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ニコン NIKKOR Z 40mm f/2 徹底レビュー 完全版

このページではニコン NIKKOR Z 40mm f/2のレビューを掲載しています。

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 3万円以下の手ごろな価格
サイズ 小型でAPS-Cとも相性が良い
重量 軽量でAPS-Cとも相性が良い
操作性 シンプルだが良好
AF性能 抜群では無いが全体的に良好
解像性能 接写時に低下しやすい
ボケ 接写時の後ボケが良好
色収差 価格を考慮すると高水準
歪曲収差 ほぼ問題なし
コマ収差・非点収差 絞り開放付近は問題あり
周辺減光 無限遠側で目立つ
逆光耐性 まずまず良好
満足度 新世代の撒き餌レンズ

評価:

管理人
管理人

NIKKOR Z S-Lineと比べて光学性能は決して高いと言えない。しかし、程よくバランスの取れた光学性能に加え、手ごろな価格設定で小型軽量なレンズサイズを考慮すると、キットレンズからのステップアップに丁度良い、おススメしやすいレンズ。新世代撒き餌レンズ。

NIKKOR Z 40mm f/2のレビュー一覧

まえがき

2019年にロードマップに追加され、2021年3月に開発発表、そして同年9月に正式発表された小型軽量、そして低価格な40mm単焦点レンズ。F1.8レンズ群がハイグレードモデルへ移行してしまったため、今後はこのようなレンズがエントリー向けのいわゆる「撒き餌レンズ」になると思われる。

概要
レンズの仕様
マウント Z 最短撮影距離 0.29m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 0.17倍
焦点距離 40mm フィルター径 52mm
レンズ構成 4群6枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2 テレコン -
最小絞り F16 コーティング 不明
絞り羽根 9
サイズ・重量など
サイズ φ70×45.5mm 防塵防滴 配慮
重量 170g AF STM
その他 プラスチックマウント
付属品
レンズキャップ

全長45.5mm、重量170gと非常に軽いフルサイズミラーレス用レンズ。しかしながら、開放F値は「F2」と明るく、絞り羽根はこの価格帯で珍しい9枚羽根を採用。小型軽量・低価格の代償として、外装はレンズマウントを含めてプラスチック製で、コントロールはフォーカスリングのみである点には気を付けたい。

レンズ構成は4群6枚とシンプルながら、2枚の非球面レンズを採用。特に最後の1枚には大きな非球面レンズを採用しており、大口径Zマウントらしい光学設計と言える。さらに防塵防滴にも配慮した設計となっており、価格のわりにしっかりとしたデザイン。

レンズサイズはZ 28mm F2.8とよく似ているほか、Z 24-50mm F4-6.3と比べても同程度。Z MC 50mm F2.8は少しサイズが大きいものの、小型軽量なシステムを揃える上で貴重なマクロレンズの選択肢となっているように見える。

価格のチェック

売り出し価格はカメラのキタムラにて28,710円(税込)。これまでのZレンズを考慮すると非常にリーズナブルな価格設定であり、なんとDX用のキットズームよりも安い。一眼レフ時代の撒き餌レンズほど安くはないものの、フルサイズミラーレスの時代にこのような選択肢を用意してくれるのは有難い。

NIKKOR Z 40mm f/2
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NIKKOR Z 40mm f/2 SE
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

ニコンZシリーズらしく黒を基調として黄色のブランドカラーを使用したシンプルなデザイン。側面にはレンズのフィルター径(52mm)や付属品などが記載。レンズ本体は段ボールで間仕切りされ、薄手の緩衝材に包まれている。同梱品はレンズキャップと説明書・保証書のみ。レンズフードは同梱していないうえ、特に別売り品として用意されているわけでも無いので、必要であれば社外製52mmフードを探す必要がある。

外観

外装はレンズマウントを含めてプラスチック製。金属パーツと比べて質感は見劣るものの、手に取った際の感触はとても良好で、安っぽいプラスチック感は全くない。フォーカスリングは硬質ゴム製で、プラスチック製リングよりも質感は良い。

