ニコン「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」のレビュー第六弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
IKKOR Z MC 50mm f/2.8のレビュー一覧
- ニコン NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.6 ボケ編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.5 周辺減光・逆光編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.4 諸収差編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
前後のボケ質にほとんど差が見られない、非常にニュートラルな傾向を示しています。滲むようなボケは期待できませんが、どちらも滑らかで使い勝手の良いボケを得ることができます。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
実写で確認
中央は円形ですが、隅に向かって口径食の影響を受けているようです。角のある楕円形となるので見栄えはよくありません。また、玉ボケにはやや強めの縁取りがあり、内側には非球面レンズのムラと思われる内輪(玉ねぎボケと言われています)あり。極端に悪くありませんが、単焦点レンズとして極上のボケとは言えません。
ボケ実写
接写
接写時に球面収差は目立たず、コントラストの高いピント面と滑らな描写の後ボケが得られます。玉ボケをよく見ると僅かにアウトラインが入っていますが、実写で目立つシーンは多くないはず。どちらかと言えば、隅に向かって口径食の影響が強いので、状況によっては少し絞ったほうが良いかもしれません。1~2段絞りくらいであれば、自然なボケが得られます。
近距離
接写時よりも玉ボケのアウトラインが目立つものの、全体的に見て見栄えの良い結果が得られます。色収差の影響は少なく、F2.8からコントラストの高いパンチのある描写。口径食が気になる場合は絞りによる調整が必要ですが、ボケのサイズとバランスを取る必要があります。
近距離2
極上のボケとは言えませんが、球面収差や色収差の影響が少なく、まずまず見栄えの良いボケを維持しています。ただし、口径食の影響がさらに強くなり、状況によっては渦巻いているように見えるかもしれません。気になる場合は1.5段絞りくらいが丁度いい感じ。
中距離
さらに撮影距離が長くなると、フレーム周辺部のボケについて騒がしさが増しているように見えます。極端に悪目立ちするわけではないものの、特に強みと言える描写ではありません。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて、F2.8を使って撮影した結果が以下の通り。
全身をフレームに入れて背景から分離するには苦しいものの、上半身くらいまで近寄ることで十分なボケのサイズとなります。満足のいく質感を得るためには、さらにバストアップくらいまで近寄ると良いかもしれません。
まとめ
マイクロレンズらしく、光学性能の高さくる安定感のあるボケ質。
前後のボケに質感の差はほとんどなく、前景を入れても後景を入れても綺麗で滑らかなボケを得ることができます。ただし、撮影距離が長くなるとアウトラインが僅かに目立ち、口径食の影響もあって完璧とは言えません。本領を発揮するのはマイクロレンズらしく接写時なのかなと。
色収差が良好に補正されているため、ボケに不快な色づきがないのは強みの一つ。撮影距離に関わらず、色収差によってボケの描写が邪魔されることはありません。(収差を良好に補正した結果として)絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある描写と感じます。
撮影距離が長い場合でも悪目立ちすることは滅多にありません。口径食は強くなりますが、それでもZ MC 105mm F2.8ほどではなく、カジュアルに使うぶんには十分かなと。
購入早見表
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