キヤノン「RF24-105mm F4L IS USM」のレビュー第一弾を公開。今回は恒例の解像力チャートを使用して近接時の解像性能をチェックしています。
RF24-105mm F4L IS USMのレビュー一覧
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.7 逆光編その2
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.6 外観・AF・手ぶれ補正編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.5 歪曲収差編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.4 逆光編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.3 微ボケ編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.2 遠景解像編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.1 解像チャート編
- RF24-105mm F4L IS USM レンズレビュー Vol.1 解像力チャート編
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:EOS R5
- 交換レンズ:RF24-105mm F4L IS USM
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
24mm
このクラスの標準ズームレンズとしては非常に良好。絞り開放から全体的に良好なテスト結果となり、少なくともEOS R5との組み合わせでは絞っても改善しない。回折の影響を受けにくく、F11までピークの性能を維持しているので使いやすい。回折による影響が強くなるのはF16付近で、F22まで絞るとさらにパフォーマンスが低下する。
数値
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4510 | 4416 | 3958 |
F5.6 | 4620 | 4388 | 3705 |
F8.0 | 4327 | 4371 | 3874 |
F11 | 4353 | 4316 | 3885 |
F16 | 3895 | 3723 | 3658 |
F22 | 3154 | 3111 | 2949 |
実写サンプル
実写を確認すると、隅に向かって倍率色収差がいくらか残存しているのが分かる。Lシリーズのレンズとしては倍率色収差が多めに見えるが、光学4.3倍の標準ズームレンズで倍率色収差の補正は難しいのかもしれない。例えば、ソニー「FE 24-105mm F4 G OSS」はキヤノン以上に色収差が残っている。テスト結果通り、絞っても非点収差や倍率色収差は改善せず、画質に大きな変化は見られない。
35mm
24mmと比べると全体的にパフォーマンスが低下するものの、フレーム全体の均質性で言えばまずまず良好に見える。24mmと同じく解像性能は絞っても改善しないので、被写界深度に応じて絞り値を調整すると良いだろう。
数値
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4331 | 3786 | 3299 |
F5.6 | 4141 | 3895 | 3465 |
F8.0 | 4255 | 4084 | 3667 |
F11 | 3871 | 3899 | 3593 |
F16 | 3699 | 3573 | 3244 |
F22 | 2992 | 3061 | 2655 |
実写サンプル
24mmに引き続き倍率色収差の影響が絞り値全域で見られる。絞ると僅かに改善するが、小絞りによるリスクを引き換えにして得られるものは少ない。
50mm
ズーム中間域でまさかの失速。解像感はまずまず良好に見えるが、コントラストが少し低下しているので解析ソフトの結果に影響しているのかもしれない。絞ると急速に改善し、F8からF11でピークの性能に達する。
数値
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4789 | 3202 | 2526 |
F5.6 | 4387 | 3604 | 3465 |
F8.0 | 4005 | 4137 | 4014 |
F11 | 4109 | 4330 | 3736 |
F16 | 3502 | 3616 | 3505 |
F22 | 3274 | 3152 | 2806 |
実写サンプル
50mm付近から倍率色収差の影響が小さくなる。その一方、フレーム隅に向かってコントラストが低下するので、解析ソフトの結果は広角側よりも悪い。
70mm
50mmと同じく周辺部におけるコントラスト低下が目に付く。絞り開放の周辺解像が伸び悩んでいるので、パンフォーカスが重要となるのであれば、基本的にF8まで絞って撮影すると良いだろう。
数値
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4169 | 3317 | 2788 |
F5.6 | 4348 | 3558 | 3299 |
F8.0 | 3970 | 4292 | 3805 |
F11 | 4166 | 4156 | 3955 |
F16 | 3751 | 3693 | 3698 |
F22 | 3162 | 3055 | 2848 |
実写サンプル
50mmと比べてさらに周辺部のソフトさが目立ち、倍率色収差は少なくなる。絞れば問題ないので、ボケが必要無ければ積極的に絞るのも一つの手。
105mm
望遠端ではパフォーマンスが少し低下するものの、フレーム全体の一貫性はまずまず良好な結果に見える。中間域よりも周辺・隅のパフォーマンスが良くなっているのが意外だった。
数値
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 3831 | 3459 | 3225 |
F5.6 | 4228 | 3618 | 3280 |
F8.0 | 3890 | 3699 | 3501 |
F11 | 4268 | 3833 | 3870 |
F16 | 3885 | 3451 | 3446 |
F22 | 3147 | 3106 | 3004 |
実写サンプル
絞り開放は全体的にコントラストが低く、少しソフトな描写だ。コントラストは1段絞ると大幅に改善する。切れ味を求めるのであれば1段絞って使った方が良い結果が得られると思う。倍率色収差の影響はゼロではないが、ほぼゼロに近い
まとめ
他社の24-105mm F4クラスのレンズもテストし、比較した印象として、RF24-105mm F4L IS USMは比較的広角側のパフォーマンスが良好だ。倍率色収差の影響は確かにあるが、比較的コントラストが高く、色収差の補正次第ではシャープな結果を期待できるように見える。ただし、圧倒的な差では無く、実写では「五十歩百歩」と感じるかもしれない。
50mmの隅で少し目に付く低下が見られ、以降の望遠域で全体的なパフォーマンスの低下が発生する。ただし、これは必要に応じて1~2段絞るとことで改善可能だ。ズーム全域を見ても、F8前後まで絞れば安定した結果が得られる。
注意点として、全域で倍率色収差の影響が見られる。色収差に関してレンズ補正は必須だ。しかしこれは他社のF4ズームと同じ傾向である。このレンズの設計が悪いわけでは無く、おそらく光学設計が難しいのだと思う。他の収差補正を優先し、後処理が簡単な倍率色収差をトレードオフするのは珍しい話ではない。
全体的に見て「これぞLレンズ」と言った抜群の光学性能では無いものの、他社のF4ズームと渡り合うことが出来る性能に仕上がっている。ピークの性能は抜群と言えないが、安定感のあるレンズだ。絞り開放のシャープネスや細部のコントラスト、単焦点並みの切れ味を追求しなければ、長く付き合うことが出来る便利な標準ズームレンズと言えるだろう。
購入早見表
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作例
オリジナルデータはFlickrに掲載。
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