全体的に装飾が少なく、ニコンZレンズらしい飾り気のないデザイン。部分的に古いZレンズと比べて意匠に変更があり、従来は側面に配置されていた「NIKKOR」のロゴが正面のレンズ名上部に移動している。その他にはCEマークやシリアル番号、製造国などを確認できる。ちなみに製造国はタイ。

ハンズオン

フルサイズ用の40mm F2レンズとしては小型軽量なレンズ。全長は45.5mmと抑えられているものの、直径は大口径ニコンZマウントらしくφ70mmと大きめ。とは言え、重量は170gと軽量で、携帯性・収納性の良いレンズに違いはない。
前述した通り、プラスチック製レンズながらビルドクオリティはとても良好。フルサイズZレンズの中で最も安いレンズとは感じない。

前玉・後玉

直径25mmにも満たない小さな前玉の周囲には52mmのフィルターソケットを配置。前玉にフッ素コーティング処理が施されている記述は確認できないので、水滴や汚れが付着する撮影シーンではプロテクトフィルターを装着しておきたいところ。また、保護性を高めるレンズフードも用意されていないので、ダメージを避けるためにもフィルターの重要性は高い。

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前述した通り、このレンズに対応するレンズフードはニコンからリリースされていない。このため、レンズフードが必要な場合は独自に探す必要がある。この種の52mmフードはキヤノンEF・RFレンズ用のコンパクトなレンズフードが適合するほか、社外製レンズフードもいくつか出回っている。私はEFレンズ用のF-Foto製フードをいくつか持っていたので装着してみたところ、問題なく使うことが出来た。

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レンズマウントはプラスチック製。しっかりとした作りで堅牢性に不安は感じないが、長期的な使用でどれほど摩耗するのかは使ってみないと分からない。また、防塵防滴に配慮した設計となっているが、マウント周囲にシーリングは施されていない。その代わりに、水滴やゴミの侵入を防ぐための硬質カバーが備わっている。後玉はマウント面ギリギリに配置、周囲はフレアカッターで不要な光の対策が施されている。

フォーカスリング

幅17mmの硬質ゴム製フォーカスリングは適度な抵抗で滑らかに回転する。ピントの移動量はリングの回転速度に依存しており、素早く回転するとピント全域を約90度のストロークで操作可能。逆にゆっくりと回転する場合は1回転を超える操作が必要となる。
個人的に、素早く回転した際の移動量が大きすぎる。せめて180度くらいのストロークは確保しておいてほしかった。

レンズフード

前述した通り、社外製レンズフードを探す必要がある。私はキヤノンレンズ用にF-Fotoの52mmレンズフードをいくつか持っていたので装着してみたところ、問題なく使うことが出来た。

装着例

APS-C ZカメラのZ fcに装着してもバランスは良好。もちろんフルサイズZカメラとの相性も良い。コントロールリングやAF/MF切替スイッチが無いのでボディ側で操作する必要があり、ボタン数が少ないカメラだと操作性が悪いと感じるかもしれない。

AF・MF

フォーカススピード

このレンズはフォーカス駆動にステッピングモーターを使用。静かで滑らかなフォーカスが可能であり、フォーカススピードも十分速い。電光石火と言うにはワンテンポ遅いものの、大部分の被写体で十分なフォーカス速度と感じるはず。また、一般的な撮影距離であれば電光石火に近いフォーカス速度と感じるはず。この価格帯の標準レンズとしては評価したいポイント。(他社はDCモーターや繰り出し式フォーカス構造のレンズが多い)
AF-Cの追従速度も十分良好で、カメラ側のパフォーマンスが向上することでさらに改善する可能性を感じる。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

このレンズは接写時に画角が少し広くなり、無限遠で少し狭くなる。全体的にフォーカスブリージングは良く抑えられており、よほど素早くピントを移動しない限り画角の変化が目立つことは無い。ニコンはZレンズでこの特性を良く抑えており、このZ 40mm F2も例外ではないらしい。
この特性は主に動画撮影で長所となるものの、一般的な静止画のフォーカスでも目障りな画角変化が無いぶん撮影体験は良好と言える。

