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ニコン NIKKOR Z 40mm f/2 徹底レビュー ボケ編

ニコンNIKKOR Z 40mm f/2のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質や玉ボケの描写、撮影距離によるボケ質の変化についてチェックしています。

NIKKOR Z 40mm f/2のレビュー一覧

まえがき

2019年にロードマップに追加され、2021年3月に開発発表、そして同年9月に正式発表された小型軽量、そして低価格な40mm単焦点レンズ。F1.8レンズ群がハイグレードモデルへ移行してしまったため、今後はこのようなレンズがエントリー向けのいわゆる「撒き餌レンズ」になると思われる。

概要
レンズの仕様
マウント Z 最短撮影距離 0.29m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 0.17倍
焦点距離 40mm フィルター径 52mm
レンズ構成 4群6枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2 テレコン -
最小絞り F16 コーティング 不明
絞り羽根 9
サイズ・重量など
サイズ φ70×45.5mm 防塵防滴 配慮
重量 170g AF STM
その他 プラスチックマウント
付属品
レンズキャップ

全長45.5mm、重量170gと非常に軽いフルサイズミラーレス用レンズ。しかしながら、開放F値は「F2」と明るく、絞り羽根はこの価格帯で珍しい9枚羽根を採用。小型軽量・低価格の代償として、外装はレンズマウントを含めてプラスチック製で、コントロールはフォーカスリングのみである点には気を付けたい。

レンズ構成は4群6枚とシンプルながら、2枚の非球面レンズを採用。特に最後の1枚には大きな非球面レンズを採用しており、大口径Zマウントらしい光学設計と言える。さらに防塵防滴にも配慮した設計となっており、価格のわりにしっかりとしたデザイン。

レンズサイズはZ 28mm F2.8とよく似ているほか、Z 24-50mm F4-6.3と比べても同程度。Z MC 50mm F2.8は少しサイズが大きいものの、小型軽量なシステムを揃える上で貴重なマクロレンズの選択肢となっているように見える。

価格のチェック

売り出し価格はカメラのキタムラにて28,710円(税込)。これまでのZレンズを考慮すると非常にリーズナブルな価格設定であり、なんとDX用のキットズームよりも安い。一眼レフ時代の撒き餌レンズほど安くはないものの、フルサイズミラーレスの時代にこのような選択肢を用意してくれるのは有難い。

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前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写を確認

少なくとも近距離でボケを得やすいシーンでは前後のボケ質に大きな違いが見られる。後ボケが滲むように柔らかい描写となる一方で前ボケは硬調で騒がしくなりやすい。特に前ボケは僅かに残る軸上色収差と相まって「パープルフリンジ」のような形で問題となる可能性がある。後ボケにも緑色の色付きが見られるものの、滲むような描写で目立ちにくくなっている。

ボケ質は絞り値によっても多少変化があり、絞り開放で僅かに目に付く色収差はF2.8まで絞ると穏やかとなる。後ボケでも騒がしいと感じる場合は少し絞ったほうが良いかもしれない。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

まず驚いたのは口径食の少なさ。小型軽量な明るい標準レンズにも関わらず、隅まで玉ボケへの影響が少なく、ほぼ円形を保っているのは凄い。隅に向かってボケが小さく見えないので、一般的なF2レンズよりもボケが大きく見える可能性あり。
レンズには2枚の非球面レンズが使われているものの、玉ボケ内側の描写は滑らかで綺麗。Z 50mm F1.8 Sと見比べても遜色ないレベル。非球面レンズの研磨精度が非常に高いのか、PMo非球面レンズなのか?どちらにせよ、ボケは綺麗で満足のいくレベル。

縁取りは僅かにあるが目立たず、コントラストが高い状況でも色収差はすくないように見える。F2.8まで絞ると僅かに絞り羽根の形状が見えるものの許容範囲内。F4まで絞るとハッキリ角ばるので好みが分かれるかもしれない。ただし、絞っても玉ボケの内側は綺麗で、悪目立ちすることはない。F8~F11まで絞ると内側の描写が粗くなってくるものの、ボケが小さくなるので結果的に目立つことは少ないはず。

