 PROや7-14mm F2.8 PROよりも小さい。12-40mm F2.8 PROとよく似ていますが、このレンズは沈胴式ズームを採用しているので使用時にレンズが伸びる点には注意が必要です。中には「8-18mm F4」で12-45mm F4並のサイズと価格を実現して欲しかったという人もいるはず。

レンズ格納時は縮長が短く携帯性が優れているものの、使用時は内筒が大きく伸びる。この際の全長は12-100mm F4 PROの縮長と同程度となるので、決して常時コンパクトなレンズではありません。
そして沈胴機構のため、収納から撮影まで「沈胴構造を展開する」ひと手間が加わります。レスポンスが求められるスナップなどの撮影シーンでは、この沈胴構造の手間により、ほんのちょっとしたシャッターチャンスを撮り損ねてしまう可能性あり。

悩ましいのはパナソニック「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0?ASPH.」の存在。こちらはオーソドックスな広角ズームレンズですが、広角側の開放絞りが「F2.8」と明るく、実質的にインナーズームで使いやすい仕様となっています。サイズは同程度で、比較して軽い。価格は同程度なので「広角レンズが欲しい」と考えているのであれば要検討。私も以前に使っていました。良いレンズだと思います。

レンズは10群16枚構成のうちDSAレンズ1枚,EDAレンズ2枚,スーパーEDレンズ1枚,EDレンズ1枚,スーパーHRレンズ1枚,HRレンズ2枚,HDレンズ1枚を採用。レンズ構成中の半分以上に特殊レンズを使用する贅沢な作り。MTFを見る限り8mmの隅以外は良好なパフォーマンスを維持している模様。

PROシリーズらしく防塵防滴に対応。オリンパスらしい、悪天候への高い耐性が期待できます。伸びるズームレンズですが、これまでのPROシリーズの実績を考えると特に大きな問題はないはず。
さらにこれまで採用レンズがゼロだったフッ素コーティングをレンズ最前面に採用。撥水・撥油性のあるコーティングであり、従来のレンズと比べてメンテナンスしやすいのはGood。

価格のチェック

売り出し価格は12万円台。7-14mm F2.8 PROよりも安いですが、12-45mm F4 PROや12-40mm F2.8 PROと比べるとかなり高い。特に12-45mm F4 PROと同程度の価格を期待していた人にとって受け入れがたい値付けと感じるかもしれません。個人的にレンズの特殊性を考えると無くは無い価格設定なのかなと。

この価格設定が適切と感じるかどうか、これからチェックしていきたいと思います。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:OM-D E-M1 Mark III
  • 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

8mm

中央

絞り開放から非常に良好な性能を発揮。絞りによる改善は小さく、回折の影響が始まるF8までは安定したパフォーマンスを期待できます。ハイレゾショットによる伸びしろは大きい。F8以降は回折による性能低下が顕著で、特にF22はかなりソフトな描写となる。

周辺

接写時の性能低下が顕著であり、絞り開放がかなりソフト。絞ると徐々に改善するものの、数値上の伸びしろは僅かで、ハイレゾショットでしっかりとした数値が測定できるようになるのはF8から。

四隅

周辺と比べてさらに描写が不安定となる。やはり絞ると安定するものの、数値は伸び悩む。さらにハイレゾショットでは残存収差や歪曲収差の補正が影響してコントラストが低く測定不能。

数値で確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3188 2229 1975
F5.6 3421 2490 2219
F8.0 3126 2700 2276
F11 2851 2517 2276
F16 2385 2096 1781
F22 1763 1659 1492
実写で確認

10mm

中央

8mmと同じく中央は非常に良好なパフォーマンスを発揮。絞りによる改善効果は無く、実質的にF4がピークの性能。12-100mm F4 IS PROと同じく優れた性能と言えるでしょう。F8以降は数値が大きく低下するので、基本はF4?F8までで抑えたいところ。F8以降は被写界深度が必要な場合に使いたい。

周辺

8mmと同じく中央よりも像が甘くなる。絞っても数値上はあまり改善しないものの、実写作例を確認する限りF5.6?F8でコントラストが改善している。

四隅

やはりF4?F5.6が甘いので、出来ることならばF8まで絞ってしまいたいところ。以降は回折の影響があるので絞り値の自由度はかなり低い。

数値で確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3384 2572 2252
F5.6 3276 2625 2523
F8.0 3291 2758 2595
F11 2679 2545 2306
F16 2466 2039 1912
F22 1880 1640 1597
実写で確認

14mm

中央

相変わらず中央は抜群の性能を発揮。絞りによる改善は無く、F4がピークの性能。被写界深度の調整で絞ると良いでしょう。周辺や隅を向上させるためにF8まで絞りたいのが悩ましいところ。

周辺

広角側と同じくF4だと像が甘い。F8のピークに向かって徐々に改善するものの、見違えるような改善は期待できません。

四隅

広角側と同じく、やはり絞り開放付近の像がとても甘い。許容範囲内に達するためにはF8まで絞る必要がある。

数値で確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3519 2358 1815
F5.6 3519 2584 2275
F8.0 3141 2774 2607
F11 2892 2524 2441
F16 2494 2330 2053
F22 1873 1775 1609
実写で確認

18mm

中央

広角・中間域と比べるとパフォーマンスが少し低下する。それでも十分良好と言える解像性能であり、絞る必要は感じられない。

周辺

これまでとは打って変わって絞り開放から非常に良好。ただし、少し偏心と思われる兆候があり、今回の数値は最も良好な部位を掲載。

四隅

周辺部と同じ領域の部位を測定。結果は非常に良好で、均質性がとても高い。ハイレゾショットによる伸びも良く、満足のいく結果。

数値で確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3105 3531 2865
F5.6 3121 3318 3115
F8.0 3059 3168 3034
F11 2799 2785 2652
F16 2464 2386 2226
F22 1788 1834 1788
実写で確認

*偏心(もしくは手ぶれ補正によるイメージサークルのずれ)があるため測定部位と実写の切り抜き部位で結果に差があります。

25mm

中央

18mmと同じく、ピークの数値は広角・中間域ほどではないものの、顕著な性能低下は見られる良好な結果。ズームレンジ全域で特にこれと言った落ち込みが無いのは有難い。

周辺

18mmと同じく非常に良好なパフォーマンスを発揮。広角側のような像の甘さが無く、1段絞ることでコントラストがさらに少し改善する。

四隅

隅まで安定感のある画質で、絞り開放から実用的。やはり絞るとコントラストが少し改善する。

数値で確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3222 2884 2911
F5.6 3088 3025 3141
F8.0 3088 2812 2865
F11 2548 2710 2705
F16 2279 2199 2226
F22 1800 1773 1711
実写で確認

今回のおさらい

オリンパスのレンズは全体的に寄りやすいレンズが多く、近距離時の解像性能も良好な印象でした。しかし、今回テストしたこのレンズは接写時に周辺?隅のパフォーマンスが低下しやすく、特に広角側での低下が目立つ。もちろん広角レンズでの接写は撮影距離が短くなりやすく、オリンパスに限らず性能が低下する傾向があります。しかし、M.ZUIKO 12-100mm F4 IS PROの12mmと見比べても、8-25mm F4 PROの12mmのほうが甘い。全体的に撮影倍率は良好ですが、若干無理している部分があるのかなと。

広角側での接写時はパフォーマンスが低下するものの、より実用的な18mm、25mmの性能は非常に良好。クローズアップの撮影で特に心配する必要は無いでしょう。それに、広角側で接写する際に隅の解像性能を気にする必要は無いはず(画角と被写界深度の関係上、問題となるシーンは少ないと思います)。

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