精度

Z 7と組み合わせた限りでは良好な精度でフォーカスする。再現性も良好で、特に不安定な印象は受けない。

MF

フォーカスリングのストロークが素早く回転すると90度と短く、精度を出すにはゆっくりと回転させる必要がある。個人的にこれが少し不便と感じており、できれば180度くらいのストロークが欲しかったところ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 7
  • 交換レンズ:NIKKOR Z 40mm f/2
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

接写時は球面収差や軸上色収差の影響が見られる。コントラストのピークと解像性能のピークにズレがあるように見え、解像度を優先すると下の作例のようにコントラストが低下する。解像性能はS-Lineのように「絞り開放からシャープ」とは言えないので、ピークの性能を得るには1~2段は絞ったほうが良い結果を期待できる。絞ることによりコントラストとシャープネスがどちらも向上する。ただしF4以降は大きな変化が無いので、被写界深度に問題が無ければF4を選びたいところ。パフォーマンスはF8?F11まで継続し、F16のみ回折の影響で低下する。

周辺

中央と同じく絞り開放の画質は少しソフトで、さらに中央と異なり非点収差のような像の流れもあり解像感は低い。絞り開放はパッとしない画質なので、1段絞っても甘さは残る。このため、ベストを尽くすのであれば少なくともF4まで絞って撮影したい。F5.6?F8でさらに少し改善するものの、顕著に改善するわけでは無く、最後まで中央との画質差は残る。

四隅

周辺部と比べてさらに画質が悪化。特に絞り開放は非点収差のような像の流れが強く、解像性能を重視した場合は実用的な画質と言えない。絞ると徐々に改善するが、満足のいく画質を得るためにはF5.6~F8まで絞ってしまいたいところ。絞ることで周辺部の画質に近づくが、比較して若干甘く、均質性は高くない。絞った際のパフォーマンスはガウスタイプの古い標準レンズのほうが良いかもしれない。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.0 3100
F2.8 3702 3259
F4.0 4485 3023 2166
F5.6 4485 3496 2763
F8.0 4341 3472 2951
F11 4323 3419 2820
F16 3679 3294 2894

実写確認

基本的にこのレンズは接写時の解像性能が良好とは言えず、被写体をシャープに写したいのであればフレーム中央に配置するのがおススメ。もしも周辺や隅に配置する場合、F2.8~F4まで絞っておくと許容範囲内のシャープネスを得られる可能性がある。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2021-10-1:くもり:風強め
  • カメラ:Z 7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:絞り優先AE・ISO 400
  • RAW出力:14bit
  • 現像:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ

テスト結果

中央

絞り開放から良好な性能だが、細部を確認すると僅かに甘い。とは言え満足のいく水準であり、シャープネスの設定次第で良好な画質となるはず。F2.8まで絞ると、わずかに残っていた甘さが無くなり、全体的にコントラストが改善する。もしも高画素機でシャープな結果を得たいのであれば、少なくともF2.8までは絞りたいところ。以降の絞り値で大きな変化は見られない。
パフォーマンスはF11付近まで持続し、F16は回折の影響でシャープネスの低下が見られる。とは言え、回折の影響は許容範囲内であり、絞り値全域で実用的な画質以上の結果を期待できる。

周辺

中央と見比べて大きな差異はない、良好な解像性能を発揮。ただし、中央と同じく絞り開放は少しコントラストの低下が見られる。ベストを尽くすのであれば、少なくとも1段は絞っておきたい。F2.8まで絞るとコントラストが大きく改善し、F4まで絞ると画質のピークに到達しているように見える。それ以降はF11までピークの性能を維持し、F16で回折の影響を受け低下する。

四隅

周辺減光が目立つものの、解像性能はまずまず良好で、極端な像の流れや甘さは見られない。絞ると、徐々に光量落ちと解像性能が改善し、解像性能はF4で、光量落ちの改善はF5.6でピークを迎える。以降はF11付近まで良好なパフォーマンスを発揮し、F16も実用的な画質となっている。

一覧

絞り開放からピークのキレのある画質とは言えないものの、全体的に良好な解像性能であることに間違いない。ただし、少し絞ったほうがシャープネスと光量落ちについて改善が期待できるので、絞れる状況であればF4~F5.6まで絞るのがおススメ。