ボケ実写

接写

やはり接写時は球面収差の影響もあり、後ボケが滲むように柔らかな描写となる。さらに隅の口径食が小さいので、周辺部まで画質が良く維持されている。玉ボケ自体の描写も美しく、特にこれと言って欠点は見られない。F2.8まで絞ると球面収差が弱くなり、F4で解消する。接写時にピント面をシャープに、高コントラストに撮影したい場合はF4まで絞るのがおススメ。ただ、個人的にバランスが良いのはF2.8だと感じる。

近距離1

少し撮影距離を長くして再テスト。当然ながらボケが小さくなると共に、周辺部から隅にかけて描写が粗っぽくなる。特にハイライトが隅に入ると状況によってかなり騒がしくなると思うので注意が必要。ただし、このような傾向はこのレンズに限ったことでは無く、手ごろな価格の「35mm F1.8」「50mm F1.8」のようなレンズでは一般的な傾向である。「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」など高価な50mm F1.8クラスになると、隅のボケ質が向上しているモデルが多い。この辺りは手ごろな価格の標準レンズにおける妥協点。
改善方法はレンズを絞ること。F2.8-F4まで絞るとボケ描写の均質性が高まり、隅の騒がしさが無くなる。ただ、ボケは小さくなるので、状況によって絞り値を調節する必要がある。

近距離その2

「その1」からさらに撮影距離を長くしてテスト。やはり、絞り開放は周辺部の広い範囲で騒がしい描写となる。非球面レンズの粗や色収差が目立ちにくいのは幸いだが、コントラストが高い状況では少し絞ったほうが落ち着きのあるボケ描写となる可能性あり。個人的にはF2.5?F2.8が良い落としどころ。

撮影距離による変化

全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影。全身をフレームに入れてもボケを得ることは可能。ただし、背景からハッキリと分離することは出来ないように見える。膝上・上半身くらいまで近づくことで背景を十分にぼかすことが可能。ただし、周辺部や隅の描写が荒れやすいので気を付けたい。バストアップ・顔のクローズアップまで近づくと、大きなボケを得ることが可能。隅はまだ騒がしい場合があるものの、絞りで調整しやすくなるので問題とはならない。

今回のおさらい

小型軽量な40mmながら、開放F値がF2と明るくボケが大きくしやすい。さらに接写時は球面収差の影響で非常に柔らかい後ボケが得られるレンズ。高解像・高コントラストなZレンズが多い中にあって、一息つけるような穏やかな描写がとても良い。似たようなサイズのソニー「FE 40mm F2.5 G」ほど高い光学性能では無いものの、これはこれでアリ。それに絞ればピント面はそれなりにシャープとなる。

撮影距離を少し長くすると、ボケは騒がしくなるものの、ピント面は絞り開放からまずまずシャープな描写となる。絞りや撮影距離で表情が変わるので、レンズ一本でぶらっと撮影しても飽きが来ない描写と感じる。安定した撮影結果が欲しい場合はS-Lineを使うべきだが、気軽に撮り歩きたいのであれば、このくらいのレンズがちょうどいいかもしれない。

40mmの適度な画角と、F2の開放F値を組み合わせることで、風景写真でも前ボケを入れやすい。50mmだと画角が狭すぎ、35mmだと前ボケを入れにくいので、40mmの焦点距離は絶妙と感じる。競合他社にも40mmレンズはいくつか存在するものの、F2の開放F値はありそうでなかったスペックのAFレンズ。

40mmの画角を気軽に味わってみるには丁度いいエントリーレンズと言えそう。このレンズで40mmに魅力を感じたのであれば、アダプター経由で「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical SE」などを使ってみるのも一興かもしれない。

購入早見表

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作例

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