撮影倍率

最短撮影距離は0.29m、この際の撮影倍率は0.17倍となる。高い撮影倍率ではないものの、程よく寄りやすく、不便は感じないと思う。ただし、Z 28mm F2.8と異なり、フローティングフォーカス構造では無いので、接写時の解像性能はあまり期待しないほうが良いかもしれない(特に周辺部や隅)。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

近接撮影時は、フレーム周辺部に向かってピントの山が僅かに近側へ移動しているように見える。とは言え、極端な影響では無く、撮影距離が長くなるにつれて問題は小さくなる。特に心配する必要は無い。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

色収差を補正するEDレンズなどは使用していないものの、良好な補正状態に見える。絞り値全域で等倍まで拡大しても目立つ色収差は確認できない。ただし、ゼロでは無いので、コントラストが強いシーンでは僅かに目に付く可能性がある。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

倍率色収差と同じく、比較的シンプルな光学設計のレンズとしては良好な補正状態。倍率色収差と同じく、ゼロでは無いので、コントラストが強いシーンでは目立つ可能性あり。球面収差も残っており、接写時は後ボケが滲むように柔らかな描写となり、一方で前ボケは硬調となる。この結果、実写で収差が発生する可能性があるとしたら、硬い前ボケの縁に色収差が濃く現れる可能性が高い。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写を確認

少なくとも近距離でボケを得やすいシーンでは前後のボケ質に大きな違いが見られる。後ボケが滲むように柔らかい描写となる一方で前ボケは硬調で騒がしくなりやすい。特に前ボケは僅かに残る軸上色収差と相まって「パープルフリンジ」のような形で問題となる可能性がある。後ボケにも緑色の色付きが見られるものの、滲むような描写で目立ちにくくなっている。

ボケ質は絞り値によっても多少変化があり、絞り開放で僅かに目に付く色収差はF2.8まで絞ると穏やかとなる。後ボケでも騒がしいと感じる場合は少し絞ったほうが良いかもしれない。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

まず驚いたのは口径食の少なさ。小型軽量な明るい標準レンズにも関わらず、隅まで玉ボケへの影響が少なく、ほぼ円形を保っているのは凄い。隅に向かってボケが小さく見えないので、一般的なF2レンズよりもボケが大きく見える可能性あり。
レンズには2枚の非球面レンズが使われているものの、玉ボケ内側の描写は滑らかで綺麗。Z 50mm F1.8 Sと見比べても遜色ないレベル。非球面レンズの研磨精度が非常に高いのか、PMo非球面レンズなのか?どちらにせよ、ボケは綺麗で満足のいくレベル。

縁取りは僅かにあるが目立たず、コントラストが高い状況でも色収差はすくないように見える。F2.8まで絞ると僅かに絞り羽根の形状が見えるものの許容範囲内。F4まで絞るとハッキリ角ばるので好みが分かれるかもしれない。ただし、絞っても玉ボケの内側は綺麗で、悪目立ちすることはない。F8~F11まで絞ると内側の描写が粗くなってくるものの、ボケが小さくなるので結果的に目立つことは少ないはず。

球面収差

テストした撮影距離では前後の大ボケに顕著な違いは見られない。ただし、小ボケ領域では後ボケと小ボケに僅かな描写に違いが表れている。また、解像力チャートや軸上色収差のテストからも分かるように、絞り開放における接写時はコントラストのピークと、解像性能のピークが少し異なっている、場合によっては絞ることによりピントの山がずれた様にみえるかもしれない。
非球面レンズを2枚使用しているものの、輪線ボケは目立ちにくい。良好な研磨状態だと思われる。作例を見ると分かるように、コントラストの強い部分に軸上色収差の影響が見られる。

ボケ実写

接写

やはり接写時は球面収差の影響もあり、後ボケが滲むように柔らかな描写となる。さらに隅の口径食が小さいので、周辺部まで画質が良く維持されている。玉ボケ自体の描写も美しく、特にこれと言って欠点は見られない。F2.8まで絞ると球面収差が弱くなり、F4で解消する。接写時にピント面をシャープに、高コントラストに撮影したい場合はF4まで絞るのがおススメ。ただ、個人的にバランスが良いのはF2.8だと感じる。

近距離1

少し撮影距離を長くして再テスト。当然ながらボケが小さくなると共に、周辺部から隅にかけて描写が粗っぽくなる。特にハイライトが隅に入ると状況によってかなり騒がしくなると思うので注意が必要。ただし、このような傾向はこのレンズに限ったことでは無く、手ごろな価格の「35mm F1.8」「50mm F1.8」のようなレンズでは一般的な傾向である。「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」など高価な50mm F1.8クラスになると、隅のボケ質が向上しているモデルが多い。この辺りは手ごろな価格の標準レンズにおける妥協点。
改善方法はレンズを絞ること。F2.8-F4まで絞るとボケ描写の均質性が高まり、隅の騒がしさが無くなる。ただ、ボケは小さくなるので、状況によって絞り値を調節する必要がある。

近距離その2

「その1」からさらに撮影距離を長くしてテスト。やはり、絞り開放は周辺部の広い範囲で騒がしい描写となる。非球面レンズの粗や色収差が目立ちにくいのは幸いだが、コントラストが高い状況では少し絞ったほうが落ち着きのあるボケ描写となる可能性あり。個人的にはF2.5?F2.8が良い落としどころ。

撮影距離による変化

全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影。全身をフレームに入れてもボケを得ることは可能。ただし、背景からハッキリと分離することは出来ないように見える。膝上・上半身くらいまで近づくことで背景を十分にぼかすことが可能。ただし、周辺部や隅の描写が荒れやすいので気を付けたい。バストアップ・顔のクローズアップまで近づくと、大きなボケを得ることが可能。隅はまだ騒がしい場合があるものの、絞りで調整しやすくなるので問題とはならない。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

極僅かな糸巻き型歪曲。補正無しでも十分良好だが、格納されているプロファイルを使用して補正することで歪曲収差を完璧に補正することが可能。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

実写で確認(最短撮影距離:無限遠)

今回掲載している作例で、上方が暗くなっているのはボディ内手ぶれ補正でイメージサークルの中心がわずかに上側にズレているためだと思われる。最短撮影距離でのテスト結果を確認すると、絞り開放の光量落ちが多少目立つ。多くのレンズで最短撮影距離の光量落ちが目立たないことを考えると、やや強めと言える。ただし影響は軽微であり、大きな問題とは感じない。

その一方で、無限遠の光量落ちは非常に強く、隅に向かってかなり暗くなる。フレーム周辺までフラットな明るさの撮影結果をイメージしているのであれば、強烈なヴィネッティング補正(周辺減光補正)が必要となる。カメラ内補正では足りない場合も多いので、現像時に手動で補正が必要となる場合がある。

これを味と捉えるか、欠点と捉えるかは人次第。しかし、さすがにこのレンズの無限遠における光量落ちは強すぎ、味があるにしても、くど過ぎる。絞ると大きく改善するので、絞りとヴィネッティング補正を併用するのが効果的。当然ながら、光量補正を強く適用すると、補正が適用される部分のノイズが強くなる。特に低照度での高ISO感度を使った時は補正とノイズのバランスに気を付けたい。

コマ収差・非点収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

絞り開放の周辺部において、点像再現性は良好と言えず、いくらか絞る必要がある。遠景解像の隅がやや甘いのはこれが原因かもしれない。当然、四隅のボケ質にも影響していると思われる。
この影響は絞ると劇的に改善し、F4までに問題はほぼ解消する。周辺部の点光源をはじめ、解像性能を重視する場合はF4まで絞っておくのがおススメ。

逆光耐性・光条

中央

NIKKOR Z S-Lineのレンズは逆光に強いモデルが多い。比較して、この手ごろな価格の単焦点レンズは、逆光時にフレア・ゴーストが少し目立ちやすい。手ごろな価格の単焦点レンズとしてはよくやっているように見えるものの、画質に大きく影響を与えるゴーストは避けられない。絞っても逆光耐性はあまり改善せず、寧ろフレアが顕在化するので避けるのが良し。

光源を中央に配置した場合と打って変わって良好な逆光耐性。絞り開放付近はフレア・ゴーストどちらも発生していない。絞るとわずかに光源から伸びる光条が発生し、周辺にフレアが発生するものの、大きな影響は見られない。

光条

この価格帯としては珍しく9枚の絞り羽根を採用。絞った際の光条は18本となる。F4まで絞ると既に光条の兆候が見られ、F11?F16でシャープな描写となる。同じく手ごろな価格の「NIKKOR Z 28mm f/2.8」と比べると綺麗な描写で個人的には好み。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • NIKKOR Zレンズで最も安い
  • 小型軽量
  • 良好なビルドクオリティ
  • 防塵防滴に配慮した設計
  • 滑らかなフォーカスリング
  • 十分高速で滑らかなAF
  • フォーカスブリージングが目立たない
  • まずまず良好な遠景解像性能
  • このクラスとしては良好な色収差補正
  • 接写時の滑らかなボケ
  • 玉ボケに口径食が目立たない
  • 歪曲収差が目立たない
  • まずまず良好な逆光耐性
  • 綺麗な光条

なんと言っても「NIKKOR Zレンズで最も安い」のは魅力的なポイント。手ごろな価格なので、キットレンズに追加する最初の一本として検討している人も多いと思う。リーズナブルな価格もさることながら、小型軽量で携帯性の良い「40mm F2」である点もGood。50mmよりも画角が少し広くて使いやすく、このクラスで一般的な「F2.8」よりも口径が大きく、大きなボケを得やすい。
肝心の光学性能はダブルガウスっぽさがあるものの、”必要な時は”十分シャープで、絞ればフレーム隅までしっかりと写る。また、接写時は球面収差の影響で後ボケが柔らかくなり、この価格帯としては良質な後ボケを得られるように見える。さらに色収差や歪曲収差はよく補正されており、これと言って目立つ弱点が無いのも強みと言える。

悪かったところ

ココに注意

  • レンズフードなし
  • プラスチック製レンズマウント
  • フォーカスリングのストロークが短い
  • 接写時の解像性能が低い
  • 無限遠の周辺減光が目立つ
  • コマ収差が目立つ

おそらく、実写で最も目立つのは無限遠側の周辺減光と、絞り開放付近で現れるフレーム周辺部のコマ収差。ただし、どちらも絞れば改善するので「ボケ以外で”F2”が必要なシーン」以外では問題ないと思う。例えば夜景や星空写真などで使う場合は注意が必要。それ以外で問題に遭遇する機会は少ないはず。その他の弱点として、接写時の解像性能が低下する点が挙げられるものの、このレンズで接写時に解像性能を求める人はそう多くないと思う。また、絞れば改善するので、状況によっては問題を回避することもできる。
また、人によってはプラスチック製のレンズマウントについて残念と感じるかもしれない。価格設定は決して「激安」とは言えないので、レンズマウントくらいは金属パーツを使用して欲しかった。そして、このレンズには対応するフードが存在しないので、自分でねじ込み式52mmフィルターを探す必要がある。

総合評価

満足度は90点。

光学性能を重視するのであれば、間違いなくS-Lineシリーズを手に入れるべきだが、小型軽量で手軽に使える標準単焦点レンズを探しているのであれば、面白い選択肢になると思う。全体的にパフォーマンスは良好ながら、絞りや撮影距離によって表情が変わるので、使いこなす楽しみがある。このような傾向は高性能なZレンズ群の中で貴重な存在。良い意味でも悪い意味でも個性がある。

全体的にプラスチッキーなビルドクオリティは否めないが、低価格のわりに思いのほかしっかりとした作り。マニュアルフォーカスリングの感触も良好であり、実際に使っていて不満は感じない。小型軽量なレンズであり、Z fcなどAPS-Cに装着して使うのも面白いと思う。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sと比べて

前述したように、サイズや価格を許容できるのであれば「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」が間違いなく高性能。特に撮影距離や絞り値による表情の変化が少なく、安定した描写を得たいのであればS-Lineのほうが適している。40mm F2の倍以上の価格だが、「高性能なZレンズ」を欲しているのであれば、価格差以上の価値を感じることが出来ると思う。

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